【漫画】金魚妻~伴走妻【感想・ネタバレ・考察】マラソンにハマる夫と走るのをやめてしまった妻…すれ違う二人の行く末は…?

金魚妻4巻 表紙

“走る”という行為は楽しい。もちろん、走ると息切れもするし、筋肉痛になったりもするけど、走っているうちに自然とセロトニンやドーパミンが出て来て楽しくなる。案外辛いのは走り出した最初の頃だけなのだ。

それにランニングは最も原始的で簡単な趣味とも言える。一人でも出来るし、家の外にさえ出ればいつでもどこでも出来るのだ。

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Contents

以下、あらすじとネタバレ

100kmもの距離を走った夫、颯太とまだ走り足りない様子の妻の早矢。二人の間に何があったのか…

空いた酒の缶が大量に並んだリビング…。そこで真田颯太は床にぐったりと倒れ込んでいた。全身筋肉痛でもう動けなかったのだ。

『死ぬ…』と呻くように言う颯太を見下ろしながら妻の早矢は淡々と言う。

「そりゃ100km走ったらね」
「じゃ…私行くから」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

それを聞いた颯太はギョっとして『出ていくのか?』と尋ねた。

しかし、早矢は呆れたようにこう答えるのであった。

「違うよ」
「走るの!」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

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かつてはマラソンを趣味にしていた妻の早矢…夫の颯太は早矢に影響されてマラソンにはまったが…

話は少し前に遡る。

颯太の妻、早矢は元々颯太の会社の同僚であった。そして、早矢はプライベートでは優秀な市民ランナーで、フルマラソンでサブ3(42.195kmを三時間以内で完走する)を達成するほどだった。そして、颯太はそんな早矢に誘われて2年前からマラソンを始めた。

運動経験が全くなかった颯太だったが、コーチとなった早矢のトレーニングか良かったこともあって、わずか半年の間で颯太はサブ4(42.195kmを四時間以内)を達成することが出来たのだ。

これを期に走ることにハマった颯太は社会人マラソンサークルを立ち上げ、かつての自分の様な初心者ランナー達に助言しながら共に走るようになったのだ。

その日もサークルメンバーと共に走っていた颯太。走りながら女性メンバーの坂木和香に『フォームが良くなって来ましたね』と声を掛けた。長い髪をひとまとめにした和香は嬉しそうに『真田さんのおかげです』と答える。そんな和香に颯太は『次は大会にエントリーしてみましょう。坂木さんならハーフマラソンの距離でも行けます』と言う。すると和香は照れたように『真田さんがそう言うなら頑張っちゃおうかなー』と微笑むのであった。

走り終えた後、サークルメンバーはファミレスで打ち上げを行った。そこで飛び交うのはランニングに関する話で、『ランニングをするときにだけ好きな曲を聞くようにする』『このアプリがランニングに役立つ』といった話でメンバーは大盛り上がりする。

多くの人にとっては走ることは娯楽だ

金魚妻 黒澤R 伴走妻

楽しそうなメンバーを見ながらそう思う颯太。すると、横に座っていた和香が『仲間っていいですね。一人で走るのは寂しいですもの』と微笑みかけてきた。

だが、それを聞いた颯太は『そうですね』と答えながらも複雑な気持ちになる。

しかし 妻にとってのマラソンは…

金魚妻 黒澤R 伴走妻

2年前のマラソンを機に颯太がこんなに走ることにハマっているのに、反対に彼をマラソンへと誘った早矢本人はもう走ることをやめてしまっていたのだ…。

走ることをやめて酒浸りになってしまった早矢に高圧的な態度を取りぞんざいに扱う颯太

帰宅した颯太がリビングでプロテインドリンクを作っていると早矢が声を掛けてきた。

「来月友達の結婚式に招待されたの」
「行っていい?」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

そう笑顔でいう早矢に颯太は『来月って急だな』と答え、返事を出し忘れていたいたのかと尋ねる。すると早矢は『今招待状が来た』と言う。

それを聞いた颯太は『それは式に欠席者が出たからじゃないか?』と顔をしかめる。早矢は『よく分かったね』と驚く。

招待状を出してきたのは大学時代に同じサークルだった友人の女性で、元々出席する予定だった女友達が突然5人も欠席することになったのだという。

『懐かしいな、元気かな?』と笑う早矢に颯太は『明らかに欠員補充だろ!喜ぶなって!』と叫ぶ。そして、5人も直前にキャンセルしたことについて、『新婦の人間性に問題アリなんだろう』と指摘する。

それに対して早矢は『まあ、モテる子だったから色々あった』と認めながらも『私は結婚式が好きだから全然いい』と答える。だが、颯太はそんな相手に御祝儀を払うのがもったいないと『俺は反対』と言う。早矢が困ったように『颯太が怒ること?』と尋ねると、颯太はこう吐き捨てるのであった。

「まず最初に誘われない時点で友達じゃないだろ」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

その言葉に傷付いたように立ち尽くす早矢。そして、そのタイミングで携帯が鳴った颯太は早矢をおいて廊下に出た。

電話を掛けてきたのは坂木和香であった。和香は単刀直入に要件を切り出した。

「すみません 来週のマラソン合宿なんですが…」
「主人が一緒でも大丈夫ですか?」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

『主人が心配性で一人では外泊させられないと言っている』と暗に浮気を疑われていることを伝えてきた和香。内心困る颯太。合宿のために確保したホテルはもう満室でこれ以上参加者を増やすわけにはいかないのだ。

しかし、『早矢を連れていくのをやめればいいか』と颯太は思い直す。元々は妻である早矢も合宿に連れていくつもりで、自身の部屋はツインで予約していた。早矢を連れていかず、ツインの部屋を和香と夫に使わせ、自分は和香に使わせるはずだったシングルの部屋に泊まればいい…そう思い付いたのだ。そして、リビングで招待状を手にしたまま立ち尽くしている早矢をちらりと見た颯太。

まあ…頼めばわかってくれるよな…

金魚妻 黒澤R 伴走妻

すると、電話の向こうから『ちょっと』『やだ、もうこんな時に…』という和香の声が漏れ聞こえて来た。和香が男と会話していることに嫉妬した夫は、和香が電話中であるにも関わらず服を脱がせ体をまさぐり始めたのだ。

『もしもし?』とそんな和香に呼び掛けた颯太は夫も合宿に連れてきても大丈夫だと告げた。電話の向こうで夫に陰部を舐められていた和香は途切れ途切れに『いいんですか?』『夫も、いっ…いくっ、そうです』と答えた。颯太は『じゃあ、そういうことで』と電話を切り、『何やってるかバレバレだっつーの』と内心で悪態を吐く。

そして、一人リビングにいた早矢の元に行くと突然後ろから抱きしめた。『何?』と驚く早矢に颯太は『スキンシップ』と答え、そのままベッドに連れていくのであった。

またやってしまった

金魚妻 黒澤R 伴走妻

早矢を抱きながら、先ほどの結婚式の招待を巡るやり取りを反省する颯太。招待された経緯がおかしいものであったとしても、招待された張本人である早矢自身が気にしないのならば颯太がどうこう言うことではなかったのだ。先程の電話越しの和香の様子に興奮したことに加えて、傷付けてしまった罪悪感から早矢を悦ばせようとする颯太。『そんなことまでしなくてもいい』と早矢に言われてもなお、必死になる。

俺は… 俺は走る事を止めた妻に 再び走り出そうとしない妻に イラついている…

金魚妻 黒澤R 伴走妻

ある事が原因で早矢はただ走るのを止めてしまっただけでなく、アルコールに依存する様になってしまっていたのだ。颯太との行為の後、早矢はワインやチューハイ等様々な酒を外で買って来ると、ワインを瓶のままラッパ飲みする。

生きがいだった走ることが”拷問”に変わってしまった早矢は、まるで燃え上がる船から逃げ出す様に”酒の海”に飛び込んだのだ。

妻は自分が堕落することで
マラソンを拷問にかえてしまった犯人(おれ)に復讐しているのだろうか

金魚妻 黒澤R 伴走妻

そう思っている颯太。何故なら、早矢がマラソンを辞めてしまう原因を作ったのは、他ならぬ颯太だったのだ…。

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マラソン合宿で苦戦する坂木の夫に颯太は『マラソンは依存症を』

そして、マラソン合宿当日がやって来た。湖の周りを走るサークルメンバー達。そんな中、女性メンバー二人が走りながらヒソヒソ話をして笑い合っていた。

「ねえあれ 坂木さんの旦那さん?」
「なんかイメージと違う~」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

二人の前を走っていたのは坂木和香とその夫だった。若々しく美しい和香とは対照的に無精ひげを生やした夫は風采の上がらない、どこかだらしない雰囲気を漂わせた男性だったのだ。

まだそれほどの距離を走っていないにも関わらず夫は既に息が上がっており、和香に『アゴを引いて』、『また猫背になっている』等と厳しく指摘されていた。

この湖1周が約17㎞あることを和香から聞かされて『嘘だろ』と音を上げる夫。そんな夫に和香は冷たく言う。

「ストイックに走る妻に不倫の疑いをかけるなんて」
「罰として一周走り切ること」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

夫は疑っても仕方がなかったと言い訳をする。和香は雨の日も風邪を引いた日も走りに出かけていたため、マラソンを口実に何かを隠しているに違いないと思ってしまったのだと。

和香は『私がマラソンにはまったのはあなたの飲酒が原因』ときっぱりと言う。大切にしていた思い出のグラスを酔った夫が割ってしまったことがきっかけだっと。

グラスの件については反省しているといいつつも、『自分の飲酒なんて世のアル中の人達と比べればかわいいものだ』と言う夫。しかし、和香は真顔で『あなたはアルコール依存症です』と言い切る。ムッとした夫が『お前のマラソンだって依存症だろう』と言い返すと和香は『あなたがお酒をやめたら私もマラソンをやめてあげる』と微笑んでそのままペースを上げて夫を置いて先に行ってしまった。

『愛する夫を置いていくのかっ』と情けない声を上げる夫。そんな夫に後ろから一部始終を見ていた颯太が『坂木さん…』と呼びかける。ビクッとした夫に『お酒を飲まれるんですか?』と尋ねる颯太。颯太に全て聞かれていたことに気付いた夫は恥ずかしがる。

そんな夫に颯太がこの辺りがワインの名産地であること、夜にはワインの飲み比べを企画していることを告げる。それを聞いて一瞬喜んだ夫だったが、先ほど和香にアルコール依存症であると指摘されたばかりだったことを思い出し『ぐおおお』と苦悩する。だが、颯太は優しくこう言う。

「週に5日1日30分」
「有酸素運動をすれば依存症を克服できます」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

驚く夫に科学で実証されていることを説明する颯太。今一つ信じられない夫は逆に今の和香の状態について『あれは”マラソン依存症”と言えるのではないか』と尋ねる。

すると颯太は運動の依存症になる人は拒食症などに陥っている外見にコンプレックスをもつ人がなるもので食が細くなり痩せていき、その状態で運動をすることで気分がハイになることが特徴であることを説明し、『奥さんは違いますよね』と微笑んだ。

颯太の説明に一応納得は出来た夫。しかし、『毎日30分も走るなんて、やる気が起きないときはどうすればいいのか』と更に尋ねた。『それが考えどころなんですよ』と言い、前方で女性たちと談笑しながら颯爽と走る男性メンバーを指さし『あの男性何歳に見えます?』と言う。『40歳?』と答えた夫に颯太は言う。

「60歳です」
「走ると若返り効果もあります」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

驚愕する夫。しかし、女性に囲まれた若々しい男性メンバーを見て急にやる気が湧いたようで『1日30分続けてやる!』と叫びペースを上げて走り和香のところまで追いつく。和香もそんな夫に『あら!?』と言いながら嬉しそうに笑う。

そんな二人の姿を後ろから眺め微笑ましく思う颯太。しかし、ふと横に見えた階段を見て早矢のことを思い出す。

「脚作りには階段と坂道トレーニングだよ」
「颯太」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

かつて早矢はマラソン初心者だった颯太にそう教えてくれた。眩しい日差しを背中に、ランニングウェア姿の早矢は爽やかに微笑んでいたのだ。

早矢が走るのを辞めて酒浸りになった理由…東京マラソンに巻き込んできた早矢を颯太はコンプレックスから高圧的な態度で責め続けてしまい…

颯太は3年前に起こったこと…早矢の生きがいだった走ることを拷問に変えてしまった時のことを思い返す。

元々早矢は颯太と同じ旅行会社で働く同僚だった。そして優秀な市民ランナーだった早矢は、3年前の東京マラソンのチャリティ枠に会社の代表として選出された。

「颯太も一般でエントリーしてみたら」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

そう笑顔で誘って来た早矢。颯太は『やだよ、無理』と断った。颯太は早矢と違って運動経験が全然なかったのだ。

しかし、早矢が『走った後のビールは最高』と語ると他の同僚達が自分達も参加したいと言い出し、上司も『乾燥したら焼き肉をおごってあげる』と乗り気になる。早矢は自分のトレーニングメソッドさえあれば初心者でもサブ5(フルマラソンの距離を5時間で完走)の達成が可能であると豪語し、その場でPCから颯太を含めた同僚達の分のエントリーをしてしまう。

嫌がる颯太に早矢は『東京マラソンは毎年すごい倍率だから当たることはまずない』と笑う。

…しかし、結果的に抽選は当たり、颯太は嫌々東京マラソンに出場することになってしまったのだ。

強制されたマラソンは拷問だ

金魚妻 黒澤R 伴走妻

望んでいなかったのに東京マラソンに参加することになってしまった颯太に早矢は的確で丁寧な指導をし、一緒に走ってくれた。

しかし、面白くなかった颯太は些細なことでもケチをつけ、早矢を責めた。そして、無理やり走らされる苦痛を少しでも分からせたいと思ってこんな事を言ってしまったのだ。

「俺が完走できなかったら」
「早矢にはマラソンをやめてもらうからな!」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

ある日のトレーニング中、前を走る早矢にそう言い放った颯太。早矢は何も言い返さなかったが酷くショックを受けた様だった。

しかし、実際に走ってみると颯太はどんどん走る楽しさを理解し、ハマっていくようになっていた。だが、それを認めてしまうと早矢の思うつぼの様な気がして口に出すことはしなかった。

一方、早矢は颯太と共に走ることに消極的になっていった。颯太が『起きろ、走るぞ』と朝起こしても『あと5分』などと言ってなかなかベッドから出てこようとしない早矢。颯太は『自分が言い過ぎたせいだ』と自覚していた。

しかし、颯太は先の発言を撤回することも謝ることもしなかった。職場でも自分より優秀で人望がある早矢にコンプレックスを抱いていた颯太。『早矢に負けたくない』…そういう思いが捨てられず颯太は高圧的な態度で早矢に接し続けたのであった…。

そして、東京マラソン当日がやって来た。

沿道の人々からの声援を受けながら楽しい気持ちで走っていた颯太。その喜びを分かち合いたかった颯太は前方を走っていた早矢に『声援すごいな、なあ、早矢』と声を掛けた。しかし…。

今までゴメン
そう言おうとした時にはもう…
マラソンは妻にとって拷問になっていた

金魚妻 黒澤R 伴走妻

今まで颯太からずっと威圧的な態度を取られていた早矢は颯太に声を掛けられた瞬間、ビクっと体を震わせ、そのまま萎縮した様にペースダウンしてしまったのだ…。

そして、その後、早矢は走らなくなっただけでなく、仕事までもやめてしまい、酒浸りになってしまったのだ。

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マラソン合宿の打ち上げ後、坂木夫妻の様子を見て反省した颯太は早矢に今までの事を謝罪し、そして100㎞離れた早矢の元まで走って向かうのであった…。

夜、ホテルで打ち上げが行うサークルメンバー達。

和香の夫も無事に湖を一周することができ、『マラソン最高!』とビール片手に上機嫌ではしゃいでいた。他のメンバー達も夫を『よく一周できましたね』と褒めちぎる。

颯太が『旦那さん面白いですね』と言うと、和香は明日はきっと筋肉痛で苦しむだろうに…と呆れるが、夫の笑顔を見て『一緒に来て良かった』と心底嬉しそうに微笑んだ。

その笑顔を見た颯太は、3か月前坂木和香がサークルに入って来た時のことを思い出す。歓迎会の後、和香と二人きりになった颯太。酒が入った和香は上気した顔で『帰りたくない』と甘えた様に言ってきた。この頃、和香は特に夫の飲酒に悩んでいたのだ。

この空気は”誘われる”流れではないか…そう緊張する颯太に和香は言った。

「真田さん…」
「こんな時はいつも誰とでもいいからセックスしたいって気分になるんです」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

やはりと思いながらドギマギする颯太。しかし、その後の和香の言葉は意外なものであった。

「でも走ったせいでしょうか 今日は全然そんな気分にならないんです」
「今はとにかく誰かとランニングトークがしたい気分!」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

そう言って爽やかに笑う和香。結局その後も颯太と和香は夫が疑うようなやましい関係になることは無かったのだ。

そして、マラソンを通して仲直りすることができた和香と夫を見て颯太は羨ましくなるのであった…。

一方その頃、家に置いて行かれた早矢は一人ソファーに座りながらビールにワインと何種類もの酒を一人で大量に煽っていた。

すると、携帯電話に颯太からメッセージが届いた。

『大丈夫?』『お酒飲んでる?』というメッセージを見た早矢は『はあ?飲んでるけど』と不機嫌そうに声に出していう。

「ごめん」
「また早矢が走ってる姿が見たい」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

颯太のそのメッセージに早矢は目を見開き、そして怒り出した。

自分から早矢が走れなくなるまで追い込んで来たくせに今度は走ることを強要する颯太に早矢は『もううんざりなの!』と返す。

そんな早矢に颯太はただ『ごめん』と謝り、いつも会社で早矢と比べられて苦しかったこと、何かで勝ちたかったことを正直に打ち明ける。

「今の私を見なよ!」
「会社も辞めて家で酒浸り!あんたの勝ち!何が不満!?

金魚妻 黒澤R 伴走妻

そう今までの恨みと不満を一気に爆発させる早矢。颯太はただ謝り続け、次第に早矢もトーンダウンしていく。

「そりゃ…無理やりフルマラソンにエントリーした事は…悪かったと思うけどさ…」
「颯太と一緒に走りたかったんだもん…」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

素直な気持ちを吐露した早矢。すると颯太はこうメッセージを返す。

「じゃあ 今から走ろう」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

なんと颯太は合宿先のホテルから早矢の元まで走り出したのだ。

「ホテルからここまで…え!?100㎞!?」
「走るつもり…!?ウルトラマラソンの距離を!」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

スマホで颯太の現在地を調べた早矢は驚き叫ぶ。早矢は『行かないけど!』と言いながらもソワソワし始め、颯太との中間地点の場所を調べ始める。そして、

「靴とウェア!どこに仕舞ったっけ!?」

金魚妻 黒澤R 伴走妻

そう言って慌てて準備を始めるのであった。

一方、その頃、颯太は早矢の名前を叫びながら一人夜道を走り続けるのであった…。

金魚妻4巻 表紙

以下、感想と考察

ラスト→冒頭に戻る話の構成

初見の時、冒頭のシーンの意味がちょっと良く分からなかったのだが、二回読んで理解した。

時系列的にラスト→冒頭なのだ。

とりあえず、颯太はウルトラマラソンの距離にあたる100kmを走りきり(恐らく途中で早矢と合流して)、無事に家について酒を飲んだ。そして、100km走った疲れと酒でぐったりしている颯太に対して、走る喜びを思い出した早矢は『走りに行く』と言っている…という流れ。(最初の1コマ目に、大量の酒缶があり、どれも空いている様に見える。これは早矢が中身を捨てて処分した…と捉えるべきなのだろうか)

テーブルの上にワインボトルとグラスがあるから、颯太が合宿所近くのワイナリーで買ってきたお土産なのかと思ったけど、ランニングで持ってこれるはずないし、ラストで背負ってる感じでもないし、中盤で早矢が一人で飲んでるときからテーブルにあるので、これは早矢が自分で飲んでいたもの…ということで良さそう。

というか、ワインの名産地に行っておいて、お土産物無しかよ。

話自体は面白いのに、どうしても拭えない颯太への不快感

別に今回は誰も不倫してないし、そういう意味では“一線”は越えていないような…。強いて言えば早矢がアルコール依存症等、堕落してしまった状態がそうなのだろうか…。序盤、和香が颯太に気があるように見えなくもない描写はあったけど、ただ色っぽいだけの人で(何するでなく所作が色っぽくて、誤解されがちな人ってたまにいるよね)、彼女の溢れる色気もマラソンで昇華されてしまったようだし。

それはさておき、この金魚妻では色んな夫婦、家族、恋の形が描かれている。そして、毎回蘊蓄とディテールがしっかりしているのもあって、わりと色んな立場のキャラクターに対して理解出来たり、共感出来たりするのだけど…。個人的にモヤモヤした気持ちが晴れないのがこの伴走妻。

マラソンに関する豆知識も面白いし『走るって楽しいよね!』と元々ジョギングしていた身としては共感できるはずなのに。

何って、今回の主人公にあたる颯太がムカつくからだ。モラハラなところが。それも極端なモラハラじゃなくて、さりげなくて、そしてそれが妙にリアリティがあって不愉快。リアリティがあるのは決して悪いことじゃないけど、この颯太が今一つ反省していないように思えるからだろうか。

ラスト、颯太は早矢にラインで素直に謝罪している。しかし、それまでは件のマラソン大会の時も早矢を意図的に傷付ける言動をしていたこと、それが早矢を追い詰めてマラソンも仕事も辞めさせることになったとちゃんと自覚しているのに、酒浸りになっていた早矢を助けるどころかイラついてさえいた。結婚式に口を出す時も『相手はお前の事を友達だなんて思ってない』とかわざわざ傷付ける言葉を選んでるし、マラソン合宿から勝手な都合(坂木にいい顔をしたいだけ)で早矢を不参加にするし、普段から早矢を尊重していないことがよく分かる。しかも、マラソン合宿から早矢を外すのにあたって、抱くことで機嫌を取ろうとしているのが本当にどうしようもない。なんでお前との行為がご褒美扱いなんだ。そんでもって一人家に残された早矢に『今もお酒飲んでる?』ってラインするの。どういう神経してるんだお前は…と小一時間詰問したくなる。というか、最初のマラソンの時に『俺が完走できなかったら早矢にもマラソンをやめてもらう』っておかしくない?何でだよ。

回想シーンにある、坂木(妻)がサークル入会した直後の時も、もし に誘われてたらあっさり肉体関係を持ちそうな感じだったのも気になる。明らかに期待していたし。モラハラな上に貞操観念緩いとか…。

颯太は反省してる?この先早矢と颯太は本当に幸せになれるのか。

一応、ラストは互いに向かって走っていくというハッピーエンド風(そしで、冒頭に戻る)だけど、この先二人は幸せになれるかね?

颯太は一応謝罪はして、『早矢に勝ちたかっただけだった』と認めてはいるけど、自分のそういった所を直す気があるのかハッキリとはよく分からない。『もうしない』とか『直す』『改める』的な言葉は一切発していない。こいつあのまま相模湖にでも沈んだ方が早矢は幸せになれたんじゃないかな…とか一瞬思ってしまった。ダメだな、うん。

とにかく、仮にまた早矢が走るようになったとしても、颯太は自分がマラソンに詳しくなった&サークルのリーダーであることを理由にマウント取って来そうだし、マラソンにしろ再就職にしろ、早矢が自分の手の届かないところで輝き出したら邪魔してきそう。何が言いたいって、他のストーリーの中でも一番、この先幸せになるイメージが思い描けないのだ。

…颯太ではなく早矢目線で描かれていたら違ったのだろうか。

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