【漫画】約束のネバーランド19巻【感想・考察(ネタバレあり)】ついにクライマックス…グランマとなったイザベラはエマ達に…!?

約束のネバーランド19巻表紙

コロナ禍で発売が一月遅れたのが待ち遠しかった。表紙のエマが凛々しい。

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Contents

前巻までのあらすじ

”七つの壁”の向こう側に行ったエマはある条件と引き換えに鬼の頂点(あの方) と”約束”を結び直し食用児全員で人間の世界に行くことが可能となった。その後、王都へ急ぎ向かったエマとレイ。しかし、既にノーマン達は王都に毒を撒き、五摂家を殲滅。女王と交戦中であった。

エマ達はムジカとソンジュの助けを借りて”邪血”の力で毒を収め、女王レグラヴァリマを倒すことができた。

しかし、その隙にピーター・ラートリーがアジトを襲撃。子ども達は出荷するためにGF(グレイス=フィールド)に連れ去られてしまう。エマ達は皆を救うべく、因縁のGFに向かうのであった…。

前の記事はこちら
【漫画】約束のネバーランド18巻【感想・考察(ネタバレあり)】本心を明かすノーマン、女王と対峙するムジカ、そして最終決戦の場所はまさかの…

以下、あらすじとネタバレ

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第162話 玉座取りゲーム~ ソンジュは混乱する鬼社会をまとめるため、かつて民衆から支持を得ていた寺院の大僧正を頼ろうとする

ムジカとソンジュの尽力の甲斐あって毒に侵された王都の鬼は救われ、王都は落ち着きを取り戻そうとしていた。

そして、ソンジュはムジカをとある場所に連れて行っていた。それは都の端にある古びた寺院であった。

ソンジュはムジカにかつて寺院は神の声を伝える存在として代々の王を任命する等、政治に深く関わり、同時に民の心の支えであったと語る。しかし、”約束”以降、ソンジュとレグラヴァリマの父である先王達によって進行は歪められ力を失ってしまったのだという。

それでも寺院への敬意は民の中にまだ残っており、特に寺院を統べる大僧正と四賢者達は立派な人物であった。しかし、彼らは民達が生きていくために養殖人肉を食べることを許し、その代わりに自分達がその罪を被り神の怒りを鎮めるためにその身を犠牲にしたのだ。(この信仰は狩猟という形でのみ生き物の命を頂く…食べることが出来るという信仰であるため、食べるために作り出された食用児を食べることは信仰に反する。しかし、”約束”以降食用児以外の人間を食べることはほぼ不可能な上、鬼は人間の肉を定期的に食べないと知能や姿を保てないという設定。)

…そう語りながらソンジュは寺院の扉を開けた。中の様子を見たムジカは驚くのであった。

そこには人形や死体に見えるほどに干からびた5体の鬼の姿があったのだ。

彼らこそが大僧正様と四賢者だと説明するソンジュ。彼らは養殖肉を一切口にせず肉体の代謝、細胞分裂を止め仮死状態になることで生き永らえ、神と民のための祈りを捧げ続けているのだ。

「大僧正様と四賢者を俺たちの邪血(ち)で復活させる」
「そして大僧正様を王にする」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  17/224

女王だけでなく五摂家まで滅んでしまった今、混乱に陥る鬼社会をまとめられるのは大僧正様達だけだ…そうソンジュは考えているのだ。

それを聞いたムジカは『急ぎましょう』と微笑む。ソンジュの話、そして今の大僧正達の姿から彼らの民を思う気持ちと覚悟の強さはムジカにも伝わったのだ。エマ達とこれ以上誰も死なせないと約束したムジカ。世界を平和に変えていくために行動しようと前向きになっているのであった。

しかし、その頃…アジトで捕えた食用児達をGFに移送するピーター・ラートリーの元にレグラヴァリマ女王と五摂家が殺害されたという報告が入った。そして、ふくろう型の偵察カメラが邪血のムジカとソンジュ、人間の子供達の姿を捉えたと。

それを聞いたピーターはすぐに『食用児達だ』と理解する。アジトを襲撃した際、エマやレイ達複数の食用児の姿がないことに気付き子供達に所在を尋ねていたピーター。しかし、ナットは『死んでしまった』と答えたのだ。

やはり生きていたのかと苛立つピーター。しかし、『食用児が王都を襲撃しあの女王を殺すなんて』と動揺する部下達に『この機会を利用して玉座・政権を奪いこの世界を支配する』と宣言する。

エマ達は放っておいてもどうせGFまで子供達を助けにやって来る。待てばいいだけだ…そう冷静に判断するピーター。

「来い食用児ども 永遠の子供達よ」
「ネバーランドは終わらせない」
「片をつけようGFで」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  24-25/224

そして、子供達を連れてGFの前に辿り着くのであった。

縄を縛られたまま連れてこられた子供達。GF出身の子供達は『こんな形で戻って来るなんて』と悔しい表情を浮かべる。その時だった。門の鉄格子が上がり、ある人物がピーターと子供達を出迎える。ピーターはその人物に親し気に声を掛けた。

「出迎えご苦労 お久しぶりです」
「グランマ・イザベラ」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  26-28/224

そこにいたのは屈強な鬼達を従え、冷徹な微笑みを浮かべるイザベラであった。

(感想)

…ソンジュが前巻で言っていた”アテ”とは寺院のことだったのか。そこは盲点だった。

そして、イザベラ再登場。これはテンションが上がる。エマ達を逃したことでペナルティを受けているとばかり思っていたけど、まさかのグランマに昇進。これは一体どういうことなのか…。

第163話 反転~ 大僧正を起こし、希望を見出したムジカとソンジュだったが…

その頃王都の外れの寺院ではムジカとソンジュが自分達の血を使って大僧正の蘇生を試みていた。『女王達の死が知れ渡り混乱する前に、大僧正様を新しい王として立てねばならない』…ムジカとソンジュは急いでいた。

大量の血を分け与えた結果、仮死状態であった大僧正は目を覚ました。大僧正は『一体何が…』と混乱するものの、目の前の青年がかつて自身を慕っていた幼子のソンジュであることに気付き驚く。そんな大僧正にソンジュは事情を説明し、『どうかお助け下さい』と頼み込む。

王も五摂家も死んでしまった…そう聞いた大僧正は『恐れていたことが起きてしまった』と悲しそうに言う。今まで積み重なって来た鬼社会の歪みが今、返ってきたのだと。だが、大僧正は『それは必定で、だからこそそなたの様なものが生まれたのだろう』とムジカの血の持つ可能性に触れ、そんなムジカを700年もの間守り続けたソンジュのことも労わる。

「我々は今、試されておるのだ 変われるかどうかを」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  36/224

大僧正はムジカとソンジュに協力することを約束する。それに喜んだソンジュが四賢者も起こそうとしたその時だった。広間の方からどよめきが聞こえてきたのだ。

慌てて3人が広間に向かうと、そこでは五摂家の家来たちが『女王陛下と五摂家諸侯が賊徒に殺された』と民衆達に告げていた。そして、動揺する民衆達にこう言うのであった。

「だが案ずるな今後は四大農園と五摂家各家臣団が合議連合の下政治(まつりごと)を取り仕切る!!」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  36/224

それを物陰で聞いたムジカ、ソンジュ、大僧正は困惑する。女王と五摂家の死の発表のみならず、政権樹立の声明…女王達が死んだばかりだというのにいくらなんでも速すぎる。本来はバラバラなはずの家臣団が足並みをそろえているのは不自然だった。

そう、五摂家家臣団の裏にはピーター・ラートリーが糸を引いていたのだ。

さらに役人は女王達の殺害及び城下の混乱を引き起こした賊徒の正体を『濃く賊徒して追放されていたギーラン一派と邪血の一派と称される二人組の男女だ』と告げ、ムジカとソンジュの絵を発表する。

それを見た民衆の一部は『聞いてくれ、その者達は自分達を助けてくれたんだ』と訴えた。しかし、五摂家の家臣団は『賊を見た者、血を分け与えられた者はこちらへ来てください』と集めたかと思うと、まとめて牢屋に閉じ込めてしまう。閉じ込められた者達が『どういうこと、出してくれ!』と叫ぶとこう答える。

「お前達は有害な血に汚染されている」
「よって隔離し”処分”する」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  43/224

そして、ムジカとソンジュの事を知らない民衆達を『賊を殺せ、報復だ』と煽り立てるのであった。

慌てて逃げ出すムジカ達。大僧正を新しい王にして鬼社会を救うどころか、一気に王都王国の敵になってしまったのだ。その上、救った人達も囚われてしまい、このままでは処刑されてしまう。それでは過去と全く同じであった。

『エマ達のおかけで変わり始めていたはずだったのに…』そう落胆するムジカとソンジュ。しかし、それはピーターの手によってまるでオセロをひっくり返すように覆されてしまったのだ。

そして、突然ムジカが倒れ込んでしまう。大僧正を蘇生させるために血を使いすぎたのだ。そして、それはソンジュも同じことで体が思う様に動かない。ムジカ達はすぐに怒り狂う民衆達に見つかり、捕まってしまうのであった…。

(感想)

…まあ、そんなにすんなりと上手くいくわけはないよね…。政治にしろ何にしろ腐った権威を払しょくしようとしても、旧体制の下っ端が新たに権威を独占しようとするのは珍しくもないことだったり。

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第164話 笑顔の悪魔~ ピーターの手回しにより国家転覆の罪を押し付けられ逮捕されてしまうムジカとソンジュ

「ソンジュ ムジカ」
「国家転覆罪で逮捕する」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  51/224

五摂家の家臣団に捕えられてしまったムジカとソンジュ。二人が皆を救うために奔走していたことを知らない民衆達は『賊を捕えたぞ』『まだ隠れているかもしれない邪血を捜せ』と躍起になっていた。

しかし、一部の役人はそうではなかった。ムジカとソンジュが毒で苦しむ鬼達を救う様子を見ていたとある二人の下っ端兵隊は、今の状況に疑問を持ち、ムジカ達の血を分け与えられた鬼の子供、アウラとマウラを疑う五摂家の家臣達に『この子達はただの迷子です。見ていたので間違いありません』と庇う。

五摂家の家臣団が去ると、下っ端兵隊二人はアウラとマウラをどうするか悩み、そして疑問を口にする。『俺たちは今まで嘘を教えられてきたのか?』と。下っ端兵隊二人はずっと『邪血の一派は過去、有毒病害な血を使って王家に反乱を企てた逆賊だ』と聞かされてきた。しかし、二人はムジカとソンジュが毒によって退化しかけた者を血を飲ませることで治療し、それだけでなく他の者達にも血を飲ませて未然に退化することを防いだのだ。

『邪血の血は退化した鬼を元に戻せるだけではなく、飲めば未然に退化を防ぐことができる』『そして、その血は民達を救うことになるのに、王家五摂家、農園達は人肉の供給を通して民衆を支配できなくなることを怖れて邪血達を処分してきた』…そう気付いて下っ端兵隊二人は愕然とする。

すると、そんな彼らにアウラとマウラが泣きながら『捕まってしまった父ちゃんと母ちゃん、助けてくれたお兄ちゃんとお姉ちゃんは殺されるの?』と尋ねる。その言葉にギクリとする下っ端兵隊二人。アウラとマウラは『兵隊さん、父ちゃんたちを助けて、お願いです』とすがる。幼い子ども達の涙に揺れ動く下っ端兵隊だったが、『俺たちには何もできない』と詫びる。しかし、こう続けるのであった。

「だからせめて君達二人を助けさせてくれ」
「せめて君達だけでも―」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  58/224

その頃、捕えられた邪血の血を分け与えられた者達が処刑されようとしていた。『お前達の血は国や民を危険にさらす』と言う五摂家家臣団。マウラとアウラの両親は幼い子どもたちの無邪気な姿を思い浮かべ、『神様あの子達だけでも…』と祈り、手を取る。そして、血しぶきが舞うのであった…。

それから三日後…。GFにいたピーターの元に邪血を分け与えられた鬼達の処分が完了した事、そして本日これからムジカとソンジュの処刑が行われるという報告が来る。

それを聞いたピーターは『あとは脱走者だけだ』と満足し、ある場所に向かう。

ピーターが向かったのは捕えられた食用児達が置かれている部屋だった。ナイフでナットの縄を解いたピーターはエマ達行方不明になっていた食用児達が皆生きていたこと、その上王都を襲撃して女王達を殺してしまったことを笑顔で語り、突然ナットの右手を踏みつけ中指を折った。

悲鳴を上げるナット。驚愕し怯える子ども達。

「君は僕に嘘を吐いた!!」
「嘘は吐いてはいけませんてママは教えてくれなかったのかな!?」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  66/224

ピーターは笑顔を一変させ目を向いて凄まじい形相でそう喚く。ナットがエマ達は死んだと嘘を吐いたことが許せなかったのだ。

恐怖に泣き出してしまう子ども達をこれ以上動揺させない様に、ナットは痛みを堪えながら『大丈夫』と言って笑いかけようとした。しかし、そんなナットの右手をピーターはさらに踏みつける。ナットは凄まじい悲鳴を上げ、子供達は『やめて』の泣き叫ぶ。

品質を重視していた女王や五摂家達はもういない。多少傷つけても構わない…そう笑うピーター。

そして、ナットを痛めつけるのに飽き足らず、今度はジェミマの縄を解き、彼女にナイフを突きつけた。顔面蒼白でジェミマの名を叫ぶ子ども達。

すると、ピーターはアンナに目を付け、質問に答えるように迫る。…『今度は間違えるなよ』と笑いながら…。

(感想)

ピーターがムカつくし、頭おかしいし、キモイしと純然たる悪役をしている。それにしても、この世界の大人、子供の骨折るの好きなのか?

しかし、約ネバはあまりキャラを殺さないマンガなので、アウラとマウラの両親が実は生きていると思いたい。血しぶきが飛ぶ演出はあったけど、明確に死んだシーンは描かれていないし。

第165話 You Can Fly!~イザベラがグランマになった経緯…再会した子ども達にも冷徹に振る舞うイザベラ

話は1年と10か月前に遡る。エマ達を逃がした上、ハウス(第3プラント)を焼失させてしまったイザベラは牢に入れられ、出荷される日を待っていた。エマ達が逃げたことについてグランマ・サラに対して堂々と『全て自分の責任だ』と言い切ったイザベラ。このような形で人生を終えることに悔いを抱いてはおらず、むしろやっと解放されるとエマ達や亡きレスリーに思いを馳せていた。

ところが。突然牢から出されたイザベラは鬼達に『明日からグランマ(飼育監長)に任命する』と言われたのだ。

驚愕し『なぜ私が…』と問うイザベラに鬼達は『全ての責任はグランマ・サラに負わせた』『グランマ・サラは出荷された。君の逃がした商品の代わりに次の儀祭の糧になる』と淡々と告げた。

イザベラはその後一旦牢に戻されたものの動揺が収まることは無かった。自分がママやシスター達の頂点となる…沢山の女性達の屍の上に立つ自分の姿を想像して気持ちが大きく揺れ動いたその時。突然牢を誰かが開けた。

それはピーター・ラートリーだった。『こんにちは』と言ってにこやかに牢の中に入って来たピーターは『あなたとサラのどちらを残す方が農園の将来にとって有益か打算した結果だった』と話し出す。イザベラの飼育成績は類を見ないほど高かったからだと。

そして、ピーターは『やっと抜け出して自由になれると思ったのに、グランマになったら元の地獄に逆戻りになると思っている』とイザベラがグランマになることを拒絶し死を選ぼうとしている心中を見抜いて指摘する。

さらに、今までの壮絶な人生を思い返すイザベラにピーターは『あなたも”僕ら側”の人間だったら良かったのに』と優しく言う。イザベラは”こちらの世界”で食用児として生まれてしまったばっかりに優秀な能力を持っていても、鬼達のエサとなって終わってしまうと。

ピーターの言う”こちらの世界”という言葉に驚き顔を上げたイザベラ。すると、ピーターは『あなたはまだ全てを知らない。何故食べられる人間とそうでない人間が存在するのか知りたくありませんか?』と言い出す。

「抜け出したくありませんか?今度こそこの地獄から!運命から!!」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  77/224

今のイザベラは死の押し付け合いに疲れ果てて自ら死を選んで終わりにしようとしているに過ぎない…しかし、死は決して救いでも自由への道ではない。そうピーターは不敵に微笑む。

「僕が本当の救いを君にあげる」
「連れ出してあげる」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  79/224

そう言ってイザベラに手を差し伸べたピーター。イザベラは戸惑いながらもその手を取ったのだ。協力することに決めたイザベラにピーターは胸のチップを取り、首の番号を消し、”真の自由”を与えることを約束するのであった…。

そして、現在。GF内の応接間で対等に向かい合うピーターとグランマ・イザベラ。

今年のGFも素晴らしい飼育成績と収穫高であったことを語り合う二人。しかし、ピーターは品質重視の女王や五摂家が皆死亡したことを受けて今後はGFの様なハイコストハイリスクの生産ラインは撤廃し、そのうち全農園をΛ(ラムダ)型に一本化すると語る。その暁にはイザベラの身は本当に自由になると。

そして、ピーターはイザベラに『夜明けまでに脱走していた子供達を全員”摘み”終えて下さい』と要求する。恐らくエマ達は今晩中か明晩までに子供達を助けにやってくるからだ。すると、イザベラは笑顔で『畏まりました』と答えるのであった。

その頃、倉庫で縛られている子供達は沈み込んでいた。泣き続けるアンナ。ピーターにジェミマを人質にされて、エマが結んだ約束のことを話してしまったのだ。

すると、扉が開く。シスター達を引き連れたイザベラがやってきたのだ。

「おかえり私の可愛い子供達」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  87/224

そう言ってかつてと変わらない慈悲深い微笑みを浮かべてジェミマとアンナを抱きしめたイザベラ。その様子に思わずGF組の子供達は涙を流してしまい、『ナットの指の手当てをして』と懇願する。すると、イザベラはナットの手を見て『可哀想に…』と言うのであったが…。

イザベラは強引にナットの指を元の方向に矯正すると、痛みで呻くナットをよそに『これで目立たずにキレイに出荷できる』と笑う。

「さぁ!これから順次あなた達の”処理”を開始します」
「最初の10人を選びなさい」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  89/224

イザベラの言葉に絶望する子ども達。『今度こそ終わりだ…』と思った。

だが、突然倉庫の明かりが落ちる。GF内に侵入したエマ、レイ、ノーマン達がでGFの電源を落したのだ。

(感想)

イザベラがグランマになった経緯が明らかに。グランマ出荷されてしまったのか。いつも顔が隠された状態でその内素顔が明らかになると思ったのだけど、そんなことないまま死んでしまった…。

そして、相変わらずイザベラは迫力ある。

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第166話 ゴーバックホーム~侵入して子供達を助け出すエマ達…しかし、そのまま逃げださずになんとGFの占拠を試みる

GF侵入の三日前。予めアジトでGFの構造を確認したエマ達。連れ去られて子供達がいる場所、警備の具合を予測する。GFには元々盗難防止のための鬼の警備兵、シスター等の100人以上の人間職員がいる。その上、今はラートリー家と王兵2000がいるのだ。

そして、今朝GFに辿りついたエマ達は計画した通りに3手に別れる。

エマ、レイ、ノーマンの3人。オリバー、ザック、ジリアン、ドン、ギルダの5人。ヴィンセント、ナイジェル、ハヤト、大型食用児達。

「侵入後まずすべきは人質の奪還と安全確保」
「すみやかに地下2階第2備品庫を目指す」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  97/224

そう言ってそれぞれGFに侵入したのだ。

停電したもののピーターは全く動じていない。GFは停電してもすぐに予備電源に切り替わるのだ。一旦は暗闇になったものの、間もなく明かりがつく。倉庫にいる子供達も屈強な鬼達に囲まれている。『お手並み拝見』…ピーターは余裕に満ちた笑みを浮かべてそう呟く。

予備電源に切り替わろうとしたその刹那。真っ暗な倉庫の天井からザックとジリアンが飛び降りて来る。そして、閃光弾を投げ込んだのだ。

弱点である目が閃光で眩んだ鬼をオリバーが確実に仕留めて行く。そしてジリアンが子供達を連れ出す。

だが、先行して”摘まれる”こととなったナットやサンディ達10人は別室に連れて行かれていた。部屋の窓の外からナットたちが”摘まれる”様子を監視するイザベラ。部屋にはまさにガスが注入されようとしていた。

その時、エマ、ノーマン、レイが扉を銃撃して開けて助けに入って来た。一瞬、窓の外にいるイザベラと目が合った3人。イザベラの冷徹な眼差しに身が竦んだものの、すぐに睨み返しナットたちと共に逃げ出すのであった。

子供達を追おうとする鬼達。しかし、ピーターは『必要ない』と止める。GFの出口は既に全て塞いであり、王兵2000は外に配置している。エマ達の侵入も防げなかったのではなく、あえて侵入しやすいように誘導したというのだ。『どの道逃げられない』…そう言って笑うピーター。

ところが、エマ達は子供達を連れて在庫保管室に入るとなんと内側から錠をして立てこもってしまった。その報告を受けてピーターは驚く。

GFに侵入してもピーターは圧倒的な人員を使って退路を塞いでくる…そんなのはエマ達も予想済みだったのだ。だから、最初から逃げるつもりなんてなかったのだ。

「今からGF農園を占拠する!!」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  110/224

エマは笑ってそう宣言するのであった。

(感想)

逃げようがないならそこを占拠する…という発想がエマらしい。というよりもそもそも人間界に行くためにもどのみちGFに戻らなくてはいけなかったので、自然と言えば自然な流れである。

第167話 鬼さんこちら~ 見事な連携で鬼達を翻弄するエマ達…ピーターの居場所を尽き止めて向かう

逃げるどころか『GFを占拠する』と宣言したエマ達。

予想を裏切られたピーターは『どういうことだ?』と考える。立て籠もると言っても水も食料も無い。本部内の自分達や鬼達を殺すつもりだとしても、外には王兵だっている。GFを乗っ取って誰かに何かを要求するとも考えられない。

農園の責任者の鬼は『立て籠もったのは全員ではなく、目的は一部の仲間の確保と隔離に過ぎない』と推測する。すぐに戦闘力のある子供達が出て来て自分達鬼を殺して農園を奪おうとして来るに違いないと。保管室に閉じこもった子供達は後回しでいいから、侵入してきた子供たちを優先して始末すべきだと責任者の鬼は言う。

『見つけたら全員殺せ』と部下に命じる責任者の鬼。2年前の脱走劇で受けた屈辱を忘れておらず、最上級農園のプライドをかけて今度こそエマ達を潰そうと意気込んでいた。

「”鬼ごっこ”開始だ!」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  117/224

どこか笑みさえ浮かべながら保管室から飛び出してきたエマ、レイ、ノーマン、ジリアン、ドン、ギルダ。鬼達を銃撃で退けながらエマ、レイ、ノーマンとドン、ギルダ、ジリアンの二手に分かれる。モニターでその様子を確認した責任者の鬼はエマ達がいる地下2階に全階の兵を投入し、シャッターを閉じてエマ達を追い詰めた。

『行き止まりだ』とエマ達ににじり寄る鬼達。しかし、それに対してノーマンが『それはどうかな?』と満面の笑みを浮かべる。すると、閉じたはずのシャッターが開き始める。

「接続完了」
「敵制御室を乗っ取った」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  121/224

そう通信機を使ってノーマンに告げたのはナイジェルとハヤトと共に別行動していたヴィンセントだった。ヴィンセントはGFのシステムを乗っ取り遠隔操作をしているのだ。モニターの映像も見れる様になったヴィンセントはノーマンに敵の位置を伝える。ヴィンセントの説明から誰がどこにいてどんな状態なのか瞬時に理解したノーマンは一緒にいるエマとレイだけでなく、通信機を使って離れたところにいるジリアン、オリバー、ザック、ドン達にも正確な指示を出す。途中、ギルダが転んでしまい窮地に陥るが、アイシェが現れ助けるのであった。

子供達を追跡している鬼達は一向に捕まらないことに疑問と焦りを抱いていた。ナイジェルの手によって通信も妨害され連携を取る事も出来ない。

そんな中、監視カメラの映像を眺めていたヴィンセントが遂にピーターの姿を見つけた。ピーターは今、地下1階の応接室にいるという。

それを聞いたオリバー達は自分達が鬼を引き受けると言って、エマとノーマンとレイにピーターの所に向かう様に言う。3人は礼を言ってピーターがいる地下1階の応接室に向かうのであった。

そして、各自子供達を追いかけていたはずの鬼達はいつの間にか一か所に集まってしまう。『なんで全員?』と鬼達が驚いた次の瞬間には上からオリバー、ジリアン、ザック、ドン、ギルダからガス弾を投げ込まれて気絶してしまうのであった。

元々、エマ達は追いかけて来る鬼達を殺すつもりはなかった。『いちいち殺さなくても見張りの鬼達を一か所に集めて閉じ込めてしまえばいい』そう考えていたのだ。狙うのはただ一人、ピーター・ラートリーだけだと。鬼を閉じ込め終えたオリバー達は急いでエマ達の後を追うのであった。

第168話 創造主~ピーターにヴィンセント達が囚われてしまい窮地に陥る子供達…しかし、捕えられたヴィンセントはノーマン達に『戦え』と叫び…

システムジャックをしていたヴィンセント、ハヤト、ナイジェル、大型食用児達。しかし、農園の責任者の鬼達に居場所がバレてしまう。急いで撤退しないとと焦るハヤト。しかし、ヴィンセントは『まだだ』と言う。自分達がしくじってしまえば即敗北につながる。『仕事をやり切るまではこの場を離れられない』そう必死の表情を浮かべるヴィンセントにナイジェルも無言で頷き、ハヤトは困惑しながらも見守る。そして、GFをシステムダウンに追い込むのであった。

そして、その頃エマ、ノーマン、レイはピーターがいるという地下1階の応接室までやって来た。銃を構えながら扉を開けたエマ達。

しかし、応接室はもぬけの殻だった。

状況を確認するため通信機でヴィンセントに問いかけたノーマン。だが、応答したのはヴィンセントではなかった。

「やあノーマン久しぶりだね」
「やるじゃないか」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  137/224

その声の主はピーターであった。今までのΛ壊滅に女王、五摂家殺しと一連の行動を褒めながらも、ピーターは『僕達の方が一手早かった』と笑う。応接室の監視カメラの映像はダミーだったというのだ。

システムダウンさせるまで粘ったヴィンセント達は逃げ遅れ、今ピーター達に捕縛されていると言う。そして、応接室にいるエマ達の元、エマ達を追いかけていたジリアン達の元にもピーター家の者達が銃を構えてやって来る。

『君達の負けだ。鬼ごっこは終わり』と告げるピーター。今、ヴィンセントがダウンさせたシステムを復旧させている途中で、すぐに在庫保管室等にかけたロックも解除される。眠らせた鬼達のじきに目を覚ます…そう淡々と告げるピーター。

さらに『ソンジュとムジカは3日前に捕え、間もなく処刑される』『邪血で助けた民衆も全て殺した』と告げ、エマ達は激しく動揺する。

『今後は鬼社会の政権もラートリー家が指導する』『Λ農園も復活させる』とピーターは宣言する。今後は飼育監が手間と愛情を掛けて子供達を養育するGFの様な高級農園は廃止して、全てΛ型の農園に一本化すると言い、『今後は食用児に夢も希望の意思も未来も持たせない』と語る。それを”平和な楽園”と呼ぶピーターにエマ、ノーマン、レイは怒りと絶望で顔を歪ませる。

「礼を言おう 君達のおかげで世界は変わる―図らずも”僕の”望む未来にね」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  142/224

すると、ピーターの家臣がシステムの復旧を完了する。しかし、ロック解除が必要な状態でパスコードが三重に掛けられていた。

『外してみろ』と嘲笑う様に言うヴィンセント。ピーターにパスコードを言う様に銃を突き付けても当然答えようとしない。

そして、ヴィンセントは突然『ボス、皆、聞こえるか』と叫ぶ。ヴィンセントが掛けたパスコードは簡単には解けない。まだ時間も勝機もあるのだ、終わった訳ではないと。

「撃て!目の前の敵を倒し作戦を完遂しろ!私達に構うな!!」
「こいつらだけには未来(せかい)を渡してはいけない!!」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  145/224

そして、共に捕えられてしまったナイジェルに巻き込んでしまったことを詫びる。ナイジェルもまた覚悟したように笑って受け入れるのであった。

しかし、ヴィンセントのその叫びにノーマンがいち早く『いやだ!全員で生き残る』と叫び返す。

ヴィンセントは今までのノーマンと自身の関係を思い返し、『すまなかった』と心の中で呟く。Λで出会って共にΛを崩壊に導いた二人。しかし、ヴィンセントはずっとノーマンを神として崇めることで依存していたのだ。結局本当は怖くて、それでノーマンに甘えていただけに過ぎなかった。だからこそ、最後は友人としてノーマンを勝利に導きたい…そう強く願ったヴィンセントは叫んだ。

「これでいい!進め!!」
「ノーマン!!」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  146/224

だが、その瞬間ピーターがヴィンセントの身体を撃ち抜く。通信機越しに銃声を聞いたノーマンは蒼ざめる。

ピーターは心底疲れた様に『どいつもこいつも物分かりが悪くてウンザリする』と吐き捨てる。

「僕は食用児(おまえたち)の父」
「創造主(パパ)なんだぞ」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  148/224

憤慨したように言うピーター。

そもそも、農園やラートリー家がいなければ、食用児達は今ここに存在していない。食わせて育ててやったのに農園に歯向かったり逃げ出したり破壊しようとするなんて不敬にもほどがあると。食用児の一連の行動を”反抗期”と詰りながら激昂するピーターは縛られたまま自身を見つめて来るナイジェルの目を見て『敗北を認めていない』と更に憤る。

『もういい、全員殺せ』そう家来たちに命じようとしたピーター。だが、いつの間にか家来達は倒れていた。

「”パパ”?笑わせるな」
「お前は俺達の父親じゃない!!」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  150/224

そう言っては以後からピーターに銃を突きつけたのはオリバーだった。

(感想)

絶望的な展開が来たかと思えば、すぐに仲間達の機転の利いた行動で救われた。ラスト間近なこともあって展開が早い。それにしてもピーターが弁解の余地のないドクズ。レグラヴァリマの方がまだ好感持てる…。

ヴィンセントの行動、回想がグッとくる。ここで初めてノーマンと対等な存在になることができたヴィンセント。心なしか表情が若い。

そして、窮地に決めてくれたオリバーがただただ格好良い。

第169話 満点~オリバー達の活躍によってピーターを捕縛することに成功したエマ達…しかし、そこに銃を構えたイザベラ、ママ、シスター達が押し寄せて来て…

自分は創造主たるパパ…ピーターが騙る間にこっそりと周囲の家来達を倒し、ピーターの背後を取ったオリバー、ジリアン、ザック、アイシェ。

農園さえなければ家族や友達が喰われることもなく、GPの様な猟場が作られることはなかった…。ピーターのせいで多くが死に涙を流してきたのだ。それなのに『僕はお前達のパパだ』と平然と言ってのけるピーターにオリバーは強い怒りを燃やした。

“父親”?ふざけるな 俺の父親は 俺達の父親は―

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  156/224

自分達を愛し、生き方を教え、最期まで守ろうとしてくれたルーカスの顔を思い浮かべるオリバー。ピーターに銃を突き付けると『跪け』と叫ぶのであった。

そして、ドンとギルダが捕縛されたヴィンセントとナイジェル達の元に駆け寄る。銃で射抜かれたヴィンセントは大量に出血したものの生きており意識もしっかりしていた。ピーターはヴィンセントを撃つ際も儀程(グプナ)を出来なくなることを怖れて致命傷は避けたのだ。

実はピーター達に捕まる直前、ヴィンセントとナイジェルは一緒にいたハヤトに『先に行って退路の確保をしてくれ。もし俺達が逃げ遅れたらオリバー達と合流しろ』と指示をしていたのだ。

実際にヴィンセント達がピーターに捕まった際、ハヤトは激しく動揺したものの自身を鼓舞して指示通りオリバー達と合流したのだ。

ヴィンセントが生きているのを見て安心して涙を流したハヤト。エマ、ノーマン、レイも応接室にきたピーターの家臣を制圧するのであった。

ついにピーターを捕縛したエマ達。家臣も制圧し、農園の鬼達もまだ気絶している。孤立したピーターに子供達は銃を突きつける。

「お前の負けだ」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  164/224

そう言い放つノーマン。しかし、ピーターは『バカらしい』と笑い声さえ上げる。自分を殺しても君達には退路も勝ち目もないと嘲笑う。そして、エマが『誰もあなたを助けに来ない』と言うと『何か忘れていない?』と小馬鹿にした様に言う。

そのピーターの言葉にハッとして振り返るレイ。

そこにはいつの間にか銃を構えた大人数のママ・シスター達が居たのだ。彼女達はいつの間にかロックを外してここまでやって来たのだ。『このままではまずい』…そうエマ達が動揺したその時、シスター達の間を縫って銃を手にしたイザベラがエマの前にやって来た。

「お外は楽しかった?エマ」
「破壊の限りを尽くしたわね」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  169-170/224

そう言って微笑みながら銃口をエマに向けるイザベラ。

『どんなに抗っても最後は必ず絶望がやってくる』『それなのにあなた達は戻って来た。懲りずに戻って来た結果がこれだ』…イザベラはそう冷ややかに語った。そして…

「すばらしいわ あなた達全員 満点(フルスコア)よ」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  171/224

イザベラとママ、シスター達は何と銃口をピーターに向けたのだ。驚くエマ。ピーターも愕然として叫ぶのであった。

「貴様……裏切ったな イザベラ…!」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  172/224

(感想)

この展開は熱い。銃を構えるママ・シスター達が格好いい。今更だけど、この世界、大人がやたらガタイ良いよね…。単純に絵の癖なのかもしれないけど、シスター・ママになる人は屈強じゃなきゃ生き残れないのかな…。

第170話 共に~農園を裏切り、エマ達と共に闘う事を決めたイザベラとママ、シスター達

それはエマ達が侵入を開始する少し前のことだった。イザベラは突然、ママ、シスター達を全員召集したのだ。グランマ・イザベラからの緊急召集…ただ事ではないことを察して緊張するママ、シスター達にイザベラはもうすぐエマ達がこのGFに攻めこんでくること、ピーター・ラートリーがそれに備えていることを語り、笑顔でこう告げた。

「私は農園を裏切るわ」
「脱走者に荷担する あなた達の中に私とともに立ち上がる者はいる?」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  176/224

想像もしてなかったイザベラの言葉に動揺を隠せないママ、シスター達。『なんの冗談…』と呟く声を聞き逃さなかったイザベラは、『グランマになってからの1年と10か月ずっと、この時を待っていた』と語り始める。

前グランマ、サラは『この狭い農園で支配者側にしがみついて生き続けることこそが生きる道』とママやシスター達に説き続け、実際皆そうやって生きてきた。しかし、現実にはそのサラ自身があっけなく出荷されてしまったのだ。それについては『グランマの地位になってもミスをすれば裁かれ、その代わり自分にも平等にチャンスがある』と考える者もいるかもしれない。だが、

「違うわ」
「競って蹴落として頂点(グランマ)に登りつめてさえ」
「私達は家畜にすぎなかったのよ」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  177/224

イザベラのその言葉にママ、シスター達の圧し殺していた記憶や想いが溢れ出す。『生き残りたくば競え』…自分が生き残りたいがゆえに、他のシスター候補を蹴落とし、出荷に追いやるのは日常茶飯事。優しさを捨てきれなかった者は『もう耐えられない』と自ら出荷を選んだ。腹を痛め産んだ子はすぐに取り上げられ密かに涙を流した。『ママ、大好き』と何も知らずに慕ってきた子供の手を引いて“門”まで連れていった夜。

…本当は皆気付いていたのだ。自分達に与えられたのはチャンスなんてものではなく、“生き地獄”だということに。ただ、認められなかっただけなのだ。

ピーターからグランマに任命された日…喜んだように振る舞ったもののイザベラは内心激昂していた。自由と恐怖を交互に見せつけて支配しようとするピーターの手口に反吐が出た。しかし、いつかエマ達が必ず戻ってくると信じていたイザベラはその時のためにグランマに就任したのだ。
もう誰にも囚われない…そう決めたイザベラは既に一部のシスターを傘下にひき入れていたのだ。

「私はもう誰にも囚われない」
「あなた達は?」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  181/224

ハッキリそう宣言したイザベラは戸惑うママ・シスター達の前に大量の銃器を積んでいく。抜け駆けの密告をしたければ止めない。無理強いはしないから静観してても構わない。そう皆に言うイザベラ。しかし、『もし私と共に立ち上がるなら面白いものを見せてあげる』と不敵に笑う。

そのイザベラの言葉に迷っていた女性達も皆覚悟を決めて銃を手に取るのであった…。

そして、現在…イザベラとママ・シスター達はピーターを助けに来たように見せかけて、子供達と共にピーターに銃口を向けた。

怒り狂い『裏切ったな』と叫ぶピーターにイザベラは冷徹に『見ればわかるでしょ』と答える。『ママが味方?』と困惑する子ども達。エマも『ママ』と言ってイザベラに駆け寄るが、その拒絶するような背中を見て立ち止まってしまう。

…本当はイザベラもエマ達を『おかえり』『ごめんね』と言って抱きしめてやりたかった。しかし、エマには皮肉気な笑みを浮かべて『利害が一致しただけ、勘違いしないで』と突き放す。『ただこの生活に飽きて、ピーターのことが気に食わなかっただけ』と。

今までの自分の行いを許せないイザベラ。だから、エマ達に憎まれても構わない、”ママ”なんて呼ばなくてもいい…そう思って冷徹に振る舞っているのだ。

しかし、穏やかな表情で『ぶっ壊してやろうと思った』と述べるイザベラを見たエマは農園の制服を着た幼い少女が目の前に立っている気がした。そして、他のママ、シスター達にも少女の面影を見たエマは笑ってイザベラの横に立ち、こう言った。

「ありがとうお母さん(ママ)」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  189/224

そして、改めてピーターに向けて銃を構えるのであった。

子供達、そしてイザベラ達からも銃口を向けられたピーターは『食用児に負ける』と自身が本当に窮地に立っていることを理解した。その現実に耐えられなくなったピーターは奇声を上げると縄を解き、近くにいたシスターから銃を奪い取ると目の前のママ・シスター達に向けて乱射し、逃げ出す

自分が負けるなんて認められない、何かまだ手はあるはずだ…そう考えるピーターは必死の形相で駆け出すのであった…。

(感想)

ママ・シスター達へ蜂起を促すイザベラの言葉が重い、そして心に響く。シスター達の回想のシーンは自身が子持ちなこともあってか、少し目頭が熱くなってしまった。

…それにしても、誰だよ、ピーターの後ろ手縛った奴(本当に誰だ?)。あっさり解けたぞ、ちゃんと縛っておかないと!

第171話 敗北~ムジカとソンジュの窮地を救ったのはなんとレウウィス大公であった …鬼の支援を失ったピーターは最後にエマ達に一矢報いようと…

食用児達に敗北したことを受け入れられないピーターは半狂乱になってGFを走り回る。まだ勝機はあるはずだと、スマートホンで外にいる王兵に援軍を求めた。しかし、王兵の責任者は 外橋が爆破されたためすぐには向かえないと答える。

ヒステリックに『役立たずどもめ』と叫び通話を切るピーター。逃げても逃げてもママ、シスター達が追いかけてくる。女達の心臓のチップを作動させて殺そうにも、保管室の子供達を人質にするにもシステムを復旧させねばならない。

良い手が見つからずただ逃げるしかないピーター。すると、誰かからスマホに電話が掛かってくる。走りながら電話に出たピーター。そして、その電話の内容に愕然とするのであった…。

時間は今から少し前に遡る。

王都の広場ではムジカとソンジュが五摂家家臣団によって今まさに国賊として処刑されようとしていた。本当はムジカとソンジュこそが皆を救おうとしていたことを知っている、アウラとマウラ、そして下端の兵隊達は『どうしよう』と戸惑いながらその様子を眺めるしか出来なかった。

そのときだった。突然広場の後方から歓迎するような民衆のどよめきが起こる。何事かと驚くムジカ達。すると、

「おやおや」
「何をやっているのかね君達は」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  198-199/224

そう言いながら悠然と表れたのは、ペットのパウエルを肩に乗せたレウウィス大公であった。

秘密の猟場、GPで食用児狩に明け暮れた結果、事故(実際はエマ達と闘い破れた)で他の貴族達と共に死亡したと思われていたレウウィス大公(表向きは行方不明扱い)。レウウィスは五摂家がいないことを良いことに権威を振り回している家臣団を『私が留守にしている間に五摂家のイヌごときが偉くなったものだな』と睨みつける。そして、震え上がる家臣団を後目にソンジュに近づき『久しぶりだね』と笑いながら近づく。

そう、レウウィスはソンジュの兄だったのだ。

そして、レウウィスは突然ソンジュの首元を掻き切った。そして、その血を広場の民衆達に見せながら『これが病毒と忌み嫌われた邪血だ!』と叫ぶと、おもむろにグラスに血を注ぎ、飲み干したのであった。

その様子を見た民衆は悲鳴を上げる。だが、病毒であると言われている邪血を飲んでもレウウィスは元気なままで民衆にこう告げる。

「恐れることはない 邪血は断じて病毒などではない」
「あれは我が姉レグラヴァリマの出任せだ」
「寧ろ邪血とは鬼にとって奇跡の血」

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  204-205/224

そして、邪血を飲めば人肉を食らずとも対価を免れることができること、それなのにレグラヴァリマが人肉の供給によって民を支配できなくなることを怖れて邪血を持つ者達に国賊の汚名を着せて虐殺してきたことを明かす。

ショックを受ける民衆達にレウウィスは更に王家五摂家はとっくに邪血を取り入れて退化することのない身体を手に入れていたと語り、『”約束”以来の700年の間に起きた人肉の食糧難によって起きた民衆の退化と死は割けることが出来た苦しみと恐怖だった』と説明する。

以前も”邪血”を持つ者達は民を救おうとしたのに、王族と五摂家に捕えられ殺された。そして、今も五摂家家臣団と彼らに踊らされた民衆が”邪血”を殺そうとしている。そのことを『滑稽だ』と吐き捨てるレウウィス。

「”邪血(かれら)”を殺す?」
「この二人は賊どころか民を救わんとした英雄なのだぞ」 

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  206-207/224

自分達を救おうとする兄、レウウィスの行動に驚くソンジュ。レウウィスは確かに昔から農園や”約束”を忌み嫌っていたが、政治に興味を持たず遊びまわっていたのだ。それが何故今になってこのような行動を取るのかが理解できなかった。

レウウィスもそんな弟ソンジュの疑問を感じ取った様で、『らしくないだろうね』と言う。しかし、今まで面倒な政治を押し付けていた女王も五摂家も滅び、このままピーターの言いなりになってしまうと鬼社会は限界を迎えてしまうと語る。そして、『あとはなんとなく』と答えたレウウィスはGPで死闘を繰り広げたエマやユウゴ達の顔を思い浮かべるのであった

民衆に向かって『真の賊徒は亡き女王と五摂家、そして現政権である五摂家家臣団と農園だ』と叫ぶレウウィス。そして、ムジカとソンジュの処刑を取りやめるように命じる。レウウィスのその呼びかけに民衆は熱狂して答えるのであった…。

…スマートホンを通じて、王都のその状況を聞いたピーターはがっくりと膝をついた。農園だけでなく王都まで”敵”の手に落ちてしまった。もう打つ手は何もなかった。エマは鬼の頂点と新しい”約束”まで結んでいる。

僕が敗けた!!敗北した!!終わり―

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  210/224

その時だった。ピーターの目の前にエマが現れ、『動かないで』と銃を突きつける。見つかってしまったことに焦るピーターだったが、エマを見てあることを思いつく。

ジェミマを人質にとってアンナを脅し、エマが結んだ”約束”について聞き出していたピーター。エマは確かに鬼の頂点と”約束”を結んだものの、履行は保留にしてあるという。

今、まさに”約束”を結んだ本人であるエマが現れたことに内心ほくそ笑む。もう自分の敗北は確定しており、どんなにあがいたところで未来はない。しかし…。

でも こいつだ…
”エマ(こいつ)”さえ殺せば
”約束”はご破算
食用児(こいつら)の未来もブチ壊しだ!!

約束のネバーランド 19巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  212/224

そう考えたピーターは『僕の負けだから撃たないでくれ』と弱々しく笑いながらエマに近づくのであった…。

(感想)

ピーターに『鳥でも蝙蝠でも食って飛んでこいよ』と言われてカチンとする鬼に笑ってしまった。

そして、レウウィスが復活。そもそも前から実は生きている疑惑があったものの、ここ最近は存在を忘れていた…。

以下、感想と考察

クライマックスらしく、盛り上がり…いわゆる”エモい”シーン、セリフが多かった19巻。純粋に面白いよね。

ここに来て初めて対等な関係になれたノーマンとヴィンセント

まずは、ノーマンとヴィンセントの関係。以前からノーマンの事を神の様に崇め心酔するヴィンセントのことが色んな意味で心配だったのだけど、ここに来てそれが上手い事昇華された。今までの自身の歪みを認めた上で、カリスマと信者の関係ではなく、最後は友としてノーマンを勝利に導きたいと願ったヴィンセント。

『進め、ノーマン』と叫ぶシーンのヴィンセントは今までのどこかオッサン臭かったり、冷徹だったり、狂気じみていたりする表情とは違って、一番少年らしかった。ずっとボス呼びだったのがノーマンと名を対等に呼んだのがあつい。

ヴィンセントを見捨てることについて『嫌だ!』と叫ぶノーマンの表情からも”ボス”、”ミネヴァ”、”ジェームズ・ラートリー”ではなく、元のノーマンに戻った様子が窺えて良かった。そして、結局ヴィンセントも死なずに済んで良かった本当に。

オリバーと亡きルーカスの絆

自分のことを『パパ』だとか『創造主』だとかほざくピーターに対して、『お前なんか父親じゃない』と銃を突きつけたオリバーの格好良さと言ったら。

オリバー、戦闘力も高く性格も見た目も良い割りには、GP編が終わってからはそこまで深掘りされることもなく、またルーカスが死んでしまった際の感情表現も抑え気味だったのが気になっていた。まあ、それは我慢強い彼の性格もあってのことなのだろうけど。

だからこそ、ここに来て今までの怒りやルーカスへの想いが爆発した感じは良かった。

誰よりも“父親”をしていたルーカスを知っているオリバー(その他のGP組も)からしたらピーターの発言は噴飯もの。ラストが近づいているところで亡きルーカス(とユウゴ)の存在を感じられたのは嬉しい。

グランマとなったイザベラの再登場と蜂起が熱い

そんな感じで盛り上がる展開がてんこ盛りの19巻だったけど、一番熱いのはグランマとして再登場したイザベラとママ&シスターの蜂起だろう。

再登場時は子供達に冷酷な態度を取っていたイザベラだったが、内心ではエマ達が戻ってくるのをずっと待っており、ママ&シスター達と共にピーター・ラートリーに反旗を翻す。

ママ&シスター達にイザベラが反乱することを告げるシーンは胸が熱くなった。セリフ一つ一つが重い。ママやシスターそれぞれの想いや記憶のカットが彼女達の壮絶な人生を語っており、本当にグサグサ来た。

あのイザベラの演説を聞いてもなお、密告しようとしたり、逃げ出そうとなんて思えるやつはいないよね。

ちなみに、ピーターは『高級農園を廃止したら、君を自由にしてあげる』とイザベラに言ってたけど、欠片も信用できないよね…。実際、イザベラが裏切った時に『この食用児め』と悪態吐いていたし。

実は生きていたレウウィス大公について

あとは、まさかの復活を遂げたレウウィス大公。この人は悪役は悪役だけど、ピーターと違って格好いい矜持のある悪役だから好きだったので嬉しい。

『11巻でエマやユウゴ達と交戦の末、普通に死んでなかった』と思ってしまうところだけど、倒される直前走馬灯見たりして死んでいる様な描写はあるのだが、実は崩壊するGPを描いた11巻151ページ、血だまりとハットはあるものの、レウウィス大公の死体はペットのパウエルと共に姿を消しているんだよね。

あれかな?前巻18巻で『王族には核が2つある者がいる』と言われていたけど、レウウィス大公も女王レグラヴァリマと同じく核2つ持ちだったのかな?

そして、レウウィス大公がソンジュの兄だったことが判明。そういえば前から『王族』とは説明されていたけど、具体的な立レウウィスは以前から王族だと説明され、ソンジュも前巻で女王の弟だと説明はされていたけど、具体的な関係はは明らかにされていなかった。

唯一の王族の生き残り(ソンジュは除いて)であるレウウィス大公がムジカとソンジュ側についたことで鬼社会の未来は明るいものとなった。レウウィス大公相変わらずクレイジーだけど、エマ達との戦いを通して変わったようだし。でも、自らが王となることはしなさそうだな。

…アウラとマウラの両親を助けていてくれたりしないかなあ…。

まとめ~次巻、最終巻20巻の発売予定日10月2日

次がついに最終巻!本誌ではとっくに連載が終わっている。

最後に一発位ピーターが何かやらかしそう。そして、未だに明かされないエマが結んだ“約束”の内容。エマが何かしらの自己犠牲を選んでいるのではないかと心配になってしまう。レイの本当の誕生日だったり、ムジカからもらったペンダントだったりと、まだまだ回収されていない伏線も沢山。

10月までネタバレを食らわないように気を付けねば!

そして、実写映画化も12月18日に公開予定だし、それ以上に嬉しいのがPrimeVideoが実写ドラマかしてくれること。これが本当に楽しみなのだ。

アニメ2期目も2021年1月スタートだ!!漫画が終わってもしばらく楽しめそうだ!

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