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→【漫画】不倫サレて離婚しました。1話【感想・ネタバレ・考察】『不倫サレ日記』の続編…不倫されて離婚した、その後を描く
テレビのニュース番組を見ると、毎日どこかしらで事件事故が起こっており、何らかの異常気象・天災が報じられ、政治家が誰かしら批判されている。そして、大体誰かしら芸能人(たまに政治家)の不倫が報じられている。私は事件事故等の報道に比べて芸能ニュースにはあまり関心がないのだが、毎月、あるいは毎週、有名人は誰か不倫しているような気がする。どれくらいの期間報じられ、どのような論調で責められるかは、その当人の人望とキャラクターと認知度とその時の世間の空気によって大分異なるが、『もしかして不倫って持ち回り当番制なんじゃないか』と錯覚してしまう位頻繁で、『よくある珍しくもないこと』と世間的にも認識されている。
若い頃『不倫』は芸能ニュースや創作の中にあるべき非日常のとんでもないもので、決して身近なものではない、いや、身近であってはならないものだと思っていた(と言いつつ、私の祖父には愛人がいたらしいが)。
だが、アラサーにもなると、『あいつの彼氏既婚者らしいよ』と『あいつレーシックしたらしいよ』位の気安さで『不倫』を耳にする様になってきた。『不倫』は決してフィクションではなくノンフィクション…『よくあること』でゴキブリの様に日常生活に潜んでいるのである。
しかし、『不倫する者』がいるということは、『不倫される者』がいることを意味する。そんな『サレた側』のリアルを描いたのが、この『不倫サレ日記。~結婚9年目で33歳子なし兼業主婦が不倫されてみた』である。これは作者であるななしなあめ子氏の実体験を綴ったノンフィクション漫画である。
書いていたら長くなったので、こちらの記事では感想と考察を主に書き、詳細なあらすじ、ネタバレは次の記事で書いていきたい。
詳細なあらすじ、ネタバレ記事はこちら
→【漫画】不倫サレ日記。~結婚9年目で33歳子なし兼業主婦が不倫されてみた【詳細なあらすじ・ネタバレ】~日常が崩壊する様を綴ったノンフィクション
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→【漫画】不倫サレて離婚しました。1話【感想・ネタバレ・考察】『不倫サレ日記』の続編…不倫されて離婚した、その後を描く
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Contents
あらすじ
『離婚しよう』『こんな生活続けてても不毛だろ』
交際8年、結婚してから9年目…兼業主婦のあめ子はある日突然夫から一方的に離婚を告げられた。当初はただ困惑していたあめ子だったが、夫の携帯を覗き見て、LINEのやり取りから夫が不倫をしていたことを知る。
その相手は夫の会社で受付嬢をしている20歳の小林小春…自称『きゃりーちゃん』であった。『夫が一回り以上年下の女と不倫している』という事実にショックを受け、憤るあめ子。しかし、『離婚』『再構築』『別居』…自分が今後どういった行動を取るべきなのか分からず苦悩する。
悩んだあめ子は親友のモエに相談し、そこで『夫の不倫に気付かないふりをしつつ、泳がせて不倫の証拠を集める』ことを決め、二人で夫の不倫の証拠を地道に集めていく。しかし、その最中、あめ子は夫の心無い言動によるストレスから体調を崩し、倒れてしまう。さらにモエと共に一生懸命集めた証拠の数々も弁護士からは『法廷で戦うには証拠として弱い』と言われてしまう。悩んだ末、あめ子は信頼する義兄夫婦(夫の兄夫婦)に夫の不倫を打ち明け、相談。その結果、義兄が夫を叱り、説得して、あめ子は夫と『きゃりーちゃん』と話し合うことになるのであったが…。
以下、感想・考察
諸事情差し引いても酷過ぎる、不倫夫の言動
まず、真っ先に出てくる感想は『この夫、クソ過ぎる』というものである。
この作品はノンフィクションであるが、不倫『サレ』た側のあめ子の目線のみで語られている。なので、どうしても作者であるあめ子に都合の良い描かれ方をされているだろうし、作中に描かれていない事情も沢山あるだろう。しかし、そういった点を差し引いても、この夫は酷過ぎるのだ。
まず、不倫しているという事実を隠して、あめ子に離婚を迫る。…まあ、それは浮気・不倫した者の常套手段とも言えるだろう。しかし、それに加えて、
- 話し合いもせずに一方的にあめ子に家を出ていくように迫り続ける
- 子どもを欲しがっていたあめ子に対して35歳になったら一人子どもを作ろうと約束していたことについて『離婚するのだから子どもを作らなくてよかっただろ』『手遅れになる前に(出産できなくなる前に)離婚できてよかっただろ』と笑いながら言う
- 上記の様な夫の言動に、食事もとれず不眠症になり、髪も抜けるようになった挙句、不正出血で倒れてしまい病院で治療を受け、その後家で安静にしていたあめ子に『ここにいるってことは大丈夫なんだろ』とやはり薄笑いしながら言い放つ
…サイコパスかな?まさに鬼畜。不倫に走り、『きゃりーちゃん』の事しか頭に無く、妻であるあめ子が邪魔で仕方がないと感じているのだろうが、それにしても酷過ぎる。作中、あめ子の友人のモエが『不倫したことで夫は20代のバカな不倫相手と同じレベルまで落ちてしまっている』と分析し、あめ子も『前はこんな人ではなかった』と述べている。
しかし、私はこの夫、不倫する前から結構モラハラ気質のある嫌な男だったのではないかと思ってしまう。
というのも、後半、 義兄夫婦(夫の兄夫婦)があめ子の味方となり、義兄から叱られたことで不倫を認めた夫はあめ子に対して『不倫した理由』『あめ子から気持ちが離れた理由』を語るのだが、それがまた、酷いものなのだ。
『いびきがうるさいと言われるのが嫌だった』『韓流ドラマにはまったのが嫌だった』はまだマシな方。『誕生日を忘れられたのが嫌で、それが離婚しようとしたきっかけだ』と自分自身もあめ子の誕生日を何度もすっぽかしたことがある癖に平然と言ってのけるのだ。
さらに夫は『あめ子はいつも忙しそうにしていてペースが合わない』と言うのだが、あめ子が忙しいのは夫のせいだ。何故なら、この夫、家事を全くしなかったのだ。その癖、あめ子が手伝って欲しいと言うと『努力が足りない』と何故か上から目線で意味不明な説教(しかも会社の研修の受け売り)をかましてくる。あめ子の親が入院して大変な時も労わりすらせず、『俺は俺で頑張ってるんだから、お前はお前で頑張れ』と言い放つ。あめ子はそんな夫に期待することを諦め、夫の前で二度と弱音を吐かないと決めていたのである。
…うん、やっぱりこの夫、クズだわ。
おまけマンガであめ子自身も述べているが、きっと結婚した当初や付き合ったころはそんな酷い人間ではなかったのだろう。付き合って8年、結婚して9年という歳月が彼の人間性をここまで腐らせてしまったのだろうか。だとしたら、恐ろしい。
『誠意を求める』という行為の不毛さ
『離婚』『再構築』『別居』『慰謝料請求』等と色々な選択肢がある中で最終的にあめ子が求めることは『夫との再構築』と『不倫相手への慰謝料請求』そして、『夫と不倫相手の誠意』…つまり不倫した二人の謝罪と反省であった。しかし、これが果たされることはなく、これを求めてしまうがゆえに、あめ子は苦しむことになるのだ。集めた証拠が法廷で戦うには弱いものであったこと、義兄夫婦(夫の兄夫婦)が全面的に味方になってくれたことから、義兄立ち合いの元、夫の不倫相手『きゃりーちゃん』を呼び出して直接話し合うことにしたあめ子。しかし、そのシーンがこれまた酷いのだ。
夫の不倫相手の『きゃりーちゃん』はあめ子に対してそこまで好戦的な訳ではない。あめ子が話し合いのために呼び出した際も、『あんたに魅力が無いのが悪いのよ』『私の方が彼を愛している』的なことを少なくとも正面切っては言ってこない。ひたすら受け身でぼんやりしており、どちらかというと怖じ気付いた様な態度を取り続ける(その場にあめ子だけでなく、夫の兄夫婦も同席していたから…というのもあるかもしれないが)。そして、『きゃりーちゃん』はあめ子の慰謝料の請求に応じるといい、お金も持ってくるのだ。
しかし、彼女が反省をしていて、あめ子に対して罪の意識を持っているかというと、全くそんなことはないのだ。彼女は『自分達が悪いことをした』『あめ子を傷付けた』ということを理解しておらず、ただ、あめ子達が怒って責めてくるのが怖いから、とりあえず謝罪のポーズを取っているだけなのだ。幼児並、いや幼児以下だ。そして、さっさと難を逃れたいからお金を用意する、そして、そのお金はなんと金融機関に借りてきたのだという。
この後先考えない、ナチュラルに頭が悪い感じが本当に怖い。『若さゆえの無謀』とかそういうレベルではないのだ。
そんな感じだから、あめ子や夫の兄が何を言っても響かない、理解しない。それゆえ、あめ子は『きゃりーちゃん』とまともに対話もできなければ、怒りをぶつけることも満足にできない。本当に話にならない。会話のキャッチボールができない。だって投げた球を取ろうともしなければ拾ってもくれないのだ。まだ『女として魅力の無い奥さんが悪いんですよ!』みたいに挑発された方がマシだったかもしれない。会話のキャッチボールはともかく、ドッジボール位はできそうだから。
これが何を表しているかというと、『誠意を求めるという行為が不毛である』ということに尽きるだろう。
『自分達がした行為がいかに妻である自分を傷付けたか理解し、反省し、謝罪してほしい』というあめ子の請求は至極真っ当なものだ。その考えはよく理解できる。が、しかし、前述した夫や『きゃりーちゃん』は元々か、それか長きに渡る不倫の結果か、頭のネジが数本吹っ飛んでしまっている。『真実の愛(笑)』に浸り、互いしか見えていない…要はラリっているのだ。だから『何が悪かったか』なんて反省することはない。だから慰謝料をむしりとったり、その他の社会的制裁は課せられるかもしれないが、『誠意ある謝罪と反省』だけはどんなに叩いたって出てこない。
だって、そもそも誠意のある人間は不倫なんてしないのだ。夫と『きゃりーちゃん』の中には『誠意』なんてものは欠片も入っていない。嫌な言い方になってしまうが無いものを求めても仕方がない、不毛でしかないのだろう。
気持ちは簡単に断ち切れない~ 『サレ』の心に残る傷
前述したように夫はクズ、そしてその不倫相手の『きゃりーちゃん』は救いようのないバカ。あめ子はそんな二人に対して怒ったり、ドン引きしたり、気持ち悪さのあまり嘔吐したりする。そして、夫に対しては不倫する前と後では別人のように変わってしまったと評価している。しかし、それなのに。それなのに、あめ子は夫と離婚したくない、『再構築』したいと最後の最後まで望み続けるのだ。
これには『え、なんで?意味が分からない』と思う読者も多いのではないか。夫に対して怒り、ときに何度もぶん殴ったりしておきながらも『ごめんなさい』『悪いところを直すから』『もう一度やり直させて』と泣いてすがるあめ子。そして、その度夫はそんなあめ子に対して『お前とはもう無理だ』とハッキリ言い続けている。読者もこのときばかりは『うん、無理だろ』と夫に共感せざるをえないのだ。
しかし、あめ子は現実が見えていない訳ではない。むしろ誰よりも『もう夫の心が戻ってくることはない』ということをよく理解している。しかし、それでも夫への気持ちを断ち切ることができないのだ。何故なら、夫のことを何だかんだと深く愛していたから。もちろん、同じような状況に置かれても、スッキリサッパリと相手への未練を断ち切れる人だって沢山いるだろう。しかし、あめ子はそうではない。それだけだ。周りが何て言おうと人の気持ちや感情は中々変えられない。夫への未練は簡単に消せない。みんながみんな『不倫した夫に早々見切りをつけて制裁を加えて、しっかり解決、高笑い』なんて2ちゃんのまとめ記事の様に行くわけではない。現実はスカッとジャパンの様にはいかないのだ。
そして、あめ子の苦悩は離婚後も続く。離婚しても共通の友人がいたりするため、完全に縁を断ちきることはできない(17年も一緒にいたのだから尚更)。そして、それ以上に『不倫された悔しさと恥ずかしさ』に押し潰されそうになるのだ。何故なら世間は『サレ』た側に対して、『可哀想、捨てられた』と憐れみの目を向け、『お前にわるいところがあったから』と根拠なく責めてくるからだ。
なんと、このマンガは当初、遺書として描きだしたものだという。そして、あめ子はこのマンガの公開後に、夫の実家の前で焼身自殺をする予定だったのだ。このことからもどれほどあめ子が苦しんでいたか分かるだろう。
周囲の人間に支えられたあめ子…親友モエとの友情物語としても読める
しかし、そんなあめ子は苦しみながらも少しずつ立ち直っていける。それは周囲の人間の支え、特に共に夫の不倫の証拠集めをしてくれた親友モエの存在があったからだ。 この、親友モエの『陽のエネルギー』が凄いのだ。
モエ自身もまた、夫に不倫された挙句、モエが原因の性格の不一致という理由で離婚された経験がある。当初、夫の不倫を打ち明けたとき、あめ子は『モエみたいにできない』と捉えようによっては失礼なことを言っているのだが、誰よりも不倫された者の怒りと苦しみを理解するモエは、あめ子に寄り添い温かい言葉を掛ける。そして、自身の経験からあめ子に適切な助言をし、あめ子の夫と『きゃりーちゃん』を車で追跡し続け証拠を集める。そして、離婚後も不安定なあめ子を支え続けるのだ。離婚後、もう恋や結婚ができそうにないと語るあめ子に対して笑顔でモエは言う。
「大丈夫、私達はまた恋できるよ、何度でも」
不倫サレ日記。 結婚9年目で33歳子なし兼業主婦が不倫されてみた ななしなあめ子 219/224
あとがきであめ子自身も述べているが、この、作品は『あめ子と親友モエの友情の記録』という側面もあるだろう。
また、義兄夫婦が全面的にあめ子の味方になってくれたのも大きな救いとなっている。身内だから…と不倫した実弟を甘やかすことをせず叱り、話し合いの場を設けてくれた義兄。多分、これがなかったら夫は不倫の事実を認めず、あめ子は調停まで争うことになった可能性もある。また、あめ子の気持ちに寄り添い、離婚後姻族関係が無くなっても心配して様子を見に来てくれる義兄嫁。彼らの存在が読者にとっても救いになる。不倫騒動中にあめ子が自暴自棄にならずに済み、また離婚後も生きていけたのは彼らの支えがあったからなのだ。
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まとめ~すっきりしないところがリアル。そして『よくあること』と片付ける是非
この作品は作者であるななしあめ子氏の実体験を元にしたノンフィクションだ。リアルだ。それゆえに、不倫した夫と相手の『きゃりーちゃん』のクズさ加減、バカっぽさも『あ、いるわこういう人たち…』と身近に感じられる。そして、主人公はそんな不倫夫に最後まですがり続けるし、スカッとした結末を迎えるわけではない。主人公が勝利した…とは到底言い難いのである。
私個人としてはそこにリアリティを感じるし、作品として面白いと感じるのだが、『スカッとしない終わり方は嫌だ』『不倫夫と相手の女に痛い目を見て欲しい』と強く願う人は、どこかの家庭版のまとめサイトのオススメ記事とかを読んだ方が楽しめるし、精神的に良いと思われる。
そして、作中何度も出てくる『これはよくある話』というフレーズ。実際、不倫はよくある話で、作中あめ子も離婚後体調を崩した際に診てくれた女医と看護師から『私も不倫されて離婚した』『よくある話』と言われる。
『よくある話』…その言葉は慰めとしても使われる場合がある。『よくあること、みんな体験している事。だから、大したことない。気に病むな』と。 その言葉を慰めとして口に出す側には悪意はないのだろう。しかし、一方でこの言葉は不倫という行為を矮小化抽象化、ひいては正当化してしまっているとも言える。人が人を傷つける行為を『よくあることだから』と片付けるのはおかしい。
確かに不倫しているやつなんてごまんといる。世間から見たら珍しくもなんともない話だ。しかし、『サレ』た側からすれば、そんな風に一まとめにされ無視されるのなんてたまったもんじゃないだろう。だからこそ、ラストのあめ子のこの叫びが光るのだ。
『よくあってたまるか!!』
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