【映画 バード・ボックス】崩壊する世界で子どもに向き合う時~そして、母となる【感想・ネタバレ】


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Netflix作品と既存の映画作品の違いは何だろう・・・。そう考えてしまう位、映像、内容ともにクオリティの高い作品である。・・・このままこのクオリティの作品が Netflix で配信され続けるなら、もう映画館とかいらなくなるんじゃないかと思ったり。最近TVでもちょくちょくCMを流しており、また Netflix 内での予告が面白そうだったので視聴。

原題:Bird Box 
製作国:アメリカ(2018年)
監督:スサンネ・ビア
脚本:エリック・ハイセラー
主演:サンドラ・ブロック

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Contents

あらすじ

「どんな時でも絶対に目隠しを取らないこと。目を開けたら死んじゃうの」

荒廃した世界、マロリー(サンドラ・ブロック)は幼い子ども二人にそう言い聞かせる。そして、ある場所に行くため、目隠しをしたまま二人の子どもを連れ、ボートで川を下るという厳しく無謀な旅路を行くのであった・・・。

・・・5年前。子どもを身籠っていたマロリーは厭世的な画家で、他国で起こっている集団パニック、集団自殺の報道にも無関心。そして、自身の妊娠やお腹の子に向き合うことも出来ていなかった。心配した妹に付き添われ病院へ検診へ行った帰り、周囲の状態が次第におかしくなっていく。突然自傷行為に走る人々、多発する事故、燃え上がる街並み・・・マロリーは命からがらある一軒家に逃げ込むのだが・・・。

以下、見どころの紹介&感想・考察(少しだけネタバレあり)

2つの脅威

この異常現象には2つの大きな脅威がある。
1、見たら即死の「何か」
2、精神異常者
この驚異の組み合わせが絶妙で、作中の緊張感が緩むことはない。

見たら即死の「何か」

この「何か」こそ、世界滅亡を引き起こした元凶である。突風の様にやってくるそれは目で(ガラス越しでも画面越しでも)見たら最期、自殺衝動にかられて死んでしまうのだ。何せ見たら即死なので、「何か」の正体はよく分からない。ただ、言えるのは「何か」人によって異なった姿に見え、亡き母親であったり、笑顔で「悪くない」と評されるなど、何か素晴らしいものに見えるということ。この「何か」から逃れるため、生き残った人々は、外では目隠しをし、室内でも窓に目張りをする等、相当に制限された生活を余儀なくされる。

精神異常者

そして、「何か」以上に厄介なのが、この精神異常者である。元々精神に異常をきたしていた彼等は「何か」を見ても自殺衝動が起こさず、死なない。しかし、その代わり「何か」に魅いられてしまう彼等は「皆も見るべきだ」と一般人に善意をもって、無理矢理「何か」を見せようとしてくる。目隠しをせずに行動できる精神異常者達に対して、一般人は圧倒的に不利であるため、相当な脅威になるのである。

この2つの脅威のため、生き延びるために、忍耐と知恵と工夫が必要になってくるのだ。

丁寧に描かれる人間ドラマ

見知らぬ他人との共同生活

本作品は生き残った人々の関係が丹念に描かれている。混乱の最中、とりあえず一軒家に逃げ込んで来た人々は、人種も年齢も立場もバラバラの見知らぬ他人同士。一向に状況は判然としない上、皆、愛する人と離れ離れ、あるいは目前で失ったばかりというストレスフルな状態で、ひたすらピリピリした空気が続く。
現実の災害でも、災害そのものは勿論だが、それ以上にその後の避難所生活が辛いと語る人は多い。登場人物たちの距離感にリアリティがある。
生き残るためにはお互いに信頼し助け合わねばならない・・・が、そうそう簡単に分かり合えるものではない。ある程度の考えの違いを受容し、衝突し、なだめすかし合いながら少しずつ関係を築いていくしかないのだ。

信じることも難しいが、疑い続けることも同じくらい難しい

しかし、そんな彼らの共同生活は定期的に現れる「外から助けを求める者」の存在によって揺さぶりをかけられる。
当初、外の人間を受け入れることの懸念材料は「扉を開けなければならないリスク」「食料の保全」位のものであったが、上記の「精神異常者」の存在に気付いてからは、「招き入れる人間の選択を誤る=死」ということを悟り、生き残った人々により大きな緊張が走る。実際、そのことで犠牲者も出してしまう。
では、彼らは猜疑心の塊と化して外の人間を受け入れなくなったかというと・・・意外なことにそうはならないのだ。
何故なら、「疑う」という行為は結構なストレスを伴う。既に皆、疲弊しきった状態だ。更に場を緊張させることは望んでいないのだ。「疑いたくない、他人を信頼したい」と皆が無意識に思っている中、1人、利己主義と自己防衛本能の権化とでもいうべき人物がいるのだが、彼を見ていればそれを保つには強靭な精神力が必要であることが分かる。生き残り達の中でもかなり慎重な方のマロリーでさえも猜疑心を持ち続けることに耐えられない。「善良かもしれない人」を見捨てる罪悪感に苦しんだり、疑い続けて神経を磨り減らすよりは、音楽を聴きながら語り合って「やっぱりコイツはいい奴だった」と思う方が心理的にかなり楽なのだ。
信頼することの難しさは語られることが多いが、疑うことの難しさは普段注目されない。これ、建前が強くて「他人から良い人と評価されたい」という気持ちが強い日本だったら、尚更どうなるのだろう…と考えてしまう。

マロリーと子ども達の関係

5年後の世界。子ども二人にちゃんとした名前を付けずにボーイ、ガールと呼び続けるマロリー。彼女は二人に愛情を持っていない訳ではない。責任感を持ち大切に育てている。彼等の将来を考え、理想と現実の狭間で教育方針に思い悩む。しかし、異常でいつお互いを失うか分からない 世界でマロリーは子ども達への愛情の示し方が分からない。そして未だに母親になることを受け入れられず、どこか距離を取ろうとしてしまう。

そして、特にガールとの関係が複雑だ。マロリーがガールにやや厳しく接してしまうのは、何も彼女が実子ではないからという、そんな単純な理由だけではない。同じ日に生まれたボーイが幼く素直にマロリーの言い付けを守るのに対して、性差もあってか、ガールの態度はやや大人びていて、自分なりに物事を考えて行動してしまう。それも自分勝手な動機ではなく、マロリーのために。
しかし、頼もしく優しいと言えるガールのこの性格が、ガールの実母が持っていた「甘さ」に見えてしまうこともあってか、マロリーは激しく苛立ってしまう。そして、そんなマロリーの苛立ちを聡いガールは察して傷付いてしまうという悪循環…。自我がハッキリしているガールは、川下り以前からもマロリーに対し反抗的な態度を取ることがあった。二人のこの微妙な関係性は一朝一夕のものではないだろう。
これって兄弟姉妹を育ててる家庭によくある、本当によくある話で、パニック映画に、よくこんな平凡でかつ繊細な話を組み入れられたなと感心してしまう。そして、川下りの中、マロリーは子ども達の命に優先順位を付けることを余儀なくされる。その際に、ボーイを優先しようとしている自分に嫌悪するマロリー。
子どもを完全に平等に愛することは難しい。が、だからといってそれを表に出すことは決して許されない。母親としての建前・理性と醜い本音の間で悩んだ末、彼女が出した結論は…。

「母親であること」を受け入れて得られた「自由」

「母親になること」「母親であること」…これらは、一般的に「呪縛」「個としての自分自身を失うこと」「不自由になること」と捉えられがちだ。恐らく、それが序盤でアーティストであったマロリーが自身が母親になることを受け入れられなかった一因でもあるだろう。しかし、「母親であること」に厭い、自分が持っている子ども達への気持ちに素直に向き合わず、自分を妙なプライドやこだわりでガチガチに縛りつけていたのは他でもないマロリー自身で。川下りを含んだ新天地への旅は彼女にそのことを厳しく突き付ける。ラスト、マロリーは“あること”をすることで、「母親であること」を受け入れ、飛び立つ鳥の様に自由になる。この一連の流れを説教臭くもなく自然に、肯定的に描いたことを純粋に評価したい。

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まとめ~ヒューマン要素が強め

本作品は「見てはいけない」という宣伝文句等で、ホラー、スリラー、パニック映画というイメージが強いかもしれない。実際、「見る=即死」という特殊な設定の他、大筋は旧来のホラー・パニック作品に見られる王道的な展開も多い(臆病者が最期に勇気を絞り出す…等)。しかし、この記事に表れているように、「ヒューマン」要素がかなり強く、「化け物をやっつけた、これで世界平和だぜっ!」みたいな分かりやすいエンディングを迎えるわけではない。そのため、分かりやすさや爽快さを求める人にはあまり向かないかもしれない。
だが、不思議な余韻が残り、色々と考えさせられる作品だ。「自分だったらどうするか」「もしこれが日本で起きたら」等々友人同士で語り合っても楽しい作品なので、個人的には是非オススメしたい。

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