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高校生の時、近所の整体院に通っていた事がある。そこは40代位の男性院長が経営しており、受付や事務等は彼の美しい妻が一手に担っていた。そして、もう一人、20代位の若い愛嬌のある男性が整体師として働いていた。奥さんは、フレンドリーな人で、待っている間勉強していた私に『猫くらげちゃんは偉いわね。同じ年のうちの娘なんて言っても全然勉強しないのに』とそう言ってはよく笑っていた。院長は押しが強く説教臭い人だったが、若い整体師さんのフォローが上手く、場を明るくしてくれるので、その整体院の居心地は良かった。
だが、ある日、整体院を訪れると雰囲気がとても暗く、院長一人しかいなかった。院長の顔色は悪く、死相が出ていると言って良いくらいで終始無言。何かあったのだと察したものの、私は何も聞けず施術が終わると逃げるように帰った。そして、何となく気まずくてその後、通うことはなかった。
…そこの奥さんと若い整体師が身一つで駆け落ちしたのだと噂で知ったのは、それから間もなく、その整体院が閉じた後の事であった。
笑顔で娘の事を語っていたあの奥さんが心の底で何を思っていたのか…それを私が知る術はない。
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Contents
金魚妻…あらすじ
『妻は何故、一線を越えてしまったのか』
日々のささやかな暮らしの中、悩みや不満や孤独を抱いていた“妻”達。いつも覗いていた金魚屋の店主に、店の出前の配達先のクレーマーに、怪我をさせて見舞っていた息子の担任教諭に…何故彼女達は心と身体を許してしまったのか…そして、彼女達に待ち受けている結末は…。
他の“不倫もの”と一線を画す、心理描写とディテール
めちゃコミにしろ、コミックシーモアにしろ、Renta!にしろ、まんが王国にしろWebマンガでは不倫ものが大人気である。不倫ものはお手軽に背徳感を得られ、ドロドロした人間関係や濡れ場を描きやすいからだろう。
なので、この『金魚妻』を見たときも『絵がキレイだけど、どーせよくある不倫もののエロマンガでしょうよ!』と思いながらも広告に釣られて読んで…反省した。
確かに濡れ場があるといえばあるのだが、この作品の肝はそこではない。妻(あるいは夫)が何故、“不倫”をしてしまったのか…それを、誰しもが日々の生活の中にふとした瞬間に心に抱いてしまう孤独、隙と共に丹念に描いている“人間ドラマ”だ。非常にディテールがしっかりしているので、不倫というテーマや性描写にではなく、他人の人生を覗き見している気分に対して背徳感を抱いてしまう位だ。
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単純な勧善懲悪や二元論では片付けられない人の業、そして妻達の辿るラストと結末
作者は『復讐の未亡人』等で知られる黒澤R。サブタイトルは『○○妻』で統一されており、基本的に短編で、様々な年齢、立場の妻の物語が紡がれている。(ただし、表題作である『金魚妻』『出前妻』を始め、初期でかつ反響のある作品は続きがあるものがある)
不倫はまごうことなく、“悪”だ。この作品も決して不倫を美化してなどいない。しかし、『金魚妻』はそんな二元論で片付けられない、妻の、そして夫の背景や心理を共感と想像の余地を残しながら描いている。
また、この作品は勧善懲悪には則っておらず、大半の妻は不倫したにも関わらず分かりやすい罰や制裁を受けることはない(厳密には“不倫”ではない話もある)。これには『納得いかない』と感じる人もいるかもしれない。
しかし、人生は単純に白黒つけられるものではなく、人に知られずに終わる過ちも多い。彼らが迎える結末はどこか曖昧なものが多く、それが読者の心に爪痕を残す。
個人的には『美容妻』と『蜜蜂妻』が好き。
まとめ~男性も女性も楽しめる『金魚妻』
青年漫画雑誌であるグランドジャンプ掲載作品でジャンルとしては“青年マンガ”に区分けされるこの『金魚妻』だが、男性だけでなく、女性も楽しめる。…いや、むしろ女性の方が身をつまされる描写が多いのではないだろうか。
しかし、女性だけでなく男性側の事情や気持ちもかなり深掘りしているので、男性女性どちらも楽しめ、そして考えさせられる作品だと言えるだろう。
絵は繊細でキレイだ。そして、金魚を初めとする各話で出てくるちょっとしたウンチクと面白かったりする。
いわゆる“濡れ場”はあるのだが、“エロ”がメインではなく、純粋にストーリーを楽しむことが出来る良作だ。