【漫画】平凡な主婦 浮気に完全に勝利する【感想・ネタバレ】”サレ”側の勝利条件について考えさせられるハウツー本

平凡な主婦浮気に完全勝利する

何だか3か月に1回位のペースで不倫についての大きな報道がされている気がする。やっぱり不倫は芸能界で輪番制なんじゃないのかとか疑いつつある今日この頃である。それにしても某棒俳優の不倫にしろ、某多目的トイレ芸人の不倫にしろ、今日ではネットやSNSの発展もあって、一般人の間でももの凄い盛り上がりを見せ、一億総コメンテーター化とでもいうべくやいのやいのと人様の家庭問題に持論を述べている。

そして、SNSにしろネットの家庭板にしろ『不倫されたら離婚”するべき”』と強硬に主張する人達が以前から一定数いる。『私だったら離婚するかな』『離婚した方が良いと思う』という感想を言うに留まらず、『浮気されたら離婚一択!』と声高に叫び、浮気された芸能人やネットの相談者が離婚を迷ったり再構築を選んだりすると、『信じられない、すがってるの?』と一転して非難する。どうにもこの手の人達は『不倫されたら相手からガッツリと慰謝料をぶんどってスッキリして離婚できる』と思っている節がある。実際は裁判で配偶者の不貞行為を立証するのは簡単ではなく、仮に立証したとしても配偶者とその不倫相手から取れる慰謝料は大したことがない。慰謝料だけで左うちわの生活ができるなんてのはハリウッドセレブの妻にでもならない限り難しい。その上、離婚は精神力も体力も消耗するし、子供がいたりなんかしたらもっと複雑になる。そもそも、誰もが浮気・不倫された瞬間に愛情が消えうせるわけではないのだ。更に、現実社会には上記とは逆に未だに『ちょっとの浮気くらい許してやるのが妻の甲斐性』『離婚なんてみっともない』みたいな化石の様な価値観を持つ人間も少なくなく当事者を惑わしたりもする。

もしも配偶者に不倫サレてしまったら…離婚するにしろ、再構築を選ぶにしても結局のところ、そういった現実を踏まえた上で外野のヤジを聞き流しながら自分にとってベストな着地点を手探りで見つけていかなくてはならないのだ。

…またまた枕が長くなってしまったが、今回紹介したいのは、夫の不倫に対して”完全勝利”出来た実体験を綴った『平凡な主婦 浮気に完全に勝利する』である。漫画、絵は『夫の扶養からぬけだしたい』のゆむい氏、原案者は彼女の友人だと言うSOMAN氏だ。

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Contents

以下、あらすじ

真面目で優しいはずの夫が浮気!?完全クロなLINEのやりとりを見たミキはすぐに探偵事務所に依頼する

大手広告代理店に勤めていたミキはそこでヒロキと出会い、職場恋愛の末に同棲・結婚し、専業主婦となった。広告代理店勤めの男性としては珍しく、酒もタバコもギャンブルもせず、真面目で穏やかで優しいヒロキ。ミキはそんなヒロキを深く愛しており、彼が激務のために共に過ごせる時間が少ないことを寂しく思いながらもパートや趣味に精を出し、幸せな日々を送っていた。

しかし、結婚2年目のある朝、仕事から帰宅したヒロキがシャワーを浴びていた時のことであった。洗面所に置かれていたヒロキの携帯のアラームが鳴り、気がつかない彼の代わりにミキが止めた瞬間、LINEのポップアップ表示が画面に浮かび上がったのだ。”花岡良子”という名の女性からの『こないだ楽しかったです♡』というメッセージ…仕事相手にしては少々馴れ馴れしい文面に違和感を抱いたミキはLINEを開くことにした。

すると、そこには『私の全身がヒロキさんを求めています』『俺でいいの?』『この間ヒロキさんが寝ているときにチューしちゃいました』等々…明らかに体の関係を持っているやり取りが大量に出てきたのだ。

怒りとショックからその場にへたり込んでしまったミキ。しかし、ミキはいわゆる火事場の馬鹿力が出るタイプでピンチに強く行動力がある性格だった。すぐに冷静さを取り戻したミキは『あの真面目なヒロキが浮気をするということは、きっと本気だし離婚することになるだろう』と考える。

「離婚だ!離婚するぞ!!」
「そうとなったら探偵だ!!」

平凡な主婦 浮気に完全勝利する 漫画:ゆむい 原案:SOMAN 24−25/180

そう決心したミキは早速その場で実母に電話し、『ヒロキが浮気したから探偵を雇いたい。だからお金を都合して欲しい』と頼む。探偵会社に縁はなかったが、費用が高いというのは聞いた事があったためだ。とりあえず、母にそれだけ伝えるとミキは内心悶々としながらもパートに行き、仕事が終わると早速母と共に探偵社を探すのであった。

調べると探偵社は色々と出てきたものの、『今日中に相談に行けるところが良い』と希望するミキは『即日調査可能』と謳っている“RCL探偵事務所”に目をつけ、その日の18時にアポを取る。母はミキの行動力に驚きながらも一緒にRCL探偵事務所に向かった。

事務所に向かうと、元刑事だという中年男性の所長、園田と優しい雰囲気の女性相談員の増田が暖かく出迎えてくれた。早速ミキが事の経緯を説明すると、園田は『女性の勘は当たる』とまずクロで間違い無いだろうと答える。

そして、園田と増田は分かりやすく事務所のシステムを説明する。RCL事務所は基本的に浮気調査では1〜5名の探偵が尾行し、隠しカメラ等を駆使して浮気の証拠を抑え、スマホの画面を確認したり、パスコードまで見破ることができるという。それを聞いたミキはただただ感心する。

しかし、増田が『自分たちが証拠を押さえたとしても依頼者の8割は修復や維持の道を選んでいます』と言い、ミキは『なんでですか』と叫んでしまう。

そんなミキに女性は経済力がないため、特に子供がいたりすると夫をATMと割り切って諦めてしまうケースが多いからだと増田は説明し、ミキは複雑な気持ちになりながらも納得するのであった。

そして、園田と増田はミキに『48時間150万円のチケットのコース』を勧める。150万円と聞くと高額な様に感じられるが、2時間単位でチケットを使う形で、使わなかったらその分は返金する仕組みだと言う。さらに、園田はヒロキの浮気の現場がラブホテルといった分かりやすい場所ではなく、相手の花岡良子の家であることから『一定時間継続した肉体関係があるという状況証拠』を押さえなくてはならないことを説明する。それを聞いたミキは『48時間150万円のチケットのコース』を契約することを決意し、RCL事務所と共に戦う決意をするのであった。

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探偵事務所と契約したミキは早速尾行の日付を決めるも、読みが外れた上、ヒロキがずっと花岡と過ごしていたことを知り落ち込む

RCL事務所と契約したミキは早速、ヒロキの尾行の日を決める。この日は日曜日であった。ミキは『なんとなく、今日月曜日と明日火曜日はない気がする。水曜日もイベントがあると言っているから無い気がする』と答えたため、本格的な尾行は水曜日以降にすることとなった。また、事前に探偵にヒロキの姿形を覚えさせるために水曜日の朝、元々ミキとヒロキがカフェに行く約束があったので、そこに乗じて探偵に尾行をさせることを決め、ミキと母は探偵事務所を後にするのであった。

探偵事務所を出たミキはかなりの興奮状態で『150万という高い金を払ったのだから浮気してほしい、いやしないでほしい』という複雑な思いを抱き、その晩眠ることができず、『今の私は可哀想だ』と思うのであった。

翌日、火曜日。ミキはストレスから食事の味を感じられなかったもののヒロキに対してもいつも通りの態度を貫き、仕事でも友人との飲み会でも明るく楽しげに振る舞った。

そして、探偵に姿を覚えさせる水曜日の朝がやってきた。その日も仕事を理由に朝帰りしてきたヒロキは約束のカフェに行くため、慌ててシャワーを浴びにいく。その隙にスマホを確認したミキは絶望する事となった。

なんと、ヒロキは昨日と今日の二日間、花岡の家で夜を明かしていたのだ。自分が探偵に会いに行った日からついさっきまでよその女とよろしくやって、これから何事も無かったかの様に自分と一緒にカフェに行こうとしているヒロキ…。ミキは絶望しながらも花岡とのLINEのやりとりを証拠として撮影し、態度に出さない様に耐えて、ヒロキと一緒にカフェに向かうのであった。

カフェへと向かう道すがら、さりげなく背後を振り返ると、約束通り探偵らしき男性がミキとヒロキを尾行していることがわかった。いつも通り優しい態度のままのヒロキを見て『相手の女にもこの愛想を振りまいていたのか』と考えると流石のミキも憂鬱になってしまった。

そして、その後パートの合間にミキはRCL事務所の増田に電話し、『明日の尾行はいらない』と告げ、ヒロキが月曜日から今日にかけて花岡のところで過ごしており、やりとりからして次の逢瀬がどうやら週末であることを語った。増田はミキの落ち込みを汲んで『今が一番辛いと思うけど頑張って』と優しい言葉をかけるのであった。

その晩、ミキは友人と新宿で酒を飲んだ。沢山飲んではしゃぐミキ。しかし、話したら泣いてしまいそうでヒロキの浮気のことを打ち明けることは出来ず、友人と別れると途端に孤独さに打ちひしがれる。

ふと、ヒロキが今日新宿で髪を切る予定なのを思い出したミキは『南口にいるから一緒に帰ろう』とメッセージを送る。すると、ヒロキからすぐに『いいよ』と返事が来て、ミキはヒロキを待つことにする。だが、濃厚だったここ数日のことを考えると突然涙が出て止まらなくなってしまうのであった。

耐えきれなくなったミキはヒロキに怒りをぶちまけてしまう

慌てて涙を止めようとするミキだが、涙は止まらない。すると、そこにヒロキがやってきてしまい、『何で泣いてるの?』と驚き尋ねる。そんなヒロキを前にミキの気持ちは爆発する。

「花岡さんの所に行ったらいいじゃん!!浮気してんでしょ!!」
「耐えられない耐えられない離婚する!!」

平凡な主婦 浮気に完全勝利する 漫画:ゆむい 原案:SOMAN 66-67/180

ミキの突然の叫びにヒロキは一瞬呆然とするものの、すぐに『本当にごめん』『離婚したくない、花岡さんのことは本気じゃなかった』と慌てて謝罪する。すると、ミキは泣きながらヒロキに自身のスマホを差し出し、その場で花岡に電話を掛けさせる。ヒロキは狼狽えながらミキのスマホで花岡に電話し、『奥さんはもう全部知ってるからもう会うことはない』と伝える。すると、今度はミキが変わって『もう二度と連絡したり会ったりしないでください。また連絡します』と告げる。電話の向こうの女性は言葉少なに『すみませんでした』とだけ答えるのであった。

花岡との電話を終えると、ミキは『ふざけんなー!!』等と大声でヒロキを罵倒し始め、ヒロキは集まってきた野次馬から逃げるために急いでタクシーを止め、ミキ連れて乗り込む。

ミキはタクシーの中でも泣き叫びヒロキを罵り続け、探偵を雇ったことも言ってしまう。ヒロキは『気の迷いだった』『本当にごめんなさい』と謝り続け、タクシーの運転手はただただ気まずそうに運転をする。

「まだ「花岡さんのことが好きになった離婚してほしい」なら分かるよ 意味わかる」
「でも「浮気はします離婚はしたくありません」って最低すぎるよね!?」

平凡な主婦 浮気に完全勝利する 漫画:ゆむい 原案:SOMAN 71/180

言いたいことを全部言い切ったミキ。すると、ヒロキは項垂れて泣きながらこう答えるのであった。

「ミキちゃんと離婚したくないです…ごめんなさい…」
「花岡さんのことは本気じゃなかったんだ…」

平凡な主婦 浮気に完全勝利する 漫画:ゆむい 原案:SOMAN 72/180

その言葉を『ずるい』と感じるミキ。そんな風に言われてしまうと、流石にミキもヒロキを恨めなくなってしまったのだ。

『もし次に花岡と会ったり連絡を取り合ったら絶対に離婚する』…こうミキとヒロキは約束し、ミキはもう一度ヒロキを信じてみようと思うのであった。

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一週間以内にヒロキと花岡は再び連絡を取り合う!?探偵はそう予言しミキに花岡を訴えることを勧める

翌日の木曜日。150万円という大金を探偵事務所に支払ったにも関わらず、昨夜ヒロキに全てぶちまけてしまったミキはRCL事務所の増田に電話をし、今の状況を打ち明けた。すると、増田は『とりあえず会ってお話しましょう』と言い、ミキは土曜日に探偵事務所に向かった。

増田に事の顛末を詳しく語ったミキ。ミキはてっきりヒロキが花岡に本気になっておりミキとは離婚を考えていると思ったので、謝りすがるヒロキに戸惑い、最終的には『前向きにやり直していこう』と思うようになっていた。だが、同時に不倫された怒りと悲しみが消えることはなく、やり場のない感情に苦しんでいた。

そんなミキの話を聞いた増田は『旦那さんはとても反省していらっしゃるんだとは思いました』と言いながらも、ハッキリとこう告げた。

「1週間以内には女から連絡がくるか 旦那さんから連絡すると思う」

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増田の言葉にミキは思わず『前向きになろうとしてるのになんでそんなことを言うんですか』と泣きながら突っかかってしまう。しかし、そんなミキに増田は申し訳なさそうにそれが年に1000件以上浮気を見ているプロの意見であることを告げる。盛り上がり楽しんでいた二人が妻に見つかったからといって、急に関係を絶てるものではないのだと。

そして、増田はヒロキの不倫相手である花岡を訴えることを勧める。不倫をする様な若い女性は訴訟でも起こさない限り反省しないと言うのだ。

それに対してミキは戸惑う。ミキは花岡の人となりを知らず電話でほんの少し話しただけであったが、どちらかと言うと『ヒロキに騙された若い可哀想な女の子』というイメージを持っており同情すらしていたのだ。

『花岡にはもう浮気しないという念書にサインさせるのはどうだろうか』と提案するミキ。すると増田は『念書を書かせても不倫を認めたという証拠にはなるが、念書自体に法的拘束力はない』『法的拘束力を持つのは公正証書だが、公証役場で手続きに則って作成することになり、そんな面倒臭いものにサインする浮気相手はまずいない』と説明する。

増田の話にミキは納得すると同時に落ち込む。そして、そんなミキに増田は更に『うちとの契約はまだ切らない方がいい』とアドバイスする。『ダミーの領収書を出すから、それを旦那さんに見せて、『私はあなたを信じて探偵との契約を解除した』と言って様子を見てください』と言うのだ。

増田から探偵との契約を解除し、残金を返金してもらった体の領収書を受け取ったミキはそのテクニックにただただ感心するのであった。

その後、ミキは増田の助言通り、ヒロキにダミーの領収書を見せながら『私は信じてるから探偵との契約を解除した』と語り、『今後は絶対に花岡さんと個人的に連絡を取り合わないで』『向こうからアクションがあっても全部無視して』と言った。ヒロキは『約束する。絶対に連絡を取らない』と断言する。

そして、ミキは花岡に『今回は慰謝料の請求をしないから、今後もう会わないという念書にサインしていただきます。』とメッセージを送り、花岡から『はい、すみませんでした』と返事が来る。ミキは花岡と直接会う約束を取り付けるのであった

花岡と対面したミキ。想像していた姿とは全く異なる花岡にミキは愕然とし…

喫茶店で花岡を待つミキ。ミキは未だに花岡に対して怒りや恨みより同情に近い気持ちを抱いていた。そして、それ以上に花岡がどんな女性か気になっていたのだ。キレイ系なのか、はたまた可愛い系なのか…?何かしらミキにない魅力を持っているからヒロキも夢中になったはずだ…そんなことを考えていたそのとき。ミキは『一ノ瀬さんの奥様ですか?』と声を掛けられ顔を上げる。

声を掛けてきた女性…花岡を見たミキは愕然とする。花岡は想像していたキレイ系でも可愛い系でもなく、暗い雰囲気をまとった不細工でガリガリ。メガネを掛けた地味な女性だったのだ。

『自分が男なら抱きたいとは思わない。こんなイケていない女にヒロキを取られたのか!』とショックを受けるミキ。

しかし、そんなミキの内心の葛藤を知ってか知らずか花岡は淡々と『本当にすみませんでした』と謝罪する。ミキは探偵事務所の増田にアドバイスされた通りに誓約書を用意してきたので、花岡にサインする様に求め、また免許証のコピーを渡すように求めた。

事前に言われていたため免許証のコピーをちゃんと用意していた花岡。しかし、『一人暮らしを始めてから免許を更新していないから』と言って合わせて電気料金の請求書も渡してきた。

『それじゃあこの免許証のコピーに書いてあるのは実家の住所なの!?』と驚くミキに花岡は淡々と『はい』と答える。

『この人はアホすぎる』と呆然とするミキ。花岡は怒ったミキが親を巻き込む可能性等をまったく考えていない、または頓着していないのだ。しかも、花岡の年齢は28歳と、決して若くない。ミキは花岡に対して『若い女の子が既婚者の男に騙された』『あるいは、若い女の子がスリルを求めて既婚者と付き合った』というイメージを持っていた。しかし、目の前の花岡はそんなイメージから程遠く、『先が読めないバカ』『あるいは反省が無さすぎてこんな感じなのか』と困惑する。

だが、花岡が机の上の伝票を取り支払いをしようとすると、ミキは強い口調で『そういうのやめてください』と止める。花岡は『今日の件は私のせいなので』と食い下がるがミキは『私が払います、帰ってください』と睨み付ける。すると、花岡は改めて『本当にすみませんでした』とミキに頭を下げ去っていくのであった。

ミキは花岡に『ヒロキと再び会ったり連絡を取り合ったら違約金200万円を払う』と約束させることができたのであった。

しかし、花岡がいなくなるとミキはどっと疲弊する。花岡に何かしら女として尊敬できる点があって欲しかったミキ。花岡にはそんな点を見つけることが出来ず、『せめてもっと美人な人と浮気してほしかった』と複雑な気持ちになるのであった。

その後、ミキは元から約束していた友人の家に遊びに行く。友人の家には乳児がおり、他の友人達も集まり和やかで楽しい時間が過ぎていく。一瞬話題として夫の不倫や花岡のことを打ち明けようと迷ったミキだったが、結局やめるのであった。

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こっそり連絡を取り合っていたヒロキと花岡…ミキの怒りは頂点に達する

ミキが花岡に会った翌週のことであった。朝目覚めたミキはリビングのソファにヒロキのスマホが放置されているのを発見する。ヒロキはまだ寝ており、ミキはスマホを覗き見する。

すると、LINEには花岡からのメッセージが届いていた。『違約金200万円を取られてもいいから会いたい』というのが花岡のメッセージだった。しかし、ヒロキはそれに対して返事をしていない…そうミキが思った時だった。ミキはふと“ショートメール”のアプリが目につき、『まさか…』と思いながら開いてみた。

すると、そこにも花岡から『会いたい』というメッセージが届いており、それに対してヒロキは『奥さんを選ぶからもう会えません』と反応と返事をしていたのだ。

それを見た瞬間、ミキは怒りで震え上がり、『終わりだ』と呟きながらそのやりとりを自分のスマホで記録する。

個人的に連絡を取り合わないって約束したのに
どんな内容であれ私に相談もなく連絡取り合うなんてあり得ない
私は死ぬ気で信じようって踏ん張ってたのに
つらかったのに
また裏切られた

平凡な主婦 浮気に完全勝利する 漫画:ゆむい 原案:SOMAN 94/180

そして、証拠を取り終わったミキはまだ眠っているヒロキを起こし『今すぐ出てって』とスマホを投げつけた。瞬時に状況を理解したヒロキは慌てて『ごめん、ミキちゃん』とすがり付くが、ミキはそんなヒロキをパジャマのまま家から押し出し、スマホと服を投げつけドアを閉める。

その直後、すぐに花岡に『約束した通り違約金200万円払ってもらいますから、今日お金を持ってこれるだけ持ってきてください』と告げ、花岡は『はい』とだけ答える。夜、以前の喫茶店で花岡と会う約束を取り付けた。

次にミキが電話したのは義母…ヒロキの母だった。ミキが単刀直入に『ヒロキが浮気し、一度許したのに約束を破ってまた相手と連絡を取ったので離婚します。戸籍謄本を送ってください』というと、義母は落ち込んだように『ごめんなさいね』と謝り自分が戸籍謄本を持っていくから3人で話し合いたいと言う。しかし、ミキは『これは2人のことなのでお義母さんは関係ないです』とハッキリ断り、再度戸籍謄本を送るように迫った。義母はミキの意思の強さを感じ、『分かりました、今日戸籍謄本を貰ってすぐに送ります』と答える。

さらに、その後、ミキは実母に『今日離婚届取りに行くから一緒に来てほしい』と頼む。

それが済むと今度は探偵事務所の増田に電話し、増田の予言通り二人が連絡を取り合ったことを話す。

電話の向こうの増田はガッカリしたようだったが、『やっぱりねと思います』と答える。そして、これから花岡と会うと言ったミキに『冷静になるためにもお母様と一緒の方がいい』『殴ったり水をかけると一気に不利になるから気を付けて』とアドバイスするのであった。

11時。母と待ち合わせたミキは役所に離婚届を取りに行く。母は『ヒロキを疑い続けたまま一緒にいる方がキツいかも』というミキに寄り添い『ゴールを先に見つけて突き進んでいくのがミキの良いところよ』と励ます。母の言葉にミキは『離婚して良かったと言えるように頑張ろう。絶対に負けない』と決意するのであった。

離婚届をもらった後、ミキは母に増田から言われたことを話し、夜に花岡と会うときに同席してほしいと頼んだ。母は緊張しながらも承諾してくれ、夜、共に喫茶店で花岡がやって来るのを待った。

現れた花岡は先週とは打って代わった敵対心丸出しの態度だった。

そんな花岡にミキは『やってやろうじゃないの』と内心で呟いた。そして、早速『お金はいくら持ってきました?』と尋ねた。

だが、花岡は『200万円払うけど、今日はお金を持っていない。母親には相談したけど、すぐには用意できない』と答える。そして、ミキが『ここまで来る電車賃を払えるのに全くお金を持ってこないのはおかしい。少しでも払うのが誠意でしょう』と詰ると黙りこんでしまう。

話にならないと思ったミキは『誓約書を持ってきたのでサインしてください』と促した。新たに用意した誓約書はまたヒロキと会ったり連絡を取ろうとしたら違約金500万円の支払いを求めるというものであった。

さすがに前回の2倍以上の額であるためか、誓約書を読んだ花岡は顔をしかめて目を反らす。その後、30分も沈黙を続けたが、とうとう観念したのか大きなため息を吐きながら誓約書にサインをした。

そんな花岡を見たミキは心底呆れる。不貞行為がいけないことだというのは法律で決まっている。それを分かった上で一線を越えたのではないか。それなのに不貞腐れてまともに謝らず、金すら持ってこない花岡。その筋の通らない行動にミキはただただドン引きするのであった。

離婚したくないというヒロキにミキは『また浮気して離婚する場合は3000万円を支払う』と約束する公正証書に署名捺印することを条件に再構築を選ぶ

喫茶店から帰宅したミキ。すると家の中にはヒロキがおり、ミキを見るなり土下座で謝罪。『ごめんなさい、花岡さんにはただ別れをちゃんと言おうと思ったんだ!』と泣きながら説明するヒロキ。だが、ミキは淡々と『無理無理、離婚!』と離婚届を差し出し、『別れを言うためだったとしても連絡が来た時点で私に返事していいか聞くべきだった』と言う。ミキはこの1週間、ヒロキを信じようと必死で、『二人が連絡を取り合いませんように』と祈っていたのにヒロキはそれを裏切ったのだ。許す気になんてなれなかった。そして、そんなヒロキにすがるようなみっともない真似はしたくなく、自分で自分を格好いいと思えるようにすっぱりと離婚したかったのだ。

だが、ヒロキは泣き叫びながらミキにすがりつき続ける。『魔がさしただけ』『本当に好きなのはミキちゃんだけ』と一向に離婚届にサインしようとしない。

ミキはそんなヒロキの姿にイライラすると同時に少し揺れ始める。『また騙されて浮気されたらどうする』と自身に言い聞かせたそのときだった。ふと、探偵事務所の増田が語った”公正証書”の話が脳裏に蘇ったのだ。

そして、あることを閃いたミキは土下座するヒロキに『分かった』と言う。

『私が信じられるのはヒロキの言葉じゃなく態度と行動だけだから、とりあえず離婚届は書いて。でも、預かるだけですぐには出さない。私がもう信じられないと思ったらすぐに提出する』…そう告げたミキ。それが再構築する一つ目の条件だった。そして、二つ目の条件は

「で、【離婚したら私に3000万円の慰謝料払う】そういう書類にサインして」
「ただの約束じゃない 法的拘束力がある公正証書」
「一緒に公証役場に行ってサインして それなら離婚しなくてもいい」

平凡な主婦 浮気に完全勝利する 漫画:ゆむい 原案:SOMAN 115/180

この条件を飲んで離婚しないか…もし今すぐ離婚するなら慰謝料は請求しないというミキ。すると、ヒロキは即答する。

「その条件のむ!サインする!だから絶対離婚したくない!」

平凡な主婦 浮気に完全勝利する 漫画:ゆむい 原案:SOMAN 116/180

ヒロキのその言葉に動揺するミキ。この条件さえ出せばヒロキは諦めて離婚を受け入れると思っていたのだ。ミキは焦って『公正証書だから本当にお金を差し押さえられるんだよ?』と説明するがヒロキは『それの誠意だから』と泣きながら答えるのであった…。

翌週、ミキとヒロキは公証役場に二人で向かった。公証人の中年男性はミキから『離婚するかどうかは分からないけれども離婚したら夫が私に慰謝料3000万円支払うという内容の公正証書を作ってほしい』と言われると難色を示す。こういった公正証書はすぐに離婚届を出す前提で作られるものなので、いつ離婚するか分からないというハッキリしない状態で作るのは難しいのだ。

それを聞いたミキは『一生ではなく3年間と期限を決めるのはどうだろうか』と提案し、公証人も『2年なら作れる』と答えた。しかし、公証人は3000万円という額の大きさに驚いているようで、『旦那さんは本当にいいの?』と心配そうに尋ねる。しかし、ヒロキは晴れやかに『大丈夫です』と答え、公正証書を作成させようとしているミキでさえ、『どこにそんな金があるの?』と疑問に思う。

最終的に『2019年8月1日まで(2年以内)に離婚したら、ヒロキはミキに3000万円支払う。まず頭金500万円はらってその後月に10万円以上ずつ支払う』という内容の公正証書を作る事でまとまった。

それから2週間後、公正証書が出来上がったため再び公証役場を訪れたミキとヒロキ。公証人は『二人でよく話し合って納得してからサインと捺印して下さい』と言うが、ヒロキは内容を確認するとためらうことなく公正証書にサイン捺印した。その様子にミキは驚くと同時に少し心が落ち着く。

ヒロキがここまでしてくれた、もう二度と私を裏切ることは無いという気持ちがあるのだろう…そう感じたミキ。そして、

最悪離婚になっても私には3000万円がある!
3000万円あれば新しい人生始められる!がんばれ!!わたし!!

平凡な主婦 浮気に完全勝利する 漫画:ゆむい 原案:SOMAN 122/180

いざとなったら3000万円もらえる…そう保険を掛けることができたことで、ミキは前向きになれるのであった。

ラスト~その後しばらく苦しみ、恨みのままヒロキをいたぶるミキであったが、最終的には許すことを決め、ヒロキと心穏やかに過ごせるようになった

しかし、その後予想していなかった苦しみがミキを襲った。公正証書の作成も済み落ち着いたミキはただ話を聞いてもらいたくて一部始終を友人達に打ち明けるようになったが、女友達は『浮気相手が仕事の関係者なんてまた顔を合わせるんじゃないの?』と不安を煽るようなことを言ってきたり、『私だったら離婚する』と感情的な意見を繰り返すばかりだった。結婚しているわけではない女友達の口から出る”離婚”という言葉はリアリティがなく、ミキはただ疲れてしまう。中には『浮気相手の名前教えて。同じ業界だから知ってるかも、顔を見てみたい』と無神経な発言をする者もいた。ミキは『見て私と比較するつもり?』と苛立つのであった。

一方、意外にも共感性の低い男友達の方が淡々とミキの話を聞いてくれることが多く、ミキは気持ちを吐き出すことが出来るのであった。

そして、どうしてもヒロキへの怒りや恨みが消化しきれないミキは時に友人との飲み会にヒロキを呼びつけ『コイツが浮気野郎です』と公開処刑をすることもあった。その帰り道には酔った勢いで『舐めるのも大概にしろ、死ねクソ野郎』とヒロキを罵倒し続ける。そんなミキに対してヒロキは怒ることもなく、ただ『ごめん』と謝り続ける。だが、ミキは『私はもっと苦しんだんだ』と満足することなく、LINEでも『生きている価値ない』等罵倒し続けて、クッションを投げつける等当たり散らす日々を一か月続けた。

だが、ミキの罵倒をただ受け止め続けるのを見たミキはある時ふと、『何回罵倒しても同じ。ヒロキはただ受け止め謝って傷付く。これ以上痛めつけても同じだ』と気付く。そう思えた瞬間、ミキは憑き物が落ちた様に冷静になり、『もう分かった』と言って土下座するヒロキの手を取り立たせ、許すことを決めたのだ。

それから2年の月日が経った。花岡への慰謝料については双方に弁護士が着いた結果、最終的に70万円の一括払いで合意に至り、決着が着いた(弁護士への費用を差し引いてミキの手元に残ったのは38万円)。公正証書の期限は切れたものの更新はせず、ヒロキに腕時計を買ってもらうことでお終いにしたのだ。

その後、傷が癒えたミキは夫の不倫に苦しむ友人に有益で前向きになれるようなアドバイスを出来る様になり、ヒロキとも以前の様に仲良く穏やかに過ごしている。

ヒロキが一緒にいたいという気持ちをブレずに持ち続けていたからやり直すことが出来たと考えているミキ。もし、またヒロキが浮気をしたら、それが本気であったら離婚するし、一時的なものならまたいたぶりまくった後に許すだろう…ミキはそう想像する。

しかし、ミキは今、ヒロキと一緒にいたいと思えており、辛かったけどあの浮気騒動のおかげで夫婦の絆が深まったとさえ考えているのだ。『夫婦としてこれからもずっと一緒にいたい…』そう思いながらミキは今日もヒロキと共に歩んでいくのであった。

~終わり~

以下、感想と考察

まずはストーリーに対する感想と評価から。

陰鬱な気分にならずに読める”サレ物語”

不倫された経験を描いているコミックエッセイは他にもあるが、それらと一線を画しているのは主人公(作者)の力強さだ。これには何よりも驚かされた。

タイトルで”平凡な主婦”と言ってはいるが、ここまでメンタルが強い人は中々稀有ではないだろうか。不倫をされてしまうと、多かれ少なかれ『私にも落ち度があったのでは…』と自分を責めてしまいがちである。しかし、この主人公のミキは”自己肯定感の塊女”と自称するだけあって、決して自身を責めずにガンガンと夫、ヒロキと不倫相手の女、花岡を攻めていく。その行動にはほとんど迷いがなくて、読んでいて最早痛快とも言っていいだろう。

どうしても”サレもの”は(勝手にこんな言い方で括っていいのかも分からないが…)、主人公が自分を責めたり病んでしまったりする場面が出て来て、読み手もそれに引っ張られて陰鬱な気持ちになってしまうが、本作はテンポが早いこともあってあまりそれがない。ミキも怒り泣き叫んだりするのだが、それをストレートにヒロキにぶつけまくるので、それほど気を揉むこともない。そして、ラストはミキが望む形での再構築となったため、ハッピーエンドと言って良く、読後感もいい。モヤモヤしないで済むのだ。

…まあ、それはヒロキが浮気がバレたことを知るや否やミキに全面降伏して、以降平身低頭の姿勢を見せ続けたことも大きいだろうけれども。ヒロキは『二度と花岡と連絡を取らない』という約束をしたにも関わらず、縋ってくる花岡に対してミキに無断で返事をしてしまうという”裏切り”をするものの、ミキ本人に対しては一切逆切れ等をすることなく、謝り続ける。

こういうことを比較するものではないだろうが、『不倫サレ日記。』の不倫夫の態度と比べると一読み手としてはまだ救われる。(『不倫サレ日記。』の不倫夫の態度は読んでいるこちらの神経が削られるくらいムカつくのだ)

参考記事
【漫画】不倫サレ日記。~結婚9年目で33歳子なし兼業主婦が不倫されてみた【感想・ネタバレ】~『サレ』た側のリアルと『誠意』について考える

そういうわけで本作は「落ち込んだり読後感の悪いものは読みたくない」という人にも薦められる”サレもの”なのだ。

戦略やテクではなく、気の強さと運で押し切ったと言える本作

とはいえ、色々と気になるところもある。

タイトルからして、『平凡な専業主婦が冷静に戦略を練って、様々なテクを駆使し、虎視眈々とタイミングを見計らって反撃に転じ、離婚にせよ再構築にせよ圧倒的に有利な条件で決着をつける話』を期待していたのだが、せっかく優秀な探偵社に巡り会えたのにものの数日でミキがヒロキにブチキレて浮気を知ってること、探偵を雇っていることを明かしてしまったのにはかなり驚いた…というより拍子抜けした。怒りのまま、ヒロキを罵倒し、花岡と連絡を虎内容に約束させ、花岡にも電話する…これはもう、とんでもない悪手である。まあ、花岡が良くも悪くもバカで、すんなりとミキの面会に応じ、実家の住所が書かれた運転免許証を見せ、現住所まで明かし『もし連絡を取ろうとしたら 払う』という念書にまでサインしたからなんとかなったが。

更に幸いだったのは、そんなミキに対して探偵事務所の相談員増田が寄り添い続け、適切なアドバイス(どんなに口約束させてもヒロキと花岡は二週間以内にこっそりと連絡を取り合う等)を与えてくれたことだろう。増田のこの予言は的中し、ヒロキは花岡からLINEのメッセージを受けるとこっそりとショートメッセージを返す。

(ここの描写については、ヒロキが関係の継続を求める花岡に対して『奥さんを選ぶからもう会えません』と断っているので、激怒したミキに「そんなに怒ること?」と疑問を持つ読者も多いかもしれない。しかし、ミキが作中述べているように、不倫はある種依存症の様なものなので、一見断っている体でもヒロキがミキに無断で花岡と連絡を取り合うこと自体が危険であり、認めてはいけないのだ。)

これに対して激昂したミキはヒロキに対して離婚を迫り、すがるヒロキに『浮気したら3000万円支払うと約束する公正証書を作成すること』を呑ませて再構築を選択。花岡からは最終的に70万円を支払ってもらう。

結果だけ言えば、ミキは浮気をしたヒロキからはとことん謝罪をされた上、2年限定ではあるものの再び浮気をした際にはキツイペナルティを課せることになり、その後満足するまでヒロキをサンドバッグにすることが出来た。花岡からは少額だがきちんと慰謝料をもらい、今は再びヒロキとラブラブになっている。公正証書の期限が切れた暁にはヒロキから高い贈り物をもらって愛を確かめている…確かに、世間がイメージする不倫した配偶者とその相手に対する制裁をきちんと押さえているうえ、ハッピーエンドなので、確かにタイトル通り”完全勝利”と言うことができるだろう。

しかし、上述した様に、それはヒロキが平謝り状態だったのと、花岡が賢くな方からなせたことだ。ヒロキが少しでも逆キレしたり、花岡がもう少ししたたかだったらこうはいかなかっただろう。後半でこそ色々と『完全勝利に向けたHOW TO』を書いてはいるものの、このミキ自体は戦略やテクなどではなく、本人の持って生まれた気の強さと運だけで押し切ったと言ってもいいのではないだろうか。

結局ヒロキと花岡さんの関係はなんだったのか

そして、ちょっと物足りなさを感じてしまうのが、ヒロキと不倫相手、花岡の関係があまり説明されていない点だ。花岡がヒロキの取引先の人間だったことは説明されるが、二人がどういう経緯で親しくなり、不倫中どんな心境だったのかは全く語られていない。三回体の関係を持ったとだけ。

まあ、これについて、ミキ(作者)は不快さからヒロキに聞いてないのかもしれないし、知っている上でムカつくからあえてかかなかったのかもしれない。この作品もフィクションではなく、実体験を元にしたコミックエッセイなのでそういったところまで求めるのは不粋と言えるのかもしれない。

ただ、あまりに作中の花岡の女性としての評価が低すぎて…。『顔も悪いし貧乳な上、若さも美意識も皆無で暗い』『負のオーラを纏っていて、アソコも潤ってなさそう』…夫の不倫相手だったということで憎さ増し増しで表現したのだとしても、あまりに凄まじく、一読者からしてもやはり「どうしてこの人と…」と思ってしまう。

ただ、ここでミキ(作者)が『何故ヒロキが花岡と関係を持ったのか』を追及してしまうと、最もやりたくない“自身の落ち度を考える→自身を責める”に繋がってしまうので、そこまで求めるべきではないのだろう。コミックエッセイはどうしても作者の主張したいことか全面に出て、作者自身が見たくないところには蓋がされてしまう。なので、それがコミックエッセイの特性だと割り切って受け止めるしかないのである。

形こそはコミックエッセイだが、どちらかというと軽いハウツー本に近い本作

というわけで、コミックエッセイとしてストーリー面についての感想を述べてきたが、そもそも私は本作を読んで最初に感じたのは「コミックエッセイというより簡略なハウツー本みたいだな」ということだった。言うなれば『マンガでわかる浮気対策』。全編通して、『浮気されても自分を責めるな!完全勝利を目指して闘おうぜ!』というテンションで、読者(サレた側)を応援し鼓舞する内容となっている。自己啓発本としての側面があるとも言える。

上述した通り、肝心なメインストーリーでは主人公ミキは戦略もテクも関係なく怒りと気の強さのみで押し切ったが、要所要所で探偵の仕事やテクニックが分かりやすく紹介がされており、後半は『完全勝利離婚のためのフローチャート』や浮気の証拠集めの詳しいアドバイス、示談書と公正証書の違いの解説等、ためになる知識が分かりやすく書かれている。

ミキが探偵から授かったテクニック…夫と不倫相手のLINEのやり取りを短時間かつ確実に記録するためには、スクショやカメラ撮影ではなく動画モードにして、スクロールしながら一気に撮る。その際は電話等の邪魔が入らないように機内モードにする…という知恵には目から鱗が落ちる。

また、不倫した配偶者に『探偵との契約を解除した』と嘘をつき油断させるために偽の領収書を出す等、本当に巧妙でただただ感心してしまう。

ストーリーを楽しむ…というより、こういった知識、考え方を学び自己啓発するという楽しみかたが出来るのだ。

サレた側の完全勝利とはなんだろう~意外にも『許すこと』を薦める本書

こんな感じで『浮気されたからって自分を責めるな。反省は後回しでとにかく今は配偶者と不倫相手をガンガン攻めていこう』というアグレッシブな内容の本書だが、意外にもストーリー面でもアドバイス箇所でも最終的には不倫したパートナーを“許すこと”の大切さを説いている。

しかし、それは『ちょっとの浮気を許すのが妻の甲斐性』等といった古い価値観から来るものではなく、『いつまでも怒りや悲しみを引きずると、傷が癒えずその後の自分の人生に前向きになれないから』というポジティブで前向きな理由で『再構築を選ぶなら、その後の人生を共にする相手としてフェアに扱う必要があるから』と至極真っ当なことを述べている。実際、怒りや恨みはエネルギーをかなり消耗し、人を病ませてしまう大きな要因となる。

とはいえ、人間は中々そう簡単に割り切ることは出来ないし、ミキ(作者)自身は、夫ヒロキに全面的に謝罪させた上に、再び浮気をしたら3000万円払うと公正証書に署名捺印させた上に、しばらくは罵倒しまくり、友人との飲み会に呼びつけて公開処刑しまくった末の故の“許す”なので、「そんだけボコればスッキリして許す気になれるだろうよ」と思わなくもない。

しかし、本作はこの“許すこと”について、ただ理想論を語るだけでなく、上手く許し消化するための具体的かつ納得できる手段(謝罪として何か形に残るものをもらう、気持ちを文章にして吐き出し整理する、夫に手紙を書く、カウンセリングを受ける等)も提案されているので、素直に聞き入れ実行しやすいのではないだろうか。

ちなみにミキ(作者)は臨床心理士にカウンセリングしてもらったが『全然平気だから帰っていい』と言われたとのこと。ツヨイ…。

まとめ~明るく読める、“サレ”向けのハウツー本

不倫された体験を綴ったコミックエッセイはいくつかあるものの、本作はそれらと比べても群を抜いてポジティブ、アグレッシブなため、この手の作品で感じがちな陰鬱さがほとんどない。主人公の行動に疑問を感じないこともないが、『とりあえず自分を責めるな。そんなの後回しで勝利を目指せ』というメッセージは強烈で、説得力もある。

ストーリーそれ自体がものすごく面白いというわけではないが(まあ、創作された話ではないので当然と言えば当然)、ハウツー本としての側面が強く、浮気された時に役立つ法知識や証拠集めのテクニックはもちろん、気持ちの整理の仕方や今後のどうするべきかの方針の立てかた等まで親切に記されている。

『もし配偶者に浮気をされたらどうするべきなのかを知りたい』という人や、『浮気をサレる系の話を読みたいけどイライラせずにスカッとするものを読みたい』という人には大変オススメできるコミックエッセイである。

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