【漫画】夏目アラタの結婚 22話【感想・ネタバレ・考察】か弱く可哀想で健気な女の子…真珠は傍聴人たちの心を掴むのに成功する

夏目アラタの結婚2巻表紙

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ついに真珠の控訴審が始まった。アラタは“死刑囚アイテムコレクター”の藤田と再会し、自身と真珠の関係を隠しながら藤田と共に控訴審を傍聴することとなった。そして真珠は清潔なワンピース姿で法廷に現れ、一審とうってかわった可憐さで傍聴人達を驚かせる。更に真珠は裁判長に名前を尋ねられると『夏目真珠』と答え結婚したと告げる。“品川ピエロ”が結婚していたという事実に法廷はどよめき…。

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Contents

以下、あらすじとネタバレ

名前に次いで住所も問われる真珠…アラタは自身の身元が割れてしまうことを怖れるが…

猟奇殺人鬼の”品川ピエロ”が獄中結婚していた…その衝撃の事実に傍聴席に緊張が走る。アラタは咄嗟に隣にいる藤田に『オレと同じ苗字なんて偶然だなあ、ハハハ』と小声で言って誤魔化した。

しかし、内心では非情に動揺していたアラタ。アラタは結婚はプライベートなものだから自身から積極的に週刊誌に売り込んだり、真珠が面会に来た記者に語ったり手紙で伝えたりしない限りバレないものだと思っていた。裁判でこんな形で露呈するとは夢にも思っていなかったのだ。

すると、裁判長は続けて真珠に生年月日や本籍地を問い、さらに『住所は?』と尋ねる。その様子を見たアラタはハッとする。

―あれ?ひょっとして結婚したからオレの住所になんの?

夏目アラタの結婚22 乃木坂太郎 6/27

慌てて傍聴席を見渡すアラタ。傍聴人の中には雑誌記者と思わしき人物が何人もおり、皆真珠の答えをメモに取っている。『名字だけでなく、住所も割れてしまったら自分は容易に特定されてしまう』と気付きアラタは戦慄する。職業と職場はもちろん、素行不良だった過去のことまで週刊誌に暴露される様子が思い浮かんだ。

しかし、真珠は意外な回答をする。

「……住所不定です!」

夏目アラタの結婚22 乃木坂太郎 8/27

それを聞いたアラタはホッと胸を撫でおろす。横にいる藤田は首をかしげながら普通は裁判後に帰るところの住所…つまり夫の住所を答えるはずだと解説する。しかし、人定質問は形式的なものであるためただ被告の言ったことが調書に記されるだけだとも言うのであった。

そして、アラタは真珠がワザと『住所不定』と答えたことに気付く。それは決してアラタを助けたのではなく、自身との駆け引きのためのカードを一枚温存したに過ぎないということに…。

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形式的な手続きだけで終了する初日…しかし、真珠が『言いたいことがある』と声を上げる

そして、弁護人の宮前が控訴趣意書を読み上げた。『被告人は殺人罪について無罪、死体損壊罪と死体遺棄罪のみを負うから執行猶予が相当』と主張する宮前。そして、真珠のアパートから真珠のものでも被害者達のものでもない第三者の血痕が残っており、それが被害者の一人である山下良介と謎の男が口論している様子が度々目撃されていたことから、この謎の男が被害者を殺害した可能性があると言うのだ。この謎の男について精査しなかった第一審判決は破棄されるべき…そう高らかに言う宮前。

それに対して当然検察は第一審判決の正当性を主張する。被害者三名は皆毒殺された後に死体を損壊されており、真珠は死体を損壊しているところを現行犯逮捕されたのだ。死亡推定時刻、自宅周辺の防犯カメラ映像等の証拠を合わせてみても真珠が被害者達を殺害したと見るのが妥当だと言うのだ。『仮に第三者がいたとしてもその第三者が殺人をしたとは考えられない』と主張する検事。

その後も宮前と検事のやり取りは続くも、言い回しが独特なためアラタにはいまひとつ理解できない。しかし、今後その謎の男を見たというホームレスの白石文雄を証人として呼ぶことと真珠の供述を聞くことが決まったことはアラタにも理解できた。

すると、裁判長は次回の予定と日程を淡々と告げる。それを聞いたアラタは『もう終わりなの!?』とビックリしてしまう。そんなアラタに藤田は初回は基本的な手続きしかしないことを説明する。

その時だった。

「一ついいですか?裁判長さん……」

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真珠が慌てた様子で突然声を上げたのだ。

『何故今になって真実を語りだすのか』…法廷で心境の変化を語る真珠は、その健気さといじらしさで傍聴人の心を鷲掴みにする

突然声を上げた真珠。『一審では何も話さなかったのに今何故話す様になったのか…その気持ちを明かしたい』とたどたどしく告げる。すると、裁判長は穏やかに『どうぞ』と許す。

戸惑い慌てながら再び裁判官達の前に立つ真珠に傍聴席から笑いが漏れる。真珠はそれを聞いて恥ずかしそうに俯きながらも少しずつ話し出す。

『あたしは一審のときは怖くて何も分からなかった』…そう切り出した真珠。そして、年老いた弁護士に『中途半端に何か言うより完全に黙秘した方が弁護をしやすい』と言われ、それに従ってしまったのだと。

それを聞いた裁判長は少し考えてから『そういう弁護人はいますね』と答える。

さらに真珠は『拘置所に入った事で安心しちゃって』と語る。拘置所に入れば働かずに済み、恐れていたストーカーからも逃れることができる。無罪になって外に出れたとしても誰も守ってくれない…そう思ってしまったと。

そして、ストーカーから嫌われるために、ワザと醜く太ったと語る真珠。『ツナ缶とごはんだと安くて美味しいからいっぱい食べられる』と悲しそうに涙ぐみながら笑う真珠の話に傍聴人たちは驚き同情の眼差しを注ぐ。裁判長も真摯に耳を傾け、『どうして気が変わったんですか?』と尋ねた。

「夫があたしを守ってくれるからです!」

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そう、涙を浮かべながら嬉しそうに答えた真珠は突然、後方の傍聴席を振り返ってくる。真珠が自分を見ようとしていると思ったアラタは慌てて顔を伏せる。

しかし、意外にも真珠が見たのはアラタではなく、法廷画家だった。真珠は画家に『絵を見せて下さい』と言うのだ。こんなにキレイな服を来たこともなく、また拘置所には姿見が無いと。

真珠に請われた画家は戸惑いながらも描いていた絵を見せる。そこには刑務官の間に座るワンピース姿の真珠が描かれていた。

すると、真珠は大粒の涙を流しながら満面の笑みで言う。

「あたし、今そんな感じ…?」

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嬉しそうにワンピースに触れた真珠は『汚さないようにしなくちゃ』と言う。

その様子の可憐さ、そしていじらしさ…アラタは傍聴人達が一瞬で心を奪われるのを肌で感じる。

もし二審も裁判員裁判だったら、真珠はこの時点で勝利を納めていた…そう理解したアラタは改めて真珠の恐ろしさを感じるのであった…。

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以下、感想と考察

傍聴人の心を巧みに掴んだ真珠

裁判って結構アッサリしてるよね、実際は。真珠は人定質問で住所を語らなかったが、これはアラタが思っている様に『今後、言おうと思えばいくらでも世間に対してお前の情報を出せるんだぞ』という脅し、牽制なのだろうな。油断できない。

それはともかく法廷に立つ真珠の愛らしさ、可憐さ、そしていじらしさと言ったら…。見た目でインパクトを与えただけでなく、見事に『不幸な境遇で無実の罪を着せられていたけれども、愛してくれる人を得て立ち上がったか弱い女の子』を演じきった。

…こんなん、騙されるよ。女だって騙されるよ。応援したくなるよ。可愛いし可哀想すぎるし…。そして、当たり前からもしれないが、真珠の一人称が”ボク”ではなく”あたし”だった。喋り方といい、ちょっと桃ちゃんを意識しているような気がするけどどうなんだろう。

果たしてこの真珠の大変化に世間はどう反応するのだろうか?いくら傍聴人が騒いで、マスコミが『実は可憐な女の子だった』と主張したところで世論はそうそう真珠の味方にはならないと思うけれども…。

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