【漫画】機能不全家族9(夏目ユキ)・最新話・最終話【感想・ネタバレ・考察】ラスト・結末…父に何故、虐待を見て見ぬフリをしたか尋ねるか迷うユキ…ユキが選んだ道は

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【漫画】機能不全家族8(夏目ユキ)【感想・ネタバレ・考察】母親と再会するユキ…ユキは母に虐待行為の理由について問いただす

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以下、あらすじとネタバレ

妹のトモが母の虐待行為について言及しユキは驚く、そして父の態度の真意を測りかねて苦しむ

ユキが菅原と同棲を始めてから3年が経った。結婚を間近に控えたユキはうつの後遺症か、薬の影響か以前より思考能力が落ちたものの平穏に過ごせていた。

ある日、久しぶりに妹、トモと再会したユキはこんな話を聞かされる。つい最近痴漢に遭ったトモがそのことを父に話したところ、『痴漢も色々と溜まっていたのだろう』と言うだけでトモの気持ちに寄り添おうとはしなかったのだという。

『ひどくない!?』というトモにユキは『お父さんってそういうところあるよね』と答える。すると、トモは『お母さんに虐待されてた時もお父さんに見て見ぬフリされた』と言い出す。

驚くユキ。ユキとトモは互いに”母からの虐待”について触れることは今まで無かったのであった。笑いながらも『虐待の経験から、誰も信用できない』と打ち明けた妹、トモ。ユキはトモが傷を負いながらも明るく振る舞って家族を支えていたことに気付くのであった。

そして、話は父のことに移る。父はユキやトモの口座に対して定期的に大金を振り込んでくる。それについて、トモは『お金渡すから許してと言われてる気がする』と言う。それを聞いたユキは『お金はお父さんなりの負い目』と考えながらも、子ども達にほとんど怒ることをしてこなかった父が優しくしたつもりなのか、それとも無関心なだけだったのか分からず、悩むのであった。

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婚約者の菅原はユキに『白黒はっきりさせた方がいい』とアドバイスする

父は自分達をどう思っていたのか…そう悩むユキに婚約者の菅原はこう言うのであった。

「白黒はっきりさせたら?」

機能不全家族9 夏目ユキ 9/27

そして、自分の話をする。菅原の父は酒を飲んで暴れたり、家に金を入れない等横暴を尽くした挙げ句、文句を言う前に死んでしまった。だが、それでも菅原には愛情を注いでくれた母がいたから大丈夫だった。

菅原はユキの、父親に愛されてるか分からない状況を『どんなに苦しいんだろう』と寄り添う。そして、昔はただの高校の同級生としてしか見ていなかったユキが自分の前で涙を流したことで『人生が辛いと分かり合っている仲間』と思えて、好きになったと語る。その上で菅原はユキに『自分は父親が死んでしまって文句を言えない。ユキの父に何かがあったら、父の本音を聞けなかったことを後悔するかもしれない』と言う。

『どうして私達を虐待から助けてくれなかったの?』というその疑問に苦しめられてきたユキ。しかし、それを尋ねて、『本当に愛されてなかったと分かってしまったらどうしよう』と悩むのであった。

父の元を尋ねたユキ…父のある言葉からユキは父の愛情を感じる

婚姻届の証人欄に署名してもらうために実家を訪れたユキ。すると、署名と捺印を終えた父が『”身長のメモリ”を付けて』と言い出す。”身長のメモリ”とはユキと妹のトモが互いに身長の記録を家の柱にボールペンで刻み続けたもののことだ。

柱の前にユキを立たせて柱にペンで印をつける父に、ユキは『新築だった家にこんなメモリつけちゃうなんて今思うと酷いね』と謝る。だが、父はユキを見て笑顔でこう言うのだった。

「大きくなったなあ」

機能不全家族9 夏目ユキ 13/27

その後、証人欄に署名してもらったことに礼を言い、実家を後にしたユキ。だが、途中で涙が止まらなくなる。身長のメモリをつけ、成長を喜ぶ言葉を発し、優しい笑みを浮かべた父。ユキは『本当に私のことがどうでも良かったなら、あんなことしないし言わない』と思う。

少なからず私は愛されていたんじゃないかと
思っていいかなぁ…
思っていいよね、お父さん

機能不全家族9 夏目ユキ 15/27

『どうして虐待から守ってくれなかったの?』…結局その問を父にぶつけることはしなかったユキ。あの父の態度で『聞かなくてもいいのかもしれない』と思えたのだった。

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千葉県野田市の虐待事件の報道から自身の家庭と当時の自分の気持ちを思い返すユキ

千葉県野田市の小4女児の虐待による死亡事件の報道を知ったユキは妹のトモと事件のことについてLINEで語り合う様になった。『母親が父親の娘への暴力を黙認していたが、同時に母親も父親からのDVの被害者だった』という報道にユキは『女の子が母親に助けてもらえなかった時の絶望感も分かるけど、この母親の気持ちも分かる』と思うのだ。

ユキは母親の暴力が幼い弟のヒロに向かった時は安心し、可哀想だとも思う心の余裕もなかった。そして、それは妹のトモも同じだったのだ。

トモはユキに『母の真似してヒロくんに包丁を向けたことがあった』と打ち明ける。しかし、『悪いことをしたという気持ちが湧かず、それよりもあの母親の血が通っているという事の嫌悪感が強い』『将来子どもを持ったら同じことをしてしまうかもしれない』という正直な気持ちと不安を打ち明ける。ユキ自身もヒロが大学受験のために東京の自分の家に泊りに来た時に、ケンカして精神的に不安定だったヒロを家から追い出した時のことを謝ることが出来ていない。

私たちはきっとこの事件の母親と同じ、被害者でもあり加害者なんだ

機能不全家族9 夏目ユキ 19/27

『今からでも自分達の母親も訴えたい』というトモの言葉もあってか、沢山の虐待の体験談に目を通したユキ。その内容の酷さに『私たちは全然マシだった』と思い、世の中にいまだに苦しんでいる被害者が沢山いて、一方で加害者がのうのうと過ごしていることにしんどさを感じる。

そして、母親に『逮捕されなくて良かったですね』という嫌味を送ってやりたいとトモに言い、トモから『言ってやろうよ』と言われるも、『今の家庭が大事だからそれはしない』と言うのであった。

父に一通の手紙を渡したユキ…父と子供達の関係は改善していく

菅原との和やかな日々でユキは『呪われた家族で傷付いた心は新しい家族でしか癒すことが出来ない』と感じるようになった。そして、妹や弟にも大切な人やモノが出来ればいいと願い、結婚式でユキは父に一通の手紙を渡した。

結婚式当日、ユキは父と言葉を交わす余裕はほとんどなかったが、ベールダウンをしてもらうときには涙が溢れそうになっていた。式ではめったに泣かない妹が大泣きしており、その様子を見た弟が笑っていた。

ユキは父に宛てた手紙にこう書いていた。

お願いがあります。
いつまでもトモちゃんとヒロくんの味方でいてあげてください
どんなことがあっても。

機能不全家族9 夏目ユキ 24/27

そして、その手紙を渡した結婚式の後から、ユキの元に頻繁に父から連絡が来るようになった。家族のLINEグループのトークも父がにぎやかす様になり、ユキは『手紙を書いたことで伝わった』と感じる。

『どうして母からの虐待から助けてくれなかったのか?』…ユキはもう、その答えを父に聞かないと決めた。何故なら父を困らせたくなく、父のことが大好きだから。

父と会っても緊張して何を話したら分からなくなってしまうユキ。しかし、夫となった菅原から『これから徐々に溝を埋めて行けばいい』と言われ『そうだね』とほほ笑む。そして、思うのだ。

私の人生はこれからだから!

機能不全家族9 夏目ユキ 26/27

~終わり~

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以下、感想と考察

”物語”としてはモヤモヤが残る微妙なラスト、実話エッセイとしては現実的な終わり方

この、父親に対して結局、真意を尋ねて真相を求めることをしない結末に、モヤモヤする読者は多いことだろう。確かに、その点では“物語”のラストとしてはスッキリせず、微妙で尻つぼみ…手厳しい言い方をすれば『つまらない』だろう。だが、これは実話エッセイ…ノンフィクション…一人の女性の実話であり、人生である。ラストもやや唐突で、最初からこういう感じで9話で終わらせるつもりだったのか、ちょっと怪しい感じがしないでもないが、実際の人生では分かりやすく起承転結が付くわけでは無いからこんなものなのか…等と思ったりもする。

統合失調症の弟、ヒロくんもどうなったか具体的には描かれていないしね。『受験の時に家から追い出したことを謝れていない』と反省していることを描いているが、謝った描写もない。まあ、姉であるユキの結婚式に笑顔で参加しているので、病状も姉弟関係もそれなりに良くなっているとは思われるけど…。これがフィクションだったらしっかり謝罪して関係が改善される様子やその兆しを描くところなんだろうけど、現実では色んなタイミングやしがらみがあって難しいし、一連の出来事から時間が経ってから描いた作品ではなく、わりと最近のことまで描いているので、キレイに起承転結をつけられなかったのは仕方が無いのかな…とも思う。

父は子供達を愛していた?虐待を黙認していたのは何故??

そして、この父親が子ども達のことをどう思っているのかもハッキリ分からないまま終わった。

何故か身内が痴漢とかに遭っても加害者を擁護する、このユキ達の父親みたいな人って一定数いるよね。多分、目の前の弱った身内に寄り添うという発想がなくて、何でも一般論でしか考えられないタイプ。

まあ、このユキの父親は子ども達が元妻から激しい暴力を受けているのに対し、身を呈して庇ったりはしなかったものの、三人の子ども達を引き取って自身の手で養育したり、元妻に子ども達に対する接近禁止が下る様に行動していたのだから、確かに子どもたちに対して、全く何の情を持っていなかったわけでは無いのだろう。ただ、お金を沢山渡す一方で、怒るポイントは『お金を無駄にした、ちょろまかした(と父自身が判断した)時』、子どもが病気になっても病院に連れて行かない、ブラック企業や痴漢に遭っても慰めたりしないで突き放す等、コミュニケーション能力に相当難があるように思える。

父本人にしたら子ども達を放置しているつもりも無関心であるつもりもなく、ちゃんと愛していたのだろうけど、本人の感性が変わっていたからそれが上手く子供たちに伝わっていなかった…という所だろうか。

少なくともラストの感じだと、ユキからの手紙が効いたのか、積極的に子ども達とコミュニケーションを取ろうとはしているようだ。

それでユキ自身が『父からは愛されていた』と認識し『父が大好きで困らせたくないから、虐待の件については何も尋ねない』と決めたのならば、もうそれは誰も口出すべきことではない。本人が納得すればそれでいいのだから。

呪われた家庭は新しい家庭でしか癒す事は出来ない??

また、違和感を持ってしまったのは『呪われた家庭は新しい家庭でしか癒すことは出来ない』というユキの言葉。

確かに、『新しい家族』を得ることで、機能不全家族に育った傷を癒すことは出来る。希望だろう。

でも、『”でしか”癒すことは出来ない』とは言い切れないと思う。趣味だったり、仕事だったり、交友関係だったり、他の事で癒したり、居場所を見つける事は出来ると思う。『家族でなくてはいけない』ということは無いのではないかと思うのだ。

そして、他の虐待の記録を見て『私たちなんて全然マシ』と思うユキだけど、『自分達なんて全然マシ』と素直にそう感じるのはいいけど、度を過ぎるとそれは『自分達は大した虐待を受けていないのだから、大げさに騒ぐべきではない』という、自分達への呪縛になってしまうので気をつけた方がいいと思う。特にユキは自身が結婚し、新しい家庭を持ったことで、『今の家庭が大事だから』と過去より前を見ていくことを決意したが(そして、それ自体は決して悪いことではなく良い事なのだが)、妹と弟がそう思っているとは限らない。そもそも、心の痛みや傷は数値化できない、比較衡量できないものだ。過度に『自分達はマシだった』と言い聞かせる事は自身や妹弟の心をかえって傷付けることになったり、気持ちを吐き出しにくくなることに繋がりやすいから気をつけた方がいいのでは…と心配になってしまった。

まとめ~一応ハッピーエンド、同じような体験をした人からの一定の共感は集められるかもしれない

重い展開が続いたこの『機能不全家族』だが、一応はハッピーエンドを迎えた。ただ、上述した通り、正直な感想としては『体験談を綴った物であって”物語”、”作品”としてはいまひとつで終わった』と感じてしまう。

その理由としては”個人の体験談”で終始してしまっていて、『母がしんどい』や『ゆがみちゃん』の様に、何らかの社会への問題提起や”再生”のための道筋や考え方を提示するレベルまで達していないからだ。

そのため、この作品を通して何かを”学ぶ”ということはあまりないと感じてしまう(ブラック企業やばい…とかは思うけれど)。ただし、同じような体験、例えば機能不全家族で育った人は『こういうのあるある』位には感じるかもしれない。

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