【漫画 既刊5巻】いじめるヤバイ奴【総評・あらすじ・感想(ネタバレあり)】不謹慎かブラックユーモアか…ギリギリを攻める”イジメ作品”

いじめるヤバイ奴 1巻表紙

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『いじめ』を題材にした作品は多い。というのも、いじめた者、いじめられた者、止めようとした者、傍観者だった者…どういった形であれ、社会生活を送っている以上人は誰しも何らかのいじめに関わったことがあるはずで、苦い思い出を持っている人がほとんどだろう。そういった意味では言い方は悪いが『いじめ』は親しみやすい題材なのだ。

だが、『いじめ』はその身近さと同時にセンセーショナルな題材とも言えるため、不快さと怖いもの見たさを上手い具合にくすぐる。某いじめを扱った漫画原作のドラマなんて、『第2話!今夜遂にいじめの標的に!…』なんてエンターテイメント感満載で煽ったりもした位だ。
特にWeb漫画・電子書籍が溢れかえっている現在では学校でのいじめものは勿論からママ友イジメから職場イジメ…『いかに過激で残虐か』を売りにしたイジメ漫画がこれでもかとプッシュされている。

そんな中、『過激さ残虐さ』とは別方向に突き抜けたイジメ漫画がある。それは中村なんの『いじめるヤバイ奴』である。体中に落書きをされ首に縄を付けられた少女…といった表紙に騙されてはいけない。これは『女の子が酷いいじめを受ける』…なんて単純な物語ではないのだ。

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Contents

『いじめるヤバイ奴』のあらすじ

これは狂気が生んだおぞましい物語…

矢場高校1年B組には狂気が蔓延していた。そこでは凶悪な男子生徒の仲島達也が、か弱い女子の白咲花に残忍なイジメを行っていたのだ。罵倒し泥を浴びせ自殺を強要する等、仲島はありとあらゆる手段で白咲を貶める。
一部の生徒はいじめに加担し、他は皆、仲島を恐れて見て見ぬふり。唯一、強い正義感を持つ男子、田中浩太が仲島の蛮行を止め、学校に訴えようとするが、担任教師も仲島に弱味を握られている上、体面を気にする学校はいじめを黙殺。仲島による白咲への“恐怖のいじめショー”は毎日行われていく。

…しかし、仲島と白咲の間には誰も知らない秘密があった。

「お前は死ぬまで私のいじめっ子」

いじめるヤバイ奴1巻 中村なん 43/195

実は仲島は白咲の“いじめっ子奴隷”…白咲からいじめを行う様に強要されていたのだ。

本当はいじめなどせず平和な学園生活を送りたいにも関わらず、白咲の壮絶な暴力と凄まじい気迫に逆らえず言いなりになっている仲島。白咲が満足するいじめ方をしないと、凄惨な“お仕置き”が待ち受けているため、命懸けでいじめを行っているのだ。しかし、同時に連日のいじめで心身ともに疲弊している仲島は、どうにかしていじめを止めたいと願っており、正義漢の田中を利用して逃げ出そうとするも悪魔の様な白咲は何故か仲島に執着し、支配し続ける。

何故、白咲花は仲島にいじめをさせるのか、そして仲島はこの“いじめっ子奴隷”から脱して平和なスクールライフを手にすることができるのか…!?

クレイジーな登場人物とカオスなストーリー…想像の斜め上を行く展開が続く

『いじめ』とついたタイトルと身体に落書きされた少女という表紙だけを見たときは、「ああ典型的な過激な暴力、残虐描写を売りにしたマンガか」と思っていた。違った。想像していた方向の遥か斜め上に『ヤバイ奴』だった。

そして「良くもまあ、作者はこんなテーマで漫画を描こうと思い、編集はこんな話を連載しようと判断し、そしてここまで続けてこれているな、マガジンポケットよ」と純粋に思うのだ。テーマもテーマだが、いわゆる“出落ち”感満載な設定であるがゆえ長続きしないと思っていたのだが、自分へのいじめを仲島に強要する白咲を始めとして、登場人物が皆本当にクレイジーで、ストーリーもどんどんカオスな方向に進んでいくのだ。

白咲による恐ろしい“お仕置き”を回避するべく、日々彼女が満足するイジメを行うために奔走する主人公、仲島。“豚”と罵るためだけに文献を焦って豚の生態を調べ尽くし、果ては“ピタゴラいじめスイッチ”なるものを作り上げる等、勉強と努力と創意工夫を惜しまない。
クラスメイト達の前では凶悪で不適な態度を作っているものの、白咲と二人きりになると一転して気弱になり全神経を使って白咲の顔色を伺い、たまに白咲から褒められると歓喜のあまり涙すら流してしまう(でも大体その後絶望の淵に突き落とされる)。

だが、仲島は世間体ばかりを気にする腐った学園の中で、滞りなく白咲へのいじめを行える様に全力で行動することで、結果的によそのイジメ問題を解決してしまったりと、一応主人公らしい活躍を見せたりもする。

そして、本作のヒロインでかつ主人公の最大の天敵である白咲。皆の前では非力ないじめられっ子のフリをしているが、その本性は非常にサディスティックで狡猾。仲島のいじめに不満があれば彼に対してアイスピック等で容赦無い脅しと暴力を駆使する。白咲が何故仲島に執着し続けるのかは明らかになっておらず、他にも広い豪邸にただ一人で住み、誰も出ない番号に電話を掛け続ける等、その目的も素性も謎に包まれている。だが、仲島以外に自身をいじめる者を許さないと同時に、仲島に危害を加えようとする者も許さない等、仲島の事を憎からず思っている様で、その事が更に仲島を混乱させる。

そこに強い正義感を持ってイジメを止めようとするものの、頑固で悉くタイミングが悪くて空回りし続ける少年、田中。仲島に一方的に惚れ込み、恋路の邪魔になる白咲を殺害して排除しようとする女子、青山。生粋のいじめっ子で仲島からクラスのいじめっ子の座を奪いたい転校生の男子、加藤。これまたクレイジーなキャラクター達が物語を掻き乱していくのだ。

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ブラックジョークか不謹慎か?かなり評価と好みが別れる作品

本作は暴力描写が多い。それも単純な殴る蹴るだけではなく、ペンチで歯を抜く等の『痛い』暴力描写もある他、その他の虐待めいたイジメ行為も描かれている。だが画力の低さも相俟ってそこまでリアリティは無い上、あまりの話の突拍子の無さから読んでいて胸が痛んだり、胸くそ悪くなることもない。一歩間違えれば『胸糞』『滑った』状態になるのにそうならない様にバランスが取れている。
ジャンルを考えるならブラックコメディを通り越してもはや『ギャグ』と言っても良いかもしれない。

ただ、『いじめ』というものそのものを演出、小道具…つまりネタとして軽く扱っているのは事実であるため、そういう意味ではかなりブラックな作品であるといえる。不謹慎だと怒る人もいるだろうし、イジメに深いトラウマを持っている人はタイトルからして不快に感じるかもしれない。

実際、この『いじめるヤバイ奴』は連載当初苦情が殺到したらしく、その苦情の大半は内容を知らない人(タイトルと表紙を見た人)からのものだったようだが、内容を知った上で『イジメをネタにしていて下品』と批判する人も少なくない。
その上、画力も高くなく独特のシュールさがあるため誰にでも勧められる作品ではないだろう。読む人を選ぶ。

イジメそれ自体をネタにして、コメディ・ギャグ化してしまった本作に不謹慎と不快さを感じるかブラックな笑いを浮かべるか…。これはハッキリと別れるのではないだろうか。

『ブラックな作品が好き』『過激・暴力的なマンガに飽きてしまった』という人にオススメ

なので、『ブラックなギャグを見たいけど、後味が悪いのは嫌だ』『ただの過激、暴力的なだけのマンガには食傷気味なので、ちょっと捻りが効いた展開が読めないものが見たい』という人にのみオススメできる作品である。

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最新刊では生徒会と戦うハメになった仲島…そして白咲の過去が明らかに!?6巻の発売日は!?

最新刊の5巻では生徒会に目をつけられてしまった仲島は田中、加藤と手を組んで、生徒会が組織的に行っている非道なイジメを告発しようとするが窮地に陥ってしまう。一方、学校を休みどこかに向かう白咲。遂に白咲の過去が明かされる…!?

次の6巻の発売予定日は2020年2月7日。私はブラックコメディが好きな人間なので次巻の発売を楽しみにしている。

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