【漫画】ハイスコアガールCONTINUE1巻【感想・ネタバレ・考察】ゲームに全てを捧ぐ小学生、ハルオと大野の出会いと別れ

ハイスコアガール1表紙

漫画家、押切蓮介氏に対してはギャグの様なホラーの様な、とにかく 『ミスミソウ』『ゆうやみ特攻隊』等の『ちょっと頭がおかしいマンガを描く人』と言った印象を強く持っていた。

しかし、意外なことに(失礼)、押切氏は”青春もの”や”ラブコメ”も描けるようだ。この『ハイスコアガール』は1990年代のゲームセンターを舞台に、対戦型格闘ゲームに情熱を捧げる少年少女の青春と恋模様を描いた作品である。

私自身は世代としては一回り近く下なのだが、幼少期からゲームが好きであったため、色々と読んでいて懐かしい。だが、今作は純粋にラブコメとしても良作なのでその辺りのゲーム事情が分からなくても楽しめる。

最新刊・最終巻のあらすじ・ネタバレの記事はこちら
【漫画】ハイスコアガール10巻・最終巻【感想・ネタバレ・考察】ハルオと大野の最終決戦の行方は?~ラストに巻き起こる奇跡

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Contents

以下、あらすじとネタバレ

1-CREDIT~ゲーセンで連勝しているのはクラスメイトのお嬢様!?ストⅡでの対戦…”待ちガイル”、”投げハメ”…ハルオと大野の因縁の始まり

湾岸戦争勃発、長崎県の雲仙普賢岳の大噴火…それらに世間が揺れ動いていた1991年…しかし小学6年生の矢口春雄(ハルオ)とってそんなものはどうでもよく、今ハルオは憩いの場であるはずのゲーセン『マルミヤ』で自尊心とプライドが脅かされていたのであった。

ゲーセン通いとそこにあるゲームに全てを捧げるハルオであったが、稼働時からやり込み続けている『ストリートファイターⅡ(通称:ストⅡ)』で、とある相手に7連敗してしまったのだ。そして、ハルオ以外にも勝ち続け、既に28連勝もしているその人物はなんと…

あいつは…!!俺と同じ6年2組の…
…大野…
大野晶…

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 7/200

大野晶はハルオと同じクラスの女子で、無口であるものの、容姿端麗な上、成績優秀のお嬢様で皆から慕われる、ゲーセンが全く似合わない存在なのだ。

そんな大野がゲーセンにいること、そして『豪指のハルオ』と自負していた自身が負けたことを受け入れられずに混乱するハルオ。しかも、大野の選択しているキャラクターは使いこなすのが難しい”ザンギエフ”なのだ。

『忌々しい』そう素直に感じたハルオ。盛り場に行ってはいけないという学校の目をかいくぐるためにハルオはわざわざ隣町のこの店に来ている…ここはハルオにとって聖域なのだ。

こいつは俺の憩いの場をグチャグチャに乱しているのだ!!許すわけにはいかん!!

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 10/200

ハルオは再び大野と対戦することを決意する。大野は既に29連勝しており、ここでハルオを倒せば30連勝の偉業を成し遂げることができる。

ハルオは大野に勝ちたいがため、”ガイル”を選択したうえ『待ちガイル』戦法を取ることにした。しゃがみ技と遠距攻撃とリーチの長いキック技で牽制と迎撃を繰り返すこの戦法は強いものの卑怯な手とされていた。そして、特に大野の”ザンギエフ”には絶大な効果を発揮する。ギャラリーはハルオの手法を『恥ずかしく美しくないもの』と指摘し、ハルオ自身も『男らしくない』と解っていたものの大野に負けたくなかった。これでROUND1をハルオが制する。

しかし、これに調子づいたハルオは2ラウンド目を片手プレイし、大野を馬鹿にしようとしたところ、あっさりと負けてしまった。これでお互いに1勝1敗となった。

最終ラウンド、ハルオは”待ちガイル”戦法を使わず堂々と戦うように見えた。しかし、そう見せかけてハルオはなんと”投げハメ”をしたのだ。最も卑怯でタチの悪い禁じ手とされていた”投げハメ”は場外乱闘等のトラブルを招くこともあり、『死を覚悟しなければならない禁断の策』であったのだ。しかし、ハルオは相手が女子であることで油断していた。

すると、大野が筐体越しにハルオを強く蹴りつけた。『何しやがる』と叫んだハルオに近づいて来た大野は、ハルオのことを盛大にぶん殴った。

これがハルオと大野の因縁の始まりだったのだ…。

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2-CREDIT~駄菓子屋ゲーセンで大野と遭遇したハルオ…一瞬大野に敬意を抱き心を許しかけたハルオだったが…

駄菓子屋『甲前商店』に行ったハルオはそこに大野の姿を見つけ、『またコイツ…!?』と忌々しく思う。ここは駄菓子屋だが筐体ゲームが置いてあり、同じ学校の奴らも知らない穴場だったのだ。先の騒動でハルオは行きつけだったゲーセン『マルミヤ』を出禁になってしまったのもあり、面白くない。

大野に睨み返されたじろぐハルオであったが、こんな駄菓子屋で一人でゲームをしている大野を見て、『よっぽどのゲーム好きなのか』とも思う。

『ストⅡ』をやっている大野のことを『早く代われ』と念じながら後ろから覗き込む大野。大野は”ダルシム”でワンコインでクリアした。

しかし、大野が立ち上がり筐体の前に座ったハルオは驚愕した。近所の悪ガキの仕業か、六つのうち四つのボタンがはがれて剥き出し。しかもレバーの『丸いの』まで取れているのだ。大野はそんな状態でワンコインで”ベガ”まで倒したのだ。

大野に負けたくないハルオは自身も”ダルシム”を選択し、プレイを始めた。しかし、開始早々あることに気付いて顔を引きつらせる。

この筐体はボタンがむき出しになっているだけではない。六つのうち五つのボタンが故障しており、使えるのは一つだけ。”小キック”しか出来ないのだ。

思わず泣きそうになりながら店主のおばあさんに『直してくれ』と頼み込むハルオ。しかし、おばあさんは悪鬼の様な形相でできないと言う。

結局投入した50円も戻らず、大野の前で醜態を晒したことを恥じるハルオ。しかし、同時にハルオは劣悪な筐体で、投げ出すことも泣き寝入りすることもなく”小キック”のみでベガまで倒した(クリアした)大野のゲームに対する姿勢と愛情を認めざるをえなかった。

コイツが女じゃなかったら共通の趣味でわかりあえる大親友になっていただろうか…

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 24/200

そう思ったハルオが大野に語り掛けようとしたその時、ハルオは大野を迎えに来たじいやの車に跳ね飛ばされた。そんなハルオに目をくれずさっさと車に乗り込み去っていく大野。残されたハルオは一瞬でも大野に木を許したことを『恥ずかしい』と思うのであった…。

3-CREDIT~『スプラッターハウス』…カンペキ超人に見える大野の意外な一面を知ったハルオは一瞬だけ可愛いと思ってしまう。

学校でハルオはみんなの前で教師からバカにされる。学力、運動能力、絵心等、何一つ長所がないハルオ。一方、大野は学力優秀で多芸、親も金持ちで『将来は安泰だろう』と誰もが言う。そして可愛いため、クラスの男子達からもモテモテだ。『大野は一体学校が終わったら何して遊んでるのだろう?』『きっとお菓子作りとかの上品な遊びだろう』『ピアノの前に座ってるイメージがある』…そう噂し合う男子達の会話をハルオは忌々し気に聞きながら思う。

あの女が放課後何をしているかだって?
ピアノの前に座ってんじゃねぇ
脱衣麻雀の筐体の前に座ってるんだよ…!!

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 30-31/200

その日もゲーセンで大野と遭遇してしまったハルオ。脱衣麻雀のドット絵を見つめていた大野はハルオに気付くとムッとした表情で睨む。その態度に苛立ったハルオが選んだ筐体は『スプラッターハウス』というグロテスクな横スクロールアクションゲームだった。大野への憎しみをぶつける様にプレイしていると、いつの間にか大野が寄ってきてハルオのプレイを眺めていた。

もう辺りが暗くなったゲーセンからの帰り道、ハルオは内心で『大野がもうここに来れなくなるように、明日学校で大野がゲーム中毒だと言いふらしてやろう』と思っていた。すると、何故か大野が後ろをついてくる。『ついてくるな、気色悪い』と追い払おうとするが、大野は無言でついてき続け。ハルオが走ると大野も必死の形相で走って来る。

『コイツは俺が明日言いふらそうとしたことを察知して口封じのためにボコボコにしようとしているのでは』

そう思ったハルオは悲鳴を上げながら家まで走るのであった。

翌日、学校で『昨夜はなんだったんだ』とぐったりしていたハルオ。しかし、教室で大野が同級生から見せられた心霊写真に怯え、級友の一人が『大野が怖いものがすごく苦手だ』と語るのを聞き、驚く。昨日、大野はハルオがプレイする『スプラッターハウス』を見て怖くなり、一人で帰れなくなっただけだったのだ。

…ぐっ、今 一瞬でもアイツが可愛いと思った自分に…イラッとする

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 35/200

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4-CREDIT~ハルオが唯一大野に勝てるものは…?

テストで0点を取ったハルオは担任からゲンコツを食らう。一方、大野は当然の様に100点満点。ハルオは勉強ができないだけでなく、図工も体育もダメ。そんな何もかもダメなハルオが唯一誇れるのがゲームだ。

学校じゃ肩身のせまい思いをしている俺がここでは他人から賞賛される…!!

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 40/200

だからこそ、優等生で皆に囲まれている大野がゲーセンに来て、なおかつ”強い”ことがハルオは許せない。

その日も同じゲーセンにいたハルオと大野。ハルオは『ストⅡ』をプレイしていた。だが、ハルオの相手だったカップルの男は下手糞で”ケン”を使いこなせない上、かなりの癇癪持ち。負けるとキレて強く筐体を蹴飛ばしてくる。『とんでもない相手だ。直接的な肉体被害を受ける前に退こう』と判断したハルオはカップルにムカつきつつもわざと負けることにした。

しかし、ハルオの次に筐体に座った大野は”E・本田”を選択し、カップルの男を瞬殺。悔しがるカップルは今度は女の方が『仇を取る』と”春麗”を選択する。しかし、女の方も弱い上に激しい癇癪持ち。大野はワザと屈辱的な攻撃(さば折りとフライングスモウプレス…変態飛び)を繰り返し、”春麗”を倒した。

当然カップルは大野に激怒し絡み始めた。それを見たハルオは慌てて仲裁しようとするが、カップルの女から金的を食らった上、二人から足蹴にされてしまう。涙を流しながらなすがままにされていたハルオ。

すると、大野が男の方をコインゲームの筐体に向かって蹴り倒し、女の方を鼻血が出るほど強く殴りつけ頭突きまで食らわせる。ハルオは驚愕しながらも立ち上がって大野の手を取り、ゲーセンから逃げ出す。カップルは『メダル落としを揺らした』と店員たちに掴まった。

『お前も半端ない女だ!!』と大野に叫ぶハルオだったが、ふと大野の手を取ったままだったことに気付き、動揺した…そのとき、また大野を迎えに来たじいやの車に跳ね飛ばされる。大野が去った後、ハルオは『ゲームでもケンカでも大野に負けてしまう自分の長所は何か』と考え、気付くのであった。

打たれ強さ…

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 51/200

5-CREDIT~雨の日、駄菓子屋でハルオと大野は『ファイナルファイト』で共闘する

学校からの帰り道、急に雨に降られたハルオは雨宿りするために駄菓子屋に駆け込む。そこの駄菓子屋の店主のおばあさんは優しい顔をしているが、お金が無い子どもは容赦なく店から叩き出す人だ。有り金が70円のハルオはそこの駄菓子屋にある筐体2つ…『ファイナルファイト』と『魔界村』どちらをプレイするかを考え、瞬殺され終了する可能性が高い『魔界村』ではなく、長時間プレイしやすい『ファイナルファイト』をプレイしようとした。しかし、後から駆け込んで来た大野に先を越されてしまう。

大野のプレイを見たハルオは驚く。大野はあっさりと攻撃を食らい続け、何と序盤で残機0になってしまう。『このゲームに関しては俺の方が上手』と思ったハルオ。店主のおばあさんからの圧力も感じたため、『助けてやる』と50円を投入して2Pとしてプレイをし始める。

しかし、大野はそんなハルオを凄まじい形相で睨み続ける。理由が分からず混乱するハルオだったが、大野がかなり上手いことに気付く。さらに大野はハルオがアイテムを取ろうとすると足を踏んで止めようとする。ハルオは大野が”錬金術”(高得点アイテムを出現させるための裏技)をして、”ハイスコア”を狙っていることに気付き仰天する。そして、大野が序盤で残機0にした理由も悟る。

自分を追い込むためだ…!!次 死んだら「ゲームオーバー」というプレッシャーに打ち勝つため…

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 63/200

大野はちょっとしたことでハルオに起こり足を踏んだり殴ったり頭突きをしてきたりする。地獄の協力プレー…否、非協力プレー。しかし、ゲームオーバーになってしまったら店主に外へ追い出されてしまう。『楽しくない』…そう思いながらもハルオは大野と共にプレイをし続け、無事クリアする。その頃には雨は完全に上がっていた。

クリア後さっさと帰ろうとする大野をハルオは呼び止めた。その手には残りの20円で買ったキャンディが2本。先日ゲーセンで助けてもらった礼と今日プレイを邪魔してしまったお詫びだ。大野は無言でそれを受け取ると一気に2本食べ始める。それを見たハルオは『なんだコイツ』とちょっとイラっとするだった。

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6-CREDIT~PCエンジンやりたさに風邪で学校を休んだハルオの家にやってきた大野は…

6月、学校のプール開きのためにプール掃除をするハルオ達。そこではクラスメイトの男子達がFF4の話で盛り上がっていた。しかし、ハルオはSFC(スーファミ)よりも『PCエンジンこそ時代の最先端を行くハードだ』と言う。PCエンジンはアーケードゲームからの移植が多いため、ハルオの様なゲーセン好きにはたまらない。クラスメイトから辟易されながらも熱く語るハルオの話に大野は聞き耳を立てていた。

そんな大野に気付いたハルオは『お前はPCエンジン知ってるよな?』と尋ねたが大野は首を振り、ハルオは驚く。直後、大野と話していたことでクラスメイトの土井や担任から絡まれたこともあり、ハルオは大野に『PCエンジンも知らない、腕だけのモグリ』と吐き捨てる。すると怒った大野はホースの水を思いっ切りハルオにかけた。

翌日、大野から放水されたことが原因でハルオは風邪を引いてしまい学校を休んだ。弱っていたこともあり、母親に甘えまくるハルオ。しかし、そこに大野が現れてハルオは叫び声を上げる。日直だった大野が学校のプリント等を持ってハルオの家にやって来たのだ。可愛らしい女子がやってきてハルオの母のなみえは大喜びし、手作りお菓子(マンガで出てくるホットケーキ)で持てなす。だが、大野はプリント等を渡し終え、ホットケーキを食べ終えても帰ろうとせず、なんだかもじもじしている。ハルオは大野の魂胆に気付き叫ぶ。

「そこにあるPCエンジンがやりたくてウズウズしているんだろう」
「そうだろう大野晶!!」

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 82/200

赤面する大野。PCエンジンを皆に知ってもらいたいと思っていたハルオは『これが終わったら帰れよ』『見てるだけだと禁断症状が出るから』と言い、自らは横になって大野に『功夫(クンフー)』をプレイさせる。

半分寝ながら大野のプレイを見ていたハルオ。大野がそんなハルオに配慮してか音量を低くプレイしている事に気付く。また、アーケードだと神がかったプレイをするのに、コントローラーだと全然上手くない大野に『ハードどんくらい持ってる』と尋ねる。するとなんと大野の家にはゲームが全くないと言い、ハルオは驚愕する。家では沢山習い事をさせられているという大野の噂を思い出すハルオ。ゲームが買ってもらえる家庭ではないのだと気付く。

こいつもこいつで俺と同じく…日々溜まった鬱憤をゲームで発散してたのかな

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 85/200

初めて大野の境遇に思いを馳せたハルオは起き上がり、『R-TYPE』『妖怪道中記』『ビジランチ』『ワンダーモモ』『獣王記』『PC原人』『ダライアス』『奇々怪界』『源平討魔伝』『スプラッターハウス』等を次々取り出し、これらが安価で買えたことを自慢しつつ大野に『次はこれをやってみろ』次々とプレイさせていく。

『アーケードからの移植が多いPCエンジンは家をゲーセンに変えられるすごいハードだ』と大野に熱く語るハルオ。自身は持ってはいないものの世界初のカラー携帯型ゲーム機『PCエンジンGT』、キャラクターが喋る『PCエンジンCD-ROM』についても説明し、大野はハルオの話に聞き入る。

そして自身が縦スクロールゲームの中で一番秀逸だと思っている『桃太郎活劇』を大野にプレイさせたハルオ。しかし、見ているうちに自分もやりたくなってきてしまい『辛抱たまらん』『やらせろ』と大野と取っ組み合いになっていたところを帰宅した母、なみえに見られ、激しく誤解され、ジャーマン・スープレックスを食らってしまうのであった。

後日、病み上がりのためプールを見学していたハルオ。すると、プールの中から突然大野に水を掛けられ驚くも、『また俺に風邪をひかせてPCエンジンをやらせてもらうつもりだな』と魂胆を見破られ、赤面するのであった。

7-CREDIT~夏休みの終業式、現実から逃げたいハルオと大野は共に噂のゲーセンを求めて旅に出る

大野は屋敷の中で家庭教師で指南役の業田萌美からゲーセンに行っていることを強く咎められていた。『大野財閥の令嬢である自覚を忘れているのでは?』『夏休みの間はありとあらゆる教養を深める、小学生らしい夏休みを送れると思ったら大間違いだ』『終業式が終わった瞬間から地獄だと思いなさい』と言われ落ち込むのであった。

そして、一学期の終業式が終わった。学校からの帰り道、『夏休みだ!』とはしゃぐ他の小学生を見ながら大野はため息を吐く。

一方、ハルオは駄菓子屋の前でゲーム仲間のお兄さんから『10円ゲーセン』という都市伝説を聞いていた。あくまで都市伝説だが、『多摩川を上流に向かって3駅ほどの銭湯の近く』等とおおよその場所の情報もあり、『ストⅡのメッカと言われている』と噂を聞いたハルオは母に通知表を見せたくないこともあって、駄菓子屋のおばちゃんから自転車を借りてそのまま向かおうとする。

だが、そのとき自転車の後ろに大野が座り込む。お兄さんとハルオの会話を聞いていたのだ。驚くハルオだったが『大野もアーケードゲーマーだから、仕方ねえ』と言いつつ乗せてやることにした。

自転車でどんどん町から離れていく二人。大野は自転車の後ろに乗りながらイヤな事、業田萌美が遠ざかっていくのを感じる。喋らない大野に一方的に話しかけながら懸命に自転車をこぐハルオ。終業式早々昼ご飯も食べず本当にあるかどうか分からないゲーセンを目指す自分達を『俺らもアホだぜ』と言う。大野はそんなハルオに時折頭突きしつつ応じる。二人は無事に噂のゲーセンらしきところに到着した。

しかし、到着したゲーセン『がしゃどくろ』は古びて怪しい雰囲気が全開でオール10円ではあったものの、『ストⅡ』なんて置いていない。むしろ『元祖ストリートファイター』『平安京エイリアン』『クレイジー・クライマー』『ブーヤン』『エレベーター・アクション』『スペースハリアー』等の古い筐体が多い。『インベーダーブームに乗っかったもののブームが去り夜逃げを何度も考えた』と語る不気味で陰気臭い店主を横目に『全然遊べるしレトロゲームを純粋に楽しもう』と開き直るハルオ。ハルオと大野は少しだけ遊んで『がしゃどくろ』を出た。

しかし、ハルオが駄菓子屋のおばちゃんから借りた自転車のカギを落としたことに気付き振り返ると、さっきまで在ったはずのゲーセン『がしゃどくろ』は消え、空きテナントと化していた。パニックを起こすハルオに通りかかったおじいさんが『ここにあったゲーセンの店主は87年に夜逃げならぬ世逃げをしてしまった』と語る。『あと4年待てばストⅡで再びゲーセンは盛り上がったのに』と複雑な気持ちになるハルオ。大野は怖くなってしまったため、ハルオに当たりまくる。

自転車のカギを無くしてしまったため、歩いて帰るしかなくなったハルオと大野。自転車だとあっという間だが徒歩でそうすぐ帰れるわけもなく、あたりは夕暮れ。電車に乗ろうにも近くに駅もない。この世ならざるゲーセンに入り込んでしまった恐怖と疲労と心細さから大野はすでに泣きそうだ。

ハルオは途中で見つけた肉屋で二人分のメンチカツを買い、一つを大野に食べさせる。喜んで食べる大野。腹ごしらえをした二人は再び歩きだした。

しかし、今度は硬い革靴を履いていた大野が靴擦れを起こしてしまう。自分が自転車のカギを失くさなければと思ったハルオは自身は靴下だけになり、履いていた運動靴を大野に履かせてやった。その状態でまたしばらく歩き続けるとじいやの車がやってきた。すると大野は一瞬ハルオの背後に隠れる。

『屋敷では業田先生がお冠だ』と告げるじいや。それを聞いたハルオは『大野も自分と同じく目の前の現実から逃げたかったんだ』『俺なんかより全然フビンナなんだ』と思い、大野に『夏休み楽しめるの?』と尋ねる。しかし、大野は何も答えない。ハルオはそんな大野に言う。

「じゃあさ、またしんどくなったら逃げてこいよ…」
「また妙チクリンなゲーセンに連れてってやっからよ」

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 115/200

そのハルオの言葉に黙ったままだが、わずかにほほ笑むのであった。

帰宅したハルオは通知表の成績の悪さから、母、なみえに『PCエンジンを封印する』と言われ泣き叫ぶ。一方、大野はその後業田の授業を真面目に受け、業田は『一体どこでモチベーションを上げてきたのか』と驚くのであった。

8-CREDIT~憂鬱そうな大野、そして遊園地でハルオは不思議な感情を抱く

夏休み中、駄菓子屋ゲーセンで大野とばったり会ったハルオ。しかし、大野は珍しく『ストⅡ』で途中でやられてしまっていた。『なんかあったのか』とハルオが尋ねるも大野は答えない。そんな中、ハルオと大野はクラスメイトのキザったらしい男子、土井に遊園地『御花園』に誘われ他のクラスメイト達と共に行くことになった。

土井が遊園地と花畑が併設するこの『御花園』に皆を誘ったのには理由があった。他のメンバーをダシ&引き立て役にして、土井は花畑で金持ちで美人な大野と親しくなりたかったのだ。

一方、お花畑を見ても楽しくもなんともないハルオ。他のクラスメイト達も同じだったこともあり、結局遊園地の方に行くことになる。そこでも諦めず『大野さんに婚約者になってくれることを約束してもらわないと』と企む土井は行き先やペアを指図してあの手この手で大野と二人きりになろうとする。

大野がいつになく覇気がないことに気付くハルオだったが、クラスメイトの怪しげな女子、鬼塚に『一緒に観覧車に乗って、チンチンに骨があるのか調べさせて欲しい』と迫られ逃げ出し、一人ゲームコーナーに向かうのであった。

『御花園』のゲームコーナーは『典型的な遊園地のゲーセン』という感じで一世代前のものばかりだが、ハルオは落ち着く。そしていつのまにか大野もいた。大野も土井たちと一緒にいるのが耐えられず逃げてきたのだ。『ゴールデンアックス』や『キャメルトライ』を大野に紹介したハルオ。大野が何か思い出したくない嫌なことがあるのだと理解し、『土井たちはほっといて遊ぶか!!』と『ダライアスⅡ』『スペースガン』を2人プレイした。

一通り遊んだ後、『そろそろ土井の所に戻ろう』とハルオは大野に言うが、大野は以前雨の日に駄菓子屋で一緒にプレイをした『ファイナル・ファイト』をしたいと指差すのだ。『プレイ時間が長いこれをやってたら本当に皆に置いていかれる』とハルオは難色を示すも、大野に押されて二人でプレイすることになった。

一方その頃、土井は大野に逃げられた末、鬼塚と観覧車に乗ることになったうえ、中でチンチンに骨が入っているか否かを確認されるという悲惨な目に遭っていた。

結局、『ファイナル・ファイト』を最後までクリアしたハルオと大野。ゲームコーナーを出ると夕暮れ、土井達は帰ってしまったようだった。すると、大野がアトラクションを見つめている。アトラクションの料金を『ストⅡ』が何回できるかに換算し、『ガキ臭い』と吐き捨てるハルオ。しかし大野が乗りたそうだったこともあり、お化け屋敷、ミラーハウス、ジェットコースターに共に乗り、何だかんだと満喫する。

しかし、最後に大野は土井に誘われたときに拒んでいたはずの観覧車に乗ろうとした。その時、ハルオは何故かドキッとする。観覧車は終了してしまったらしく結局、乗れなかったがハルオは動揺する。

あれ…なんで俺今…緊張したの…?
で なんで俺ちょっとホッとしてるの…?

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 140/200

しかし、ハルオは自身のその不思議な感情の正体が分からなかった。

帰りのバスで寝てしまった大野は隣に座っていたハルオの肩に頭をもたれる。ギクッとしたハルオだったが、『大野は色々と耐えるものがあるのだろう』とそのままにしてやるのだった。

そして、2学期がやってきた。学校生活の再開に憂鬱なハルオはある噂を耳にし、目を見開いた。それは『大野が親の都合で転校する』というものだった。

一瞬で大野との記憶が脳裏に駆け巡ったハルオは自身に問う。

…なんで俺、こんなにショックを受けてるの?

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 145/200

9-CREDIT~大野に素直に別れを言えなかったハルオはゲームのキャラ達に叱咤されて空港に向かう…そして大野と再戦を誓う

学校では大野のお別れ会が開かれていた。今日の夕方、ロスに向けて旅立ってしまうのだ。別れを惜しむクラスメイト達は一人ずつ大野に贈り物をするが、ハルオだけは『忘れた』と何も渡すものを持ってきていなかった。クラスメイト達が非難する中、ハルオは大野にこう言ってしまう。

「行くなら行くで早く行っちゃえよ。俺のゲーセン(聖域)も荒らされなくて済むからせいせいするぜ…!!」

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 150/200

その発言に激怒するクラスメイト達。しかし大野はそれに対していつもの様に叩いたり頭突きすることもしなかった。

そして大野は皆に見守られる中車に乗って行ってしまった。大野は俯いていたがハルオは何も声を掛けられなかった。

帰り道ハルオは母から大野へのプレゼント代として渡された千円札を見つめる。忘れたというのは嘘で、大野に何をあげればいいか分からなかったのだ。

この千円札はおやつやゲームで使ってしまおうと考えたハルオ。早速ゲーセンに向かい『最強のライバルがいなくなって、再び豪指のハルオ伝説が始まる!ゲーセンに胸を張って通える』と自身に言い聞かせる。

しかし、それは同時に大野の存在の大きさを認めたようなものだった。自分より遥かに強くて、それゆえにいけすかなかった大野。でも、ゲーセンに行くたび大野の姿を探すようになっていた。大野の腕を認めて、尊敬して、その心意気に惚れ惚れしていた。そんな自分の気持ちを認めるハルオ。

初めて同志ができたと胸も躍った

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 155/200

その時、ハルオの心に『お前の気持ちはそれだけか』とストⅡの中からガイルが語りかける。

あの子との戦いはまだ終わっていない

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 156/200

そして他のゲームの様々なキャラクター達も『これ以上見栄を張ると後悔する』『時間がない』『行け』と叱咤し、ハルオは立ち上がり駆け出した。

空港では大野が日本に残る業田やじいやとお別れしていた。

すると、そこに息を切らしたハルオがやってきた。驚く大野にハルオはいきなり『今度SNKから餓狼伝説という格ゲーが出る』と切り出す。きっとこれからゲーセンはもっと盛り上がっていく、想像もつかないゲームがどんどん生まれてくる…そう大野に語るハルオ。

「こんなイイ時に海外に行くなんて残念すぎるぜ…」
「俺も張り合いが持てるやつがいなくなるのかと思うとさみしくてしょーがねぇ」

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 164/200

照れながらも気持ちを伝えたハルオは、プレゼント代の千円は空港までの交通費に消えてしまったと言いながら財布からあるものを取り出し、大野に差し出す。それは1学期の終業式にともに行ったゲーセン『がしゃどくろ』のクレーンゲームで取ったオモチャの指輪だった。

「今 お前にあげられるもんはコレしかねぇ…もらってくれるか?」

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 166/200

真っ直ぐに大野を見据えそう言ったハルオ。すると、その瞬間大野はハルオに抱き着いた。そして、大声を上げて泣き始めたのだ。見たこともない大野の様子に驚くハルオ。出発時間が迫り大野は母と姉に連れて行かれそうになってもハルオの顔を掴みなかなか離れようとしなかった。涙と鼻水を垂らしながら家族に連れて行かれる大野を見ながら、ハルオもまた笑いながら涙を浮かべていた。

大野が乗った飛行機が飛んでいく様子を見送ったハルオ。『次会った時は投げハメに頼らずに互角に戦えるようガイルを強化しないと』と思う。一方、飛行機に乗った大野はハルオからもらった指輪を左手の薬指にはめているのであった…。

SPECIAL-CREDIT~『ダブルドラゴン』で遠足のおやつを賭けて戦うハルオと大野

翌日に遠足を控えたハルオは学校でおやつは500円までと言われるも、おやつは300円で200円は筐体につぎ込もうと考えていた。しかし大野も同じことを考えていたようで筐体がある駄菓子屋で二人は遭遇してしまう。さらに買いたいお菓子…一つしか置いてない『すもも漬け』も被ってしまい二人は対戦ゲームで勝負することにした。ハルオが指定したのは『ダブルドラゴン』。一見すると普通の二人同時協力プレイのゲームだ。連れ去られたヒロインを兄弟で助け出すこのゲームは同士討ちありであるため大野はガンガンハルオを攻撃するが、ハルオはとりあえずクリアを目指す様に言う。大野はそれを聞いて時々ハルオを攻撃しながらも一応協力してラスボスを倒す。

しかし、このゲームはラスボスを倒してからが本番なのだ。なんと、助けたヒロインを奪い合うために今度は1Pと2Pで戦わなければならないのだ。

「兄弟は女の取り合い…俺達はすもも漬けの取り合い…白黒付ける最高の舞台だと思わんか」

ハイスコアガールCONTINUE 1巻 押切蓮介 184/200

ストⅡでは勝てないハルオだったが、慣れているこのゲームなら大野に勝てるとふんだのだ。多少ハメがあったものの大野に勝てたハルオは大満足。

…しかし、難しいこのゲーム。二人はクリアするために度重なるコンテニュ―を繰り返し、なんと共におやつ代を失ってしまったのだ。だが、二人ともクリアできたことに満足しており、ハルオは『明日はお互いにお菓子なしか』と言うのであった。

翌日、お菓子がなくて落ち込んでる大野を見たハルオは『悪いことをしてしまった、今度すもも漬けをおごろう』と考える。だが、大野がお菓子を持ってないと知るとクラスメイト達は次々と大野にお菓子を分け与え始める。当然誰もハルオにはおごらない。お菓子を食べまくる大野を見たハルオは『やっぱりすもも漬けをおごるのはやめよう』と思うのであった。

以下、感想と考察

”ゲームもの”としてだけではなく、”ボーイミーツガール”の王道でもある『ハイスコアガール』

アーケードゲームの描写が詳しく、90年代前半の雰囲気が良くでている今作は、主人公よりももう少し世代が下の私も十分ノスタルジックな気持ちになれる。しかし、それだけでなくハルオと大野の心の距離が縮まっていく様子が非常に上手く描けていて、ストーリーとしてはボーイミーツガールものの王道を行っていると思う。特に9-CREDITは『最終回かな?』と思う位に完成度が高い。

でも押切ワールドも全開でモブキャラが妖怪じみているところとかがじわじわ来たりして…。マンガのオマケに6、7-CREDITの母、なみえの行動の詳細が描かれているのだけど、ハルオの部屋を覗き見たいがために重力無視して天井に立ったり、ハルオの通知表の結果の悪さに『ゲームを封印する』と言って、本当に謎の結界を張ってしまったり…お母さん、本当に人間なのだろうか。

また8-CREDIT『御花園』で地味に『ミスミソウ』ネタをぶっこんで来るとかもいいね。でも、あっちは同じ作者が描いてるとは思えない位悲惨だから一瞬何とも言えない気持ちになった。

そして、大野がいない中、中学生になったハルオ。新しいヒロインも出てきて次巻はよりラブコメっぽさを増していくのだ…。

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