社員達の様々な思惑が錯綜する三ツ倉小屋に予告通り猿が三体襲撃してきた。飯塚と藤柴に唆された佐藤が山小屋に火を放ち、皆は窮地に陥るも遠野が自分の命と引き換えに自作爆弾を抱えて猿達に特攻し、猿に人質に捕られていた佐藤を含めた社員達を救うのであった…。
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→【漫画】モンキーピーク6巻【感想・ネタバレ・考察】一人逃げる田中、山小屋に火をつける佐藤、そして爆弾を持って特攻する遠野…
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→モンキーピーク、登場人物・キャラクター最新まとめ~wikiより詳しく、ネタバレあり
Contents
現時点での生き残り
早乙女稜(主人公)…営業23歳 男性。足に凍傷と右の背中に裂傷を負っている。強い正義感と高い運動神経の持ち主。
宮田…営業23歳 男性。早乙女の友人。誤解されがちな早乙女の理解者で、冷酷な安斎に強い反感を抱いている。
林…庶務21歳 女性。優しく穏やかだが時に強く皆を励ます。日本刀の男と対話を試みるなど争いを好まない性格。
安斎…法務34歳 男性。大学時代アメフトをやっていたこともあり、強靭な体と戦闘力に優れる。責任感が強いが、冷徹で生き残るためには弱者を切り捨てることが必要だと考えている。
佐藤…経理31歳 女性。元は生真面目で責任感が強い性格だったが濡れ衣から拷問に掛けられ、また同僚の南の死の原因を作った事等で精神的に追い詰められている所で飯塚と藤柴にそそのかされて三ツ倉小屋に放火した。
飯塚…開発室A26歳 男性。ずる賢く、藤芝と『同盟』を結び、生き残るために立ち回る。佐藤を唆して山小屋に火をつけさせたが現在消息不明。
藤柴…庶務24歳 女性。石が弱く『同盟』を結んだ飯塚に利用されている。飯塚と共に佐藤を騙して山小屋に火をつけさせたがともに現在消息不明。
八木兄(満)…一般の登山客だが妹の薫が猿に殺害されたことで、藤谷製薬の社員達と力を合わせ猿を殺すことを決意。山に詳しく知識技術を藤谷製薬社員に伝授する他、高い運動神経と戦闘能力を持つ。
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現時点生死不明
氷室…営業部長43歳 男性。猿の仕業に見せかけ、経理の辻を殺害。安斎に拷問に掛けられた後、『来た道を戻る』という条件で追放された。
長谷川人事部長…50歳 男性。登山慣れしている人格者。宮田達と共に先行して三ツ倉小屋を目指していたが、カニ歩きでの猿の襲撃以降姿が見えなくなった。安斎は日本刀の男の正体が長谷川なのではないかと疑っている。
田中… 開発室Aリーダー48歳 男性。三ツ倉小屋近くで待機していた日本刀の男から『2人だけ逃がしてやる』というメッセージを受け取った直後、皆の話し合いの結論が出る前に、1人だけ走って逃走した。
以下、あらすじとネタバレ
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第61話 絶望と希望~嘘をつく佐藤、そして傷口を麻酔無しで縫われる早乙女
三ツ倉小屋は遠野が圧力鍋で作った爆弾で吹き飛んだ。状況を冷静に見ていた安斎は社員達に『遠野が自爆し、猿(“槍の猿”)が一匹死亡し、他の猿(“ナタの猿”と“盾の猿”)は逃走した』と告げる。
それを聞きながら呆然と燃え盛る山小屋の残骸を見つめる佐藤。
「遠野…死んじゃったの……?そんな…」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 9/209
「ハハ…本当に…本当に最後まで…使えない……」
そして、佐藤は泣き崩れるのであった。
だが、しばらく経って安斎が『猿が火をつけるのは予想外だった。俺が二階に上がった途端、階段に火をつけられた』と言うのを聞いて、佐藤は愕然とする。
飯塚と藤柴に唆されて、猿が二階に上がったタイミングで火をつけたつもりだった佐藤。しかし、実はそれは猿ではなく安斎だったのだ。
自分が勘違いし、とんでもないことをしてしまったことを理解し、慄然とした佐藤は、安斎からどこに行っていたかを聞かれて、『トイレにいて、猿が入ってきたので怖くて隠れていた』と嘘をついた。そして、そんな佐藤に『臆病者』と吐き捨てる安斎に宮田が、『山小屋の窓から脱出するために、猿めがけて早乙女を投げたこと』について怒り、問い詰める。『他にいい物が無かったから』と悪びれる様子もない安斎に宮田はさらに詰め寄るが、それを他でもない早乙女が制止する。
早乙女は安斎の行動が無ければ全滅だったことを認めながらも、『安斎がみんなが助かるために“足手まとい”を犠牲にしようとしている』と指摘し、安斎自身も否定しないため、更に空気が悪くなっていく。
すると、八木が『山小屋の残骸から使える物資の回収』『行方の知れない飯塚と藤柴の捜索』をするべきだと主張する。八木の指示に従う、早乙女達。
そして、自身のリュックサックが無事であることを確認した八木は、早乙女の右の肩から背中にかけて出来た刺し傷(“槍の猿”の槍で傷付いた)をリュックやジャケットを補修するために持っていた針と糸で縫う応急処置を施す。
麻酔も無い状態なため、早乙女が暴れて舌を噛まないよう木の枝を噛ませ、宮田にうつぶせになった早乙女の腰に乗って押さえるように指示する八木。
麻酔無しに肉と皮を縫われる壮絶な痛みに耐える早乙女。八木も縫合は初めてだったものの、比較的キレイに早乙女の傷口を縫うことが出来た。
一方、林と安斎は飯塚と藤柴のリュックは見つけたものの、二人を見つけ出すことはできなかった。
まだ燃え続ける山小屋の残骸を見ながら、『これだけの火災なら下の街からも絶対に見えるから結果的に良かった』と言う安斎。
このまま夜が明ければ、山に入って6日目になる。助けが来るはず…皆はそう思うのであった。
第62話 6日目①~バイオトイレのタンクの中に隠れる飯塚と藤柴…そして救助のヘリがやってくるが…
三ツ倉小屋の残骸の中、佐藤は遠野が掛けていたメガネを見つけ拾う。焼け焦げ歪んでしまったそれを手にした佐藤は再び泣き崩れる。
一方、その頃林が現在消息が不明になっている藤柴のリュックから炭酸飲料を見つけ出した。
…実は、飯塚と藤柴は焼けずに残った三ツ倉小屋の男子トイレ(バイオトイレ)の下にある、タンクの中に隠れていた。
状況がいまひとつ分からない中、『トイレまで燃えなくて良かった』とホッとしている飯塚と藤柴。飯塚は狭いタンクの中、隣で伏せる藤柴にガッツポーズをして、『勝った』と言う。
「まさかバイオトイレのタンクに隠れてるとは猿も人も考えないだろ。生き残ったぞ!!」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 33/209
二人は救助が来るまでここに隠れているつもりなのだ。だが、飯塚は藤柴が『炭酸飲料を一本残したリュックを上に忘れてきた』と言うのを聞いて焦る。
…飯塚の不安は的中し、地上では藤柴が炭酸飲料を隠し持っていたことを知ったことが明るみになってしまっていた。
「あのアマ…」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 35/209
そう言って壮絶な表情で歯ぎしりする安斎。そしてそれを聞いた佐藤も『火をつけろと唆したのも飯塚と藤柴で、その結果遠野も死んでしまった』と飯塚と藤柴に強い恨みの念を持つ。
その後、焚火を囲みながら夜明けを迎えた早乙女、宮田、林、安斎、佐藤、八木。すると、昨晩の山小屋の火災のおかげか、早速ヘリがやって来た。
「わーっ、ヘリだー!!」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 41/209
泣きながら歓声を上げ手を振る宮田。安斎も目を閉じながら感慨深げに『長かった』と呟く。
その時であった。ヘリに向かって両端を石に繋がれたロープが投げつけられた。投げたのは少し離れた場所にいた猿であった。最初は機体に当たっただけだったが、もう一回投げつけられたそれは、ヘリのプロペラに引っかかる。
「やめてくれ~っ」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 45/209
宮田の悲鳴が虚しく響き渡るのであった。
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第63話 6日目②~猿の手によって墜落するヘリ、そして藤柴に全ての罪をなすりつける飯塚
猿が放ったロープと石は救助隊のヘリのプロペラに絡まり、ヘリは社員達のいる場所から少し離れた場所に墜落。慌てて宮田がヘリの落ちた方向を見るとヘリは大破し燃え上がっていた。
『終わった』と言って絶望した表情を浮かべ崩れ落ちる宮田。林も『何の罪もない人達が…』と涙する。安斎は『どこまで苦しめれば気が済むんだ』と憤怒の表情を浮かべて遠くにいる猿を睨む。
その時、山小屋の残骸から飯塚と藤柴が出てきた。二人はヘリの音を聞きつけて、救助が来て助かると思って出てきたのだ。『ヘリは?』と言って辺りを見渡す飯塚と藤柴を安斎が怒鳴りつける。
「お…お前達!!今までどこにいたぁっ!!」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 54/209
安斎の剣幕に飯塚は慌てて『トイレにいたら猿が来てどのまま隠れた』と言い訳する。しかし、安斎はそんな飯塚を一発殴りつける。
そして、そのまま怯える藤柴の頬を張り、倒れた藤柴を持ち上げ、地面に叩きつける。そして、そのまま鼻血を出して泣く藤柴の腹を蹴りつけようとする。
だが、安斎を八木が『暴力反対、話を聞きましょう』と制止する。
藤柴のリュックに入っていた炭酸飲料を囲んで”話し合い”をする一同。『ジュース泥棒は藤柴だったんだ!!』と激昂する佐藤に対して、泣きながら『違います』と否定する藤柴。しかし、
「藤柴さんってそーいう事する人だったんだ…ガッカリだよ」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 61/209
そう、”同盟”を結び信じていた飯塚から言われた藤柴はショックを受け固まる。飯塚はさらに『藤柴さんは俺が男子トイレに隠れた時にくっついてきただけ、俺はジュースの件に関係していない』と藤柴をあっさりと裏切った。絶望し、口をパクつかせることしか出来ない藤柴。
すると、林が佐藤に『男子トイレの隣の女子トイレにいた佐藤さんは何か気がつかなかったんですか』と尋ねる。本当は飯塚と藤柴にそそのかされて手洗い場の棚の下に火を放つために隠れていた佐藤。しかし、放火したのが自分であることを隠して、女子トイレにいたと嘘を吐いている。林の問いに悩む佐藤は飯塚から睨みつけられ、『そういえば男子トイレから何か気配があったかも』と言って誤魔化すのであった。
一瞬の沈黙の後、八木は『ずっといなかった飯塚と藤柴は猿の仲間かも知れない』と言い出し、宮田もそれを聞いて『二人はいつもこそこそしていた』と言い始める。
だが、嫌な空気になりかけたところで林が『犯人探しはうんざり』と叫ぶ。
「2人とも無事だった。それでいいじゃない!!ヘリは落ちた!!これからどーするのか、これからの話しましょうよ!!」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 64/209
早乙女もそれに『賛成』と言い、皆はひとまず飯塚と藤柴を追及するのをやめる。
状況を冷静に分析した八木は『落ちたヘリは長野県消防防災ヘリコプターで、墜落したことは分かっているので、既に別のヘリが飛んでいる』『墜落した山の中腹に向かって救助隊が向かうが、20名規模の先遣隊が到着するのは今日の14時頃だろう』と予測する。そして、言う。
「猿がいる限り空からの救助は期待しない方がいい」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 66/209
「強行突破しましょう。足で!!自力下山です!!」
第64話 6日目③~強行突破を目指す社員達と救助隊を全滅させる日本刀の男と猿
『救助隊に期待せずに強行突破する』という八木の言葉に林と宮田は難色を示す。特に宮田は『寝てない、食べてない、足が痛い』と弱音を吐く。そんな宮田に八木は『凍傷を負っている早乙女さんの足よりは大丈夫田だと思います』と淡々と言う。
それを聞いた宮田は早乙女に足の具合を尋ねる。『かなり痛むが分からない』と正直に答える早乙女。凍傷のせいで恐らく足の指を数本失うことになるであろう早乙女は『脱いだら二度と履けない気がする』と感じており、足を見る事が出来ないのだ。
「だが俺は歩くぞ!!こんなところで猿に負けるのはゴメンだ」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 70/209
そう言って早乙女は宮田を『一歩でも先に進もう』励ますのであった。安斎も『猿の作戦は持久戦で、このまま待てば猿の思うつぼになる』と強行突破に賛成する。
すると、八木は焼け落ちた山小屋の残骸から猿の死体が無くなっていたこと等から、『猿には見られたくない秘密があって仲間が死体を回収した』と推測し、基本的に猿の作戦がゲリラ戦法であることから『猿の目的はあくまで”殺し”』『仲間の死を最小限にする等、死と我々を恐れている』と結論付ける。
『スゴイ力を持つ猿には勝てないのでは』と及び腰になる飯塚に『集団行動と武器という人間の強さがあれば猿に勝てる』と主張する安斎。
かくして、八木の先導の元、生き残った藤谷製薬の社員達は”ロープウェイ駅”を目指して出発することとなった。宮田は革靴をやめてテントで死んでいた登山客の靴を使うことになった。強行突破に乗り気でない宮田だが『救助隊が来るはず』と自身に言い聞かせるのであった。
焼け落ちた山小屋の前に上空から見て分かるように丸太で大きな『SOS』と自分達が進む方向に『→』を作って出発した社員達。歩きながら藤柴は飯塚に『裏切った、ひどい』と炭酸飲料の件について詰る。だが飯塚は笑って『あそこで共犯であることがバレたら藤柴の弁護が出来なくなってしまうから、あのような態度を取っただけ』と説明する。
「ポーズだって!本気なワケねーだろ」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 84/209
「俺を信じろ」
そう言って飯塚は藤柴の肩を強く掴み、丸め込むのであった。そして、そんな飯塚と藤柴の姿を、遠野の眼鏡を握りしめながら佐藤が睨みつけていた。
また、宮田は足の凍傷と背中に裂傷を負っている早乙女がどこまで歩けるか心配しているのであった。
しかし、その頃、墜落したヘリと三ツ倉小屋の元に向かっていた救助隊員たちは日本刀の男と彼が引き連れていた猿に虐殺されていた。救助隊員を全て殺した日本刀の男と猿は彼らの遺体の側にある物を置いて立ち去る。それは
これよりさき にゅうざんきんし
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 86/209
こちらにはひとじちがいる
はいったらころす みんなころす
えいぞうみろ
こう書かれたメモとビデオカメラだった。
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第65話 三ツ倉山~”助かった”はずの田中の死体を発見し、戦慄する社員達
すでにボロボロの体を酷使して”ロープウェイ駅”を目指す社員達。特に早乙女は凍傷を負った足が痛みだし苦しむ。『先に行ってくれ』と言う早乙女に『放っておけるか』と宮田と林が寄り添う。
早乙女の背中の傷からの出血が思ったより少ないことに疑問を呈す宮田に、八木が『体内の水分が少ないから、血がドロドロ過ぎて出血しにくい』と説明する。
そこから『水が飲みたい』『カレーが食べたい』等と語り合う早乙女、宮田、林、八木。すると、林はそこで自身が母子家庭で病気で寝たきりの弟がいることを明かした。
そうやって歩いていると、一同は昨日、日本刀の人物と猿がいた大きな岩の前までたどり着いた。陰に誰か潜んでいないか警戒する社員達に、八木が『僕が見てきます』と言ってピッケルを構えながら岩の裏を確認する。そして危険は無いが見てもらいたいものがあると社員達を呼ぶ。
岩の裏…そこには手足を縛られたうえ、血塗れになって絶命した田中の死体があったのだ。
『助けてやる』という日本刀の男のメッセージに釣られて一人、三ツ倉小屋から逃げた田中だったが、結局殺されてしまったのだった。『やはりワナだったのか』と呆然とする一同だったが、八木は田中が縛られているのを見て、『おかしい』と言う。殺すためならワザワザこんなことをする必要はない。安斎も動揺したように言う。
「サルめ…田中さんに何をした…っ!?」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 98/209
その頃、先遣隊の死体の前で、後からやって来た救助隊員達が、メッセージと共に置かれていたビデオカメラ内の映像を再生していた。そこでは縛られた田中がメッセージを読まされていた。自身の身の上と藤谷製薬の社員がすでに30名以上殺されたことを告げた田中はこう言う。
「山に入らないで…っ、ヘリも飛ばさないっで、私は人質なんです、殺されてしまう」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 100/209
「お願いします…っ、どうかお願いします!!山に入らないで、みんな…みんな殺される!!」
泣きながら田中がそう懇願するところで動画は途切れた。救助隊員達は一体この山で何が起きているのかと戦慄するのであった。
その頃、社員達は岩の向こう、”石ノ平中峰駅”と”二ノ峰・岩砕山”の二手に分かれた道の前までやって来ていた。『右の”二ノ峰・岩砕山”の方』だと答えた八木に『左の”石ノ平中峰駅”の方では』と疑問を呈す林。すると八木は『左の方が近道だが、右の方がなだらかで、皆フラフラだから優しい道を行きましょう』と主張する。遠回りと言っても1時間程度だと言い、林も『そうですか』とそれ以上は何も言わないのであった。
現在地が”三ツ倉山”でこの先前方にある”二ノ峰”まで登ればなだらかな下り坂になると説明する八木に、『また登りか』とうんざりする飯塚と藤柴。
すると、藤柴が驚いた様な声を上げる。そして、『あれ』と言って皆の背後を指さす。すると、三ツ倉小屋の残骸の方から誰かが歩いて来るのが見える。
それは、中岳小屋で追放されたはずの氷室であった…。
第66話 稜線①~追放された氷室が戻ってきた訳は?そして、なだらかな稜線を進むも天候は崩れて…
安斎に追放され、元来た道に向かったはずの氷室が何故か一同を追いかけてきて『待ってくれ』と呼びかけて来る。『あんなの待つことない』と無視して行こうとする宮田、そして安斎。だが林や早乙女は『せめて話を聞こう』『置いていくわけにもいかない』と言い、最終的に八木が休憩を兼ねて氷室を待つことを提案した。そしてしばらくすると氷室が皆に追いついた。
『何故戻ってきた』と凄む安斎に氷室は『前岳を越えた辺りで猿にこっちへ行くように示された』と答える氷室。これに対して宮田が『猿に殺されなかったのはおかしい』と不信感をむき出しにする。
ざわめく社員達だが、『辻殺し等の前科がある氷室は信用できず、何をするか分からないので、猿の罠避けを兼ねて一番先頭を歩かせる』という安斎の案に皆が納得した。安斎は氷室に『妙な素振りをしたら首をへし折る』と脅す。
すると、再び出発する一同の上空をヘリが飛び、明らかに社員達の姿が見えているはずなのに何もせずに去っていく。『何かあったのかもしれない』と考え社員達は不安になる。
一方、八木はしきりに周囲の様子を眺める。『ここから二ノ峰まではゆるやかな稜線歩きで、天候に恵まれれば楽になる』と言う八木に、林は『ここは猿から丸見えなのでは?』という疑問をぶつける。それに対して八木は『待ち伏せされるよりはマシでこのルートなら猿が出てきてもすぐに分かる』と答える。だが、それに対して林は納得していないような表情を浮かべるのであった。
そして、先頭を歩かされる氷室は以前安斎からの拷問で足の指を切断されていることもあってか非常に歩みが遅かった。それに対して飯塚は藤柴に『猿の狙いは歩みの遅い氷室を社員達を合流させることで、足止めをすることが目的だったのでは』と語り、うんざりした表情を見せるのであった。
稜線は雲と同じ高さで、『スゴイ』とうっとりした表情を浮かべる林。だが、八木は『ダメだ』と言う。
「雨が降る」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 125/209
それを聞いて『水だ』と喜ぶ宮田だが、八木は昨夜に下山する予定で今日の天気予報を失念していたと言い『雨具を持っていないですよね?』と尋ねる。そして、八木が言った通り、雨が降り始める。『この稜線では雨と風をしのぐことはできない』と言う八木はもっと心配なことがあると言う。
「”雷”です」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 128/209
第67話 稜線②~雷に耐える社員達…無事に雲雷は去ったように思えたが…。
八木の予想通り、雨が強くなり雷鳴が響き出す。八木はヘリが来なかったのは雨の予報があったためだろうと言う。
そして、八木は慌てて先を急ごうとする社員達に動かないよう、杖代わりに使っていた金属の杭を手離すように指示する。今は稜線の低いところにおり、動くと雷に当たる可能性が高くなると言う。
とはいえ、すでにいる稜線自体が前後の山頂よりは低いとはいえ、十分に高い場所にあり、危険な場所であるのだ。八木は『全滅しないため』と崖を下り、バラけるように皆に指示する。
すると、早速雷が落ちた。悲鳴を上げながらも八木の言われた様、『なるべく地面に接しない』しゃがみかたをして、雷が待つのを去る。しかし、雨はますます激しくなり、落雷も続く。
「ここは…雲雷の中だ!!」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 138/209
そう叫ぶ宮田。すると落雷の影響で落石まで社員に降りかかる。雲の中の稜線からは、なんと稲妻が真横に走る様子まで見え、社員達は戦慄する。
とうとう藤柴が『もうイヤ』と泣き叫ぶ。だが、近くで稲妻は走り続け、社員達は恐怖に震えながらただ、耐えるしかないのであった。
しばらくすると、雷鳴は止み、雨も弱くなっていった。『終わったのか?』と言い合う早乙女と宮田。すると、最も怯えていた藤柴が『早く下山しよう、こんなところはイヤ』と言って八木の制止も聞かず走り出してしまう。
すると、次の瞬間、そんな藤柴の近くに雷が落ち、藤柴の体は吹き飛ぶのであった。
第68話 稜線③~落雷で呼吸が止まる藤柴…しかし八木の心臓マッサージと林の人工呼吸で蘇生する
落雷に巻き込まれ、吹き飛ばされた藤柴。林が『藤柴さん!』と叫び近づくも、藤柴は目を開いたまま動かず、息も止まっていた。
八木は林に人工呼吸を指示し、自身は藤柴に心臓マッサージを施す。
その様子を見ながら飯塚は『こんなはずじゃなかったのに』と内心で叫ぶ。ヘリの音で飛び出さず助けが来るまでトイレで隠れていれば良かった…そう後悔するのであった。
こんな山で死ぬのはごめんだ…
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 156/209
俺は絶対に生き残る
どんな事をしても!!
そう強く決意する飯塚。藤柴は中々意識を取り戻さず、社員達はただただ、八木と林の懸命の蘇生を見守るしかない。
すると、藤柴が咳き込み、体を起こし『え?』と不思議そうに辺りを見回す。無事に生き返ったのだ。
『生き返った!』そう沸く社員達。早乙女は八木に『あんたスゲーよ』とただただ感心する。
そんな中、まだ状況を飲み込めていない藤柴を突然飯塚が抱き締める。
「良かった…本当に」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 161/209
そう言って藤柴を離さない。驚き、赤面する藤柴。宮田達は『へー…』と二人が“そういう関係”であると認識する。だが、藤柴を抱き締める飯塚は腹黒い笑みを浮かべていた。早速、生き残るために…藤柴に好意を抱いているように皆に見せたのだ。
雨が上がると、八木は溜まった水を沸かして皆に飲ませた。しかし、雨水で水部族は解消できたものの、雨具を着ていた八木と違い、社員達はずぶ濡れ。八木は社員達にこのままではまずいかもと言う。
「濡れた状態では通常の25倍の速さで体温を奪われます。低体温症が心配です」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 166/209
氷室に雨具を貸して欲しいと言われた際、『僕の分しかないから』と断った八木だったが、乾いたウェアなら一枚余っていると言い、『どなたか一人に貸します』と言い出す。
一人分の乾いたウェア…それを聞いた社員達は震えながら八木の差し出したウェアを見つめるのであった…。
第69話 稜線④~ジャンケンで乾いたウェアを手に入れたのは飯塚…濡れたまま一同は”角”までやってくる
社員達の前に一着の乾いたウェアを差し出し、このまま雨で濡れたままでは低体温症になる可能性が高いと改めて述べる八木。
すると安斎が『私にはサイズが合わないから』と真っ先に辞退し、『氷室も当然辞退するべきだ』と氷室を睨みつける。不服そうに唸る氷室。早乙女も宮田も相次いで辞退を申し出た。
だが、この流れに飯塚は『男が辞退しなくてはいけない雰囲気になっている』と不満を抱く。そのため、安斎が藤柴にも『”ジュースの件”があるからお前も辞退するべきだ』と言うのに対してこう口出しする。
「そーいうの良くないと思うなぁ」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 174/209
「平等に欲しい人みんなでジャンケンすりゃいいんじゃないっスかね」
その飯塚の発言で流れが変わり、『乾いたウェアを借りる人は欲しい人でジャンケンして決める』という事になる。そして、最終的に『欲しい人』は飯塚、藤柴、氷室の3人となった。林は佐藤に『佐藤さんは着替えた方がいいのでは』と声を掛けるが、佐藤は何も答えない。
3人でジャンケンをすることになった飯塚、藤柴、氷室。『最初はグー』をして、ジャンケンをした結果…
飯塚がパーで、藤柴、氷室はグー。飯塚の一人勝ちだった。飯塚は寒さと緊張感から、自然と拳に力が入ってグーを出しやすいはず…そう考えてパーを出したのだ。そして、その読みが見事的中したのだ。
飯塚が渇いたウェアに着替え終えるのを待って、再び出発する一同。雷鳴が聞こえたら捨てる…と決めて、再び金属の杭を杖代わりにして歩みを進める。
だが、ジャンケンで負けて乾いたウェアを得られなかった氷室は沢山の物資が詰まっているであろう八木のリュックを恨みがましく見つめ続けるのであった…。
そして、風が吹く中、藤柴は寒さに震える。八木が言っていた”低体温症”という言葉に恐怖を感じた藤柴は飯塚に『服を取り替えて欲しい』とねだる。当然そんなことをするつもりはない飯塚。だが、『自分達の同盟は秘密だから、休憩の時に皆の目を盗んで取り替えよう』と提案する。その言葉に『ありがとう』とほほ笑む藤柴。だが、飯塚はそんな藤柴を裏で鼻で笑っているのであった。
「ここが通称”角(ツノ)”、このコースの一番の難所ですね」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 183/209
歩み続けた社員達の前に現れたのは”崖”にしか見えない急な岩場だった。藤柴が『休憩は!?』と叫ぶが、安斎も八木も『休んでいる間はない』と言い、強風の中、社員達は四つん這いで”角”を登っていく。
『丁寧に登れば難しくない』と社員達に励ましの声を掛ける八木。だが、寒さのあまり、藤柴の手が動かなくなる。そして、佐藤もぐったりしてしまい、動かなくなってしまう。
一昨日外で夜を迎えて凍死しかけた宮田は、『このままでは先に進めず夜になってしまうのではないか』と恐怖するのであった。
第70話 ツノ~ついに”岩砕山”が目の前に現れる
急な”角(ツノ)”で佐藤と藤柴が衰弱して動けなくなってしまう。
「動けない者は置いていく!!動ける者は先を急ぐぞっ」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 191/209
しかし、安斎はそう叫び、先頭の氷室を急かしてさっさと先に行ってしまう。八木は藤柴と佐藤の症状を”低体温症”と”ハンガーノック”と判断し、温かい水を飲ませるのが効果的だと言うが、この”角”ではそれは叶わない。
飯塚は冷淡に人を切り捨てる安斎について先に行くか、後列に残ってゆっくり進むか迷う。だが、結局、笑顔で藤柴に手を貸し励ますのであった。
”角”の途中で一休みした早乙女、宮田、林、佐藤、飯塚、藤柴、八木。八木は持っていたロープで弱っている藤柴を背中に巻き付け、誰かに同じように佐藤を背負うように言う。
すると、早乙女が佐藤を背負うと言い出す。宮田が慌てて『サッチーは足と背中が傷付いてるから自分が背負う』と言うが、早乙女は『自分の方が体力がある』と言う。
「それにな、俺には経験があるんだよ」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 198-199/209
「人を背負って山を歩いた経験がな」
早乙女は自身を庇って落石に当たった父を背負って下山したことがあったのだ。
かくして、佐藤を早乙女が、藤柴を八木が背負って再出発をする社員達。すると、八木に飯塚が『リュックを持つ』と申し出て、豊かな物資を含む八木のリュックを手にした飯塚は秘かに邪悪な笑みを浮かべるのであった。
かつて父を失った山で、その時の様に人を背中に負いながら進むことに運命を感じる早乙女。”角”を越えると目の前には”岩砕山”が見えてきた。
「岩砕山」
モンキーピーク7巻 原作:志名坂高次 作画:粂田晃宏 206/209
「標高2981m、六ツ倉連峰最高峰です」
その眼前に広がる山の険しさに呆気に取られる社員達。八木はそんな社員達に『私たちはロープウェイ駅に向かうから岩砕山には登らない』と言って安心させる。前方には氷室と安斎の姿が見え、早乙女達もまた歩みを進めようとしたその時だった。
後方に猿の姿が見えたのだ。猿が負って来たのだ。
猿が追いつくのが早いか、それとも社員達が下山するのが早いか…そんな勝負がこれから始まるのであった…。
以下、感想と考察
黒幕フラグの出てきた林…林と八木、怪しいのはどっち??
個人情報をちょいちょいと出してきたヒロイン(?)の林。寝たきりの弟、母子家庭という言葉だけで怪しく感じてしまう。マンガにおいて“不在の父”というのは大半が後々大きな存在になる。大体“病気”ではなく“寝たきり”と表現したのも意味深で、なんか薬害と関係しそうだ。そして、八木の言動に不信感を覚えているような素振りを度々見せている。八木も謎が多くて(妹との関係とか)、色々と社員達に親切にしてくれるけど、猿相手に互角に渡り合うなど、カタギの人間なのか、ちょっと怪しい所がある。
怪しいのは林、八木どっちなのか。
田中の死と氷室の合流、ちょろい藤柴
そして、見せしめと犯行声明の為に利用され、殺されてしまった田中…まあ、助かるとは思っていなかったけど残念だ。そして、氷室の合流。こいつ、ナチュラルに殺人鬼だけど、いいのか?宮田は嫌がってたけど、他は割とみなあっさり受け入れた感じ。猿というよりヤバい存在のせいで、みんな感覚がマヒしてしまっているか?
そんでもって、相変わらず、飯塚は狡猾で、藤柴はチョロい。ジャンケンの下りなんかは、飯塚の読みが見事で『うむ…』と思ってしまった。
藤柴はジュースの件を飯塚になすりつけられた辺りで目を覚まして欲しかったな…。しかし、元から自分の意思が希薄だったこともあって、今さら飯塚から離れることが出来なかった感じか。特に、飯塚が”特別な好意”のようなものをチラつかせた(皆の前でいたく感動した様に蘇生した藤柴を抱きしめ続ける)ことで、尚更。ウェアの交換について『同盟がバレない様に、後で』という飯塚の言い分って、全然筋が通ったものでは無いのだけど、何も疑問に思わないようだし、チョロすぎる…。
また、貴重な物資が沢山ある”八木のリュック”を殺人鬼氷室と卑怯者飯塚が狙っている感じ。今は飯塚が手にしているけど、この事がこの先どのように影響してくるのか…。
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