【漫画】金魚妻~金魚妻①【感想・ネタバレ・考察】夫に不倫されていた妻は通い詰めていた金魚屋の店主と…

金魚妻 1巻 表紙

『妻は何故、一線を越えてしまったのか』…このキャッチフレーズで”不倫”を巡る短編が描かれている『金魚妻』。今回はこの表題作、代表作である『金魚妻①』のネタバレあり感想を書いていきます。

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Contents

金魚妻①のあらすじ・ネタバレ

夫に不倫されている専業主婦のさくらは夫から金魚を飼う許可を得る

夏のある日、専業主婦の平賀さくら(24)は出勤前の夫の卓弥に意を決して尋ねた。

「金魚 飼って いい…?」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

夫の卓弥は振り返りもせず『好きにすれば』と吐き捨てるように家を出ていった。その直後、残されたさくらの元に本人限定受取便が届く。それは興信所に依頼した卓弥の不倫の証拠書類であった…。

さくらは夫の許可を得たので早速行きつけの金魚屋、『金魚のとよだ』に向かった。マイペースな店主の豊田はさくらが来たというのに髭を剃っているが、さくらは気にせず色とりどりの金魚をうっとりと眺める。ここのところずっと通っているさくらの顔を覚え気にかけていた店主の豊田。

さくらは『夫にずっと生き物を飼うのはダメと言われていたけどやっと許しをもらえましたから』と嬉しそうに笑うが、肝心の種類を選んでいない上にちゃんと育てられるか自信がない。昔縁日で手に入れた金魚を3日で死なせてしまったのだ。そんなさくらに店主は優しく微笑んで言う。

「ゆっくりえらんでね。長い付き合いになると思うから」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

店主の柔和な態度に安堵するさくら。すると、店主が電話対応している間に常連客がカボンバ(水草)を求めてきた。忙しい店主に代わってさくらは咄嗟にカボンバの用意をした。通い詰めて店主を見ているうちに覚えてしまったのだ。『(さくらは)お客さんなのに…』と慌てる店主と対照的に常連客はそんなさくらを見て『ここで働いたら?』と笑い『店長はいい奴だから』と言う。さくらはそう言われて満更でもない気分になるのであった。

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さくらが購入した大きな水槽を見て激怒した夫の卓弥は店に返す様に迫り、さくらは豊田の元に水槽を返しに行く

だが、その夜帰宅したさくらの夫、卓弥は玄関に置かれた水槽を見て激怒する。卓弥は金魚鉢を想像していたのだが、さくらは店主から『初心者は金魚を大きな水槽で飼った方が良い』と言われてフィルターと水槽を買ってきて、金魚を飼えるように水質を整えていたのだ。

『ここは俺の家だ。俺が稼いでいるんだ。水槽を返してこい。』とさくらを怒鳴り付ける卓弥。卓弥の言い方に傷付きながらもさくらは『そっちが専業主婦になって欲しいって言ったんでしょ』と言い返す。だが卓弥は『水槽を返して来ないなら今すぐお前が出ていけ』と恫喝する。さくらが『最近冷たいよね、何か私に隠してない?』と尋ねても卓弥は『早く返しに行け』と冷淡に吐き捨てて部屋に行ってしまう。さくらは涙ぐんだまま、一人玄関に取り残されるのであった。

仕方なく、水槽を抱えて『金魚のとよだ』に向かうさくら。夫の卓弥はさくらがいないのを良いことに堂々とリビングで不倫相手の電話している。さくらは息を切らして店に着いたものの、既にシャッターは下りていた。しかし、豊田はシャッターを上げてさくらを見て『どうしたの?』と驚く。『大きい水槽はダメだと言われて…』と俯きながら答えるさくら。すると豊田は『ごめんね、こっちがむやみに勧めたから…大変だったね』とさくらに謝る。そして、さくらを店に入れて返金しようとする。だが、『こっちの都合で店長さんは悪くないし、もうその水槽は売り場に戻せないだろうから』とさくらは慌てて返金を拒む。

そう言われた豊田は少し考えて『じゃあ、こういうのはどうだろう』とさくらを店の上の階に連れていく。さくらはそこを見て思わず『うわぁ』と歓声をあげる。ベランダになっているそこでは、まるで池のような巨大な水槽が並んでおり、沢山の金魚がいたのだ。

「ここに水槽置いて金魚を買えば」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

そう豊田はさくらに提案するのだ。風通しの良い広々とした場所で飼われている金魚達は美しく、さくらは感動する。『好きな金魚を上げるから選んで』と言う店主にさくらは『余計に迷惑を掛けてしまうのでは』と恐縮する。だが、豊田は穏やかに笑って『君みたいにかわいい子が来てくれると嬉しいから』と言うのだ。

そう言われたさくらは驚いた顔をして、それから寂しそうに笑って『最近そういうこと言われてなかったから嬉しいです』と答える。そして、夫、卓弥に不倫されていることを打ち明けるのだった。

「浮気してるんです。わたしよりずっと綺麗な子と」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

そう言って何事も無かったかのように『この池には色んな柄の子がいる』と隅にある水槽を覗き込む。さくらが実は泣いていることに気付いた豊田はさくらが覗いている水槽について説明する。

「ああ…それはハネっ子の池だね」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

『ハネ』とは美しくなく商品にならない金魚の事だと語る豊田。ハネっ子は最終的に里子や金魚すくいに出されたり、または肉食魚のエサになるのだという。それを聞いたさくらは『この子を飼いたいです』とハネっ子の一匹を選んだ。

だが、網で選んだハネっ子をさくらが掬い上げようとしたその時。ハネっ子が跳ねて、さくらは床にハネっ子を落としてしまう。パニックになったさくらに代わって豊田が素早く助け上げたものの、ハネっ子はその衝撃で鱗が何枚か剥げ落ちてしまった。『すみません』と謝りショックを受けるさくらに、豊田は『これ位じゃ死なないし大丈夫』と言う。そして、水槽に水を入れると、さくらに傍にある塩を渡すように指示する。『塩!?』と驚くさくらの目の前で水に塩を混ぜながら豊田は『塩水浴』と説明する。0.5%の塩水は金魚にとって心地よくトリートメントになるのだと言う。

「鱗も再生するから大丈夫。心配しないで」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

そう優しく行ってさくらの頭を撫でた豊田。まるで夫に傷付けられた自身への慰めの様にも聞こえたその言葉にホッとして涙を流したさくらは豊田にこう尋ねるのであった。

「もうちょっとここにいていいですか?」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

抱き合うさくらと店長~そして、さくらはそのまま店に居つき、家に帰らなくなる

数時間後、店の奥でさくらは積極的に豊田と抱き合い、キスをしていた。服を脱がせながら豊田はさくらに『こんなことして本当にいいの?』と尋ねた。その言葉を聞いたさくらは『やっぱりやめましょうか』と躊躇した。だが、その途端豊田はさくらを押し倒す様に強く抱くのであった…。

数日後、気持ち良さそうに塩水浴をするハネっ子を嬉しそうに眺めるさくら。豊田は『塩水浴は金魚が元気になるまで続ける』と説明し、さくらにも『元気になるまでここにいてもいい』と笑う。さくらはあの晩から家に帰っておらず、豊田は常連客にさくらを『バイトに入った人妻』と紹介する。

さくらはずっと携帯の電源を切っており、夫の卓弥と全く連絡を取っていない。きっと家に不倫相手を連れ込んでいるであろう夫の姿を想像しても『前ほど苦しくない』と豊田に言う。

だが、それを聞いた豊田は『旦那さんはきっと後悔している』と言う。本当に嫌いだったら浮気をする前から冷たくなるはずだと言う豊田はさらにこう続けるのであった。

「自分の心の問題なのに原因を君になすりつけて罪悪感を誤魔化してる」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

そして『よく分かっている』と言うさくらに寂しそうに微笑むのであった。

「昔の僕と一緒だったから」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

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一方、さくらの夫の卓弥は愛人に逃げられる

一方その頃、卓弥はさくらの予想通り不倫相手を家に連れ込んでいた。しかし、不倫相手はさくらが興信所から受け取った調査報告書を発見して『奥さん気付いてたんだ』と愕然とする。そして『訴えるつもりかな』『お互いそこまで本気じゃなかったでしょ』と言って逃げ帰るのであった。

数日後、豊田は2階のベランダでさくらに『なんで金魚を飼いたいと思ったの?』と尋ねる。さくらは『ここの金魚が気持ち良さそうに泳いでいていいなと思ったから』と答え、逆に豊田に金魚のどこが好きかを尋ねる。『逞しいところ』と答える豊田にさくらは『自然界で生きていけないのに?』と驚く。

すると豊田はさくらを後ろから抱きしめ体をまさぐりながら、岡本かの子の『金魚繚乱』引用して言う。

か弱く食用にもならない金魚は一見、ただ人間が観賞用に都合良く改良したようだが、実は金魚の方が人間の美に惹かれる本能を利用し、自己完成に近付いて行ったのではないか…。

そして、そう語った豊田はそのままさくらの服を脱がせて、またさくらを激しく抱くのであった。

さくらの夫、卓弥が店に現れさくらの行方を問う…しかし、豊田は…

その直後、さくらの夫、卓弥が『金魚のとよだ』にやって来た。携帯のさくらの画像を見せながら『ここに出入りしていたようだけど、知りませんか?』と尋ねる卓弥。

だが、豊田は『うちには色んな客が来るから…』と答える。そして、落胆した様子の卓弥が傍らの金魚を見て『飼ってみようかな…』と言うと『はまると思うよ』と微笑むのであった。

その頃、まださくらはベランダにいた。一切避妊しなかった豊田をさくらは『意外と支配欲の強いタイプなのかも』と思うがそれほど嫌ではないさくら。すると、例の水槽の中にいたハネっ子の鱗がキレイに治っているのに気付き、はしゃぐのであった。

「あなた あんなボロボロだったのに、すっかり元気になったね」
「あははっ」
「あはははっ」

金魚妻 黒澤R 金魚妻①

夏の空に、さくらの笑い声が響くのであった…。

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以下、感想と考察

美しさと生々しさ…そして、作品に深みを与える金魚の存在

“不倫もの”の漫画は数多あるけど、この作品は妙にリアリティがあって生々しいのに、どこか美しい。ヒロインとなるさくらが可愛らしいのは勿論、店主豊田が年相応にくたびれているのに、格好よく色っぽく描けているのが凄い。

それでもって『ハネっ子』『塩水浴』『岡本かの子の金魚繚乱』などの蘊蓄があるのが作品に深みを与えているのが良い。特に『ハネっ子』とさくらの重ね合わせ方が上手い。

“不倫もの”の免罪符としての夫の酷さ

不倫ものに欠かせない条件が、『免罪符』。つまり、『こういう状況なら不倫しても仕方ないよね』という、環境の悪さや配偶者の酷さだ。今回の『金魚妻』は夫、卓弥がモラハラ&不倫と普通にクソみたいな男なので、『免罪符』は十分。別にさくらが行きつけの金魚屋の店主、豊田とアッサリ関係を持っても、読んでいる側はわりと許せてしまうのではないかと。

続編がある『金魚妻』~今後、店主豊田の過去が明らかに

このマンガ『金魚妻』は基本的に短編集だけど、今回の表題作『金魚妻』を始め、初期の作品は続きがある。

さくらの夫の卓弥の浮気を『自分の心の問題なのに相手に原因をなすりつけている』『僕も同じだったから』と語った店長、豊田の過去も今後明かされる。それも『なるほど、そういうことだったのか』と思える話なのだ。

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