風変りで怒りっぽい母と何をしても怒らない優しい医師の父の間で育ったユキと妹と弟の三兄弟。しかし、父と母の関係は徐々に悪化していき、様子がおかしくなった母は次第に子供たちに暴力を振るう様になっていった…。
前回の記事はこちら→【漫画】機能不全家族1(夏目ユキ)【感想・ネタバレ・考察】裕福な医師の家庭は“機能不全家族”…虐待する母、見て見ぬふりの父、統合失調症の弟~修羅の家庭が生まれるまで
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Contents
あらすじ・ネタバレ
毎晩の様に暴力を振るう母と、見て見ぬふりをする父に絶望する子供達
母の身体的虐待と癇癪が常習化したユキの家。喉がかわいたユキが台所に向かうと妹のトモが買ってきたグラスが流しに割られて散乱している。『なんだが、このコップが嫌い』と暗い目で語る母に何も言えないユキ。その頃、医師である父の帰宅は遅くなり、ユキは子供ながらに『父はわざと遅く帰ってきている』と理解していたのであった。
そして、次第に母の衝動は物にあたるだけではおさまらなくなっていく。夜になると決まって子供達の部屋にやってくる母。
「あ~、悪い子発見」
機能不全家族2 夏目ユキ 6/27
ユキと妹のトモは同じ部屋で二段ベッドで寝ているのだが、母は上の段で寝ているユキの髪を引っ張り顔を殴り、下の段で寝ているトモを蹴りお腹を踏みつける。そして母は一通り暴力を振るうと満足して、今度は弟のヒロの部屋に向かう。ユキは暴力を振るわれ泣き叫ぶ弟の声を聞くと『良かった』と矛先が自分から逸れたことにホッとして眠るという日々を送り続けていた。
ある日の夜、『こんなに頑張ってるのにどうして分かってくれないの』と家中に母の叫び声が響き渡る。父が珍しく早く帰宅し夫婦喧嘩が起きたのだ。最早夫婦喧嘩に何も感じなくなっていたユキは、むしろ『今日は叩かれないだろう』と安心する。突然、ガシャーンと何かが壊れる音がしても、母がまた何か壊したのだろうと気にすることはなかった。
しかし、翌朝ユキが目を覚ますと、母がカメラを手渡して、写真を撮ってほしいと頼み、服を脱ぎ出す。母の背中には大きなアザができていた。驚くユキに母は泣きながら『昨日、お父さんがイスを投げてきてアザになってしまった』と明かす。そして困惑するユキに『それがお父さんにイジメられた証拠になるから』 と写真を撮るようにせかす。言われるまま母のアザを撮るユキだったが、内心こう思うのであった。
お母さんだって私たちのこと叩くのに…私たちがお母さんにイジメられた証拠はどこに残るの?
機能不全家族2 夏目ユキ 11/27
父が早く帰ってくれば母から殴られずに済む…そう信じていたユキ。ある晩、ベッドに入っていると父が帰宅する音が聞こえ、『今日は痛くない』と安心する。物音から父母がどちらも寝床に入ったことが分かった。しかし、その直後、父がいるにも関わらず母は子供達の部屋に来て、ユキ達に暴力を振るい始めたのだ。泣き叫ぶユキ。それでも、父は助けに来ない。
お父さん、居るんでしょ!?こんなに叫んでるのにどうして助けてくれないの
機能不全家族2 夏目ユキ 13/27
自分達を助けてくれない父に絶望するユキ。そして、翌日になると殴られ傷付いた子供達を『いい子』『お母さんの大事、大事』と優しく抱き締める母のことを嫌いになれず苦しむのであった。
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焼肉事件を機に父の異常さに気付くユキ
季節は巡り、春のある日のことだった。母は夕飯を用意せず、お菓子も無かったためユキ達三兄弟はお腹を空かせていた。すると、末っ子の弟のヒロが『父の働く病院に行こう』と言い出す。しかし、その頃にはもう母の虐待は昼夜問わず行われるようになっており、母の怒りを恐れたユキは残ることを選択。妹のトモと弟のヒロは母が外出している隙に父の勤める総合病院へと向かった。
病院にいた父はトモとヒロの来訪に驚くが二人が『お母さんが怖い』『ご飯がなくてお腹がすいた』と訴えると、優しく仕事が終わるまで待つように二人に言い、仕事が終わると焼肉屋へと連れていった。笑顔で焼肉を頬張るトモとヒロ。それは焼肉が美味しいからではなく、母から解放される時間が嬉しかったからであった。
しかし、食事を終え店を出ると父はトモとヒロに『まだ仕事が残っているから二人は先に帰るように』と告げる。父が一緒に帰ってくれると思っていたヒロとトモは落胆し、怯えながら帰宅する。そして、焼肉の臭いをまとって帰ってきた二人を母は当然許すわけもなく、いつも以上に激しい暴力を振るう。
「お前ェらばっかりいい思いしやがって!!」
機能不全家族2 夏目ユキ 20/27
「不良になれ!不良になれ!不良になれ!!」
そう叫びながら妹と弟を殴り蹴りつける母を見ながら、ユキはただ『良かった。私は行かなくて』とホッとするのだった。
翌朝、ヒロとトモの顔はパンパンに腫れ上がっていた。痛々しい二人の姿に動揺するユキだったが、同時に『これを見たらさすがにお父さんもどうにかしてくれるだろう』と期待する。しかし、父はヒロとトモを見ても何も言わず、そのままま仕事に行ってしまう。ユキは父の態度にショックを受けるのであった。
唐突な父母の離婚~ユキ達三兄弟は父親に引き取られるが…
そんなある日、突然家に父方母方双方の祖父母がやって来た。驚く子供達に祖父母達は優しく『大人達でお話をするから、待っててね』と言う。
『大人達がやっと気付いてくれた。これでお母さんは叩かなくなって、家が元に戻るんだ』そう、信じて疑わなかったユキ達。遠くから父、母、祖父母達の話し合いを見守っていた。
しかし、大人達の話し合いが終わったかと思うと、母方祖父母は泣き叫ぶ母を引きずる様にして車に詰め込んだ。
大人達の話し合いは家庭を再構築するためのものではなく、『離婚』のための話し合いだったのだ。泣きながら母を追いかけるユキ達三兄弟。母もまた、子供達の名前を車内から必死に叫ぶも、そのまま車は遠ざかっていく。状況が飲み込めず号泣する子供達。
そんなユキ達を見て『元気を出して』と祖母が励まし、皆でお寿司を食べに行くことになり、子供達は車に乗り込む。しかし、暴力を振るう母から解放されたはずなのにユキ達の気持ちは沈みきっていた。
お父さん、なんで何も言ってくれないの
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何故なら、これから一緒に暮らしていくのが、今までどんなに自分達が傷付けられても何も言わず助けてくれなかった父親なのだ…そうユキ達は絶望していたのであった…
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以下、感想と考察
病的な母親の身体的暴力が怖い
母親からの身体暴力の描写が痛々しい。丸っこくデフォルメされた絵柄で多少中和されているものの、それでもそのキツさ、異様さが十分伝わってくる。前話からも感じていたが、この母親の暴力は『純粋にキレやすくカッとなって手が出てる』というものではない、病的な何かを感じる…。毎晩の暴行が儀式化しているのもおかしいし、妹弟を殴りながら言うのが『不良になれ!』…って。どういうことなのだろう。そこにはもはや、”教育”という観念は存在しないのだろう。
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際立つ父親の異様さ
そして、今回の話で父親の異様さが際立つ。『ごはんを食べさせてくれ、楽しいところに連れて行ってくれて、何をしても怒らない優しいお父さん』と子供たちは信じていたのだが、そんな父親はユキ達が暴力を振るわれても止めず、見て見ぬふりをした。そのことに気付いてしまった子供たちは絶望する。
父は父で『離婚』をして母を遠ざけることで子供達を守ったつもりなのかもしれない。しかし、そこに至るまで子供達と向き合い寄り添うことをしなかったため、子供達は非常に傷付き、既に父親への信頼感を失っている。だが、この父がそれを気付いている様子はない。その感覚のズレが非常に恐ろしく、またこの先子供達を傷付けることになるのだ…。
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