【漫画】金魚妻~出前妻①【感想・ネタバレ・考察】夫の実家の蕎麦屋で居場所のない妻は出前先の常連客と関係を持つが…

金魚妻 1巻 表紙

親族経営だったり家族とお店をやってる人ってすごいと思う。個人的に仕事とプライベートの付き合いは分けたい人間なので、同居はまだしも家族と商売をやっている人は純粋に凄いなと感心する。

もし、夫の実家と同居の上、お店をやって…とかだったら耐えられる気がしない。その上、そこに夫の元カノが我が物顔でやってくるとかだったら…。『金魚妻』の2話目、『出前妻①』のネタバレ有り感想書いていきます。

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Contents

出前妻①のあらすじとネタバレ

夫の元カノをちやほやする義実家の蕎麦屋で真面目に出前をする妻、杏奈

…蕎麦屋『岡崎庵』の奥にある家。夜、夫婦の寝室で杏奈は夫、あつしから“あること”を告げられる。『今までごめん』と謝るあつしに、杏奈は『本当なの?』と驚き、そして涙を流すのであった…。

蕎麦屋『岡崎庵』は地域に根付いた老舗の人気の蕎麦屋だ。常連客があつしに『最近杏奈ちゃんを見ないけどどうしたの?』と尋ねる。あつしは『杏奈には出前に行ってもらっている』と答える。あつしの祖父は健在だが、つい最近腰を痛めてしまい療養中。出産を控えて里帰り中の妹、里美には無理はさせられない。店内はあつしの父とあつしが切り盛りしなければならないので、必然的に杏奈が出前に行くしかないのだ。

『女の子が出前なんて…』と心配する常連客に『女の子なんて言う年齢ではない』と笑うあつし。だが、常連客からこれから天気が崩れそうだと聞くと心配そうな表情を浮かべるのであった。

すると、そこに女性客が一人飛び込んでくる。『もうラストオーダーの時間だから』と断ろうとするあつしだったが、それはあつしの元カノ、祥子であった。『やっと休憩に入れたからお願い!』とせがむ祥子。祥子はこの店の常連で、シングルマザーとしてバリバリ働いている祥子をあつしも父も昼の営業時間が過ぎているものの、受け入れる。父は板わさまでサービスし、祥子が来たと気付いたあつしの妹の里美や祖父まで奥から出て来てはしゃぐ。同じ地元であつしの元カノで顔馴染みで店の常連、おまけに美人で明るい祥子が来るとあつしの家族はいつも喜んで歓迎するのだ。

ちょうどそこに杏奈が出前を終えて帰ってくるが、祥子があつしの家族にもてなされているのを見て、思わず隠れてしまう。

杏奈が帰ってきていると気付かず盛り上がるあつしの家族達。すると、あつしの妹の里美が言うのであった。

「あ~あ…私、祥子ちゃんと姉妹になりたかったなー」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

杏奈が嫌いな訳ではないが、祥子の方が兄、あつしとお似合いだと思う…そう言ってのける里美。あつしの父まで『あつしの顔が赤くなってる』とからかい、怒るあつしを家族達はからかう。杏奈はそれを俯いたまま聞いているのであった…。

すると、突然、店の電話が鳴り出し、身を潜めていた杏奈がそれに出る。一連の会話を杏奈に聞かれていたことに気付いたあつし達は固まり、里美は『やばい』と呟く。

電話の主は常連でクレーマーでもある男性客、五味田で『数時間前に注文したもりそばがまだ来ない』と激怒していた。あつしの父は五味田の注文を受けたものの、すっかり忘れていたのだ。電話を変わったあつしの父は『今出前が出たばかり』と安易な嘘を吐く、ことわざの『そば屋の出前』まんまの対応をする。

先ほどのあつしの家族の会話を聞いていたにも関わらず、いつもの様に明るい様子で出前に行こうとする杏奈を『俺が行こう』と止めようとするあつし。
しかし、杏奈は『お店をお願い』と雨が降りだしたにも関わらずバイクを走らせ行ってしまうのであった…。

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実は以前から関係を持っていた杏奈と五味田

五味田の家までやって来た杏奈。雨が大降りになってきた中、杏奈が『岡崎庵です』と家の戸を叩くと後ろから『遅い!』という声が響く。五味田は大雨に備えて外の植木を移動させていたのだ。『何が今出たところだ、一瞬でバレる嘘をつきやがって』とガミガミ怒り始めた五味田に杏奈は謝ることしかできない。だが、五味田はそんな杏奈に言うのであった。

「上がってけよ。これじゃ出前も中止だろ」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

杏奈は五味田の言葉に素直に『うん』と頷く。
杏奈にタオルを貸してやり、蕎麦を食べた五味田は『茹で方が雑だ』と言い、『最近店の評判悪いぞ』と杏奈にスマホで岡崎庵の口コミを見せる。『特定の客をえこひいき』『従業員家族の私語が不快』『注文を忘れる』…これらの口コミに心当たりがありまくりの杏奈は青ざめる。いくら地域に愛されているとはいえ、客をおざなりにし過ぎている…そんな五味田の苦言に耳が痛い杏奈。しかし、言うのであった。

「あの人達に私は何も言えないからなぁ…」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

嫁である自分は他人で新参者…そうこぼした杏奈に五味田は『ストレスが溜まりそうだ』と淡々と言い、箸を置くと杏奈に向けて手を広げた。

「こっち来なよ」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

杏奈はそう言われるとソファで五味田の腕に抱かれ、甘えるように寄りかかる。それは既に慣れ親しんだ姿勢、…杏奈は以前から五味田と深い仲になっていたのである。

「はじめてこの部屋に来た日もこんな天気だったよね」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

『今日はする?』と尋ねる杏奈に五味田は『来るのが遅かったから一人で済ませてしまった』と答える。すると杏奈は残念そうに言うのであった。

「なんだ、もう会えるの最後かもしれないのに…」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

杏奈の言葉に『どういうこと?』と驚く五味田。杏奈は五味田にこう告げるのであった。

「私ね、この町を出ていくの…」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

杏奈と五味田が関係を持ったキッカケ

杏奈が初めて五味田の部屋に足を踏み入れたのも激しい雷雨の日だった。杏奈は五味田の家まで出前に来たものの、激しい雷雨で身動きが取れず五味田の家の軒先でそば湯を飲みながら雨宿りをしていたのだ。蕎麦を食べ終えた五味田はまだ杏奈が居ることに気付き、『雷雨は夕方まで続くから』と言い、杏奈が自分が飲むために水筒に入れて持ち歩いていたそば湯目当てにに杏奈を家に上げたのだ。

杏奈の訛りの無さから地元の人間ではないことを見抜いた五味田。五味田は東京出身で鼻炎に悩まされて空気の良いこの町でテレワークで働いているのだと言う。最初は当たり障りない会話をしていたものの、五味田は次第に杏奈に興味を持ち始めた。杏奈も強面だが五味田が26歳で、29歳の自分より年下であると知るとダメ口になる。

すると、五味田は唐突に杏奈に『子どもいないの?何で作らないの?』と尋ね、『何でそんな事を聞くの?』とムッとする杏奈に『旦那とセックスしてるのか』と言う。そして、杏奈が動揺し赤面した瞬間、近くで雷が落ちて停電になってしまう。

暗くなった中、五味田は『興奮してきたからちょっとだけキスしていい?』と迫る。当然、杏奈は『ダメ、無理』と拒むが杏奈の腕に触れた五味田が『肌がすごく、きれい』と驚いたように言うとドキッとして喜ぶ。『毎日、蕎麦を食べているからかな』と照れた杏奈は五味田に『もっと近くで見せて』と言われるとそのまま身を委ねてしまう。夫、あつしから出前の時に危険だから男性客の家には上がらないようにと言われていた杏奈。『こんなことになってどうしよう』と思いながらも、どこか清々している自身に気付く。

家族(あの人)達は…きっと今も祥子さんに夢中で…私がこんな事になってるなんて思ってもないよね…

金魚妻 黒澤R 出前妻①

そして、杏奈は五味田の先ほどの質問に答える様に言う。

「夫と私ね…相性が悪いんだって」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

本当は子どもを望んでいるあつしと杏奈。しかし、杏奈の体はあつしの精子を“異物”とみなして殺してしまうのだという。
すると、避妊具を着けようとしていた五味田は『じゃあ生でやってみる?』と避妊具無しで杏奈を抱き始める。杏奈は口では『ダメ』と言いながら拒むことはしなかった。

…それが杏奈が始めて五味田の部屋に上がった日の出来事だった。その日以降、杏奈と五味田は出前の度に密会するようになっていた。

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元カノの祥子にあつしは杏奈を愛しており、杏奈のために町を出ていくと告げる

その頃、『岡崎庵』は昼の営業が終わり、あつしの父も祖父も、身重の妹の里美も奥で昼寝をしていた。
客のいないお店であつしは帳簿をチェックし、大雨の為、外に出られず残っていた祥子はそんなあつしに質問する。

「私…なんであつしにふられたんだっけ?」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

あつしは少しの沈黙の後、『祥子のレベルが高過ぎたから』と答える。高校が同じだったあつしと祥子。美人で明るい祥子は男子に人気で、あつしは祥子が他の男に言い寄られているのではないかと心配し続けているうちに疲れて、祥子に別れを切り出したのだ。それを聞いた祥子は『可愛い理由』と笑い、更に質問する。

「杏奈さんの事…正直どう思ってる?」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

すると、あつしはこう答える。

「……杏奈とは」
「死ぬまで一緒に居たいと思ってる」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

あつしのその言葉に『え』と驚く祥子。祥子はあつしが杏奈に大して愛情が無く、元カノの自分に気があると思っていたのだ。

『二人とも仲良く見えなかったのに』と内心のショックを隠しながら言う祥子。すると、あつしは恥ずかしそうに『客や家族の前でイチャつけるか』と目線を反らし、さらに祥子にこう告げるのだ。

「今日みんなに言おうと思ってたんだ」
「俺たち…もうすぐここを出ていくから」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

その頃、杏奈は五味田に自分とあつしが町を出ていく理由を語っていた。

昨夜、あつしは杏奈に『この町を出て不妊治療に専念しよう』と言ってくれたのだ。『今までごめん』と窮屈な同居生活を詫びたあつしに、杏奈は『本当なの?』と涙を流して喜んだ。同居して一生懸命働いてきたため、貯金も出来た。ストレスの無い環境で不妊治療に専念するつもりなのだ。

それを聞いて五味田は『やったじゃん』と杏奈を祝福する。すると杏奈は五味田にしみじみと言う。

「五味田さんがいなかったら私…多分潰れてた」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

居場所の無い夫の実家で気を遣いながら身を粉にして働く日々。そして頻繁にやって来る夫の元カノの祥子。いつも皆で盛り上がり、地元出身ではない杏奈は蚊帳の外。五味田だけが杏奈の心の拠り所だった。働き者の嫁がまさか出前客と関係を持つことで憂さ晴らししているなんて誰も思ってなかっただろう。
しかし、夫のあつしがちゃんと自分の事を思ってくれていたと知った今、杏奈は『罪悪感がすごい』と顔を曇らせて言う。そんな杏奈に五味田はかからない『誰でも墓場に持っていく話はある』と答える。

すると、その時雨が上がり町には陽射しが差し込み虹が掛かる。五味田の部屋から虹を見つけた杏奈ははしゃぐが、五味田は唐突に『杏奈ちゃんにもう会えないのか』と残念がる。

「俺…杏奈ちゃんの事…好きになっちゃったんだけど…」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

そうこぼした五味田の言葉に杏奈は『え…?』と揺れるのであった。

雨が上がり、五味田の部屋から出ようとした杏奈…しかし

その頃、『岡崎庵』ではあつしから町を出ていくと告げられた祥子が『なんで?みんな楽しくやってたじゃん!?』とあつしを問い質していた。あつしは『楽しくやっていたのは杏奈以外だ』とあくまで“杏奈のため”に町を出ていくことを強調するが、祥子に『本当に?』と見つめられると黙って目を逸らしてしまう。

「本当はあつし…私に気持ちが戻るのが怖かったんじゃないの?」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

そう言って後ろからあつしに抱き着く祥子。あつしは『杏奈がもうすぐ戻ってくるから離せ』と言いながらも、祥子を引き離そうとしない。

「当たりだね?」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

祥子は妖しく微笑みながら『晴れたけどまだ雷鳴の音が続いている』と言う。

五味田の部屋でも、唐突に五味田から好意を告げられ動揺した杏奈が『雨が上がったからもう戻らなきゃ』と帰ろうとするが、五味田がそれを引き止める。

「一瞬の晴れ間だよ」
「またすぐに崩れる」

金魚妻 黒澤R 出前妻①

そう言って杏奈を抱きしめキスするのであった。
町には再び雷鳴が響き、雨が降り始めるのであった…。

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以下、感想と考察

ミスリードの巧さが光る出前妻

冒頭のシーン、夫のあつしが謝罪し杏奈が涙を流しており、また『夫の家族が元カノをチヤホヤする』という設定のため、杏奈が五味田に『町を出ていく』と言うのが『もしかして、あつしは杏奈を捨てて祥子を取り、杏奈は離婚するため町を出ていくのか!?』という方向に読者は予想してしまう。

しかし、冒頭のシーンで実はあつしが杏奈の事を思って、杏奈にストレスの掛かる実家での同居生活を止めて、二人で新天地に行こうと告げていたという…このミスリードが上手い。あつしが妻として選んだのは杏奈の訳だし、愛情が無ければ結婚もしない訳だ。冷静に見れば、別にあつし自身は祥子に鼻の下を伸ばしているわけではない。

安易に人の関係を囃し立てたり煽ることの罪…こんな義実家嫌だ

でも、『二人がくっつけば良かった』『二人は怪しい』とかあつしの家族が囃し立てるものだから、元カノの祥子は満更でもなくてその気になってしまうという…結構、リアルでもあるよね、こういうこと。囃し立ててる周囲は悪意のつもりはなく、本気で言っているつもりではないのだろうけど、本当に迷惑だし害悪でしかない。

何かこういったところからして、日頃この一家は杏奈に対して気遣いも何も出来てないんだろうな…と安易に想像がつく。悪意を持って意地悪をするわけじゃないんだけど、結構キツいよな、こういうの。いや、だからと言って不倫してもいい分けじゃないんだけどね。

リアルでも居そうな厄介な女、祥子

この出前妻、続きがあって、そこでもよく分かるのだけど、このあつしの元カノ祥子は中々厄介な女で…。

改めて読むとこの1話目の時点でも相当嫌な女だと分かる。直接、杏奈に何かしてくる訳ではないのだけど、美人なのもあってか自信過剰で、常に相手に対して優位に立とうとしているのが分かる。

あつしに対してもフラれた側であるにも関わらずどこか高圧的で、何とかしてマウント取ろうとしていて、そして気持ちを支配できているつもりでいる。…まあ、半分は里美を始めとする、あつし家族がやたらとチヤホヤしまくったせいなんだろうけど。

だからこそ、あつしが杏奈のことを大事に思っていて、杏奈のために町を出ようとしていると知って、あそこまでショック受けるんだろうな。

人の気持ちの曖昧さと揺らぎ、そして雷雨が暗示する未来

でも、この話し合いの上手いところは『あつしは本当に杏奈一筋で、祥子に愛しており一ミリも感情はありません』としなかったところ。あつしも祥子が嫌いになって別れた訳ではないので(この①の時点ではそういうことになっている)、家族に『もし祥子と結婚してたら』とか言われ続けると色々と考えちゃうんだろうな…。

『一瞬の晴れ間でまたすぐに崩れる』というのはあつしと杏奈の関係を暗示している。そして、実際に杏奈は再び五味田とキスするし、あつしも祥子を拒絶できないところで一旦終了する。この終わり方は色々と想像の余地を残して秀逸。
出前妻、続編あるんだけど、個人的にはここで終わりで良かったんじゃないかな…と思うのだ。続編が後付け、蛇足感が否めないので…。

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