【漫画】ハイスコアガール10巻・最終巻【感想・ネタバレ・考察】ハルオと大野の最終決戦の行方は?~ラストに巻き起こる奇跡

ハイスコアガール10巻表紙

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前巻までのあらすじ…大阪の『スーパーストリートファイターⅡX』の全国大会へ共に向かったハルオと大野。ここで大野に勝ち、気持ちを告白するつもりのハルオ。一方で、大野は実は海外に行くことが決まってきて、ハルオとの最後の思い出を作るためにやってきたのだ。互いに決勝トーナメントまで勝ち残り戦うことを誓う二人。
しかし、なんと大野は1回戦目で敗退してしまうのだった…。

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【漫画】ハイスコアガール9巻【感想・ネタバレ・考察】ついに大野への愛を自覚するハルオ…告白するために『スパⅡX』の大会で大野に勝利することを決意するが…

Contents

初戦で敗退した大野…なんと、敗者復活戦で勝ち上がってくる

会場の壁際で座り込む大野。ザンギエフをはじめとしたゲームのキャラ達と対話をしていた。初戦敗退など大野らしくもない。昨晩のハルオと同じ部屋で過ごしたこと、海外移住のこと…心を乱す要因は様々だった。
しかし、ザンギエフはそんな大野を激励叱咤する。

「灯せ心の闘志…!」
「孤高で無敵だった勝負師の己を…!!」
「あの男はそのお前を待っている…!!いち格ゲーマーとして期待に応じてやれ!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 19-20/202

「お前は赤きサイクロン」

「日本を発つ前にー未練も何もかも巻き込み粉砕するのだ」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 24/202

…ザンギエフに導かれるように大野は再び立ち上がる。

一方、ハルオは気落ちしていた。必死に決勝トーナメントまで生き残ったのに肝心の大野が初戦敗退。何のためにここ大阪の全国大会に来たのか…。そして、大野の姿も見失っていた。
大野を探すハルオ。すると会場の一角でどよめきが起きた。ルーザーズ決勝、敗者復活戦の決勝の決着が着いたのだ。

「敗者復活を成し遂げたものはー大野晶選手…!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 27/202

そこにいた大野は出会った当初の、何をも寄せ付けない殺気に満ちていた小学生の頃の様な気迫を身にまとっていた。

「大野が還ってきた…!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 29/202

ハルオはそう、確信したのであった。

準決勝戦~ハルオVS大野…その勝敗の行く末は

その後互いに決勝トーナメントを勝ち進んでいくハルオと大野。颯爽と勝ち進む大野を見ながらハルオは自身の気持ちを見つめ直す。ハルオは大野に対抗心を持っていたというより自分よりすごいやつに認めて欲しかったのだ。そして、今はもう単純に認められたい訳ではない。格ゲーマーとしてだけではなく、一人の男としても認めてほしいのだ。

そして、ついに準決勝。ハルオと大野の勝負の時がやってくる。2年前のハルオと大野の闘いを覚えている参加者も多く、会場には緊張感が走る。
試合開始前、ハルオの前に自身の拳を掲げた大野。ハルオもまた拳を大野の拳にぶつける。
そして、互いに筐体へ向かうのであった。

「最初はー憎くてー忌ま忌ましくてーいけすかない存在だった」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 45/202

大野との日々を振り返るハルオ。互いにキャラクター選択を済ませROUND1が始まる。観客達の歓声が響き渡る。

「今となってはー死ぬほど愛してるぜ…!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 47/202

目の前の筐体にハルオは持てる全てを注ぎ込むのだ。

ザンギエフの立ちスクリューで開始直後から猛烈に攻め込む大野。ハルオのガイルは防戦一方に追い込まれる。本来ならザンギエフの方が圧倒的に不利であるにも関わらず、いとも簡単にそれを覆して見せる大野。ROUND1は大野が瞬時に制した。

続くROUND2

ハルオが取った戦法は『待ちガイル』であった。かつては卑怯な戦法と考えられていたそれは、もはやガイルの正攻法なのだ。

「昔から男らしくない戦いだと言われた。しかしこの『スパⅡX』に関してはこれこそがガイルの戦い方…!!」
「待って待って待ちまくる…!!!この鉄壁は絶対に崩さない!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 63/202

ザンギエフが近づくとリフトアッパーでエグい一撃を入れていくガイル。1フレームも見落とす気はないハルオ。これはもうただのリフトアッパーではなく、勝利へのガッツポーズのつもりなのだ。大野はハルオのリフトアッパーの壁を越えられず、ROUND2を制したのはハルオだった。

そしてFINALROUNDが始まる。白黒つけるときがやってきたのだ。ガイルの声を聞きながら力の全てを解放するハルオ。
ハルオは心の底から大野に感謝していた。昔は人からバカにされてもゲームがあれば十分。ゲームが支え…そう思っていた。しかし、今では大野自身もハルオの心の支えになっている。大野のおかげで好きなゲームがもっと好きになった。

「本当に楽しかったんだ
惚れたやつとともに夢中に…真剣になれたことが」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 73-74/202

体力ゲージはほぼ互角な状態が続く。少しずつ互いにダメージを与え続けて、両者一発圏内に突入した。

「跳んでこい大野、跳んでこい…。跳んでみろ…跳べ…」
「跳べ…!!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 78-79/202

ザンギエフが跳んだ瞬間、リフトアッパーを構えたハルオ。しかし、すんでのところでザンギエフはガイルの腕をかわし…ハルオは画面越しにザンギエフの両腕に体を鷲掴みにされる感覚に陥ったのであった。

大野から指輪を返されてしまうハルオ~消えてしまうガイル

7月中旬。宮尾と土井とともに学校から帰宅中のハルオ。二人からゲーセンに寄ろうと誘われるが、断り一人去っていく。そんなハルオの後ろ姿を眺めながら心の底から心配する宮尾と土井。大阪の全国大会で大野に勝って、気持ちを伝えようとしていたハルオ。しかし大野に敗北しただけでなく、その後大野が海外移住をすることを知らされ、相当なショックを受けていたのだ。
『あいつにはありのままのゲームバカでいてほしい』…そう素直にハルオを思いやる土井は、最近気取るのをやめて自然体になっていた。宮尾はそんな土井の変化に『今のお前の方が好きだ』と評価しながらも、ハルオのことをどうにもしてやれない自分にやきもきしていた。

ハルオはバイト先で働いていた。しかし、気持ちはあの大阪大会に向いていた。FINALROUNDでのガイルのリフトアッパー。それをザンギエフはダイエットスクリュー…ジャンプ強を空振りさせ、モーションを利用して避けるという高等なテクニックを使ったのだ。ROUND2でリフトアッパーを喰らっていたのも、全てはダイエットスクリューへの布石だったのだ。大野の手腕に思いを馳せるハルオ。しかし、それ以上に、ハルオに勝利した直後に大野の涙を浮かべた表情が焼き付いて離れない。

大野がどんな思いを秘めて大阪まで来たのか全く知らなかったハルオ。大野に勝って告白しようとしていた自分がバカに思えて仕方がなく、自己嫌悪に陥っていたのだ。大野はハルオに準決勝で勝ったのち、決勝で負けた。

「あの準決勝(闘い)が俺らにとって最期の対戦だったからだ―」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 92/202

一方その頃、大野は自室でペンダントとしてずっと身に付けていた指輪を眺めていた。小学生の時、ハルオから空港でもらってから肌身離さず持っていた指輪。ハルオとの思い出を振り返りながら…。

ある日、ハルオが自宅で寛いでいると、大野の姉、真が訪ねてくる。家庭用ゲーム機にも触れている様子が無いハルオを心配する真。真はハルオに大野が出立する日(7月24日の夕方)を伝え、見送りに来るように言いに来たのだ。『また中学の時みたいに日本に戻ってこないのか』と尋ねるハルオ。しかし、内情(実は大野が向こうで結婚する相手も決められていること)を知る真は『それはないとは言えないが、色々と難しい』と言葉を濁す。

真は自分が親の方針に抵抗し、自由を手にした反面、親の期待や要望が全て妹である晶に向かい、そして真面目な晶が親や家の顔を立てるために、全て背負い込み自分の本当の意志や気持ちを出さなくなってしまった…と懺悔する。真は悪くないと言うハルオ。大野自身が家の方針に納得しているのであれば、自分の出る幕はないと考えているのだ。

しかし、真から

「それより…ハルオくんの意思はどうなの?」
「勝負に負けて『だめでした』じゃ、一生後悔することになるんじゃない?」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 101/202

真の言葉に黙り込むハルオ。そして、そんなハルオに真は大野から預かったという小さな包みを渡す。手紙かと尋ねるハルオだが、真は中身を知らないという。

「今がハルオくんの人生のターニングポイント…」
「今こそ勝負所よ…」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 103/202

そういって夕暮れの中、ハルオに見送られ真は帰っていった。
真が去った後、小包を開けたハルオ。そこにはハルオが大野にあげた例の指輪が入っていた。ハルオはそれを大野からの別れと受け止めた。

俺と大野の5年に渡る長い闘いは―もう終わっちまったんだ」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 105/202

落胆するハルオを見つめるガイル。しかし、ガイルの声はもうハルオに届かないようだった。静かに自宅に戻るハルオ。長年ハルオを見守ってきたガイルの姿もまた夕空に溶けて消えていくのであった。

大野出立の日、見送りに行かないハルオに小春は…

7月24日、大野が出立する日がやってきた。自宅でぼんやりしているハルオ。そんなハルオを母が見送りに行くように叱咤するも、俯きながら、見送りには行けない…そう言って家を出てしまう。

脱け殻の様に街をさ迷い歩くハルオ。ウジウジしている自分がダサく情けないことは分かっていた。しかし、どうしたらいいのか分からないのだ。すると、『矢口くん』と呼び掛けられる。目の前には髪をショートカットにした日高がいた。いつの間にかハルオは日高の家、日高商店の前に来ていたのだ。髪型を大きく変えた日高の姿に驚くハルオ。日高はハルオの深刻な様子を心配していた。

『大野さんのことでしょう?』と尋ねる日高。日高は大野の海外移住の話を知っていた。日高はハルオに語る。
先月、大野は日高の元にやってきて対戦を挑んできたこと。最初はハルオのことを白黒つけるためだと思っていた。しかし、日高はすぐにそれが『日高のハルオへの気持ちを確かめるためのもの』『大野は自分が海外に行くにあたり、引き下がるつもりである』ということに気づいた。しかし、同時に大野がハルオへの気持ちを諦めきれないでいることも闘いを通して感じた日高。
大野のザンギエフと日高の豪鬼。互いに一点を制した上でのFINALROUNDはタイムオーバーの末、僅差で日高が勝った。しかし、

「あの対戦で大野さんの想いが痛いほど伝わった…」
「試合には勝ったけど…勝負には負けたって思ったよ…」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 122/202

そして日高は涙を浮かべながらも笑い、言うのだ。

「引き下がるしかないじゃん。私みたいなおじゃま虫」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 123/202

そんな日高の言葉をハルオは真摯に受け止める。

「日高」
「俺…大野のことが好きだ」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 125/202

日高の気持ちを散々ないがしろにしてきたことを謝罪するハルオ。しかし、大野のとのことは終わってしまったとも俯きながら語る。自分が人の心に鈍感だったことのツケが回ってきたのだ…。小6の時にあげた思い入れのある品を大野から送り返されてしまったこと、今日の夕方大野が日本から起ってしまうことを日高に話すハルオ。
すると、黙って聞いていた日高が急に『一体何を送り返されたのか?』と尋ねる。ハルオが『大したものじゃない、ゲーセンで取った指輪だ』と答えた瞬間。

日高はハルオの顔面に強烈なビンタを叩き込んだのであった。

「バカ!!!もう夕方じゃん!!!」
「今日発つって…こんな所で何やってんのよ!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 129/202

そして、指輪のことに言及する。

「やっぱり矢口くんは女の子の気持ちがぜんぜんわかってない。大野さんの気持ちは逆でしょ!?」
「それを持って迎えにきてほしい意思表示じゃん」
「いって矢口くん。自分の意思に忠実に生きるのが気持ちのいい生き方って。あなたが言った言葉よ。今さらそれを曲げないで」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 130-131/202

その日高の言葉にハルオは走り出した。日高はそんなハルオの後ろ姿を涙を流しながら見つめた。ハルオと出会ってから今までを思い浮かべる日高。夕暮れの中、日高は今度こそ失恋を受け入れたのであった。

自宅に戻ったハルオは急いで原付に乗る準備をする。母親のなみえはそんなハルオにヘルメットを渡し、『漢を見せろ』と応援、見送るのであった。
しかし、空港で大野は既に飛行機に乗り込んだ後であった…。

空港へ原付を走らせるハルオ。そこで起こった奇跡は…

運悪く電車が止まってしまっており、空港まで原付を走らせることにしたハルオ。後悔し、涙を浮かべながら道を行く。

なぜ自分は「もう終わった」と決めつけてしまったのか。思い返せば大野には何度も何度も負かされてきたが、負けを認めて諦めた事など今までなかった。

「どうして勝負を終わらせちまった!?」
「惚れた女を前にビビッてたんだ…」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 145/202

もう間に合うわけがない。原付で行ってどれくらい時間がかかるのか…。夕方になってきっと道路は渋滞もしてくる。一度信号に引っかかればそれだけ大野との距離が広がる…ハルオがそう思ったとき。

信号機をゲームのキャラがいじり、青信号に変えている姿が見える。驚くハルオ。ひたすら進路上青信号が続く。それ以外でも様々なゲームのキャラクター達がハルオの進路の邪魔になりそうな車両をひたすら足留めし始める。当然ゲームのキャラクター達はハルオ以外の者には見えず、街はちょっとしたパニックに陥る。驚きながらも必死に空港に向かうハルオに、一度は消えたはずのガイルが話し掛ける。

『ソニックブームばりに突き進め…!!!』というガイルの言葉に、ハルオはもう夜になってしまった、大野が日本を発ってしまったと泣きながら言う。実際、大野を乗せた飛行機は既に離陸していた。
しかし、そんなハルオに無数のキャラクター達が伴走し始める。

「あきらめるな!!」
「間に合わなくてもいくしかねぇ!!全力でまっすぐに!!」
「ハルオ(お前)が今までゲームにぶつけたような全力を―矜持を…信念を」
「この闘いにぶつけるのだ…!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 155-156/202

ガイルの言葉に、そして真や日高に言われた言葉を胸にハルオは顔をあげる。

「そうだ、何度も何度もあの女とは引き離された。今さら引き下がれっかよ」「大野に会いてぇ…今すぐにでも会いてぇ…!!大野…ッ」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 158-161/202

そう心から渇望したハルオ。すると、その叫びに応えるようにガイル達、ゲームキャラクター達は空に飛んでいった。

「愛が可能にする…!!愛が「形」となる…!!」
「俺たちを愛してくれた恩を-今こそお前に…ッ」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 164-165/202

そして大野の乗っている飛行機を取り囲むキャラクター達。すると飛行機は謎の光に包まれ…。

それから転げるように空港にたどり着いたハルオ。ロビーまで行くとそこには大野の姉、真と家庭教師の業田、じいやの姿があった。ぼろぼろになったハルオの姿に皆驚くが、ハルオは大野はもう行ってしまったのかと尋ねる。

「いっちゃったけど…」
「飛行機が…Uターンしてかえってくるって」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 172/202

乱気流か機器トラブルか…原因は不明だが飛行機に不具合が生じたため、飛行機が戻ってきたのだという。
すると、そこに飛行機から降りてきた大野が現れた。

互いの姿を見つけた瞬間駆け寄り抱き合う二人。ハルオは泣きながら叫ぶ。

「勝ち逃げなんてさせねぇ…」
「勝負はまだ終わっちゃいねぇ…お前との因縁の対決…終わらせるわけにはいかねぇ…」
「海外に行ったって逃がしゃしねぇぜ…パスポートを取ってお前に会いにいくんだからな!!」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 178-179/202

泣き出しそうな大野に、ハルオは『泣くな。空港で泣くのは自分の番だ』と告げる。そして、指輪を差し出して言った。

「お前のことが好きだ」
「のたうちまわるくらい好きだ」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 181-182/202

きっと大野にはこれからも『負け続ける』だろう。

「でも俺はそれでいい。一生…お前に挑み続けてぇ。張り合っていきてぇんだ」
「ずっと大野のそばで…ッ」
「お前を……嫁にするため…絶対に迎えにいく…」
「もらってくれるか?」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 183-184/202

ハルオから差し出された指輪を涙を流しながら、しかし笑顔で受け取る大野。そのとき、ガイルやザンギエフ、ゲームのキャラクター達が二人を囲み、祝福するのであった。

「ハルオ、これはまだ終わりではない。お前はステージのひとつを越したにすぎない。」
「最良の結末(エンディング)のために俺たちは戦う。それはお前も同じ」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 194/202

ガイル達はそう、ハルオに告げ、また静かに消えていく。

「この戦いがお前の新たなる力となる-」

ハイスコアガール10巻 押切蓮介 195/202

ハルオはその後、大野が乗る飛行機を見送るのだった。

~終わり~

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以下、感想と考察

1巻を超えた最終巻~後日談に頼らないラストに好感

このハイスコアガールについては、さほど中だるみを感じることなく、テンポ良く楽しみ続けることができた。しかし、その一方で個人的に『ピークは1巻のラストかなー』とも感じていたのも事実。小6の時の空港の別れの所。あそこは妙なノスタルジーも相まって、やたら感動してしまったのだ。だから、最終巻にてその感動を超える展開が来たことに心の底から驚いている。
なにせ、ハルオの台詞の一つ一つが胸に響くのだ。今まで明らかに、誰がどう見ても大野を愛しているのに、台詞でも独白でもその想いを言葉にすることが無かったハルオ。どんなに読者がやきもきしたことか。しかし、だからこそ、最終巻でその想いを爆発させた時の破壊力が凄い。凄かった。
そして、最後にゲームキャラ達が起こした奇跡。リアリティなんてなげうって、バーチャルな存在がハルオに力を貸す描写は圧巻。素晴らしかった。

ラスト、お互いに想いを確認しあったハルオと大野。しかし、他のラブコメでよくあるように、結ばれたりキスする訳でもない。あくまでも気持ちを確認し合って、抱擁し合うだけ。『迎えに行く』と約束し合うだけ。…どんだけプラトニックなんじゃ!!ある意味衝撃。
また、何より大野の家の問題も解決した訳じゃない。ガイル達の台詞が示唆する様に、ハルオと大野の二人の未来には受難が待ち受けている。そして、上記の様な状態であるにも関わらず、ここで物語は終わるのだ。後日談というものが全くないのだ。

…これにはかなり、驚かされた。二人の未来がどうなったかの答えが読者に、何らかの形で提示されるものだと思っていたから。(昨今のゲーム情勢に対してのハルオと大野の様子を見たいという気持ちもあったし。)
しかし、その予想は裏切られて後日談は一切なし。
…これって本当に凄いことだと思う。だって普通だったら、あれこれと読者への説明や、キャラクター達への救済(ちゃんと皆、幸せになりましたよー…みたいなもの)として蛇足だとしても後日談を付け加えたくなるところだろう。
しかし、それを全くしないということは、作者自身が『描くべきところを描き切った』と自信を持っていることの現れだろう。キャラクターと読者を本当に信頼していないと出来ないことだ。ここまで作品を追ってきた読者・ファンなら、ハルオと大野の恋路の行き先が容易ではないことは想像がつく。しかし、一方で『この二人なら大丈夫』という期待・希望も見いだせる。安易な後日談に頼らず、読者達の想像力に任せるラストを書いた作者押切蓮介氏は凄い。

最後まで真っ直ぐだったカウンターヒロイン、日高

そして日高が本当に最後の最後まで良い娘で…。本当に最良のカウンターヒロインだと思う。主人公や作者・作品にとって都合の良く使われて終わるサブヒロインが多いなかで、日高は自分の意思、気持ちを持って葛藤を続ける非常にリアル、生々しいキャラクターだ。
思い返して見ても、ハルオへの恋の始まり、ハルオに振り向いてもらえない苦しみ…勝負に負けてもなお、ハルオへの恋心を断ち切れず、渋谷ではストレートに自分の性愛の欲求をハルオにぶつけたり…。何度涙を流したのだろう、多分作中で一番泣いたのはこの娘だ。悩み苦しむ日高は時に醜い面も見せるのだけど、読者としてはそれが不快に思わない(思えない)、ハルオと大野の恋路を応援しながらも日高のことも応援したくなる、そんな不思議な魅力を持ったキャラクターだった。

特に『大野はハルオが指輪を持って来るのを待っている』と叫んだシーンは最高。これは日高だから言えたことだなぁ…と感心するしかない。上記の通り、最終巻において後日談が全く描かれていないので、日高のその後は分からない。しかし、きっと大丈夫なんじゃないのかな。ハルオの大野への想いをハッキリ聞くことが出来て、ちゃんと自ら送り出せることができた。前を向いて進んでいけるだろう。

まとめ~最初から最後まで良質なラブコメ

以前、総評の記事でも書いたが、『格ゲー・ゲーセン』『90年代』といった特殊な要素を差し引いてもなお、純粋にラブコメとして面白い本作。最後まで良質なラブコメだった。漫画的な設定・表現・展開はあるものの、キャラクターの心情や行動が自然でリアル。共感を持ちやすい。そして、改めて見ると、メイン3人以外の、脇を固めるキャラも皆、わりといい人。魅力的。嫌な奴が居なかったことに気付く。業田先生も土井も結構いいとこあるし。(他の押切蓮介作品が汚物で汚物を煮詰めた様なキャラが多い分、輝いて見える…。)
特にラストが良かったので、本当に読み続けて良かったと思える。
今まで楽しみにしていた分、喪失感も半端ないけど…はあ、Blu-ray見よ…。

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