基本的に短編で各話独立している『金魚妻』シリーズだけれど、このさくらが主人公の『金魚妻』や『出前妻』等、人気や反響があるものは続きが出ている。
前回では主人公である専業主婦のさくらが冷淡な夫、卓弥の元から逃げ出し、金魚屋の店主である豊田の元に身を寄せるところで終わった。果たしてその後のさくらの運命は…。
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Contents
金魚妻②のあらすじ・ネタバレ
痣だらけで腫れあがった顔をしているさくら…一体彼女の身に何があったのか?
ベランダで金魚を直接手で持っている豊田にさくらは『何をしてるんですか?』と尋ねる。豊田は『人工受精』と答えた。金魚の交尾は激しく、自然に任せるとオスがメスにケガをさせることも珍しくはない。実際にトリートメント用(治療用)の水槽にはオスによってボロボロにされたメスの金魚が入っている。それを見て『ひえー』と声を上げるさくら。
「金魚も激しいんですね…」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
そう言って笑ったさくらの顔はアザだらけで酷く腫れ上がっているのであった…。
傷だらけでボロボロのさくら。彼女の身に何があったのか…それは数日前に遡るのであった。
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店にさくらを探しにやって来た卓弥…さくらは卓弥との結婚生活を振り返る
夫である卓弥に冷淡な態度を取られ続けた上、不倫までされた平賀さくら(24)は通いつめていた金魚屋”金魚のとよだ”の店主、豊田と肉体関係を持ち、そのまま店に居着いた。優しい豊田の元で店を手伝いながら羽を伸ばしていたさくらであったが、ある事で心が揺れる。
夫、卓弥が店までさくらを探しに来たのだ。
さくらがこの店で金魚を買ったことを知っていた卓弥は豊田に写真を見せて『知りませんか』と尋ねる。豊田が『分からない』ととぼけると店に並んだ金魚を見て『飼ってみようかな』と言い出した。そして小さな金魚鉢とある金魚を購入して去っていったのだ。
その晩、さくらと共に風呂に入った豊田はため息をつく。卓弥が選んだのは『ピンポンパール種』という非常に飼育難易度が高い種類だった。それを卓弥は小さな金魚鉢で育てるつもりなのだ。金魚は水を汚し、その癖水が汚れると死んでしまう。急激な温度差にも弱い。水が少ないと汚れやすく温度が変化しやすくなる。アドバイスしようにも聞く耳を持たない様子だった卓弥だったが、『お客さんが欲しいと言ったら売らないわけにはいかないから…』と困った顔をする豊田。その話を聞いたさくらは、卓弥との結婚生活を思い返す。
卓弥は知り合ってすぐにさくらを気に入り、熱烈なアプローチをし、『すぐに結婚して子供も沢山作ろう』とプロポーズをしてきた。さくらはそれがとても嬉しかった。だが、共働きの結婚生活で部屋が荒れがちになったことについて、さくらが『お互い忙しいから仕方がない』と言うと『さくらは正社員じゃないからその言い方はおかしい』と一蹴する。卓弥に優しくしてもらいたかったさくらは仕事と家事を両立させるべく頑張ったが、結果、過労のため生理が止まってしまった。
そのため、『仕事をやめる』と言うさくら。だが、それを聞いた卓弥はさくらを労るどころか、『最初から専業主婦をやっていれば良かったんだ』と冷たく吐き捨てる。本当は仕事をやめるのではなく、卓弥に『家事を手伝って』と言いたかったさくらだが、冷淡な卓弥にそれを言い出すことが出来なかった。そして、『やることやってるのに、子供が出来ないと思ったらさくらのせいだった、時間の無駄だった』と友人に語るようになった卓弥は、そのうち不倫をするようになった。…さくらは卓弥の優しさを引き出す手立てを完全に失ってしまい、わびしい結婚生活を送っていた。そんなある日、さくらは気持ち良さそうに泳ぐ金魚達と彼らを世話する豊田に出会い、心を奪われたのだ…。
卓弥が自分を探している事、そして自分の名前と同じ金魚を飼って行ったことに動揺したさくらは卓弥の元に戻る決意をする。
出ていく直前までさくらに辛く当たっていた卓弥。さくらに金魚を飼って良いと言ったのに、水槽が思っていたより大きかっただけで『俺の金』と怒り、『出ていけ』とさえ怒鳴ってきた。しかし、
あの人が…私と同じ名前の金魚を買っていった…?
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
卓弥が買った金魚の名前は”さくらピンポンパール”…数ある中から自分と同じ名前の金魚を卓弥が選んだことに、さくらは動揺していた。
卓弥のことを考えていたさくらは浴槽の中で豊田に触れられた瞬間、思わず『卓ちゃん』と呟いてしまった。すぐに自分の失態に気付いて豊田に『違うんです…!』と言うさくら。しかし、豊田は一切さくらを責めず、『僕のことは気にしないでいい』と頭に触れる。そして、さくらの中に卓弥への気持ちが残っていることを見抜いてこう言うのであった。
「旦那さんの事が気になるなら行ってもいいんだよ」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
「今ならまだ戻れるんじゃないかな 君も僕も」
普段からさくらに対して『好きな時に好きなところに行きなさい』と行動を制限するような事は一切しない豊田。さくらはそんな豊田に少し寂しさを覚えながら、店を去り卓弥のいるマンションへと向かうのであった…。
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一方、卓弥は”さくらピンポンパール”の飼育が上手くいかないことに苛立ち、店の悪評を広めようとしていた
一方、その頃卓弥は”金魚のとよだ”で買った”さくらピンポンパール”がエサを食べようとしないことに苛立っていた。金魚鉢に砂と水草を入れれば十分だと考えている卓弥は、”さくらピンポンパール”の不調の理由を調べようともせず、『あの金魚屋は弱った金魚を売りつけてきた』『潰れろ!』と怒り、ネットで『明らかに弱っている金魚を売られた』というクチコミを書き込んだ。
しかし、すぐに卓弥の書き込みについて常連客を名乗る者から『とよださんは弱った金魚は絶対に表に出さない。もしかして飼育難易度の高いピンポンパールを買ったのでは?店長さんは親切だから相談すれば親切に教えてくれます』と指摘されてしまう。『この店には信者がついていやがる』と顔を歪める卓弥は反省するどころか逆上して店の悪評を広めようと躍起になる。そして、肝心の”さくらピンポンパール”は玄関で小さな金魚鉢に入れられたまま放置されているのであった。
突然帰って来たさくらは”さくらピンポンパール”を救う行動を取る…そんなさくらを卓弥は優しく抱きしめるが…
その時であった。
「さくら しっかり!」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
「今助けるから」
突然マンションに帰って来たさくら。驚く卓弥に目もくれず、”さくらピンポンパール”のためにカルキを抜いた水を用意し、そこに塩を入れる。
『塩水なんかに金魚を入れるなんて、何をしてるんだ!』と叫ぶ卓弥。そんな卓弥にさくらは『これで金魚は楽になる』と以前豊田から教わった”塩水浴”について説明し、手際よく”さくらピンポンパール”を大きなバケツの中に移してやる。『金魚に一番必要なのは砂や水草でもなく綺麗な水』『小さな器で飼うなら毎日水を全部交換してあげて』等、淡々とアドバイスをしたさくらは卓弥に金魚の飼育本を渡しながら『金魚を観察してあげて病気にさせないことが重要だからね』と笑った。
すると、卓弥はさくらから受け取った飼育本を脇に置くと黙ってさくらのことを抱きしめた。『無事でよかった』と言う卓弥にさくらも『急にいなくなってごめん』と優しく応じた。
しかし、次の瞬間卓弥は勢いよくさくらの頬を平手打ちした。そして『これは黙っていなくなった分だ、他にもまだまだあるぞ』と凄むのであった。
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果敢に卓弥に言い返したさくらは殴る蹴るの酷い暴力を受ける
帰ってきたさくらを優しく抱きしめたかと思いきや、突然ビンタした卓弥。
だが、さくらは怯むことなく、『彼女(卓弥の不倫相手)にフラれたの?』と尋ねる。すると、図星だった卓弥は今度は拳でさくらの鼻を殴り付けた。
「生意気な口利くな 何が毎日水替えだ」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
「そんな手間かけられるか こっちは忙しいんだ」
そんな風に吐き捨てた卓弥の言葉が、全く愛情をかけてもらえなくなった自分とその結婚生活に重なって感じられたさくらは鼻血を流しながらも毅然と叫んだ。
「卓ちゃんのやり方じゃ金魚は腐った水の中でもがき苦しんで死んじゃうよ!」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
だが、そう言い返したさくらを卓弥は容赦なくまた殴りつけ、さくらが倒れるとその体を蹴りつけるのであった…。
ボロボロになりながらも豊田の元へ帰ってきたさくら…一方、卓弥はさくらの両親に離婚届に記入することを迫られていた
“金魚のとよだ”にいた豊田は憂鬱な面持ちを浮かべていた。あるオスとメスを同じ水槽に入れて自然交配をさせようとしたのだが、あまりにオスが乱暴で水槽の壁にメスを叩きつけ、メスの鱗がどんどんと剥がされていく。
常連客の井村に『どうするの?』と尋ねられた豊田はこう答える。
「よし…引き離そう」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
豊田は『乱暴者のオスとメスを一緒にしてしまったこと』を後悔している様だった。すると、豊田達の元へメスが逃げ込んでくるかのように水槽を飛び越えてきた。そして、それと同時に
顔と体も傷だらけでボロボロになったさくらが店に入ってきた。
金魚ではなくさくらに手を伸ばして抱きしめる豊田(金魚は常連客の井村がキャッチした)。『ダメだった?』と尋ねる豊田にさくらは『ダメでした』とだけ言い、“さくらピンポンパール”はさくらの両親が引き取ったことを告げるのであった。
一方、その頃…卓弥はさくらの実家にいた。裕福そうな家の中で離婚届を書かされた卓弥は『さくらさんはどこに…?』と尋ねる。だがそんな卓弥にさくらの父は『それは言えない』と答える。
「あの動画を見せられたらね」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
なんと、さくらは密かに自身が卓弥から暴行を受ける様子を録画していたのだ。
『自分が夫から愛されていない証拠を残すのは辛かっただろう』と怒りを滲ませるさくらの母。さくらの父は『真面目で正義感も強く、若いのに子供を望む君に感心してた』と残念そうに言う。卓弥は『今でもそう思っている』と食い下がるも、さくらの母は『それは自分の言うことを聞く家来を増やしたいだけでしょ』と一蹴し、さくらが卓弥の本性を見抜けなかったことを嘆く。そんな妻をなだめるさくらの父は穏やかな態度を崩さないものの、『卓弥くんも馬鹿じゃないから付き合ってるときは隠すんだよ』と嫌味を言う。すると、さくらの母は『本性がばれる前にと早く結婚したのね』と怒り、さくらの父は卓弥に離婚届に判を押すよう促す。
そんなさくらの両親を前に『さくらさんになんと詫びたらいいか…』と項垂れる卓弥。だが、さくらの母は『さくらを溺愛しているさくらの兄が今こちらに向かっているから自分の身の心配をしなさい』と言う。そして、さくらの父もこう言って笑うのであった。
「あの子は平気だよ」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
「たくましいから!」
実は卓弥との離婚に向けて準備を重ねていたさくら…今はただ、豊田との子供を望むのであった
実際、さくらはたくましかった。密かに卓弥のDVの現場を録画しただけではなく、実は1年以上前から離婚を視野に入れてこっそり卓弥の口座からお金を自身の元に移動させていたのだ。今後卓弥から財産分与されることなどを計算したさくらは『3年くらいはのんびり暮らせる』と考える。
金魚の様にひらひらしたベビードールを着たさくらはその格好のままベランダを歩き、何やら金魚を手に持っている豊田に『何をしてるんですか?』と尋ねた。豊田が人工授精と答え、自然に任せるとオスがメスをケガさせることがあることを説明し傷付いた金魚を見せると『金魚も激しいんですね』と驚く。
そんなさくらに豊田は『ケガは?』と心配そうに尋ねる。
「もう痛みはありません♪」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
ベビードールの裾を持ちながらそう言って笑って見せるさくら。豊田はそれを聞いて『良かった』と喜んで見せるが、『”離婚後300日問題”もあるし、そんな格好でうろつくのは危ない』と諭す。そして、さくらに『こんなおじさんでいいの?』と改めて尋ねた。
(離婚後300日問題…民法772条の規定により、離婚後300日以内に出生した子どもは遺伝的関係は問わず自動的に前の夫の子供と推定されてしまうことによって起きる諸問題のこと)
すると、さくらは『はい』とハッキリ答えて笑う。
「はやく欲しいなぁ…店長との赤ちゃん♥」
金魚妻 黒澤R 金魚妻②
そう言って豊田を求めるさくら。豊田は『さくらさんが一番激しい』と笑って応じる。
”金魚のとよだ”には『金魚の赤ちゃんがたくさんうまれました』という張り紙が貼られているのであった…。
以下、感想と考察
一度は卓弥の元に行くも、最終的に豊田のところへ帰って来たさくら…さくらの妊娠を暗示するラスト
冷たく身勝手な卓弥から逃げるように金魚屋の豊田の元に転がり込んできたさくら。しかし、卓弥が店まで探しに来て、そして自身の名前と同じ”さくらピンポンパール”を買ったことに動揺し、卓弥の元に帰って行く…というのが今回のお話。
…まあ、そんなに簡単に人間が変わるわけがないよね。卓弥の”さくらピンポンパール”に対しての飼育態度が全てを物語っている。強く欲して手に入れても、その後は大切にしない…典型的な”釣った魚にエサをやらない”タイプの男、卓弥。さくらが戻ってきたことを一瞬は喜び、抱きしめはしたものの自身の非を認めるような事はせず、全てをさくらのせいにして激しい暴力を振るう。ひええ。店長豊田もそんな卓弥の元にさくらを行かせてしまったことを後悔している感じがなんとも…。
しかし、最終的にはさくらは豊田の元に戻ってくることができ、ラストでは豊田の子供を妊娠していることが示唆されている。実際に『弁当妻~その後』では妊娠しているさくらの姿が描かれている。
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意外としたたかで逞しいさくら…さくらと卓弥の離婚について
しかし、ぼんやりとしている様なさくらが以外としたたかで驚いた。DVの証拠を見事に動画に収めただけでなく、事前に卓弥の口座からお金を少しずつ動かしていたとは。DV動画とあのケガの診断書さえあれば、容易に警察に被害届を出せる。被害届をちらつかせれば、かなり有利な条件で離婚できるだろう。その上、さくらは興信所を使って卓弥の不倫の証拠を持っていて、一方卓弥の方はさくらと豊田の関係に気付いていないし、仮に気付いたとしても証拠はない。さくらはかなり上手くやったと言えるだろう。
脇役がいい味を出す金魚妻…さくらの両親と常連のオッサン
それにしてもこの『金魚妻』シリーズは蘊蓄や脇役が良い味を出している。個人的にかなり好感を持ったのはさくらの両親。娘、さくらに激しい暴力を振るった卓弥に怒り心頭の迫力あるマダム風のさくらの母。そんな妻をなだめ、穏やかで人のいい笑顔を浮かべながらもさり気なく卓弥に嫌味を言うさくらの父。何と言うか良い夫婦だ。
そして、①のときからさり気なくいる常連のオッサン、井村。ボロボロのさくらが店に来たのに、『ここの金魚は元気だなー』と金魚を見ながら笑っていられる常連のオッサンがちょっと怖いのですけど…。単にスルー力が高いのだろうか、それともオッサンなりの気遣いなのだろうか。
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