漫画家のうえみあゆみの夫はこれまで何度も浮気、不倫を繰り返してきたが、うえみは子供達の事を考えて見て見ぬふりを続けてきた。しかし、小学6年生のムスコが夫の浮気を発見し傷付いてしまったことから、再び夫の不倫と向き合うことを決意。高校生のムスメは父親(夫)の味方をしていたが、ある日、父親(夫)の失火が原因で死にかけ、自身の責任を認めず言い訳ばかりする父(夫)に幻滅。これを機にうえみは離婚に向けて準備をし始めるのであった…。
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→【漫画】マタしてもクロでした分冊版4【感想・ネタバレ】夫のせいで死にかける子ども達
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Contents
各話あらすじ・感想(ネタバレあり)
第14話 不恰好な私達~8年前の再構築の選択は誤りだったか…思い返すうえみ
ムスメとムスコを連れて三人で花火を見に行ったうえみ。近くにいた小さな女の子が父親に甘えるのを見て、ムスメも”パパっこ”だったことを思い出す。
8年前…実は離婚の話し合いをしていたうえみと夫。しかし、うえみはその事を子供達に伏せており、子供達は夫からの『今は仕事が忙しくて帰れないけど、仕事が終わったら、またみんなで旅行しよう』という手紙を無邪気に信じていた。
…この時、ムスコが持っている丸めた新聞には夫の時計が入っている。この新聞紙の中の時計は分冊版1で語られているけど、夫が家族みんなで行った沖縄旅行で着けていたもので、幼児だったムスコは『これを返したらパパは帰ってくる』と信じているのだ。ムスコ君いじらし過ぎる…。
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だが、うえみはそんな時計や手紙も…夫にまつわるものは離婚したら全て捨てようと思ったのだ。パパを思い出すものは無い方が良いと。
そして、子供達が寝静まった後、久しぶりに帰って来た夫は『何でもしますから許してください』と土下座する。だが、散々裏切られ続け、夫への信頼も愛情も無くしていたうえみは『関係を修復するつもりはない』と冷たい眼差しを向ける。
すると、そこに幼いムスメとムスコが『トイレ行きたくなっちゃって』と起きてきて、久々に会う父親(夫)を見て頬をほころばせる。そんな子供達を見て涙を流す夫。ムスコは夫に走りより例の時計を『これあげる』と渡し、夫はそれを見て大泣きするのであった。
そんな子供達と夫の姿を見ながらうえみは淡々と思ったのだ。
この人は私が思うよりずっと大切なものを大切にする方法を知らないんだ―
マタしてもクロでした分冊版5 うえみあゆみ 9/35
翌朝、駅まで夫を見送ったうえみは『浮気の度に反省の言葉を口にするけど、そもそも子供達から自分がいなくなったら…って想像しなかったの?』と尋ねる。夫は気まずそうに『何度もした』と答える。そんな夫にうえみはハッキリこう言ったのだ。
「自分を大事にしてくれる人を大事にできない人は誰にも大事にされないよ…」
マタしてもクロでした分冊版5 うえみあゆみ 11/35
「全部失くしたって…文句言えないんだからねっ!」
そして家まで戻りながら『浮気バカの夫は一生治らない、離婚しかない』と考える。しかし、昨夜抱き合っていた夫と子供達の姿を思い浮かべると『壊すことができない』と感じるのだ。
親になった人間が子供に愛されて…子供が親に愛されるそれ以上の幸せが思い付かないんだから―
マタしてもクロでした分冊版5 うえみあゆみ 13/35
そして、うえみは離婚を思いとどまったのだ。
…こういう”再構築”を扱った作品には必ず『離婚すれば良かったのに、どうして離婚しないんだ』という批判がつきものだけど、やはり子供の気持ちを考えると簡単に離婚なんて出来ないよな…と思う。
そして現在、花火大会の帰り道、あの8年前の自分の『夫の浮気を不問にする』という判断が本当に正しかったのだろうかと考えるうえみ。帰宅した子供達は夫が珍しく家に帰って来ているのを見て『うわ』『不倫相手に振られたのかな』と8年前と違い、酷い言い様だ。居間でだらしなく寝っ転がっている夫に冷たい目をする子供達に『そんなんでもアンタ達の事は大好きなんだよ』と言ううえみ。すると、子供達は『分かってる』『知ってる』と答える。そこにはまだ8年前の無邪気に父親を信じていた頃の面影が残っているのであった。
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第15話 金が要るっ!!~離婚後の生活のため必死で働くうえみだったが…
春が来てムスコは小学校を卒業して中学生になった。
ムスコの小学校の卒業式の帰り道、並んで歩く夫、ムスコ、ムスメを見てうえみは『いつでも思い出せるようにこの景色を記憶しておこう』と思った。何故ならこのとき、うえみは離婚の準備を始めていたのだ。
だが、離婚後の生活に必要な金額の計算をしたうえみは血の気が引く。子供達が幼い頃にも離婚とその後の生活について具体的に考えていたが、今離婚するとなると高校生のムスメと中学生のムスコの受験に掛かる費用も賄う必要があり、以前とは必要な額が全然違ってくるのだ。
めっちゃ金要る
マタしてもクロでした分冊版5 うえみあゆみ 21/35
そして、タイミングが悪いことに、その頃うえみは連載が決まらず苦しんでいたのだ。今更ながら何か“資格”を取っておけばと後悔するうえみだったが『自分には漫画しか稼ぐ手段がない』と腹をくくりどうにかして連載を得ようと努力するのであった。
…子どもが中学生~大学生って家計的に一番お金の掛かる時期だよ。だから子供が成人してから離婚する人が多いんだろうな…。
締め切りまで残り2時間となったある朝、子供達の起床と通学の時間が迫っているにも関わらず台所は洗っていない食器がいっぱいで、うえみは子供達のお弁当すら作れていなかった。
やむをえず、目の前にいた夫に『お皿を洗ってもらっていい?』と頼むうえみ。だが、夫からは信じられない言葉が返ってくる。
「屈辱的なんだけど」
マタしてもクロでした分冊版5 うえみあゆみ 24/35
「あなたがちゃんと稼いでるならいいよ?でも今違うよね。何で俺が自分で使ってもいない皿洗わないといけないわけ?」
夫のその言葉に腹を立てたうえみ。しかし、言い争っている時間すらなく、子ども達にはお昼を買って済ませる様に頼むのであった。
…ここは読んでいてかなりムカつくぞ。
『漫画家は連載が無ければ無職と同じで、無職だったら離婚も出来ない』…そう痛感したうえみは尚更必死で連載のためにアイデアを練り続ける。だがアイデアが出ず悩み苦しんでいると時間はあっという間に過ぎてしまい家事も疎かになっていくという悪循環に陥っていく。
そんな日々を送っていたうえみは食後に背中に痛みを感じるようになる。ムスメに促されて病院に行ったうえみは医師から『ストレスで膵臓がやられている上に逆流性食道炎』と診断されてしまう。仕事を控えた方が良いとまで言われたものの、うえみは『連載を得るまでの我慢だ』と耐え続けるのであった。
そして、うえみは栄養ドリンク剤やカフェイン飲料で体を騙しながら何とか連載を勝ち取った。だが連載を抱えてからの日々も多忙でムスコの学校の話を聞く暇もなく、やっと一段落着いたと思うと、部屋は散らかり、ムスコはお腹を空かせていた。しかし、冷蔵庫には食材もなく、うえみはムスコに謝りながら『外食でもいい?』と提案する。
その時、高校生のムスメがスーパーで食材を買って帰ってきた。ボロボロの状態で『買い物してきてくれたの?』と驚くうえみにムスメは『夕飯は私が作る』と言い、弟であるムスコに『あんたは洗濯物を畳んで』と指示する。
ムスメの気遣いに救われるうえみ。しかし、その後仕事を終えたうえみはそのまま寝落ちして、朝、子ども達の『行ってきます』の声で目覚めて愕然とする。子ども達の顔も見ることも出来なかったし、そもそも子供たちが朝食をどうしたのかすら分からなかったのだ。うえみは自身の現状に違和感を覚え始める。
その奇妙な感覚の正体がハッキリしたのはある日、ムスメとムスコと買い物をしていた時のことだった。うえみはムスコから『離婚しないの?』と尋ねられ、正直に『離婚するために今必死で仕事を頑張っているんだよ』と答える。
するとムスメが『だったら私がバイトする』と言い出したのだ。うえみは『勉強最優先でしょ、本末転倒になっちゃう』と慌てるがムスコまでも『ぼくもバイトできるの?』とそのつもりになってしまう。
違う…これって全然違う!
マタしてもクロでした分冊版5 うえみあゆみ 33/35
子供達に苦労をさせたくないがゆえに頑張っているのに、結果的に子供達に心配を掛けて気遣われている現実にうえみは動揺し焦るのであった。
以下、感想と考察
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離婚って難しい~特に子供が親を慕っていると…
…こういう離婚・再構築系の話があると外野(読者)はいつも『離婚!離婚!なんで離婚しないんだ!』と騒ぐけど、現実離婚は難しい。
大体”離婚”を意識するようになるのは精神的にかなり追い込まれた後で、行動を起こしたり手続きをするのすらしんどかったりとただでさえ離婚は大変なのだ。そこに、こういった感じで子どもが配偶者に懐いていたり離婚を望んでいないとなると『自分の気持ちより子供たちの気持ち』となるのは自然な感情なので、やはり離婚は世間が思っているより難しくて大変な事なのだ。
申し訳なさや、負い目等が全く感じられない夫の態度がムカつく
皿洗いの件の夫の態度が他人事ながら読んでいて本当にムカつく。少しでも浮気して申し訳ないという気持ちがあるのならば、皿洗いくらいしてもいいだろうに…。何というか、不倫をした、不倫をしているということに対しての負い目の様なものが全く無いんだな。
大体『稼いでいるなら皿洗ってやってもいいけど』って何だよ!?”ふよぬけ”かよ!?家事分担とか養ってやってるとかそういう話以前に子供の通学時間が迫ってるんじゃ!緊急事態なんだから助けろよ、家族なんだから!!
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離婚を阻む金銭問題!?果たしてこの夫婦に待ち受ける結末・ラストは?
やっと離婚の決意を固めたうえみだったが、離婚後の生活に必要なお金が相当な額になることを知って必死に稼ごうとするが、家事や体調管理が疎かになり子ども達に心配される側になってしまったことに焦る。
『離婚のためのお金が…』というと『有責配偶者から慰謝料、養育費、財産分与で大量にむしり取ればいいじゃない!』と言う人がいるが、それもそう簡単に話が進むものではない。離婚をすると以前より生活レベルを落さざるをえないことが多いのだ。そのうえ、子どもが学生の頃はかなりお金が掛かる。だから熟年離婚が多いんだよな…。
果たして、この金銭問題は解決するのか、そして無事に離婚できるのか、それともまた再構築を選択するのか…この家族を待ち受ける結末は如何に。
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