【漫画】架刑のアリス8巻【感想・ネタバレ・考察】甦る四男、海(マレ)!?そして三男、太陽(ソル)との死闘~設定の大きな矛盾あり

架刑のアリス 8巻表紙

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長女、荊(いばら)との戦いに勝利したステラであったが、その後、もう1つの人格とも言える戦魂(ラルヴァ)のアリスに体を乗っ取られてしまう。しかし、その際にアリスの凄惨な過去、そして六道との因縁を知ったステラ。ステラはアリスのことを『もう一人の自分』として受け入れることを決意し、アリスもそんなステラに心を開き、支えることを誓い、体を返す。そのまま眠り込んでしまうステラ。一方その頃、一度は久遠寺家から逃げ出したはずの長男、是乃(ゼノ)が門前に現れて…。

次の巻の記事はこちら→【漫画】架刑のアリス9巻【感想・ネタバレ・考察】次女厘流(ミセル)と再戦~脱出を試みるステラだったが…!?

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Contents

以下、ネタバレ

第29話 死んだはずの四男、海(マレ)が再びステラを襲う…!?

久遠寺家の門前に現れた長男、是乃(ゼノ)。それを母、織雅(オルガ)が手下の黒兎達と監視モニター越しに見ていた。是乃の右目…蘇生時に移植された次男、志度(シド)の目には発信器が埋め込まれていたため、是乃がやってくることは予め分かっていたのだ。

鷲宮教団の刺客として、ステラに出会い、その後本物の是乃(月兎)の姿を奪い、是乃に成り済ましてきた現、是乃(灰(ラウム))。鷲宮教団の力をもって、久遠寺のお茶を飲まずとも生き延びていることに驚くものの、是乃の命はそう永くは持つまいと織雅は考える。

すると、その時、是乃は自身の右目を抉り出し、監視カメラに叩きつけ、カメラを破壊する。是乃は右目に発信器が仕込まれていることに気付いていたのだ。

その行為を宣戦布告と受け取った織雅は黒兎達に『是乃を殺せ』と命じた。黒兎が遠隔操作すると、門前の像から銃口が飛び出し、是乃目掛けて激しく銃撃した。しかし、是乃は姿を消し、『怒ると皺が増えるよ』と落書きされ、ナイフとフォークを突き刺されたヘビのぬいぐるみだけが残されていた。

「鷲宮教団様の御意志って訳ね。やれるものならやってみなさいな。愚かな教祖様…!!!そして是乃君…!」

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そう言って笑う織雅。一方、是乃はチェシャ猫の力を借りて、鷲宮教団の教祖、世羽(ヨハネ)の元に戻っていた。嬉しそうに織雅の反応を聞いてくる世羽の前で、是乃は心の中で誓うのであった。

必ずそこの中に行く。そして皆殺しにしてでも、ステラのもとへ行く。待っていろステラ

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その頃、ベッドで目を覚ましたステラ。周囲では月兎と次女、厘流(ミセル)と三男、太陽(ソル)、五男、メルム、そして六道が見守っていた。ステラが本当にステラなのか、それとも未だアリスに乗っ取られたままなのか…皆は警戒しており、ステラは自分がちゃんと『久遠寺ステラ』であることを説明する。アリスは今、ステラの奥深くで皆の話を静かに聞いているのであった。

ステラが無事に意識を取り戻したことを確認した六道は部屋を去ろうとする。そんな六道にステラは『アリスに何か言うことはないのか』と詰った。しかし、六道は、『今も昔も何も言うことはない』『私には誰も救えないし、約束などできる立場にない』と笑い、去っていくのであった。その態度に怒るステラであったが、何のことか分からない兄弟達は困惑する。

そして、『ステラは無事そうだから、僕も失礼する』そう立ち上がった三男、太陽(ソル)。ソルは相変わらず、今は亡き双子の弟で久遠寺家四男の海(マレ)を模した精巧な人形を抱きかかえていた。まるで人形が生きているかのように話しかけるソル。ステラとミセルはその様子に凍り付き、耐えられなくなったステラが『聞いて、マレはもう…』とマレの人形に触れたその瞬間、

「汚い手で触らないでください、ステラ」

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在りし日の声音でマレの人形がステラに向かって言う。驚き固まるステラ。しかし、どうやらそれはステラの見間違いで、マレではなく、ソルが言ったようであった。『ステラは沼に落ちたときの泥がまだ体についている』と告げて立ち去ったソル。なんとも言えない空気の中、次女、ミセルは皆を『一緒にお風呂に入ろう』と誘うのであった。ミセルは戸惑う月兎のことも強引に連れて行くのであった。

ミセルの言うお風呂とは、久遠寺家の敷地にある、水着で入る巨大な温水プール状の温泉のことであった。当主争いが始まる以前は兄弟皆、ここで親睦を深めていたのだ。水着になったステラとミセルとメルム。ふと、ステラはメルムが持ち込んだぬいぐるみがアリスの使い魔のジャバウォッキーを模したものである気付く。『ジャッキーはよくお空をとびまわってる。けっかいがあっておへやには入れない』とジャバウォッキーを見えている様子のメルムにステラは驚くのであった。

一方、そんな姉弟達を『こんな時に、呑気に…』と汗を流しながら眺める月兎。彼は暑いにも関わらずいつもの制服を着込んでおり、ステラから脱いだらと言われても『みんなを守らないといけないから』と言って脱ごうとしない。

するとステラは月兎に『ミセルは空気を明るくするために皆をお風呂に誘ったのだ』と言う。ミセルの恋人のイオは鷲宮教団に戻ったきり連絡が取れない。自分も辛くて仕方がないはずなのに自分達を気遣うミセルの気持ちを考えるステラは、同時にイオと同じ鷲宮教団にいる是乃に思いを馳せるのであった。

そして、ミセルがメルムをトイレに連れて行こうとし、ステラもついて行こうとしたその時だった。急に水が鋭くステラに襲い掛かり、ステラの髪を束ねていたゴムを切ったのだ。その現象に既視感を覚えたステラは困惑する。そうやって水を操る能力を持っていた四男、海(マレ)はもう死んでいるのだ。しかし、マレの様な姿をした何者かが、シャワーでステラと月兎の方に向けて放水しているのが見えた。

「どうしたのかしら?忘れちゃったんですかァ?海(マレ)のこと」

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それを聞いて『アリス』の能力を開放するステラ。水を刃物のように操る能力はマレのものであり、ステラが水着と丸腰になり、かつ水だらけの温泉で襲撃をかけてくる姑息さもマレそのものであった。その上、扉は閉め切られ、空調もいじったのか温泉は頭がくらくらするほどの熱気となる。ステラはマレの様な誰かの手元へ向けてシャンプーを投げつけ、シャワーヘッドを落させ、そのまま走って向かっていく。

『あれはマレではなく、マレを失って頭がおかしくなった双子の兄のソルだ』そう考えたステラ。しかし、”マレ”は床に残った水を操ってステラを攻撃し、温泉に誘導しようとする。一方、残された月兎はメルムが置いて行ったジャバウォッキーのぬいぐるみを見つけ、『僕にしかできない方法でステラを守る』と拾い上げるのであった。

”マレ”の狙いが温泉に誘導することだと理解しているものの、ミストまでも操る”マレ”に防戦一方となり温泉に近づきつつあるステラ。しかし、あることに気付いて自ら温泉に飛び込み潜っていった。『よりによって私の領域に飛び込むなんて。水面に出てきたら串刺しですよ』と笑う”マレ”。しかし、以前にマレと戦ったことのあるステラは『マレは操る水に接していないと能力を発動できない』ということを思い出したのだ。なので、”マレ”はステラに止めを刺すために浴槽に近づいてくるはずなのだ。そして、その頃、月兎はぬいぐるみを依り代にジャバウォッキーを召喚することを試みる。水中にいたステラはジャバウォッキーの気配を感じ取り、『長物が欲しい』と念じる。その念は月兎を通してジャバウォッキーに通じ、一瞬だけ姿を現したジャバウォッキーは口から剣を吐き出す。水面に上がったステラは剣を受け取ると、”マレ”の放つ水の刃を切っていき、浴槽の淵に立っていた”マレ”切りかかったのであった。

「海(マレ)はもう死んだ!!目を覚ませ太陽(ソル)!!」

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そう言って”マレ”の左腕を切り落としたステラ。しかし、”マレ”は笑い声を上げながら窓を突き破って逃げてしまう。残された左腕を見たステラと月兎は愕然とする。その左腕は作り物だったのだ。二人を襲ったのはソルではなく、人形だったのだ。

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第30話 海(マレ)の人形を追い詰めたステラ…そこに現れた双子の太陽(ソル)は…

メルムと共にトイレから戻ってきたミセルに事情を話し、早速“マレ”の右腕を見せたステラ。機械に詳しいミセルに遠隔操作できる代物か尋ねる。しかしミセルは『ただの可動式人形の骨組みでひとりでに動くものではない』と答えた。

『それでは、あのマレの人形には怨霊でも取り憑いているのか』と考えるステラ。そのまま、皆は温泉から出ることにするが、その際、メルムはジャバウォッキーのぬいぐるみを月兎に渡す。『ぬいぐるみが月兎のことは弱っちくて好きじゃないけど、話ができるから持っててほしいと言っている』と告げて。

その事から、先ほど月兎がジャバウォッキーを召喚したと知って驚くステラ。月兎を見直すと同時に、今までも彼が何度となく自分を助けてくれていたことに気付くのだった。

本物の是乃は月兎の持つ人格の一つだった。しかし、久遠寺家に来て以降の是乃は、月兎から姿を奪った灰(ラウム)である。偽物の是乃と長い時間を共に過ごし、今でも彼への気持ちを断ち切れないステラは月兎のことを考える余裕が無かった。自分の気持ちが分からなくなり混乱しそうになるステラ。しかし、今はマレの人形を追及することに決めるのであった。

温泉を出てアリスの装束に身を包んだステラは月兎と共に久遠寺家の敷地内にある教会を目指した。そこはマレとソル、双子の双方の希望で造られたものだった。そこから歌声が流れて来るが、その声は二人分のように聞こえる。危険だから自分ひとりで行くと言うステラに、月兎は『自分は敷地内に隠された武器の場所を知っており、役に立てる。君の足手まといにはならない』と言う。しかし、その瞬間、背後の生垣の陰からマレの人形と操られている様子のメイドが二人表れ、月兎を捕らえる。マレの人形の額に銃弾を撃ち込むステラであったが、人形は頭部を損傷しても動き続け、笑いながらメイド達とともに月兎を連れ去っていくのであった。月兎を人質に取り、メイド達まで操り下僕にするやり方を『マレらし過ぎる』と感じたステラ。以前にもマレが黒兎達を操っていたことを思い出すが、そこで違和感を覚えた。そして、虚空に向けてジャバウォッキーに呼びかけ、”あるもの”が欲しいと告げ、受け取った。

そして、教会に踏み込んだステラ。操られているメイド達を制圧し中に入ると、奥のイスには頭部を損傷したマレの人形が腰かけている。

「あなただけはこの手で殺さないと気が済みません」
「初めて見た…あの顔合わせの時から気にいらなかったの」

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人形のその言葉にあることを確信したステラ。武器を向けたステラに『自分には銃撃は効かない』と言って水の攻撃を繰り広げたマレの人形。しかし、ステラが手にしていたのは銃ではなかった。

「遠慮すんなって。その自慢のお顔にもっとお似合いの化粧(メイク)をしてあげるから」

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それは火炎放射器だったのだ。炎に包まれて絶叫する人形にステラは『お前はマレじゃない』と笑う。

マレとステラが初めて会ったのは顔合わせの時ではない。子ども達が久遠寺家に引き取られた直後、まだマレが顔に深い傷を負っており、人目を避けて過ごしていた頃の事。ステラと是乃は陰に隠れていたマレのことを野良犬と勘違いし、そのことがきっかけでマレはステラに恨みを抱いていたのだ。『プライドの高いマレのことだから、このことは誰にも、双子のソルにも言っていなかったのだろう』…そう推測するステラ。焦げたマレの人形を壁に叩きつけながら言う。

「お前はただの人形だ。海(マレ)の真似はやめろ。あいつはもっと性格悪い」

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ボロボロになった人形は動揺したように『嘘だ。ソルは僕たちは誰よりも仲がいい双子だったって、愛してるって言って…』と呟く。しかし、次の瞬間頭部が砕け散る。

「バカな人形だな」
「海(マレ)は僕を誰よりも憎んでいる。僕の腕に抱かれるのなんて許さないし、「愛してる」なんて信じる訳ない…」

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人形を撃って破壊したのは、ソルだった。

するとマレの人形から不思議な光が抜けていく。驚くステラにソルは『マレの中にあった、水を操る戦魂(ラルヴァ)だ』と告げる。ステラに殺された時、マレの体内にマレの魂は無く、残ったのは主を失った戦魂だけだった。そして、双子だからかソルはそれを取り込むことができた。

裏にソルがいることを理解していたステラ。マレが以前操っていたのは男性である黒兎だけだった。対して今回操られているのは女性であるメイドばかりだったのだ。メイドを『僕の可愛い操り人形』と呼ぶソル。メイドも一度死んで存在を失っている黒兎と一緒で、いくら利用しても構わないと言ってのける。

銃口を向けるソルに目的を尋ねるステラ。『マレの仇を討って、当主になりマレを蘇らせるつもりか』と。しかし、ソルは笑いながら『僕らは仲が悪い。マレは生き返らせて自分の手で殺す』と答える。ステラは以前からソルはいつも笑っているものの、心の中が全然読めない奴だったと思い返すのであった。

そしてソルは幕の向こうにいた月兎の姿をステラに見せる。月兎は首に縄をかけられた状態で不安定な足場に立たされていた。ソルはスイッチのボタンを左手で押しており、それを離すと月兎の足場が崩れ、首を吊られて死んでしまうと告げる。『自分を殺したらスイッチから手が離れて月兎は死ぬことになる』…そう脅しをかけるソル。

「だからおとなしくしてよ。僕が教えてあげるから。本当の炎の扱い方」
「こうやって扱うんだよ。2人仲良く灰になりなよ…」

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ソルはそう言って手の平から大きな炎を出しステラに向かって放った。慌てて火炎放射器を向けるステラ。しかし、ソルの火炎の勢いに負けていく。

丁度その頃、庭園で過ごすミセルとメルム。ソルにマレの人形を与えたのはメルムだという。幼いメルムはたどたどしい口調で『僕が願うと人形は独りでに歩き喋るようになる。僕の家のぬいぐるみも人形も全部生きている』と語るのであった。

ソルの火炎に苦戦するステラ。押し負けそうな上、このままだと月兎の集中力と体力が切れて足場から落ちてしまう。ステラは月兎に『10秒間だけ耐えろ』と告げるのであった。

第31話 火炎を操る太陽(ソル)との戦い、そして語られる双子の過去

『10秒だけ耐えろ。大丈夫だ、首で体重を支えるなりして』と無茶苦茶なことを月兎に言うステラ。そんなステラにソルは『人形との勝負で燃料を使い過ぎで、もうヤバいだろう』と笑う。月兎も今にもバランスを崩しそうになる。するとステラは火炎放射器を消し、ソルの火炎から逃げ、椅子の陰に隠れる。『何?かくれんぼ!?』ソルはスイッチを離し、月兎の足場を引っ込める。月兎の首が吊られるその瞬間。ステラは月兎の首に掛けられた縄を拳銃で撃って断つ。月兎は首を吊ることなく、落下した。

『首を吊ってからの10秒だよ』と平然と言うステラに驚くソル。ステラはソルの方こそ炎を出しすぎて消耗していることを指摘する。

「あーらら、俺の負けかー。殺して…どーぞ」

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ソルはあっさり負けを認める。しかし、ステラはソルが未だに足場のスイッチを捨てず握りしめたままであることを訝しむ。
『ステラ、罠だ!』そう叫んだのは月兎だった。月兎はマレの遺体が入った棺とそこに仕掛けられた爆発物を見つけたのだ。スイッチは足場を爆発するためだけではなく、棺の爆発物の起爆装置も兼ねており、ソルが死にスイッチから手が離れたら爆発が起こる…そう推測した月兎。

『マレの目の前で仇の自分を焼き殺すと同時に自分も一緒に死ぬつもりか』そう、ソルに問うステラ。しかし、ソルは笑いながら『俺とマレは憎み合っているから、マレのために死ぬつもりはない』と言い、二人の過去を語り合う。

幼い頃は仲が良い双子だった、ソルとマレ。二人はロシアの資産家の息子とそこに勤めていたメイドが駆け落ちして生まれた子どもだった。しかしら父は早くに亡くなり、美しかったがアル中だった母は二人に物乞いをさせ、生計を立てていた。しかし、ある時父親の実家、祖母が二人を引き取りにやってきた。

祖母は厳格で冷酷で、二人に『跡取りとしておいてやる、もう一人はスペアだ』と傍らにピットブルを侍らせて言い放つ。そして、マレが心が女であるものの、その肉体が男であると知ると、マレが母から持たされていた女性ものの服や鞄を取り上げ、男装させて離れに閉じ込めた。そして、ソルには息つく暇もなく勉強漬けの毎日を送らせた。辛かったが、祖母はソルに『お前が立派な後継者にならなければマレを追い出す』と脅すため、言いなりになるしかなかったのだ。

ある日、祖母の部屋からマレが奪われていた鞄を見つけたソル。直接会って渡すのは気が引けたため、離れのドアの前に置いて、出入りの使用人を通して渡そうとした。しかし、その時に限って何故かドアの鍵が開いており、『ソルが来てくれた』とマレは離れから飛び出してしまう。すると、マレを野犬達が襲った。悲鳴を上げソルに助けを求めをマレ。助けようとするも足が竦むソル、そこにピットブルを連れた祖母がやってくる。『マレを助けたら今度はお前の番だ』とピットブルにソルの衣服を噛ませて脅す祖母。全ては祖母が仕組んだのだ。

祖母はマレが男でありながら心が女であるだけでなく、操る能力があることを知ってしまったのだ。物心ついたころから、ソルは火を、マレは水を操ることができたが、それは隠してきた。『お前まで化け物の仲間ではないでしょうね』と詰め寄る祖母。迫るピットブルに怯えたソルは『違います』と答えるのが精いっぱいだった。
…そして、後日ソルが目にしたものは、野犬の噛み跡が残ったマレとその前で水の刃で体を無数に貫かれ息絶えた祖母とピットブルであった。全てを隠匿するため、能力で屋敷を燃やし尽くしたソル。しかし、マレはソルに心を閉ざしてしまった。そして、そのタイミングを狙いすましたように日本から久遠寺家の使者が二人を迎えに来たのだ。生きるために二人は日本に渡り織雅の子どもになることを選んだのだった。しかし、久遠寺家でマレはソルに近づくものを徹底的に排除した。『俺を永遠に孤独にするためだ』とソルは語る。

それに対してステラは、マレに殺されたメイドの少女リサについて、『リサが殺されたのはあんた達の兄弟ゲンカの巻き添えなのか』と尋ねる。しかし、ソルはリサのことをろくに覚えてい無かったうえ、自身に手編みのショールを渡してきた厚顔無恥なメイドと言い捨てる。

「あんた達…本当はすごく似た双子だったんだね」 
「まるで「アリス」のトゥイードル・ディーとトゥイードル・ダムのようだ」

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ソルとマレの本質が一緒であることに気付いたステラ。ソルに真の目的を問う。
当主争いに勝った者には兄弟を一人だけ生き返らせることができる。しかし、当主争いでついた傷は消すことができないとソルは語る。父や長男是乃に傷が残っているのはそのためだ。以前の当主争いでも兄弟を蘇生するために肉体を共有する道を選んだ者もいたというが、上手く行かず悲惨な結果になったという。
仮にマレを生き返らせたとしても、常に誰かに愛されていないとダメなマレはショックでそれぞまた死んでしまうだろう…そう言ったソルは今度は拳銃で月兎を人質に取る。

月兎に拳銃を突き付け、ステラに武器を捨てるように迫るソル。ステラは無言で銃を捨て、ソルは月兎を『役に立たない白兎』と笑った。しかし、月兎は『役立たずじゃない、すごい武器がある』とジャバウォッキーのぬいぐるみを見せる。そして、月兎がぬいぐるみを宙に投げると、その空間からジャバウォッキーの頭が現れ、アリスに武器を授けた。

慌ててステラに向けて火炎を放つソル。しかし、ステラが手にしていた武器は液体窒素の放射器。火炎は一瞬で消え、ソルの両腕は凍り付いてしまったのであった。そして、ソルがスイッチから手を離しているにも関わらず爆発は起きない。

『君は分かっててひと芝居うったわけか。やるじゃん』そう座り込みながら月兎に言うソル。月兎は棺の爆発物にタイマーが設置してあることに気付いていた。1つのスイッチが月兎の足場と棺の二ヶ所の起爆装置になるのはおかしい、ソルの目的はタイマー式の爆弾が発動するまでの時間稼ぎ…そう言い当てる月兎。爆発まではもう、5分切っていた。

脱出することにするステラと月兎。しかし、ステラは酷い凍傷を負ったソルも連れていこうとする。『俺の体はこんなんだぜ!?』と言って抵抗するソルに、ステラは久遠寺家ならこれくらい治療できると言う。そして、

「大体こんなの決闘ですらない」
「いい加減みとめなよ。あんたは「大事な海(マレ)の仇を討ち」「共に死のうとした」んだろ?」

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『今は生きよう』そうソルに言うステラ。ステラの言葉を受け入れたソル。そのとき、ソルの耳にマレの声が届いた。

また、海(マレ)を捨てるんだ?

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ステラと月兎を振り払うソル。そして泣きそうな顔で二人に告げた。

「だめだ、ここで一緒に死んでやらないと」
「海(あいつ)とまた双子に生まれてこれないじゃないか」

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そう言って教会の扉を内側から閉めるのであった。

『ねえ、ソル』…そうソルに語り掛けたのは、祭壇の上に腰掛け俯いているマレであった。『あの日、バッグを置いて私をおびき出したのはソルだったのか』そう尋ねられたソルは『違う。俺はマレを喜ばせたかった。鍵を開け、犬を離したのもおばあさまだ』と答える。するとマレは顔を上げる。安堵の涙を流し、子どものように顔をくしゃくしゃにしたマレはただ、こう言うのだった。

「そう」
「よかったァ…」

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二人で物乞いをしていた頃、寒さからよく近くの教会へ逃げ込んでいた二人。いつも助けてくださいと神様に祈っていたが、それが叶うことはなかった。しかし、今度は願いを聞き届けてくれたのだ。
『次に生まれる時も一緒に』

爆発し燃え盛る教会をステラは呆然と見つめるのであった。

第32話

燃え盛る教会を立ち尽くしながら見つめるステラ。マレのことが大嫌いだったステラだが、何故だか今は涙が止まらなかった。

一方、その頃鷲宮教団では医師に是乃が呼び出されていた。灰(ラウム)と呼ばれ不機嫌そうに自分は是乃だと言い返すが、医師は『姫様のお呼びだ、時間が無いから急ぐように』と告げる。今、宗主の世羽(ヨハネ)は眠っている状態だと言う。

世羽の部屋に向かう是乃と医師。そこには苦しそうな様子の世羽の姿があった。しかし、みるみるその肉体はオッドアイの美しい女性に変化していった。

戦いの中、ソルがステラに語った、以前の当主争いで、愛する者を蘇生するために肉体を共有する道を選んだ者達の逸話。それは、鷲宮教団の宗主世羽と、この聖女レイジナのことであったのだ。しかし、それは一つの体を交互に共有するというもので、結果的に世羽とレイジナは永遠に触れ合うことも話すこともできなくなってしまった。レイジナは是乃に言う。

「是乃にお願いがあるの。世羽が世界を壊してしまう前に」
「私の予言をはずしてほしいの。はずれたことはないけれど」

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一方その頃、久遠寺家では定例のお茶会が開かれていた。『ずいぶんとさみしくなっちゃったね』と楽しそうに笑う母、織雅。残された子供は次女の厘流(ミセル)と四女、星(ステラ)、そして末っ子のメルムだけだ。『一体誰が勝ち抜いて久遠寺家の当主になるのか』そう歌うように言う織雅に怒るステラ。『お母さんはあんなに私たちを本当の子どもみたいに愛してくれたのに、皆が死んで平気なのか』と問い詰める。

それに対して織雅は『父も子ども達もみんな深く愛している』と答える。しかし、

「私はかつてお父様の愛を手に入れるためにお父様の大事な人を殺した女よ」
「邪魔な兄妹を殺し、愛するお父さん自身をも殺したわ」

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その言う織雅に絶句するステラとミセル。当主争いを制してありあまる権力、永遠の若さ、そして愛する人を生き返らせ全てを手に入れたという。そしてそれを傍らの父、細零(サザレ)も笑いながら聞いている。『他に好きな人がいたのか』と父に問うステラ。しかし、それに細零が答える前に九重がやってきて織雅に何事かを告げる。どうやら是乃が関わっているようだ。

『みんなにも知らせておいた方がいいかも』そう言って、是乃の正体と、その背景にある鷲宮教団について語り始める織雅。

鷲宮教団とは前回の当主争いから脱落した世羽が創った教団だ。平等主義を掲げながらも自分が選んだ聖使達に異形の能力を授け、自らを唯一神に定めている世羽。そんな彼を織雅は『中二病』と笑う。是乃はそこの聖使、スパイであった。そして、最近では久遠寺のとある系列の支社を襲撃し、土地にある種の護りを張っている『御神体』を盗んで回っているのだ。

『兄弟達はお茶を飲まずに生きていけない。外では生きていけないのではなかったのか』そう母、織雅に尋ねた次女、ミセル。それに対して織雅は『鷲宮にもお茶に準じた何かがあるのだろう。しかし、是乃の寿命ももうすぐ尽きる』と答える。驚くミセルとステラに織雅は笑って続ける。当主決めは是乃の19歳の誕生日から始まり、期間は1年間と定めたのには理由があるのだと。

「貴女達は成人するとともに命尽きるの」

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当主決めは昔から成人するまでの子どもで行われてきたという。『是乃はあと半年しか生きられず、自分達もそう長くは生きられない』その事実に呆然とするステラとミセル。そして、ステラは織雅にある『お願い』をするのであった。

久々に車で久遠寺家の敷地の外に出たステラ。隣の座席には監視役として月兎が座っている。二人が向かった先は久遠寺家が運営しているギャラリーで、次に是乃が襲撃するのは恐らくここだと予測されているのだ。ステラは母、織雅に『お願い』して、自ら是乃を捕まえるべくここにやってきたのだ。既にギャラリーには父、細零(サザレ)が無数の警備員とともにおり、織雅からは是乃を殺すように言われているという。 それを聞いたステラは動揺し、細零に『自分の好きな人を殺した母、織雅を愛することができるのか』と尋ねる。しかし、『それは、(本物の是乃を偽物の是乃に奪われた)自分のことを言っているのか?』と返されてしまい、それ以上追及できなくなってしまう。御神体は屋上にあると聞いたステラは警備員達とともに屋上に向かおうとするが、月兎がそんなステラに暗い面持ちで尋ねる。

「君は…やっぱりあの是乃のフリをしていた彼のことを…まだ…」

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本物の是乃は月兎と持つ人格の一つだった。しかし、久遠寺家に来た時の最初の茶会で灰(ラウム)が是乃の姿を奪い、瀕死に追いやり、以降是乃に成り済ましたのだ。

そんな月兎の耳を引っ張り『ばか』と言ったステラ。確かに今の是乃は久遠寺家に来て以降ステラを支え続けた。しかし、本物の是乃を殺したのは彼なのだ。『大丈夫、私は間違ったりしない』そう月兎に微笑むのであった。

しかし、二人のそのやり取りの直後、警備員の姿を奪っていた是乃が正体を表し、父、細零に向かって拳銃を発砲した。屋上の御神体はフェイクで、ステラ達がいる部屋の中央にあった像こそが本物の御神体であったのだ。

煙幕を放った是乃はそのままステラの元へ接近する。右目は義眼になっていた。自身を抱き寄せた是乃にステラは『離して』『許せない』と告げる。
しかし是乃はステラを裏切ったように見える今までの行動は久遠寺家と鷲宮教団双方を欺くためであり、『ステラが自分を一生恨み許さなくても、自分は約束を守るためなら何でもする』と言う。

以前、庭園で『どんなことがあってもそれは俺がステラと一緒にいるための手段。信じて待っていてほしい』と是乃が言っていたことを思い出すステラ。しかし、『あなたは本物の是乃兄を殺した』と返す。次の瞬間、 父、細零が是乃の胸部を拳銃で撃ち、月兎がステラを是乃の元から引き離す。

『こっちへ』とステラを連れて逃げようとする月兎。是乃と細零はもみ合いになる。自分がどうしたらよいか分からなくなるステラ。月兎を不安にさせたくない、この偽物の是乃とはさよならしなくてはいけない…そう自分に言い聞かせる。しかし、細零と戦う是乃がブレスレッドをしていることに気付く。それは、ステラが誕生日プレゼントに渡したものだった。

父、細零が是乃に拳銃を向けたそのとき、

「是乃兄ー!!」

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ステラは是乃を庇うため前に出てしまう。すぐに細零に突き飛ばされたステラ。そんなステラを月兎が強引に出口へと連れて行く。細零と是乃は再びもみ合いになり煙幕の向こう側に消えていく。騒ぎを聞きつけた警備員たちが駆けつけた時には是乃は姿を消し、負傷した細零だけが残っていた。御神体は無事である。しかし、ステラは自身の取った行動に呆然と床にしゃがみこんでいた。月兎も失望した様に、ステラから顔を背けたまま言うのであった。

「君はやっぱりあの是乃のことを――」
「今も――」

架刑のアリス8巻 由貴香織里 174/181

以下、感想と考察

海(マレ)の過去設定の矛盾について

この8巻は三男、太陽(ソル)がメインの巻。そこで太陽(ソル)と海(マレ)の双子の過去が語られた。今までの経験則的にも大体の兄姉達が久遠寺家に来る前は悲惨な境遇にあり、4巻で先に死亡した双子の片割れの海(マレ)も例外ではなかった。…ところが、今回語られた双子の過去話、以前4巻で語られた内容と明らかな矛盾があるのだ。

それはマレが野犬に襲われたというエピソード。以前の4巻での内容は

  • ロシアにいた頃、マレは野犬に襲われ顔に傷を負う(畑で一匹だけに襲われている)。ソルは近くにいたものの助けてくれなかった
  • その後、ソルと同じ格好、髪型をしているも、その傷のため周囲からは『ソルと同じ双子だとは思えない』等と言われる
  • 更に、その方が哀れっぽくて道行く人がお金をくれるからと母に髪を切られ、物乞いをさせられた(マレ一人だけで物乞いをしている描写)

対して、この8巻では

  • 父は亡く、母がアル中だったため、ソルとマレは2人で物乞いをさせられていた(マレの方が短髪。顔に軽い傷や汚れがある描写はあるが、犬にかまれたようなものではない)
  • 資産家の祖母に引き取られ、ソルは勉強漬けに、マレは心が女であることを受け入れてもらえず屋敷内の離れに幽閉される
  • その後、祖母の策略で、マレは野犬に襲われる(屋敷の敷地、離れの外、襲っている野犬は3匹以上)

…かなり、変わっていないか??特にマレが野犬に襲われた時期について(襲われた場所や犬の数は目を瞑れる)。4巻での回想では、犬に襲われてから物乞いをしており、8巻では物乞い→ババアに引き取られる→犬に噛まれるになっている。4巻での『母親に物乞いさせられた』が犬に襲われた時点より前のエピソードだったと解釈しようとしても、前後の文脈的にもかなり厳しいものがある。…うーん、やっぱりミスなんだろうなぁ。

元々、『男だと思ったら女だった(逆もあり)』『死んだと思ったら生きていた』『被害者だと思ったら加害者、というより黒幕だった』なんてことは日常茶飯事な由貴香織里ワールド。設定の上に更に設定を重ねた結果、最初に語られていた設定がほぼ死んでしまったり、もはや矛盾しているのではないかというレベルになってしまうことも少なくはない。

しかし、今回のマレの過去については、ただの設定ミス・矛盾だと思う。恐らくソルの過去を掘り下げるために『鬼畜ババアエピソード』を追加したのだろうけど、結果4巻で描いた内容と矛盾してしまったのだろう。しかし、作者である由貴香織里先生はともかく、編集の人はこの矛盾について何も思わなかったのだろうか。

それにしても、ステラは本当にマレの事嫌いなんだな。人形に「マレはもっと性格が悪い」と言ったのには笑ってしまった。

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まとめ~是乃への情を捨てきれないステラ

やはり是乃への情を捨てきれないステラ。とっさに是乃を庇ってしまう。そして、そんなステラの態度に酷く傷付いてしまう月兎。当主争いが勿論ストーリーの主軸だけれども、『是乃と月兎どちらを選ぶか』というのもテーマなので、そこのところもどう話を膨らませていくのかが楽しみだ。

そして残された兄弟は次女のミセルと末っ子五男のメルム。ミセルとは一度は戦っており、メルムは非常に幼い。果たしてステラはどうするのか…。

次の巻の記事はこちら→【漫画】架刑のアリス9巻【感想・ネタバレ・考察】次女厘流(ミセル)と再戦~脱出を試みるステラだったが…!?

最終巻の記事はこちら →【漫画】架刑のアリス11巻・最終巻【感想・ネタバレ・考察】あっさりしたラスト~ステラが選んだのは月兎か是乃か?

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