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うえみは不倫、浮気を繰り返す夫と離婚することを考え始めるが、現実的な試算をすると、離婚後は金銭的に苦しく、子供達に色々と我慢をさせてしまうことが分かり戸惑う。そんな中、大学受験を控えるムスメが『芸能事務所のオーディションを受けたい』と言い出した。ムスメはダンスが好きで学校のダンス部に所属していたものの、理不尽なイジメに遭い退部を余儀なくされた過去があった。そんなムスメが明かした夢。うえみは全力で応援することに決めるが…。前の記事はこちら
→【漫画】マタしてもクロでした分冊版7(最新話)【感想・ネタバレ】イジメの辛い経験とダンスへの強い想い…ムスメの夢を聞いたうえみは応援することを決意する
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Contents
以下、各話あらすじ
第19話 いつか~オーディションに受かったムスメは夢に突き進む。そんなムスメに父親面して説教をかます夫の姿に怒りが止まらないうえみは…
その朝、うえみはマンションの郵便受けに入っていた一通の封書を見て、『キター』と冷や汗を流した。
ムスメが芸能事務所のオーディションに参加したいと言い出した時、本気で応援することにしたうえみ。しかし、オーディションは思いのほか、“完全に本気”なもので、ムスメ以外の応募者は既に舞台デビュー済みであったり、ティーンモデルだったりと、もう芸能界に慣れている少女ばかりだったのだ。一方、ムスメは演技経験等は一切ない素人だ。学校以外に居場所が出来ればと思って後押ししたうえみだったが、流石に無謀過ぎたのではないかと封書を持ったまま固まってしまう。すると、後ろからやって来たムスメが『何してるの?』と尋ね、『合否通知来たのね』とうえみの手から封書を取ると、あっさりとその場で開けてしまう。
中身を見たムスメはちらりとうえみを見ると、ため息を吐いて俯いてしまう。その様子にうえみは泣きそうになり思わず目を両手で覆うが…。
「ごーかーく」
マタしてもクロでした分冊版8 うえみあゆみ 4/32
頬を上気させてそう言ったムスメ。うえみは信じられずに『ホント!?』と震えるがムスメは本当にオーディションに合格していたのであった。
…
それから4か月後。他の合格者たちとレッスンに励むムスメは最近の学校の様子をうえみに話す。学校のダンス部で執拗にムスメを虐めてきたHちゃんとその取り巻き。しかし、今度はいじめのターゲットを取り巻きの一人に変え、その子は部活を辞めたいと泣いているというのだ。
驚き呆れながらもいじめを止められないHちゃんの親がどうか気付いて心のケアをしてあげられることを祈るうえみ。すると、ムスメが淡々と『イジメってくだらないね』『あんなところで頑張ってたんだと思うとゾッとする』と言い出した。
芸能事務所のレッスンは学校のダンス部と全然違うという。周囲の子たちはムスメたちよりも上手なのにサボらず互いに真剣に教え合う。先生も厳しくて無駄なおしゃべりも一切ないのだ。
そういう場所を経験した今のムスメには学校にいてもいじめっ子のHたちがすごく小さく見えるようになったと言う。そんな成長したムスメを見てうえみはそっと涙を流すのであった。
しかし、うえみは再び学校と対峙しなくてはならないこととなった。
ある日ムスメは芸能事務所から誓約書をもらって帰って来た。内容は今後オーディション等にポートフォリオを送ることを認めるというものであった。これを出せば今後エキストラ出演などをする機会があるという。
芸能事務所に入って間もないというのにもう活動することになるのかと驚くうえみ。しかし、ムスメは『でも校則で禁止されているし無理だよね』と残念そうな顔をする。ムスメの通っている学校は芸能活動を校則で禁じているのだ。
しかし、うえみは『ダンス部でいじめられて居場所を無くしたムスメを助けてくれたのは学校ではなかった。それなのに校則に従わなければならないのか』と納得がいかなかった。そのため、自身も学校のOGでもあるうえみはあることを思いつき実行するのであった…。
その週末、うえみはOGとしてプチ同窓会に参加していた。そこで今も教鞭を取っている恩師にムスメの芸能活動について相談したのだ。恩師は『担任には話した?』と尋ねて来たが、いじめの件での対応からしても相談はできそうにもないとうえみから聞くと、別の教師を呼び出した。その教師はうえみが高校生だったころに担任であり、今では学年主任と学部長を兼ねていた。その頃と変わらず面倒見の良い教師は『分かった、俺が何とかする』と言ってくれ、実際に翌週には特例で芸能活動の許可が下りたのであった。
無事に芸能活動への誓約書にサインできたうえみ。ムスメも喜び『頑張るね』と言って誓約書を受け取った。
だが、リビングでそのやり取りを見ていた夫が突然こう口を出してきたのだ。
「で…受験はどうするの?」
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「あなた高3だよね」
「もうすぐ夏なのにそんな事やってて良いの?」
そんな水を差すような発言をしてきた父親にムスメは冷静に塾にはしっかり通い、成績は落としていないと告げる。実際、ムスメは遅刻が多いため推薦枠は狙えないものの学業成績自体は優秀で平均評定は4.2なのだ。
だが、夫はなおも『受験は片手間にできるものではない、舐めてたら絶対に落ちる』とネガティブな発言をし、うえみを激怒させるのであった。
”全国夫埋め捨て会場”に夫を埋める妄想をして気持ちを収めたうえみだったが、ムスコは夫の先の言動について『急に父親ヅラして何様だよ』とゲームをしながらボソリと愚痴る。そんなムスコにうえみは『”親”というのは肩書に過ぎない。肩書に甘えて努力しない大人もいる。誰を尊敬するかは自分で決めて良い』と諭した。
すると、ムスコはこう言い出した。
「…じゃあ将来僕は自分の結婚式にあの人呼ばない」
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「お姉ちゃんが結婚する時もバージンロードは僕が一緒に歩く」
その言葉にうえみは『姉弟でバージンロード歩くとか泣けるね』と明るく答えるが、その可能性について真面目に考える。
夫は浮気相手がいない時期は普通に家に帰って来て、当然のようにうえみが作った夕飯を嬉しそうに食べる。妻の金銭的事情を見透かしている夫はこのままなあなあになれば良いとでも思っているのだろう…そううえみは考える。
しかし、夫のしてきたことは『いつかあんなこともあったね』と笑える日が来るようなものではないのだ。
うえみが想像するムスメの結婚式。それはウエディングドレスを身にまとった美しいムスメと大きくなったムスコが共にバージンロードを歩き、老いた自分が感動の涙を流すといった光景だ。
…そして、そこに夫の姿はない。
いつか…
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私達の一番幸せなシーンから削除される
そういう日が来るんだよ
うえみは密かにそう思うのであった。
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第20話 新しい器~夫と離婚した後の人生は孤独でわびしいものになるのではと心配するうえみだったが…
人生や心を器で例えるのであれば、夫と結婚した当初のうえみはキレイで空っぽなガラスの器で、そこに何を入れるか楽しみにしていたと言えるだろう。だが、期待通りに物事は進まなかった。
15年前。まだ若かったうえみは夫に保険のことを相談した。既に複数の保険会社のプランを見比べて候補を絞ったり営業マンを呼んで説明を受けたりしていたうえみだったが、自信がなかったため夫にも見て欲しかったのだ。
しかし、仕事で疲れて帰って来た夫はコタツに寝転がってテレビを見たまま冷たく『先に言うことないの?』とだけ言う。夫が機嫌を損ねたことにすぐに気付いたうえみは『疲れているのにごめんね』と謝るも『忘れてしまう前に話しておきたい』『私たちは何も保険に入っていないからそろそろ入っておいた方が良いと思う』と切実に訴えた。
すると、夫が振り向いたためうえみは喜んで話し始めようとした。しかし、夫はこういうのであった。
「調べるだけならバカでもできるよね?」
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夫の言葉に固まったうえみ。そう、最初に器に溜まったのは”小さな怒り”であったのだ。
その後もうえみは夫の言動に小さな怒りを少しずつ溜めていった。そして、そんなうえみが別れ話を持ち出すと夫は『今まで俺が払った家賃や光熱費を半分払ってね。俺が飼った家電も全部折半。払えるならいいけど。』と小ばかにしたように笑った。夫のこの言葉は典型的な経済ハラスメントで本来婚姻期間中の家計については離婚しても返還義務はない。しかし、若かったうえみは夫に言い返すことができなかった。
そして、そんな”小さな怒り”の水滴ばかりが溜まり溜まって器を満たしてしまったのだ。
…時は流れ現在。その日、食卓ではムスコの成績表が話題になった。『貰ってきたけどあんまり期待しないで』と気まずそうにするムスコ。頑張った割にはあまり良い結果ではなかったのだ。すると、ムシャムシャとカレーを頬張っていた夫が突然『原因はゲームだろ』と断じて、没収するからゲームを差し出せと言い出したのだ。
『何で急にそうなるの?』と抗議するムスコに夫は『誰が学費を払ってると思ってるわけ、バカなの?』『高校は義務教育じゃないから働くか?働くなら生活費は払ってもらうよ?』と薄笑いを浮かべながら言う。
すると、黙って聞いていたうえみは激怒し夫を黙らせ、『一言もしゃべるな』という紙を背中に張り付けて食器洗いをさせるのであった。
夫はそんなうえみに『何で急にキレたの?』と困惑していたが、うえみからするとそれは急にでも何でもなかった。怒りがたまり続けたうえみの器は常にあふれる寸前で、結果的にほんの少し怒りの水滴が加わっただけですぐにこぼれてしまうのだ。特に『バカなの?』や経済状況を盾に相手を追い込む、そんな過去に言われた言葉に近いものを聞くとその時のことを思い出してカッとなってしまうのだ。
夫と離婚するまでこんな精神状態が続くであろうことにうんざりした気分で仕事をするうえみ。しかし、離婚すれば自由になれるのだから今は我慢しよう…そう考えるのであった。
すると、子供たちが突然『ママも終活ってやる?』と聞いてきた。丁度テレビで終活が取り上げられていたのだ。そこではやっておきたいことを書き出す、エンディングノートを用意するといったことが提案されており、まだ40代のうえみは『今の状態で精いっぱいでそんな先の話は考えていられない』と最初は思った。
だが、『あれ?』と気付く。”今”だけでなく夫と結婚して以来、20代30代とずっと精神的に追い詰められ続けており、気持ちが自由になったことなんてないのだ。
自由になった時、打ち込める趣味は?
マタしてもクロでした分冊版8 うえみあゆみ 28-29/32
欲しい物とか食べたい物とか行ってみたい場所…
離婚以外の―
やりたい事は?
テレビでは老女が『やりたいことが沢山ある』と嬉しそうに書き出していた。しかし、今のうえみは離婚すること、子供たちを無事に育て上げることが目標で他に何もないのだ。その頃には50代になっているであろううえみ。そうしたら、趣味もなく恋人もいないただのおばさん…それも自由になるのではなく、ただ孤独になるだけではないかと不安になる。結婚に失敗すると結婚生活意外にも色々なものを失ってしまうと実感するうえみ。特に離婚を先延ばししたことを『残された時間は少ないのに』と後悔する。そして、今の自分には離婚以外のことを考える余裕はないと思いながらも、テレビの真似をしてやりたいことを紙に書き出してみるのであった…。
…1時間後、うえみは驚いていた。離婚以外に何も考えられないと思っていたうえみだったが、やってみるとやりたいことは沢山あり、紙は文字でびっしりと埋まっていた。沖縄への移住、習い事、読んでみたい漫画、会いたい友達、新しい趣味…紙には希望があふれていた。
そして、いつの間にかうえみの心の中には新しいピカピカの器が出来ていた。その器はこれから自分が何で満たされるかを楽しみに心待ちにしているのであった…。
以下、感想と考察
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家族をないがしろにした報いは必ず来る
今回も夫ムカつくな…。以前からの話やカマかけとかでも感じるけど、この夫は頭の回転は速いのだろうけど、他者への配慮や思いやりといったものがないのだろう。ムスメの芸能活動と受験の掛け持ちについて苦言を呈するのだって、ムスメの心身や将来のことをキチンと心配して親身に言っているのだったら響くのだろうけど、この夫の場合はどこか他人事で一般論から抜け出せておらず、ただ嫌味を言いたいから言っただけなのが丸わかり。作者も浮気云々よりも夫のこういった性質に一番苦しめられてきたのではないか?
それにしてもムスメちゃん、受験勉強しながら芸能活動もするって相当すごいと思う。強靭な精神力が無ければできないことだろう。
しかし、夫は家族に対してこんな言動を繰り返してかつ何度も不倫しておいて自分が家族の一員のつもりでいるのが呆れる。妻やムスコ、そして以前は味方になってくれていたムスメも冷ややかな目を向けてきているのに気づかないのだろうか。
今後、ムスメムスコが結婚したときに式に呼んでもらえないかもしれないし、その後の幸せな場面から削除されるかもしれない。どの程度か分からないけどそんな報いを必ず受ける。それを想像すらできず、その時が来たら『どうして!?』と狼狽える…それは酷く滑稽で哀れなことだろう。
秀逸な器の例と、未来への展望
そして、20話。器の例がとてもいいな。夫との生活がいかに苦悩に満ちていたものかも分かるし、そしてすぐに激昂してしまう理由も説明できている。西原理恵子氏の『パーマネント野ばら』でも『女の怒りは定期預金』というセリフがあったけど、うえみあゆみ氏の怒りは表面張力で何とか水がこぼれているのを常に耐えている状態で、頻繁にこぼれる…つまり怒りが爆発してしまう状態なのだ。そして、その時こぼれてもまたすぐに溜まってしまうのでキレることを繰り返してしまうと。
そんな中で、唐突に”終活”を意識することになったうえみ氏は自身の目標が夫と離婚することばかりで、今までの結婚生活が不毛なこと、そしてそんな生活を送ってきた自分が趣味も何もないことに絶望しかけるのだけど…書き出してみたら意外にもやりたいことや希望が満ち溢れていることに気付くという。とても前向きな内容だった。
何を始めるにも遅い事はないし、一時的に鬱屈としていても書き出してみれば意外と誰しも些細な夢や希望はあるものなのだろう。救われる話で良かった…。