【漫画】約束のネバーランド15巻【感想・考察(ネタバレあり)】入れ替わったノーマンとレイのスタンスを考える

約束のネバーランド15巻

誰かが死んだり等はしていないものの、キツい巻だったなぁと。

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Contents

前巻までのあらすじ

襲撃されたシェルターから逃げ出したエマ達は犠牲を出しながらも、W.ミネルヴァのいるアジトに辿り着く。しかし、そこにいたミネルヴァの正体は試験農園Λ(ラムダ)7214から脱出したノーマンであった。再会を喜び合うエマ達であったが、力を蓄えたノーマンが『鬼を全滅させる』手筈を整えていることを知り、エマは動揺する。
『“七つの壁”を越えて“約束”を結び直し、鬼を絶滅させることなく皆で“人間の世界”に逃げよう』と考えているエマはレイとともに、ノーマンに考えを変えてもらおうと説得を試みる。

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ギーラン卿と同盟を結ぶノーマン

ノーマンはザジを連れて『J.ラートリー』を名乗って元五摂家のギーラン卿一派の元を同盟を結ぶべく訪れていた。先日潰したばかりの量産農園の職員の鬼達の死体を手土産として持ってきたノーマン。ノーマンとギーラン卿は早速本題に入る。

かつて貴族、五摂家の一員だったギーラン卿は、700年前、王家と現五摂家に謀られ、“野良落ちの刑”…身分を剥奪され、人肉を食べることも許されない立場に落とされたのだ。農園や市井から人肉を盗難してなんとか食い繋いで、人型と知性をギリギリ保っていた。

そんなギーラン卿に『戦力を出してくれれば王家と現五摂家を打倒し、ギーラン卿が政権中枢に返り咲けるようにする』『その代わり全食用児の自治を認めてほしい』『食料としてラートリー家とその人間増産技術を差し出す』と提案するノーマン。ラートリー一族を追われた『J.ラートリー』を騙るノーマンは鬼社会を倒す戦略と情報を持つが、戦力が足りないと訴える。

『互いに生き残り復讐するため』と言うノーマンにギーラン卿は手を組むことを約束するのだ。

ギーラン卿の元から帰るノーマン。ギーラン卿の事など、本当は駒としてしか見ていない。実際はラムダ出身者という強い戦力を持っていたが、食用児の血を流さないために、ギーラン卿を利用したいのだ。

そして、嘘をついているのはギーラン卿も同じ。仮に政権に返り咲いたとしても、食用児に自治を認める気などサラサラ無く、誓約書につけられたノーマンの血判を舐め舌鼓を打っている。ノーマンが“J.ラートリー”にしては随分と若く、偽物であることも見抜いている。

…ノーマンはそんなギーラン卿の腹も見抜いた上で、『最後に笑うのは自分達だ』と笑うのだった。

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『邪血の少女』…ノーマンが語ったムジカとソンジュの正体

アジトでノーマンの帰りを待つエマとレイ。エマはシスロやバーバラ達が見せた『憎しみの深さ』について考えていた。憎しみの連鎖を断つ難しさを理解しながらも、色々な鬼がいるなか、『鬼』というだけで絶滅させようとするのはおかしいと考えるエマとレイは、ギーラン卿の元から帰ってきたノーマンに『争わない道』… 『“七つの壁”を越えて“約束”を結び直し、鬼に追われることなく皆で“人間の世界”に逃げる』という提案をするため、話し合いの時間を作ってもらうのであった

まず先にノーマンの戦略を聞き出すレイ。ギーラン卿を焚き付け王と五摂家にぶつけ、漁夫の利を狙うノーマンの策の隙の無さに感心するものの、エマはノーマンの策が『鬼が人肉を食べないと姿と理性を保てず死ぬ』ということが前提であることに気付く。

そのため、エマはノーマンに人を食べなくても姿を保っていられる鬼、ムジカとソンジュの存在を語った。しかし、それが裏目に出てしまう。ムジカとソンジュの話を聞いたノーマンは表情を一変させ、エマとレイにムジカが『邪血の少女』と呼ばれ、既に死んだとされていた存在だと説明する。

邪血の少女…ムジカは人を食べずにいられるだけでなく、その血をわずかに分け与えるだけで、その体質を他の鬼に伝染させることができるというのだ。かつてムジカとその仲間達は人肉を食べられず飢えている鬼の村を回り、救っていた。

しかし、人肉の供給で社会をコントロールしてきた鬼の王家、五摂家は、ムジカ達の存在を危険視して、探し出し捕らえて食い殺してしまったのだという。ムジカとソンジュが何かから隠れるように旅していたのはこのためだ。そして、またノーマンも彼らを不確定要素として危険視して言うのだ。

「探し出して殺さないと」

約束のネバーランド 15巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  63/200

この時のノーマンの顔、怖い。そして、『ムジカとソンジュは友達で恩人だから殺したくない』と慌てて止めようとするエマを見るときの顔もまた…ワガママを言う子どもを諭す様な態度なのだけども、なんともゾッとする。

かつてはエマの理想に寄り添っていたノーマン、しかし今は…

『鬼を滅ぼしたくない』『ムジカの血の力を使って鬼が人肉を食べなくても生きていける体にすればいい』『“七つの壁”を越えて“約束”を結び直し、鬼に追われることなく皆で“人間の世界”に逃げよう』と主張するエマに対して、ノーマンははっきり、『人肉を食べなくても生きていける体になったとしても、鬼達は食欲から襲ってくる』『“人間の世界”に逃げても、そこが安全で受け入れてもらえる保障はない』と言う。

「断言する。鬼を絶滅させなければ家族で笑える未来はない」

約束のネバーランド 15巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  68/200

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2年の間で入れ替わってしまったノーマンとレイのスタンス

何が皮肉って、ノーマンとレイのスタンスが入れ替わってしまったことだろう。かつて、GF(グレイス=フィールド)からの脱出を謀る際は、『幼い弟妹達も含めて全員で脱出』という無謀なエマの願いを叶えようとしたノーマン。それに対して『脱出可能なのは三人まで』と現実主義的立場で主張していたレイ。しかし、今は『“七つの壁”を越えて“約束”を結び直し、鬼に追われることなく皆で“人間の世界”に逃げる』という可能かどうかも分からない道を探るエマに一蓮托生と最後までついていくつもりのレイに、それを『夢物語だ』と言い放つノーマン。離れていた2年間で立場が完全に逆転してしまったのだ。

色々と背負い込みながらも、弟妹達に支えられて『等身大の自分』を見失わずにこれたエマとレイに対して、『ミネルヴァ』としてラムダ組達の『神様』にならなくてはならなかったノーマン。エマ達も過酷な経験をしてきたものの、ノーマンがラムダで見てきたものはそれ以上に凄惨なもので(時折ノーマンが異様に老けてる様に描かれてるのはそのためだろうか?)。流れた2年という月日の大きさを考えさせられる。

違う道を模索することになるエマ・レイとノーマン

“七つの壁” の不確定さを説くノーマンだったが、エマが初代ミネルバ…J.ラトリーも辿り着けなかった“七つの壁” への行き方を突き止めたと聞いて驚愕する。しかし、それでも“七つの壁”は本当に行けるのか、何があるのか、”約束”を結び直せるのか、戻ってこれるのか…等謎がまだまだ多い。 『自分が “七つの壁”に行って確かめて来るから、ちゃんと”約束” を結び直して戻って来れたら鬼の絶滅を考え直してほしい』とノーマンに言うエマ。その危険さからエマを止めようとするノーマンだったが、エマに抱きしめられて言われる。

「ねえノーマン」
「神様になんかならなくてもいいんだよ」

約束のネバーランド 15巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  82/200

『本当はノーマンも鬼を絶滅させることを望んでいないのではないか』『辛いのではないか』そう指摘するエマは『またノーマンが全部一人で背負って遠くに行ってしまうのが嫌』と言う。

しかし、エマの抱擁と言葉は一瞬ノーマンの心を強く揺さぶりはするものの、方針を変えさせることはできない。それは今までの計画の積み重ねとラムダ組の思いがあるから。一瞬エマのことを抱きしめ返そうとするも、笑顔で押しのけながら『自分はどこにも行かない』と言う。その笑顔のウソくささと言ったら…。

『計画を止める気も遅らせる気もない』というノーマン。エマに『どうしても”絶滅”を止めたいのならば、自分が王家・五摂家を殺す前に戻って来るんだ』と告げる。そうしたらそこで初めて違う道を考えると言う。
こうして、ノーマンは予定通り『鬼の殲滅』、エマとレイは 『“七つの壁”を越えて“約束”を結び直し、鬼に追われることなく皆で“人間の世界”に逃げる』という別の道を模索することになるのであった。

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ラムダ組の思いと、もう後に退けないノーマン

エマとレイを見送った後、ザジと共に地下に続く部屋に向かったノーマン。この後のシーンも結構辛い。

地下の部屋、ヴィンセント、シスロ、バーバラ達がいるその部屋の中央には拘束され嬲り殺しにされた様子の巨大な鬼。シスロはここに来ると落ち着くのだと言う。エマ達の話は何だったのかと問うシスロに『エマ達は鬼を絶滅させたくないと言っている』『邪血の少女がまだ生きていた』という話をする。

『エマは邪血の少女、ムジカと友人であり、それもあって鬼の絶滅を嫌がっている』と聞いて『なんでだよ』『鬼はそんなんじゃない』と吐き捨てるバーバラ。そして、ラムダでの凄惨な暮らしを思い出し、発作を起こしてしまうのだった。

泣きながら『自分達をこんな風に追いやったのが鬼。物以下、家畜以下に食用児を扱ったのが鬼』と叫ぶバーバラをなだめてシスロが言う。ノーマンの留守中にエマとレイと話したシスロ。『戯言には反吐が出るが、マジでいい奴らだった』そう、2人のことを評する。エマとレイの持つ明るさに、シスロ、バーバラ、そしてヴィンセントもあっという間に打ち解けて楽しい時間を過ごした。
だからこそ、シスロはすがる様にノーマンに問う。

「ボスはこっち側だよな?」
「ボスはボスだよな?迷ってなんかないよな?」

約束のネバーランド 15巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  102/200

そう問われたノーマンはラムダ組の面子を一人一人見つめてから、答える。

「ここまでやったんだ。無論後には退かないよ」

約束のネバーランド 15巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  103-104/200

そう答えたノーマン達の背後には、実験され、解体された鬼達の体のパーツが数えきれない程、瓶に詰められ並べられている。ラムダを脱出し、農園を襲撃、解体してきたノーマン達は、『鬼が何を食べ、どう再生し、どう退化し、どう死ぬのか』を調べるため、沢山の鬼に実験を繰り返し、殺してきたのだ。…そう、かつて鬼やラートリー家達が食用児に対してしてきたように。

ここまで手を汚してきたノーマンは『全て自分が背負うべきこと』と考えている。そして、エマやシスロ達皆を救いたいと心から思っているのだ。

―そのためならばね、僕は神にでも悪魔にでも喜んでなるよ、エマ―

約束のネバーランド 15巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  108/200

…とまあ、何とも重い業を背負ってしまっているノーマン。しかし、てっきりバーバラやシスロ達は理想論を説くエマのことを憎むものかと思ったのだけど、違ったな。バーバラ達もいい子達なんだよな…。皆、エマの言っていることが倫理的に正しいとは分かっている。しかし、できない。ラムダでの経験はそんな風に割り切れる程生ぬるくはないし、『みんな、発作の間隔が狭くなり、症状も悪化している』等とどうにも寿命が近いことを匂わせる描写もある…それもまた、辛いなぁ。

“七つの壁”に向かうエマとレイ

『鬼を絶滅させたくないから“七つの壁”を越えて“約束”を結び直し、鬼に追われることなく皆で“人間の世界”に逃げる道を探したい』そう、シェルター組(GF、GV組)の皆に告げたエマ。

町で暮らす鬼達を見てきたエマは想像し、語る。ノーマンの作戦通り、食料を絶ち鬼達を退化させて絶滅に追いやるというのなら、それがどれだけの恐怖と憎しみを生み出すのかと

皆、驚くものの、GF(グレイス=フィールド)組はムジカとソンジュに助けてもらった経験があり、またGV (グランド=ヴァレー)組もゴールディ・ポンドでの戦いを通して鬼達にも自分達の様に家族がいて、感情もあることをよく分かっていたため、エマの主張に理解を示した。

しかし、だからといってエマの“七つの壁”行きに皆が賛成する訳ではなく、ジリアンは『鬼よりもエマや皆が大事で、守るためなら鬼の子どもや赤ちゃんだって殺してみせる』と泣きながら言い、ギルダは『なんでエマばかりいつも危険な目に…』と心配して引き留める。だが、エマは皆に『もうノーマンに自分を殺させたくない』と言う。その言葉に同意するレイ。『ノーマンはGF脱出の時と同じことをしようとしているのだ』と。命こそ絶とうとしていないものの、また皆のために心を殺して全部背負って片づけるつもりなのだと。

「私達にとってはノーマンを行かせてしまった時点で、あの脱獄は本当の成功じゃないんだよ」

約束のネバーランド 15巻  出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)  123/200

同じ思いを二度もさせたくない、そしてやってみなくちゃ分からないということをノーマンに証明したいと言うエマとレイ。『無事に帰って来る』とギルダ達に約束する。そして、満月の夜、金の水とヴィダ、そこに血液を注いで、皆が見守る中、エマとレイは”七つの壁”の向こう側を目指して旅立ち、姿を消すのであった。

王都で女王と五摂家は”盗難賊徒”討伐に動き、ノーマン達は儀祭中に王・貴族を殺す算段を立てる

一方、王都では女王と五摂家は相次ぐ農園の襲撃について語り合っていた。この農園襲撃のため、各地で人肉不足が起こり、民の不満が高まっているのだ。襲撃者を”新手の盗難賊徒”とみなした女王は誅伐を命じ、儀祭までに片をつけようとする。そして、その動きを捉えたノーマン達は計画通りにことが進んでいることを確認し、8日後の儀祭の最中に王、貴族を殺す算段を立てるのであった。そして、それと同時にノーマンは”邪血の少女”に対してある手段を考え、ドンとギルダを呼び出すのであった…。

”七つの壁”の向こう側の世界は…翻弄されるエマとレイ

そして、”七つの壁”に入ったはずのエマとレイの目の前に現れたのは、なんとGF(グレイス=フィールド)…二人が生まれ育ったハウスだった。困惑しながらも中に踏み込むエマとレイ。しかし、空間が歪み、すぐに二人は離ればなれに。そして、レイの目の前にはイザベラやコニー等の子供達が現れる。『大きくなった』と言って抱きしめるイザベラにレイは『誰だお前』と後退りするも、気が付けば自身も幼くなっている。そして、骸骨化したイザベラ達に追い回されるというホラー展開に。歪みまくるハウスの中でなんとかエマとレイは合流し、レイは元の姿に戻るも、今度はエマが幼児化してしまう。無数のぬいぐるみ達が『遊ぼう』と迫る、そんなカオスな空間に二人は投げ出されるが、エマはその声の主が鬼の頂点(あの方)であることに気づく。『“約束”を結び直しに来た』というエマに鬼の頂点(あの方)な『見つけてごらん』と言うのであった…。

まとめ~色々としんどい15巻、そして結末が近付く?

ノーマンの変貌ぶりだったり、ラムダ組が背負った業の深さだったりと心理的にしんどい描写が続いた15巻。同時にエマとレイが“約束”を結び直すため“七つの壁”の向こう側に行き、ノーマン達と鬼との決戦の時が近付くなど、割りと物語を畳みにかかっている感じもする。20巻位で終わるのかな?でも回収してない伏線もあるから、もう少し続くのだろうか?次巻が楽しみだ。

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