互いにパートナーとのセックスレスに苦しむ吉野みちとその同僚の新名誠は互いに好意を抱くようになり体の関係を持たないという条件で付き合う様になった。
だが、みちは夫の陽一がセックスレス解消に向き合う事を約束したことから新名との関係に罪悪感を抱くようになり新名に別れを告げた。新名は別れを承諾するものの、内心ではみちへの未練で悩むこととなった。
一方、陽一はセックスレスを解消することをみちに宣言するものの、みちに対して欲情できず、無意識にプレッシャーをかけ続けるみちの態度に次第に追い詰められていくのであった…。
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Contents
以下、あらすじとネタバレ
他人に対して肩入れしない生き方をする陽一…自身が何故そうするようになったのかを思い返す
会社で陽一は社員達で行くビアガーデンの飲み会でのメインディッシュの希望を問われる。メインディッシュをジンギスカンか串揚げのどちらかに統一しなくてはならないというのだ。
ジンギスカンが嫌いで食べることが出来ない陽一。しかし、尋ねて来た女性社員の手元のメモからジンギスカンの方が圧倒的に票を集めているのを見た陽一は『ジンギスカンで』と答えるのであった。
その後、喫煙室で同僚の原田と共に煙草を吸っていた陽一。原田もジンギスカンが嫌いな様で、『なんでみんな、あんな獣臭いものを食べたいんだ』『ビアガーデン楽しみにしていたのに』と愚痴る原田に陽一は冷たく『会社の飲み会なんてそんなもんだろう』と答えた。すると、その言葉にしょげた原田はこう言うのであった。
「吉野って合理主義だよな 昔からそうなん?」
あなたがしてくれなくても36 ハルノ晴
「まぁ…でもお前みたいに考えられたらいろいろ楽だよなー」
その言葉に『そうかもしれない』と納得する陽一。しかし、一方でいつから自分がこんなに淡白な人間になってしまったのだろうと思い返す。
子供の頃、陽一はケンカする友人の仲裁をした結果殴られて歯が折れてしまった。高校生の頃は彼女が友人と喧嘩して悩んでいると聞いて、その相手に『仲直りしてやって欲しい』と言った。しかし、それを知った彼女は『余計なことをしないで』と激怒した。そんなことが積み重なって陽一は対人関係というものをただ、『面倒くさい』と感じるようになったのだ。
『誰かに対して”どうにかしなきゃ”とか”してあげよう”と思うのをやめよう』…そう陽一は決めたのだ。その事を思い出した陽一は、『それ以降人付き合いが楽になった』と思う。しかし、喫煙室を出て廊下で三島とすれ違うと気まずさを感じてしまうのであった…。
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陽一の妻、みちを見た三島は落ち込んでいた
一方、陽一と入れ違いに喫煙室に入った三島もまた気落ちしていた。それは、以前SNSを使って陽一の妻であるみちの会社の近くに行き、実際にみちを見てしまったためであった。
三島はみちを見て『優しく家庭的な感じで、奥さんにしたいタイプ』と感じた。だからこそ、こう思ったのだ。
よかった
あなたがしてくれなくても36 ハルノ晴
あんないい人そうな奥さん
これ以上傷つけなくて
三島はこれ以上陽一とは関わるまいと思っていたのだ。
三島の元に以前付き合っていた既婚男性から『会いたい』というメッセージが来る
その後、仕事を終え疲れた三島は帰宅し、一人酒を飲もうとしていた。すると、携帯にメッセージが届く。
見知らぬ番号から来た『お久しぶりです』というメッセージに三島は『どちら様でしょうか?』と問う。すると、相手は『北川です』と名乗った。
その名前を見た三島は動揺する。北川とは以前三島が不倫していた既婚の男性だったのだ。震える手で何とかスマホを持って要件を尋ねる三島。すると、北川は『また会いたい』と送って来たのだ。
すると、三島はカッとなって思わず携帯を壁に投げつけてしまう。
会いたいじゃねぇよ…!
あなたがしてくれなくても36 ハルノ晴
ヤりたいの間違いじゃねぇの!?
『妻とは上手くいっていない』と嘘を吐いて三島と付き合い続けていた北川。三島は『ウソでもいいから謝れ』とやり場のない怒りと悲しみに体を抱くようにして座り込んでしまうのであった…。
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会社のビアガーデンでの飲み会…喫煙所で陽一と三島は二人きりになってしまう
そして、ビアガーデンでの会社の飲み会当日。周りに合わせてジンギスカンに票を入れた陽一だったが、いざジンギスカンが焼かれ始めるとその臭いに耐えきれなくなって喫煙所に逃げ込んだ。
すると、そこには既に三島がおり、一人でタバコを吸っていた。気まずさを覚えながらも今さら引き返すわけにもいかず、陽一は『お疲れ様です』と言って横に並ぶ。
そして、以前に三島に言われた『他人への想像力が足りない』という言葉を思い出し、自分の生き方が間違っているのかと考える。
自分が嫌な思いをしないように防御してたのが他人への無関心を通り越して
あなたがしてくれなくても36 ハルノ晴
無神経になってた…?
そう気付いた陽一。三島が何か自分に怒りを感じていることは分かっているものの、それが何故なのかはハッキリ分からない。しかし、それはただ、今までの自分の無神経な行動のツケが回って来ただけなのだということは理解できた。
「三島さん」
あなたがしてくれなくても36 ハルノ晴
「オレきっと無意識に三島さんを傷つけてきたんですよね?」
唐突にそう口を開いた陽一に三島は驚く。しかし、落ち着いて『そうだね』と返し、こう続ける。
「…私、女として軽く見えるかもしれない。でもね」
あなたがしてくれなくても36 ハルノ晴
「少なくとも何の好意もない人と寝たりなんてしないから」
泣きそうな笑顔を浮かべながらそう陽一に告げた三島。三島の好意に全く気付いていなかった陽一は絶句する。三島の気持ちも分からず勢いで関係を持ち、挙句に『好きな人はいないんですか』等と聞いてしまった…そんな自分の無神経さに愕然とする陽一。
そして、陽一は『無神経な行動で三島さんを深く傷付けてしまいすいませんでした』と頭を下げ謝罪するのであった。
陽一からの謝罪で三島の心は救われる
陽一の謝罪にまたしても三島は驚くも、どこか嬉しそうに『うん』と頷き、『私も吉野君に言いたいこと言ったし、これでこの話は終わり!』と明るく言い、一緒に飲み会に戻る様に促すのであった。
三島は今までもずっと自分がしょせん既婚者と不倫した立場であるという事はよく理解していた。だから、相手の妻からならいくらでも罵倒されてもいいと思っていた。しかし、その一方、どこかでいいように自分を扱う男性達に怒りと悲しみを覚えていたのだ。
でも私だって傷つくって事わかってほしかった
あなたがしてくれなくても36 ハルノ晴
だから少し救われた気がした
そのため、陽一の謝罪は三島の今までのそんなわだかまりを少し梳かしてくれたのであった。
飲み会に戻った三島と陽一は気まずさがなくなり、互いに気楽に会話をすることができた。ジンギスカンが苦手だという陽一に三島は『食わず嫌いしないで食べてみたら?』と言い、陽一はしぶしぶ三島が差し出してきたジンギスカンを食べてみた。
『上手い…』と答えようとした陽一だが、結局獣臭さに耐えられずジンギスカンを吐き出し、そのままダウンしてしまう。しかし、ジンギスカンのせいで吐き気に悩まされるものの、不思議と気持ちの楽になっていたのであった…。
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以下、感想と考察
今までの自分の態度を反省した陽一
今回は陽一が今までの自分の態度を反省する回だった。対人関係の失敗は誰にでもあることだけど、陽一はその経験から『誰かに対して”どうにかしなきゃ”とか”してあげよう”と思うのをやめよう』と考える様になり、他人に肩入れをしたり、心中を慮ることを避けるようになってしまったのだ。…一応、身内となったみちにはある程度の気遣いはしているのだけど、対人関係については全般的に引き気味で面倒くさいと思うと逃げる癖がついてしまっている。みちとの”セックスレス”についての話し合いを避けるのもこれが大きい気がする。
しかし、同僚の原田の言葉によって自身の対人関係における態度を見直すことになった陽一…珍しく原田が役に立った。
『自分が嫌な思いをしないように防御してたのが他人への無関心を通り越して
無神経になっいた』と気付いた陽一は三島に今までの態度を謝罪したのだ。
…この反省がみちへの態度への改善につながるといいのだけど。
陽一の謝罪によって救われた三島…三島はもう陽一とは関係を持たない??
そして、その陽一の謝罪によって三島も救われる。
三島は既婚男性との不倫を繰り返してきたが、決して開き直っている訳ではなく罪悪感を持っている。だから、相手の女性から何と罵倒されても仕方がないと思っているし、特に陽一の妻であるみちの姿を見て『これ以上傷つけたくない』とまで思っている。ただの悪人だったり尻軽女なわけではないのだ。てっきり三島はみちに対して何らかの悪感情を持っていると思ったのだけどそうではなかったようだ。
そして、既婚者との不倫しか出来ない自身にコンプレックスを持っており、便利に遊びの女として自身を扱う男性達に言いようのない苛立ちと悲しみと持っているという複雑さ。
だからこそ、陽一の謝罪によって、そういってわずかだけれども救われる。
この一件で、三島と陽一はあの夜のことについては和解できたようだ。三島も救われたし、陽一もかなり精神的に楽になったようだし。
もちろん、不倫したことは許されないことだけど、これは互いに墓場に持っていって、ただの会社の先輩後輩として良好な関係を続けた方がいいのだろうな…。蒸し返しても誰も幸せになれないし…。
三島さんの不倫相手の名前って…??岩井雄二??北川??
ちなみに…本編とあまり関係のない事だけど今回三島にメッセージを送って来た、三島の元カレで既婚者だった眼鏡の男性…私この人の名前をてっきり”岩井雄二”だと思っていたのだけど違ったのかしら??
というのも28話目でこの人の話が出てきた時、『妻に勘付かれたからもう会えない』と携帯にメッセージを送って来た人の名前が”岩井雄二”だったから…。
三島の独白的に、三島が既婚者と交際したのは1回だけではなさそうだから、『妻とは上手くいっていないと言いながら、家の近くで妻と手を繋ぎながら歩いていた』”北川”と『唐突に別れを告げた』”岩井雄二”は別人なのかな??でも、28話は『既婚者と交際する』→『相手から唐突に別れを告げられる』→『思わず家の近くまで行ってしまう』の流れであると考えた方が自然だと思うんだよね…。三島さんも今さら連絡をしてきたことに腹を立てている様子だったし。脇役過ぎて作者が名前を一度出したことを忘れてしまって、別の名前をつけてしまった???
まあ、”岩井雄二”と”北川”が別人だとしても、矛盾はしないけどね…。北川の番号を登録していなかった(あるいは登録外の番号から連絡が来た)のも、北川が本当は妻と仲が良いことを知った三島の方から連絡を断っていたため…と取れなくもないからね…。13話で三島は『去年色々あって友人達と距離を置いた』と語っているし。
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