【映画】映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃【ネタバレ・感想・考察】身近な救いと悪夢との共存…ギャグの裏にある強いメッセージを考える

ユメミーワールド

コロナ禍のステイホームで娯楽に飢えている。しかし、子供達の面倒を見なくてはならないので好きなことは中々出来ない…。そういうときはやっぱりクレしん映画に救いを求めてしまう。というのもクレしんならば3歳の娘も集中して見られる上、大人も楽しんで見ることができるからだ。本当にクレしん映画様様といった状態だ。

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以下、あらすじ・ネタバレ

ある晩、野原一家やかすかべの住民は共通する不思議な夢を見る…そして幼稚園には不愛想で高圧的な女の子サキが転園してくる

ある晩、それぞれ楽しい夢を見ていた野原一家。ひろしは”スーパーCEOマン”となって皆の尊敬を集める存在になり大活躍をする夢。みさえは巨乳になって”元カリスマホスト城咲仁”と恋に落ちる夢。ひまわりは巨大化してしんのすけを口にしゃぶり、みさえやひろしにちやほやされる夢。シロは手足が長い犬になって自由に駆け回る夢。しんのすけは憧れのななこお姉さんとデートする夢。

しかし、楽しい夢は一転。途中で巨大な魚の様な生き物に飲み込まれ、そのまま沢山の人がいる不思議な空間に放り出された。そして多くの人々が戸惑う様子を眺めながら、モーニング姿の謎の男が『ユメミーワールド起動成功』『もう安心だぞ、サキ』と傍らにいるドレスを着た幼い女の子に告げるのであった…。

朝、起きた野原一家は自分達が皆『巨大な魚に飲み込まれる』という共通した夢を見ていたことを知り驚く。そして、ニュースでは隣の越谷市で”集団悪夢シンドローム”と呼ばれる集団パニックが起きていたことが報道されていた。

その後、幼稚園に行ったしんのすけ。すると、なんと風間くん、ネネちゃん、マサオくん、ボーちゃん達も同じ夢を見たと言う。どうやらかすかべ市民全員が同じ夢を見た様だった。

事件の臭いを感じ取ったネネちゃんは『かすかべ防衛隊として不思議な夢の原因を探ろう!』としんのすけ達に言い出すのであった。

すると、幼稚園に転校生の庭貫玉サキ(ぬばたまさき)がやって来た。可愛らしい容姿のサキに特に男子達は大喜びするが、サキは非常に無愛想で高圧的で誰に対しても『みんなバカみたい』と言う。特に下ネタが好きなしんのすけに対しては『私の前でおバカな真似するな』と突き飛ばしさえする。そんなサキにネネちゃんは『何なのあの子』と非常に腹を立てるのであった。

そして別室で短気入園の手続きをしていたサキの父、夢彦も不愛想で『短い間だけど友達ができるといいですね』と言う園長に対して『できんでしょうな』と素っ気なく答える。夢彦とサキは各地を転々としている様で、 夢彦は娘のサキが他の園児と馴染むことを全く期待していない様であった。

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不思議な空間ユメミーワールドでは子ども達が夢の世界を自由に展開できる…しかし、大人は悪夢の世界に追いやられる

その夜、夢彦は謎のアンテナを使ってかすかべ一体を謎のシールドで覆う。すると、すでに眠りに着いていた野原一家はまた昨晩の不思議な空間”ユメミーワールド”に取り込まれてしまう。そこにはしんのすけ達だけでなく、かすかべ防衛隊の子供たちやヨシりん&ミッチー等、かすかべにいるみんなが集められており、皆の足元には光輝く不思議な球体がくっついていた。子供達やシロの球体は大きかったが、ひろし達大人の球体は小さくバランスを取るのに精いっぱい。

どうせ夢なら漫画家になる夢を見たい…そう呟いたマサオくん。すると、突然球体が広がってマサオくんが売れっ子漫画家になる世界が展開する。周りでは次々に子供達が恐竜に乗る夢、大きなケーキを食べ進める夢等各々自由な世界を作り上げていく

『ここでは願えば見たい夢が見られる』…そう気付いたかすかべ防衛隊達は自分達も好きな夢の世界を作る事にする。

風間くんは政治家になる夢(政治家と言いながらも政治活動ではなく選挙活動をしている夢なのが妙に子どもらしい)、ボーちゃんは大好きな石になる夢を広げていく。ひまわりも巨大化する夢、シロも手足の長い犬になって駆け巡る夢、しんのすけは大自然の中でななこお姉さんとデートする夢。

それを見たひろしとみさえも自身の夢の世界を広げようとするが、どうやら大人は夢の力が乏しい様で、ひろしは姿形が変わるだけ、みさえはビニール人形の様な城咲仁を作り出すだけ等、中途半端にしか再現することができない。そして、ひろしとみさえがそんな互いの夢について非難し合っていると突然やってきた巨大なぬいぐるみに捕まってしまい、魚の中の上部にある穴に向かって放り投げられてしまう。そして、他の大人たちも次々と掴まり、上にある穴から外に吸い出されてしまう。

先ほどまでいた魚の外の世界。そこは荒涼とした色あせた世界で大人たちは各々悪夢に襲われる。ひろしは川口達社員らから”スーパーCEO”の退任を迫られ、パンツ一丁で土下座しすがるという悪夢、みさえは城咲仁に”オバハン”呼ばわりされた上に『ツケをきっちり払ってもらう』と言われヘソクリ300万を奪われるという(ヘソクリそんなに溜め込んでいたのか…?)悪夢の世界を再現させられる。他の大人たちもそれぞれが恐れている悪夢を見せつけられ悲鳴を上げるのであった。

そんな中、魚の体内の中心部にはお姫様の様なドレスを着たサキが座っており、みんなの夢をぼんやりと眺めていた。そんなサキにモーニング姿の夢彦が『大人の夢玉は小さくて役に立たなかった』と残念そうに語りながらも『この町には子供が多くユメルギーが沢山集まるからしばらくは大丈夫だろう』と言う。

ぬいぐるみたちは皆の夢の持つエネルギー”ユメルギー”を吸い取り集めているのだ。夢彦はサキに『パパに全てを任せなさい』と言うのであった。

しかし、魚の外では大人達が悪夢を作る木の根っこの様なものに一晩中追い回され続けるのであった。

翌朝はしゃぐ子供たちとぐったりする大人達…そんな中、サキはしんのすけやネネちゃん達に助けられる

翌朝、疲弊した状態で目覚めたみさえとひろしは『集団悪夢シンドロームがついにかすかべでも起った』と悟るのであった。

一方、サキの家では夢彦が”ユメミーワールド”を作る為の巨大な装置をいじっていた。サキはベッドの中で頭に装置をつけており、目覚めたものの浮かない表情で写真の中の母親に『おはよう』と声を掛ける。荒れた部屋の中で夢彦の作った朝食をとるサキはユメルギーのおかげで久しぶりにぐっすり眠れたと夢彦に言うものの、その表情は暗く、そんな娘を夢彦は心配そうに見るのであった。

悪夢にうなされた大人達とは対照的に、幼稚園では子供達がまだ夢から覚めやらぬ様子でうっとりとし、はしゃいでいた。そんな中、相変わらずサキは誰に対してもつっけんどんな態度を取り続け、チーター達とトラブルになってしまう。サキはチーター達に隠し持っていた古いぬいぐるみを奪われてしまい、強引に取り返したことでケンカになってしまいチーター達に追い回されてしまう。そんなサキをしんのすけは助け、逃がしてやるのであった。

園舎裏に逃げ込んだサキにネネちゃんは『ごめんなさいだけじゃなくてありがとうも言えないの』と声を掛ける。するとサキは素っ気なく『あんな馬鹿に助けられるなんて屈辱』と答える。そんな頑なサキに対してネネちゃんは意外にも怒らず、『そこまで行くとキライじゃない』と笑う。しかし、サキは『どうせすぐに嫌いになるよ』と寂しそうに言って立ち去るのであった。

そして、また夜がやってきた。”ユメミーワールド”でひろしは再び悪夢に苦しめられる。それは家族を同僚の川口に奪われるという辛い夢であった。悪夢が見せる幻に惑わされるひろしにみさえは『これは悪夢の中』と言い聞かせるが、ひろしは『耐えられない、逃げ場がない』と答え、精神的に追い詰められているのであった。

一方、魚の中にいるしんのすけは『ドキッ!おねいさんだらけのまるごと水泳大会』というスケベな夢を満喫しており、マサオくんの漫画家の夢は自身の作品”いがぐりマサちゃん”が一億部突破しハリウッドから映画のオファー来ると言う絶頂を迎える。

しかし、風間くんはマサオくんの夢がぬいぐるみたちに吸い取られていく様子を目撃する。ぬいぐるみたちに”ユメルギー”を吸われたマサオくんの夢は壊れていき、マサオくんも魚の上部にある出口に放り出される。そして、マサオだけでなく他の子供達もどんどん夢を吸い取られて出口に放り投げられ魚の外に追い出されてしまうのであった。外に出されたマサオくんはスランプに陥り編集者に罵られながら漫画を描くという悪夢に苦しめられるのであった。

その様子を見ながら夢彦は『これで今夜は持つだろう』と言いながらも、想像以上に”ユメルギー”の消費が激しいことを懸念する。サキは『全部吸い取っちゃうの?』と”ユメルギー”を吸い取られた人々の身を案じるが、夢彦はただ『心配するな、パパが守ってやる』と言うのであった。

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夢の世界の謎を突き止めようとするかすかべ防衛隊はサキを新しいメンバーに入れる…サキは戸惑いながらもしんのすけ達と打ち解けていく

翌朝のかすかべは続く悪夢に憔悴する大人達と幸福な夢が一転して悪夢になったことに恐怖する一部の子供達の悲鳴で満ち溢れていた。

そんな中、風間くんは昨夜見た光景から『あの空間は皆の夢を吸い取っている』という仮説を立てる。それを聞いた他のみんなは『かすかべ防衛隊の出番だ』と夢の世界の秘密を突き止めることを決めるが、悪夢にうなされる様になってしまったマサオくんは憔悴しており使い物にならない。

すると、ネネちゃんが新しい隊員としてサキを入れることを提案し、しんのすけ達かすかべ防衛隊達はサキの家を訪ねる事にした。

辿り着いたサキの家は妙なアンテナが付いたボロボロの工場の様な見た目で、不思議なアンテナが建っていた。呼んでも誰も出てこなかったが、しんのすけが塀の隙間から勝手に中に入ると丁度そこにはサキがいた。侵入してきたしんのすけにサキは怒るものの、ガラクタが多い庭を見たしんのすけは『秘密基地だ』と目を輝かせる。そして、ネネちゃんはサキに『サキちゃん、かすかべ防衛隊に入ってくれない』『一緒に集団悪夢の事件を解決してくれない』と頼む。

困惑した様子のサキは『どうして私を?』とネネちゃんに問う。するとネネちゃんは『負けん気が強くて頼りがいがありそうだし、そしていつも一人で寂しそう』と答える。それを聞いたサキは躊躇したものの『私のことを嫌いにならないって約束できる?』と尋ねる。ネネは笑って指切りして約束し、晴れてサキはかすかべ防衛の新メンバーとなった。そして、しんのすけ達はサキの家の庭を新秘密基地にして遊び始めるのであった。

車庫にいた夢彦はその様子に気付き心配するも、他の子供達に混じってなんだかんだと楽しそうにしているサキを黙って見守るのであった…。

夜、そのことを楽しそうに語るしんのすけ。しかし、ひろしもみさえも疲弊してやつれており、幼稚園もお休みになってしまう。

『悪夢を見たくないなら、また魚の中に入ればいいのではないか?』…そうしんのすけに言われたみさえとひろしはその晩の夢で魚の中に入ろうとするが、失敗してしまう。一方、魚の中では夢彦がサキに『また辛い思いをするだけなのだから友達を作らない方がいい』と諭していた。そして、煮え切らないサキに『誰にも知られるなユメミーワールドの秘密を』と言い含める。しかし、その会話を風間くんが盗み聞きしていたのであった…。

サキに疑惑をぶつける風間くん…ネネちゃんとしんのすけはサキを信じることを選ぶが、その夜の夢で全てが明るみになり、ネネちゃんはサキに怒ってしまう

翌日もしんのすけ達はサキの家の新秘密基地で遊んでいた。そこでしんのすけはサキが持っている古いぬいぐるみに興味を持つ。サキはこのぬいぐるみが”獏”という生き物であると説明する。”獏”とは人の悪夢を食べてくれるという伝説の生き物で、サキは『ママが作ってくれたお守り』だと語る。

すると、遅れてやって来た風間くんがサキへの疑惑を口にする。夢の世界でサキが皆と同じ場所にいないこと、かすかべのみんなの夢がおかしくなったのはサキがやって来てからであること、そして、サキの家にある妙なアンテナ…風間くんはためらいながらも少しずつサキを問い詰め『家の中を見せて』と迫る。

だが、そんな風間くんにネネちゃんは怒る。そして、最終的にしんのすけとネネちゃんが『サキちゃんはかすかべ防衛隊の仲間だから』と言うと風間くんは引き下がり、サキへの追及はそこで終わるのであった。

その夜、罪悪感を抱いたサキは装置を付けないで眠る。すると、サキは酷い悪夢に苦しめられる。それは、母サユリの夢であった。研究者であったサユリは研究に没頭しサキにあまり構ってくれず、サキが実験対象である夢のエネルギーに触れようとすると厳しく叱りつけ、幼いサキは寂しい思いをしていた。しかし、それでもサユリは時折優しい表情を見せ、サキはそんな母サユリが大好きであった。しかし、夢の中でサユリは突然ゾンビの様な姿と化し、サキを襲うのであった…。

サキが悪夢にうなされていることに気付いた夢彦はサキの元に駆け寄り『何故装置をつけなかった!』と叱る。サキは『忘れてしまっただけ』と誤魔化すが、夢彦は『これをつけないで眠るとお前は悪夢に喰いつくされてしまう』と言い聞かせ、サキは仕方なく装置を付けて眠り、”ユメミーワールド”に旅立つのであった。

そして、”ユメミーワールド”の魚の中では相変わらずしんのすけ、ネネちゃん、ボーちゃんは自分達の楽しい夢を満喫していた。しかし、そこに風間くんが現れサキへの疑惑の証拠を見せるために3人を連れて中心部に行く。すると、ぬいぐるみたちが追いかけて来て、しんのすけたちは逃げ回るうちにサキの元に辿り着いた。サキと会えたことに喜ぶネネちゃんであったが、すぐにぬいぐるみたちがサキを庇う姿勢を取り、夢彦も銃口を向けて来る。

そして、風間くんが『この世界は君が作っているんだね』と問い質すとサキはそれを否定しない。サキはしんのすけ達を庇うため『友達じゃない』と夢彦に主張し、夢彦もそれが嘘だと悟りつつも『どうせこの町は終わりだ』とサキに免じて銃口を下げ、しんのすけ達を排除しようとするに留める。

ぬいぐるみたちによって外に放り投げられる、しんのすけ、ネネちゃん、風間くん、ボーちゃん。ネネちゃんはサキに『ウソついてたの。あんたなんか大っ嫌いよ』と泣き叫び、サキは傷付く。しかし、しんのすけだけは運よく途中でひまわりにキャッチされて助かるのであった。

残されたネネちゃんや風間くんたちの夢はぬいぐるみ達によって吸い取られる。そして、外の悪夢の世界に追い出されたボーちゃんは石のまま犬のおしっこを掛けられ、風間くんはママから『選挙に出られるのは25歳になってから』と叱られお尻を叩かれ、ネネちゃんは熱愛がスクープされ(よりによってマサオと)ファン達から責められるという悪夢に苦しめられるのであった…。

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野原一家に全てを明かしたサキ…野原一家はサキを救うことを決意する

翌日、当然サキの家には誰も来ることは無かった。しかし、夕方になると一人庭で佇むサキの元にいつも通りのしんのすけがやって来る。のんきに『ネネちゃんが怒ってる』と告げるしんのすけにサキは強がるように『秘密基地もお友達ごっこもお終い』と言い放つ。

そして、自分が普通の夢を見れないこと、そんな自分を悪夢から守るために、父の夢彦が”ユメミーワールド”を作ってみんなの”ユメルギー”を吸い取っていること…それらを全て明かすのであった。

素っ気なく『もうすぐ出ていく自分達がこの町を去ればみんなの夢は元通りになる。だからそれでいいでしょう』と言うサキ。しかし、そんなサキにしんのすけは『ダメ、サキちゃんがまた一人ぼっちになっちゃうから』『オラがサキちゃんの夢をお助けするぞ』となんてことも無いように言う。

サキは『おバカなことを言わないで』と叫んだものの、しんのすけの優しさに泣き出してしまう。困ったしんのすけは泣き続けるサキを野原家に連れて帰るのであった。

サキに夕飯のお好み焼きをごちそうするひろしとみさえ。サキの口から全てを聞き驚くも『皆を巻き込みたくないけどパパを悲しませるのは嫌』というサキの願いをどうすれば叶えてやれるか分からず困惑する。

すると、しんのすけが『獏を見つけてサキちゃんの悪夢を食べてもらおう』と言い出す。一見突拍子もないしんのすけの提案だが『確かに夢の世界なら獏はいるかもしれない』とひろしとみさえは納得する。

その後、サキを迎えに来た夢彦をひろしとみさえは非難する。しかし、夢彦は『この子を救えるのは私だけだ』と居直り、しんのすけに『サキに近づくな』と強く言って去っていく。そんな夢彦の高圧的な態度にみさえは腹を立てるのであった。

しかし、それでもサキを救ってやりたいと強く思う野原一家。そもそも大人のみさえとひろしは魚の中に入ることができないのだ。しかし、『夢見る子供なら魚の中に入れるかもしれない』『子供になりきれば魚の中から追い出されないかもしれない』とみさえは思いつき、みさえは幼稚園児風の格好、そしてひろしはわんぱく小僧風の格好という色々とヤバい姿で眠りにつくことになった。

『野原一家お休みファイヤー!』…そう叫んでしんのすけ、ひろし、みさえ、ひまわり、そしてシロは気合を入れて眠りにつくのであった。

しんのすけはサキを連れて悪夢の世界へ…かすかべ防衛隊は架空の生き物”獏”を探してさ迷うが…

”ユメミーワールド”にやってきたしんのすけ、ひまわり、シロは真っ先にサキの元に向かい、ひまわりとシロは巨大化して夢彦が率いるぬいぐるみ達と戦うが強制的に外に排除されてしまう

すると、サキは夢彦に『私”獏”を探しに行く。ここから出して!ママがいるっていったんだもん』と訴える。その言葉に夢彦は動揺するが、しんのすけに『サキを救いたいのならばユメルギーを寄越せ!』と迫った。

すると、しんのすけはあっさりとユメルギーを捨てて、サキを連れて一緒に外に出てしまう。夢彦は慌てて二人を追おうとするが、企み通りに童心に帰って魚の中に入ることに成功したひろしとみさえに妨害される。幼稚な攻撃を仕掛けてくるひろしとみさえに夢彦は『例え世界中を敵にしても私は娘を守る』と叫び、ひろしとみさえはその剣幕に一瞬怯むものの、『私達だって子供のためなら何でもできる』と言い返し果敢に戦うのであった。

一方、無事に外の世界に出ることに成功したしんのすけとサキ。サキは助けに来てくれたしんのすけに涙を流しながら礼を言い、しんのすけは『かすかべ防衛隊の仲間だから』と特に気に留める様子もない。

そして、しんのすけとサキは巨大化したシロにまたがって巨大化したひまわりと共にかすかべ防衛隊のメンバーを悪夢から解放し仲間に加えていく。しかし、ネネちゃんは未だにサキを許せないようで、サキが『ごめん』と謝ると驚くものの『獏なんているはずがない』とトゲのある態度を取り続けるのであった。

『獏が見つければこの悪夢を消せる』…そう一縷の望みを探して荒涼とした悪夢の世界を進むしんのすけ達。そんなしんのすけ達を恐ろしいワニや犬、暴走族、さらに『心配してください、履いてませんよ』と言いながら迫って来る大量の”とにかく明るい安村”が襲い掛かる。

それらを何とか振り切ったものの、ひまわりとシロのユメルギーが切れてしまい、しんのすけ達は荒涼とした悪夢を彷徨うことになる。途中、墜落したヘリコプターから現れた元カリスマホストの城咲仁が『獏ならあっちにいる』と教えてくれたものの、教えられた方向にいたのは獏は獏でも俳優の大和田獏であった。ファンのボーちゃんは大喜びだが、皆は『本当にこの獏でいいのか』と困惑する。

そして、やってきた悪夢を大和田獏に喰わせようとするが、当然通用するはずもなく大和田獏は遥か彼方に吹っ飛ばされてしまう。そして、悪夢はサキの母サユリを模したおぞましい巨大な化け物となって、しんのすけやサキ達を飲み込んでしまう。そして、魚の上で争っていた夢彦、ひろし、みさえも魚ごと食われてしまい、現実世界の”ユメミーワールド”を作り出す装置も壊れてしまうのであった。

悪夢に取り込まれてしまったサキ…しんのすけやネネちゃんはもう一度サキを救うために立ち上がる

悪夢から目覚めた野原一家。『悪夢の正体はサキちゃんのお母さんだったんだ』とみさえは絶句する。しんのすけ達野原一家とネネちゃん以外のかすかべ防衛隊のメンバーは慌ててサキの家に駆け付けるが、そこではストレスのあまり髪が白くなってしまったサキの姿があった。

荒れて『こんなもの!』と叫びながら装置に当たりまくるサキを止めながら、夢彦は『お前らのせいでサキは変わってしまった!これまでうまく行っていたのに!』としんのすけ達に怒りをぶつける。

しかし、しんのすけ達に気付いたサキは落ち着きを取り戻し、夢彦に『自分は変わってしまったのではなく皆のおかげで変わることができた』と語る。そして、『今までは寝てる時も起きてる時も一人ぼっちで寂しかった』『私の夢は友達を作る事だった。みんなを巻き込まないで』と正直な気持ちを夢彦に伝える。知らなかったサキの本音に驚く夢彦。しかし、次の瞬間サキは気を失ってしまう。

駆け寄る皆に夢彦は『サキは悪夢に囚われており、無理にむざせさせると心が千切れてしまう』と言う。そして、救う手立てがないと絶望したその時、

『助ける方法があるに決まってるでしょ。さっさとサキちゃんの夢に入って悪夢をやっつけましょう』…そう言ったのは遅れてやってきたネネちゃんだった。そして、装置が壊れてしまったためサキの夢に入ることは出来ないと語る夢彦に、ネネちゃんは『そんなものはいらない、絶対にサキちゃんの夢に入ってみせる』と笑い、しんのすけ達も賛成する。そして、夢彦やひろし、みさえが見守る中、しんのすけ達かすかべ防衛隊は『おやすみなさい!』と叫び夢の世界に旅立つのであった。

そんな純粋で勇気のあるしんのすけ達の姿を見た夢彦は『自分のひとりよがりな行動がサキの現実も悪夢に染めてしまっていた』と反省し、ひろしとみさえにサキの悪夢の原因を語る。

サキの母サユリは夢彦と一緒に夢のエネルギーの研究をしていた。しかし、ある日エネルギーが暴走してしまい、あろうことかそのタイミングでエネルギーの光に惹かれたサキが研究室に入ってきてしまった。サユリはサキをエネルギーの爆発から庇って死んでしまったのだ。

サキは『自分のせいで母は死んだ』『そして、母は自分を恨んでいる』と思っており、そのせいで悪夢に囚われる様になってしまったと語るのであった。

その頃、夢の中で亡母サユリの悪夢に襲われていたサキ。しかし、そこにしんのすけ達が助けに来る。

驚くサキにネネちゃんは『嫌いにならないって約束しちゃったから、これで仲直り』と微笑みかける。そして、しんのすけ達は襲い掛かって来るサキの母の亡霊に果敢に挑んでいく。すると突然しんのすけの体が光り、大きくなった。

しんのすけはサキのぬいぐるみそっくりの…”獏”に変身したのだ。”獏”になったしんのすけは悪夢を食べられるようになり、そして、ネネちゃんも迫る悪夢からサキを守るために巨大なカニに変身し大きなハサミで悪夢の根を切り落としていく。更に風間くんは『世界中を飛び回る存在になりたい』と願って飛行機に変身ししんのすけを援護する。マサオは相変わらず編集者にイジメられるが自身の描いた漫画”イガグリまさちゃん”の中にあったセリフ『ペンは剣より強し』をヒントにペンで編集者に反撃を始めるのであった。

”獏”となったしんのすけは悪夢の急所である頭を吸い取るが、それでも悪夢はしつこく復活。だが、なんと小惑星イトカワと化したボーちゃんが大気圏外から隕石として墜落してきて、悪夢にトドメを刺すのであった…。

悪夢は消えない…!?サキの責め立てるもう一人のサキ…窮地に立ったサキとしんのすけを救ったのはみさえだった

一方その頃、現実の世界では眠り続ける子ども達を夢彦、ひろし、みさえが歯がゆい思いをしながら見守っていた。しかし、突然みさえは『悪夢は消えないわ』と言い出し、子供達を助けるために夢の世界に行こうとする。夢彦は『子供達には不思議な力があるけど大人はサキの夢に入ることができない』と止めるが、みさえは『親子の絆があるからしんのすけの夢には入ることができるはず』と言って眠りに着く。…『サキちゃんに伝えなきゃいけないことがある』と言って。

ボーちゃんの隕石によって悪夢は消え失せ、しんのすけとサキは喜ぶがそこに思ってもいない人物が現れる。

それはサユリの事故死当時の幼いサキだった。

幼いサキはサキに詰め寄ると不敵に笑いながら『ママが死んだのはあなたのせいなのに、忘れちゃうの?』『また悪夢をいっぱい増やしてあげる』と言い、悪夢を復活させる。そして、邪魔なしんのすけには複数の”とにかく明るい安村”をけしかける。

『あんたはずっと苦しまなくちゃいけないの』『あんたのせいだから、ママはあんたを恨んでる、悪夢はずっと消えないの』…そうサキを責め立てる幼いサキ。すると、しんのすけ達が倒したはずの悪夢が再び集まって来て、しんのすけも悲鳴を上げる…その時だった。

突然そこにみさえが駆け寄って来て『パンツ履け!!』と叫びながら安村達を撃退していく。そして、『何で』と驚くしんのすけに『子供のピンチにかけつけない親がいるか』と叫び、悪夢をなぎ倒しながら言う。

普段からワガママ言って、パパばかりに甘えるしんのすけをいつもいつも叱ってしまう…『でも好きで嫌われ役をやっているんじゃない、嫌われたっていいから守りたいだけ』…子供には分からないだろうが、それでも愛しているのだと主張する。

そして、サキに近づくと『お母さんがあなたを憎むわけがない』と言って”獏”のぬいぐるみを渡し、サキの母になりきろうとする。すると、みさえはサユリに変身した。

『サキは悪くない。おバカなのは私。サキをこんなに悲しませてしまって』…そうサキに対して優しく微笑むサユリ。そして、泣きじゃくるサキの涙を拭って『サキの笑顔が大好き。笑って』と抱きしめ、『ずっと一緒。サキにはママの夢が詰まっている』と言うのであった。

みさえの、…そしてサユリのメッセージはサキに届き、悪夢は消えていく。

幼いサキは必死に『ウソ!ママは許すわけない。あんたは悪い子で友達もいない一人ぼっち』と罵るがサキはもう惑わされない。すると、幼いサキは急に不安そうに『私、消えちゃうの?』と尋ねる。

だが、サキは笑いながら『消えなくてもいい。私の中にずっといてもいいよ』『私はもう大丈夫だから』と答えた。それを聞いた幼いサキは生意気そうに『へえ』と笑うと満足そうに姿を消すのであった…。

駆け寄って来た皆は『みんなで悪夢をやっつけた』と喜ぶがサキは『ううん、悪夢はまだいるよ。でも上手くやっていけそう』と語り、かすかべ防衛隊の皆を驚かせる。しかし、サキは元気そうに笑うのであった。

そして、しんのすけが『いつもの行きますか!』というとサキは『私にやらせて』といい、『かすかべ防衛隊ファイヤー』という音頭を取り、皆で声を合わせる。すると、荒涼としていた夢の世界は光に包まれるのであった…。

ラスト~サキは夢彦と共に海外に…しかし、しんのすけ達と心は繋がっており、夢で一緒に遊ぶのであった

その後、夢彦は海外の大学で悪夢に苦しむ人を救うための研究をすることになり、サキも一緒について行ってしまう。海外の幼稚園に慣れ友達も出来たサキはネネちゃん達に手紙を送り、『今は遠く離れているけど、また夢で逢えたらいいね』と言うのであった。

その手紙を皆に読むネネちゃん。しかし、しんのすけは相変わらずマイペースで聞いているうちに眠ってしまう。

そして、エンドロールでは夢の世界でサキと遊ぶかすかべ防衛隊達の姿が描かれるのであった。

~終わり~

以下、感想と考察

明るさの影にあるシリアスな設定と深いテーマ

本作はクレしん特有の明るさとギャグで緩和されているものの、物語の核には“サキの母親の死”という非常に暗く重い設定がある。それも娘サキを庇った末の事故死というショッキングなものだ。

それが原因で悪夢にうなされて精神的にボロボロになっていく幼いサキを救うため、無関係の多くの人々の夢のエネルギーを搾取し悪夢に追いやる夢彦も序盤こそ悪人然としているが娘のために苦悩し奔走する一人の非力な父親に過ぎない。夢彦がサキに朝食として出す微妙に焦げたトーストと潰れてしまった目玉焼きが妙にリアルで、ポテトチップスを出しっぱなしにしているくせに、恐らく夢彦なりに娘の健康を考えて置いてあるのだろう…大量のトマトジュースの缶がテーブルに山積みになっているのがこれまた悲哀を誘う。

そんな感じで本作は明確な悪役不在で話が進んでいき、”サキの悪夢”という実体の無いものが敵となる。そして、その悪夢の世界が結構不気味で…。しんのすけ達のややおバカな夢の彩りで誤魔化されているものの結構ホラーすれすれのシーンも多い。

そんな本作のテーマは『身近な誰かと出会いによる救い』と『悪夢との共存』だと言えるのではないか。

悪夢を吸い取る“獏”は架空の存在ではなく実在する誰か

しんのすけ達はサキを救うために荒涼とした悪夢の世界に『悪夢を食べてくれる』架空の生き物“獏”という探すために旅立つ。この“獏”も本当にいるのかいないのか分からない怪しい存在なのだが、しんのすけ達は『“獏”は必ずいて、サキを救ってくれるはずだ』と信じて進むのだ。

しかし、“元カリスマホスト城咲仁”に教えてもらってたどり着いた先にいたのは獏は獏でも大和田獏。一瞬『え、大和田獏が幻獣の“獏”に変化して戦うという超展開!?』とか期待してしまったりもしたのだが、当然そんな訳もなく、しんのすけ達は“獏”を見つけることは出来ない。

だが、それでもサキを救うことを諦めなかったしんのすけ達。再びサキの夢の中に向かった時、なんとしんのすけが“獏”に変身したのだ。そして、一度はサキと仲違いしたネネちゃんも巨大なカニになる等して、カスカベ防衛隊の子供達は各々自由に変身してサキを守るために悪夢と戦っていく。

つまり、サキを苦しみから救ったのは幻獣“獏”ではなく、身近にいたしんのすけ達だったのだ。

幸せの青い鳥じゃないけれど、苦しみから救ってくれるのはどこにいるとも分からない特別な存在ではなく、案外近くにいる誰かとそんな誰かとの出会いなのだ…そんなメッセージを本作から感じた。

特別なユメルギーでも伝説の獏でもない。かすかべ防衛隊や野原一家の善意と彼らとの出会いがサキだけでなく道から外れかけていた夢彦を救ったのだ。

『悪夢は終わらない』の真意…消せない過去と負の感情との共存について

しかし、現実世界で眠る子供達を見守っていたみさえは唐突に夢彦やひろしに言う。『悪夢は終わらない』と。個人的にみさえのこの台詞やここからの展開には少し驚いた。

みさえの予感は的中し、夢の世界でしんのすけ達はサキの悪夢の化け物を倒したのだが、今度は思ってもいない人物が立ちはだかる。それは幼いサキの亡霊であった。母が事故死した当時の姿で現れたもう一人のサキは『母は自分の死の原因となったサキを憎んでいる』『母はあなた(自分)のせいで死んだ』とサキを責め立てる。彼女の正体はサキの罪悪感。それこそが悪夢を生み出していたのだ。

幼いサキの亡霊の登場により窮地に立たされるサキとしんのすけ。しかし、そこにみさえが駆けつける。サキの悪夢の元凶がサキが抱いていた罪悪感と『母に恨まれているのではないか?』という不安であると見抜いていたみさえは『母親が子供を恨んだり憎んだりすることは絶対にない』とサキに伝える。そしてサキの母親サユリになりきって、サキに『サキの笑顔が大好き』と励まし安心させるのだ(この一連のシーンのみさえが最高に格好いい)。

確かにみさえの活躍によりサキは『母親に恨まれ嫌われているのかもしれない』という不安を解消することができた。しかし、母サユリが事故死してしまった事実が変わることは無い。そして、サキもまた罪悪感や後悔を完全に消し去ることはできないのだ。みさえは最初からそのことを分かっており、サキもそのことを理解し、罪悪感や後悔も自身の一部として受けれることを決意したのだ。

『悪夢は終わらない』…これは非常に深い言葉だと思う。人は現状や未来を行動によって変えることは出来るけれども過去を変えることは決して出来ない。考え方や解釈を変えることがあっても事実そのものは動かせないのだ。だから、過去への後悔や罪悪感といった負の感情は完全に消し去ることは出来ない。サキもまたふとした瞬間に罪悪感に苦しむだろうし、昏い悪夢にうなされる夜も来るだろう。しかし、それでも上手く心のバランスを取って付き合っていくしかないのだ。

5才児が受け止めるにしてはヘビイでビターな結論だが、サキは『悪夢は無くならない…でも大丈夫』と笑う。何故ならしんのすけ達との出会いによって、人の善意と温かさで救われることを知ったからだ。

まとめ~重く深いテーマとギャグを両立させた名作

上述した通り、設定やテーマは重く深く、夢の世界特有のカオスさ不気味さが描かれており、ややホラータッチなところもある今作。しかし、ギャグがしっかりと練られていることとかすかべ防衛隊達子ども達の夢のカラフルさが彩を添えており、上手いことバランスが取れている。”とにかく明るい安村”が『安心してください、履いてませんよ』と言いながら大量増殖をして迫って来るところなんて怖いし笑えるし…。『子ども映画だし、『パプリカ』(同じく夢を題材にしたアニメ映画)に比べりゃ大したことないだろう』と高をくくっていたのだが、結構な強烈さがある。しかし、ただ強烈なだけでなくストーリーも練られており、ただの予定調和ではない現実味のある着地をする。

かすかべ防衛隊の中でもネネちゃんが割と活躍したり、みさえの言動に心を打たれたり(個人的に”母の子への愛”みたいな説教くさいセリフはあまり好きではないのだが、不思議のこのセリフはすんなりと胸に響いた)と個人的にはかなり満足できる作品だった。名作が多いクレしん映画の中でも完成度が高い方なのではないかと思う。

…強いて難点を挙げるならちょっとしんのすけが格好良すぎるかな?

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