【漫画】機能不全家族1(夏目ユキ)【感想・ネタバレ・考察】裕福な医師の家庭は“機能不全家族”…虐待する母、見て見ぬふりの父、統合失調症の弟~修羅の家庭が生まれるまで

機能不全家族表紙 

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ジャンルとして”毒親物”が確立されて久しいが、どうしても”衝撃さ”で勝負をしたり、内容が薄いものも少なくない。
そんな中、丁寧な作りで尚且つ先が気になる作品が夏目ユキの『機能不全家族』である。医師の家庭で傍から見れば裕福で幸せな家庭だが、専業主婦の母は心を病み虐待を、父親は見て見ぬふりを、弟は統合失調症に…という機能不全家族を描いた、作者の実話エッセイ漫画だ。『Renta!』や『めちゃコミック』で現在、掲載中である。

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Contents

あらすじ・ネタバレ

コロコロと機嫌が変わる母と、優しいが事なかれ主義の父の間で育つ三兄弟

それは消したくても消えない心の中に留まり続ける幼少の記憶―

機能不全家族1 夏目ユキ 3/27 

ユキは医師の父と専業主婦の母、そして妹トモと弟ヒロの裕福な5人家族の長女として育った。しかし、母は少し変わった人であった。“幼児教育”と称して、何故か子供達に射撃訓練をさせ、バランスボードに乗せたり、スピリチュアルCDを聴かせる。端から見て不思議な光景であったが、母はユキ達に『これは集中力を養うトレーニングで将来絶対役に立つ』と笑顔で語り、ユキはそれを信じて一通りこなしていた。

そして、母はマルチ商法にハマっており、頻繁に人を家に招いてはセールスをしていた。しかしユキ達はそれを『大人の会話』だと受け入れ、疑問に思うことはなかった。また母の食育は極端で、炭酸、カップ麺、着色料が入ったもの禁止で、マルチで購入したビタミン剤を子供達に飲ませる。しかし、その一方で母は料理を作らず、朝は起きてこないので子供達は食パンを生でかじって、姉弟達で登園登校。お弁当が白米にレトルトカレーなんてこともある。そのため、今思い返してもユキは『おふくろの味』というものが分からないのだ。

そんなちぐはぐな母は、感情の起伏が激しく、『ユキのバレエの発表会に父が離れた駐車場に車を停めた』と言うような些細なことで、人目をはばからず喚き散らす。電話中の母はユキが小声で話し掛けると、ビンタして黙らせ、何事も無かったかの様に電話を続け、電話を終えると軽い調子で謝ってくる。ユキはそんな母を内心軽蔑し、恥じていたが、母を怒らせるのが怖くて、いつも機嫌を伺っていたのだった。

一方、父は真面目な医師で、土日はいつもユキ達を楽しいところに連れ出し、何よりも子供達を叱ることをしないため、ユキ達は大変懐いていた。しかし、出掛けるとき、必ず母は家に残っていた。
唯一家族全員で出かけたのは海外旅行(描写的にシンガポールと思われる)だったが、やはりそこでも母は些細なことで激昂し、父と母は別行動を取ることになった。妹と弟は優しい父について行ったが、ユキは母を見捨てることができず母の元に残った。そんなユキを『やっぱりユキちゃんはついてきてくれるのね』と母は優しく抱擁するのだったが、ユキはこう思っていたのだ。

私が我慢して母の気持ちが少しでもおさまるならそれでいい

機能不全家族1 夏目ユキ 12/27 

その後も母は、父の沖縄一人旅を了承していたにも関わらず、旅先に電話して『早く戻ってこい』と要求して帰って来させたりと支離滅裂な行動を繰り返す。そして、父は母の要求通り本当に沖縄からトンボ帰りして来るのだ。気まぐれで些細なことで激昂する母に文句を言うこともしない、事なかれ主義の父。ユキ達三兄弟は父と母の関係を不思議に思いながらも受け入れていた。

だが、子供達の環境は”ある出来事”を境に大きく変わっていったのであった…。

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チャット事件とマイホームへの引っ越しを気に、母の子ども達への暴力が始まる

インターネットが普及し始めた頃、母はチャットを始めた。『知らない人としゃべって何が楽しいのだろうか』と疑問に思うユキであったが、母はどんどんチャットにハマっていくのだが、そのお陰で以前よりも機嫌が良くなったため、ユキは少し安心していた。

しかし、ネットがまだ定額でなかった時代である。母が連日チャットをし続けたため、通信料が30万円超えてしまったのだ。普段決して母に文句を言わない父が『30万稼ぐのがどれだけ大変か知っているのか!?僕は君のネット代を稼ぐために働いてるんじゃない!!』と母に怒る。『あんなに怒るお父さん初めて見た』と驚くユキ。その頃から母の浪費を巡り父と母は言い争うようになり、夜布団の中で父と母の喧嘩を聞くユキは小4ながら、『この二人から生まれた自分はなんなのだろう』と絶望するようになっていったのであった。

そんな風に父と母の関係がこじれる中、以前から計画していたマイホームが完成してしまった。はしゃぐ母に対して冷めた態度の父。子供達も母に対して腫れ物扱いをする様になっていた。

すると、この頃から母の様子が変わってくる。以前は良くも悪くもパワフルだった母に陰りが見え、塞ぎ込むようになり、『変わっている人』から『おかしい人』になっていった。

ある日、母は長く時間をかけて非常に濃い化粧をする。そして、ユキに『お母さん、キレイ?』と尋ねた。不気味な様子に怯えつつユキは『キレイだ』と答える。すると、母は笑顔で『思ってないでしょ、嘘ついて悪い子』と詰る。慌てて『キレイだと思っているよ』と取り繕うユキだったが母は化粧台を両手で強く叩き、『ならハッキリ言いなさいよ』と威圧する。泣きそうになりながら『お母さんはキレイです』と言うユキ。しかし、ユキは母をキレイだなんて思ったことは一度もなかった。それ以上に母はユキにとって”怖い存在”だったのだ。

その後も鬱々とした空気をまとい続ける母。ある日、まだ6歳の幼い弟がそんな様子を察せず『お腹が空いた』と母に甘えだす。
すると、母は突然弟の額にビデオテープを強く投げつけたのだ。
痛みと驚きから泣き出す弟。しかし、母は醜く顔を歪めて笑う。

「泣け泣けー、もっと泣けー」

機能不全家族1 夏目ユキ 23/27 

そして、そう言いながら次々と弟にカセットテープを投げつけていくのだ。

それを見ていたユキと妹はただただ立ち尽くしていた。そして、そのとき抱いていた感情は『弟が可哀想、助けなきゃ』等といったものではなく、『自分に矛先が向くのではないか』という恐怖であった。息を殺し、存在を殺し、時間が過ぎるのを待つユキ。しかし、暴力の矛先はユキと妹にも向かい、結局殴られるのであった。

母は子供達に一通り暴力を振るうと、優しく『叩いちゃってゴメンね』と子供達を抱きしめる。これがひたすら繰り返されるようになっていく。大人になった今であれば『児童相談所』『相談ダイアル』『学校の先生』『警察』等、色んな相談機関があると分かるが、幼かったユキ達は『自分達には親しかいない』と思っていた。

そして、それから本格的にユキの家族は壊れていくのであった。

以下、感想と考察

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『変わった人』と『おかしい人』の境界は?風変わりなユキの母

序盤から『?』となるユキの母の行動。もちろん、母親だって一人の人間。『変わった人』『個性のある人』なんて沢山いるし、その人生経験、価値観に基づいた『独自の教育』を施すのも珍しい話ではない。

しかし、ユキの母の“教育”は何ともちぐはぐだ。一貫性が無く、メチャクチャだ。そういったところから考えてもユキの母は『独特・変わっている人』ではなくやはり、『おかしい人』なのだ。その気紛れや癇癪から行動は“性格”とか“価値観”という言葉で片付くものではなく、病的な何かだと言ってよいだろう。

特に、笑いながら6歳の息子に『泣けー』と言いながらビデオテープを投げつける様子は最早ホラーだ。

何故ユキの母はここまで病んでしまったのか。その行動原理や背景はこの先明かされるのだろうか?

子供達を全く叱らない、医師の父は“優しい”のか?

そんな攻撃的な母に対して、真面目な医師である父は土日子供達を遊びに連れていってくれるだけでなく、優しく全く子供達を叱らないため、ユキも妹も弟も大変慕っている。

しかし、機能不全家族のパターンとして『母は虐待行為をして、父が優しい事なかれ主義』というパターンが非常に多い。そして、『決して子供達を叱らない』というところがポイント。それは本当に“優しさ”なのか…。その答えはこの後の展開で分かるのだ。

果たしてユキの家族はどうなっていくのか…追って記事を書いていきたい。

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