【漫画】金魚妻~金魚妻④【感想・ネタバレ・考察】さくらへの未練を断ち切れない元夫の卓弥…果たして卓弥は更生できるか、それとも…?

金魚妻4巻 表紙

冷淡な態度を取り平然と不倫する前夫、卓弥との生活に疲れたさくらは金魚屋の店主、豊田の元に転がり込んだ。一度は卓弥の元に戻ったさくらだったが壮絶な暴力を振るわれ離婚。さくらは豊田と再婚し妊娠。豊田と前妻の娘、蘭とも打ち解け幸せな生活を送っているのだが…。

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以下、あらすじとネタバレ

妊娠8ヶ月となったさくら…優しい現夫、豊田達と幸せに暮らしていたが、前夫の卓弥への怒りと恐怖は消えず…

風水では黒い金魚は飼い主の不幸を吸い取ってくれる存在と言われている…そう、客から教わったことを豊田に話すさくら。

豊田はさくらに金魚の色や数にこだわる客が多いため、そういった話は大事にしなくてはならないと語り、特に風水では水の循環が重要視されるため、水槽は綺麗にしておかねばならないと言って丹念に水槽を掃除をする。

そんな豊田にさくらは『手伝えなくてすみません』とお腹を抱えながら謝る。さくらが前の夫卓弥と離婚して1年…現在、さくらは豊田と再婚して妊娠8ヶ月。お腹はかなり大きくなっていて力仕事は出来なくなっていた。

かつて何気なくこの“金魚のとよだ”を訪れたさくらは自由に泳ぎ回る金魚達と、そんな金魚達を世話する穏やかな店主、豊田圭一に惹かれた。当時、さくらは平賀卓弥と結婚していたが、卓弥はさくらに冷淡な態度を取り続けており、浮気までしていた。

そんな卓弥との生活に疲れていたさくらは家出する様な形で“金魚のとよだ”に転がり込み、豊田と関係を持った。

その後、さくらはけじめをつけるためにも一度は卓弥の元に戻ったものの激しい暴力を振るわれ離婚。その後、豊田と再婚して今に至るのだ。

幸せに暮らしているさくら。しかし、気掛かりなことが全くない訳ではなかった。

腕時計を見た豊田は19時が過ぎた事を確認すると、『そろそろかな』と呟き、さくらを隠すように抱き寄せた。

この時間になると、店の前の道路にバスが走る。そして、そのバスにはいつも会社帰りの卓弥が乗っているのだ。

卓弥が乗ったバスが通りすぎるのを確認した豊田は優しくさくらに尋ねる。

「卓弥さんから…まだ連絡は来るの?」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

困ったように『時々』と答えるさくらに、豊田もまた困ったように『そうか』と笑う。

さくらが豊田と再婚したことを知らない卓弥。離婚前にさくらに激しい暴力を振るったことで裁判所から接近禁止命令が下っていたが、その期間が終わった途端、メールを送りつけてくるようになったのだ。

少し暗い雰囲気になってしまった店内。すると、店のドアが勢いよく開く。やって来たのはさくらの兄、琉であった。

明るく『飯を買ってきたぞ!』と叫ぶ琉だったが、暗い面持ちのさくらと豊田を見て、『アイツ(卓弥)は!?』と叫ぶ。さくらから『来てないよ』と言われても『野郎、みそぎが済んだつもりなのか!?』と怒りを露わにする琉。琉は妹であるさくらを溺愛しており、さくらが卓弥と離婚する際は両親と共に力になってくれたのだ。

かつてはそんな兄の好意をさくらは素直に受け止められなかった。幼い頃、琉は体が弱く病気がちで両親はその世話にかかりきりになることが多く、さくらは寂しい思いをすることが少なくなかった。

自分が目先の癒しに飛びついてしまう…外面が良い卓弥に騙され、また優しくしてくれた豊田とあっさり肉体関係を持ってしまったのにはそういう過去が関係しているのではないか…そんな風に思ってしまっていた時期もあったさくら。しかし、豊田と穏やかな時間を過ごす内にそんな恨みがましい気持ちもなくなっていった。

『おじさんだよ』とさくらのお腹に優しく声を掛け撫でる琉。こんな風に子供の存在を喜び、食事を差し入れる等気遣ってくれる兄の存在をさくらはありがたく思うのでった。

その後、豊田が一緒に夕飯を食べる様に声を掛けたものの、琉は『これから取引先と接待があるから』と去ってしまった。

すると、今度は入れ違うような形で豊田の娘、蘭が『ただいま!』『さくらさんは!?』が店に飛び込んできた。そして、さくらに『夕ご飯食べていく?』と聞かれると嬉しそうに『はい!』と返事をする。

豊田と離婚した前妻の娘で高校生の蘭は当初はさくらを警戒し、『お父さんと別れてほしい』とまで言って来た。しかし、現在は和解し蘭はさくらを姉の様に慕うようになっていた。また、元々兄弟を欲しがっていたこともあって、さくらのお腹の中にいる赤子の誕生を非常に楽しみにしているのだ。

蘭はスマホで母方の祖母に『今日もパパのところでご飯を食べて来るからママに行っておいてね』と電話する。すると、母から着信が来るが無視する。豊田の前妻は自身が親権を取った蘭が頻繁に豊田のところに出入りし、そして後妻のさくらと仲良くすることを快く思っていないのだ。

だが、蘭は『パパに会うのは私の権利』と笑顔で言い切り、スマホの電源を切る。気が強く自信にあふれる蘭をさくらは『見ていて気持ちのいい子だ』と思うのであった。

すると今度は店の前から犬の鳴き声と『とっちゃーん』と困ったように豊田を呼ぶ声がする。声の主は”金魚のとよだ”の常連客である井村であった。

見慣れぬ黒いミニチュアダックスフンドを連れた井村に『そのワンコ、どうしたの?』と尋ねる豊田。井村は娘が飼っていた犬だったが、娘が飼えなくなってしまったため引き取ったと説明する。しかし、このミニチュアダックスフンド…”ギネス”は全くしつけが出来ておらず鳴きっぱなしですぐに人に飛びつき、ここまで連れて来るだけで一苦労だったと語り、トリマー志望の蘭に『これなんとかならない?』と相談する。

すると、蘭は『まだ勉強中だから』と前置きしたものの、『ギネスが悪いことをしたらマズル(鼻先から口の周り)を抑えて、目を見て怖い顔をして短い言葉でガツンと注意して』と言う。早速吠えっぱなしのギネスのマズルを抑え、怖い顔で『しっ』と注意した井村。すると、ギネスは驚いたように大人しくなる。

さらに、蘭は豊田に『パパは飛びつかれそうになったら毅然とした態度でプイッと背中を向けて離れて』と言う。豊田に飛びかかろうとしたものの、相手にされなかったことでギネスは静かになった。

蘭は『犬は鼻先が向いた方法しか進めないからマズルを抑えて行動を制御する』『決して殴ってはダメ。殴ると人の手を見て恐怖を感じるようになり本能的に噛みつくようになるから』と説明し、『触る時は下から手を出す様に』と助言する。

さらに『良いことをしたらすぐ褒めること、ちょっとしたことでも褒めること』と言い、早速井村と豊田が二人で『よく吠えなかったね、お利口さんだね!』と褒めるとギネスは満足そうにする。

『犬に人間の言葉は通じないから怒られる時の条件を繰り返し覚えさせる必要がある』と語る蘭。

「あとは犬を人間扱いしない事 犬は犬!」
「飼い主のき然とした態度 安定した精神 それが犬を安心させ飼い主に対する信頼感に繋がるの」

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そして、しつけ以前に犬の散歩欲を満たしてあげることが大事であると言い、『というわけだから、井村さん、ギネス、行くよ』と言って早速井村とギネスを引き連れて走るように外に出ていくのであった。

店内に取り残された豊田はさくらに『今日もにぎやか』と笑って言う。さくらも同意して笑うものの、ふと卓弥との結婚生活を思い出し、少しでも気に喰わないことがあるとさくらを傷つける言動をし、最後は顔面や全身が痣になるほど殴り蹴りつけてきた卓弥についてこう考えるのであった。

彼は私を愛していなかったのではなく
私にかわいい犬でいて欲しかったのかもしれない

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でも自分は犬ではなくて人間だ。だから”条件付け”された愛なんていらない…そうはっきりと思えたさくらはスマホの中の卓弥から送り付けられたメールを削除する。

しかし、同時にこうも思うのであった。

私はまだ
彼を許せていない

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まだ卓弥への怒りと恐怖が残っており、それゆえにどこかで彼に囚われている…そう思うのであった…。

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不満を抱きながら生きているシングルマザーの堀口…息子のカズに大きな金魚鉢をねだられるも冷たく拒絶する

とあるアパートの一室。シングルマザーの堀口は小学生の息子のカズに向かってこう叫んでいた。

「ええっ」
「まーた金魚死んじゃったの!?これ何回目!?」

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小さな金魚鉢の中で死んで浮かんでいる黒い金魚。カズは本を見ながら『何がいけなかったんだ?』と泣きそうな顔で言い、堀口に向かって『大きい水槽を買って』とねだる。小さい金魚鉢では自分が学校に行っている間に水質や水温が変化してしまい金魚が死んでしまうと言うのだ。

最近金魚の飼育に夢中になりだしたカズは度々、堀口に大きな水槽を買ってほしいとねだっていた。しかし、堀口は『金魚鉢で金魚を1年間生かすことができたら買ってあげる』と言ってカズのおねだりを突っぱね続けていたのだ。

そもそも小さい金魚鉢では金魚は長生きできないとカズは主張するものの、堀口は『金魚ってちょっと水が汚いくらいの方が良いって言わない?』と誤った知識を口にして聞く耳を持たない。『だったらせめて水質検査薬を買ってほしい、金魚が死んだ原因を知りたい』と食い下がるカズに、化粧をしながら冷たく言い放つ。

「1匹300円くらいの金魚のためにおおげさね~」
「金魚はすぐ死ぬようにできてるの!金魚屋さんが儲かるために!」

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堀口のその言葉にカズは泣き出してしまう。だが、堀口は『ママは仕事に行くから』と言って、自身の母親にカズの世話を頼むとそのまま家を出てしまう。

自転車で“仕事先”に向かいながら先ほどのカズヤとのやり取りを思い返す堀口。しかし、泣いていた息子に対して可哀想に思うどころか『男のくせに金魚が死んだくらいでメソメソして情けない』とただ腹立たしく思えて仕方が無かった。

「だーれに似たんだか!」

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自転車を走らせながら、堀口はそう誰に言うともなく苛立たしく叫ぶ。浮気した夫と離婚しカズと二人で暮らす堀口は金銭的にも精神的にも余裕がなく、カズが見せる元夫の面影にうんざりしてしまうことも少なくなかった。堀口はやるかたない不満を胸に日々生活しているのであった…。

彼女がハウスキーパーの仕事で向かった一人暮らしの男性の家…それは卓弥の家であった

「こんばんはー堀口です!」
「本日もどうぞよろしくお願いします」

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しかし、”仕事先”に着いた堀口は先ほどの苛立ちを抑え込み、感じの良い笑顔を作り”客”に深々とお辞儀する。髪をきっちりと一つに束ね、清潔なエプロンを付けた堀口。堀口の仕事とはハウスキーパー…家事代行サービスであった。

そして、

「はい」
「いつも通りよろしく」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

そう言って素っ気なく背を向けた”客”の男性…それはさくらの元夫、平賀卓弥であった。卓弥は堀口の常連客で、定期的に堀口に家事を依頼していたのだ。

堀口が黙々と掃除をする中、ソファに座ってぼんやりとテレビを眺めている卓弥。二人の間に特に会話はない。

しかし、ふと卓弥が思い出したように『それ分別しておいて』とゴミ袋の分別を頼んだ。ゴミ袋の中に金魚鉢が入っているのを見た堀口は『金魚を飼ってらしたんですか?』と尋ねる。卓弥が背を向けたまま『数日だけ』と答えると堀口は息子が金魚にハマっていることを語る。息子は大きい水槽なら長生きさせられるから買ってほしいと言うけれど、水槽なんて買ってやったら次は照明やブクブク(エアポンプ、エアレーション、フィルター)やヒーターも欲しいと言い出すに決まっているから買わないと笑いながらも愚痴を混ぜてそう話す堀口。

「でも子供が欲しがるからと言ってホイホイと買ってあげるのは良くないと思うんですよ」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

それを聞いた卓弥は『息子がそんなに熱中しているのに?』と尋ねる。そして、『うちには余裕がないから』と堀口が答えると突然立ち上がり、『じゃあこれで』と5万円を差し出した。

驚き、『いやいや…』と断ろうとする堀口。しかし、卓弥が『”心付け”を受け取れない決まりがあるの?』と言うと慌ててスマホでマッチングサービスの規約を確認し、心付けについて何も触れられていないこと確認し、ホッとしたように笑う。

だが、堀口は『息子には買い物の時に100円のカードゲームを買い与えているのに、さらに物を与えるのはもったいないような』と言い出す。それを聞いた卓弥は『100円のカードなんて、かえっておもちゃを沢山買ってもらえる他の子との差を見せつけられて辛いのではないか?』と尋ねる。堀口が実際に息子の周りには最新のゲームを予約して買う子がいると答えるとさらにこう言う。

「堀口さんの息子 学校で友達をいじめてない?」
「堀口さんもクラスメイトの親たちから避けられてない?」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

『え…』と言って青ざめる堀口。卓弥の言うとおりだったのだ。そして、堀口は一生懸命ちゃんとしているはずなのに、他の保護者達から何故か遠巻きにされていたのだ。

そして、そんな堀口に卓弥は寂しそうに笑って言う。

「わかるよ」
「うちもそうだったから」

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恵まれなかった幼少期を堀口に打ち明けた卓弥は、自身がさくらに抱いていた苛立ちの正体に気付く

『周囲のレベルについていけないのはすごい劣等感だ』…そう堀口の息子、カズの気持ちを代弁する卓弥。その劣等感から卓弥は他の子に対して攻撃になってしまっていると言うのだ。

そして、卓弥は自身の幼少期について語る。卓弥の両親は堀口とは違って決してお金がなかったわけではないのに、趣味の車にお金をつぎ込み、息子である卓弥にはお金を掛けようとしなかった。おもちゃもたまに流行のカードゲームを気まぐれで一枚だけ買ってくれるだけで、ほとんど買ってくれなかったのだ。

卓弥は改めて堀口に『息子におもちゃを買ってあげない理由は何?』と尋ねる。堀口は恥ずかしそうに『うちはただの貧乏で買ってあげたくても買ってやれないだけ』と答える。

「夫が浮気して出て行って…」
「養育費もあまり入れてくれなくて…だから…」

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悲しそうにそう言う堀口。しかし、息子カズを不安にさせないために家庭の琴線事情について教えていないという。

「じゃあ息子はずっと勘違いしたままだ」
「自分は親にお金をかけてもらう価値がない人間だってね」

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幼少期の自分の気持ちを思い出してそう言う卓弥。しかし、堀口は『大げさな』と笑い、『平賀さんは立派な大人になったじゃないですか?』『いい会社に勤めてこんな立派なマンションを買って』と言う。そんな堀口に卓弥は逆に問うのであった。

「立派?」
「妻の顔が腫れあがるほど殴り続けるような男が?」

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卓弥のその言葉を聞いて絶句する堀口。

一方、卓弥は堀口に打ち明けたことで自身がさくらに抱いていた苛立ちの正体に気付く。

「俺は…妻に劣等感を抱いていたんだろうな…」

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卓弥はふとこんな空想をする。

子供の卓弥は親に一枚だけ買ってもらった流行のカードを握りしめている。一方、子供のさくらは両親に買ってもらったクマのぬいぐるみを抱きしめている。

大きくて上質なクマのぬいぐるみを見た子供の卓弥は子供のさくらに『いいな』と言う。だが、さくらは『プレゼントをもらう順番はいつもお兄ちゃんが先だから嬉しくない』と不満をもらす。そして、卓弥がカード一枚しか手にしていないことに気付いて慌てて『そのカード格好いいね』と作り笑いをする。見え見えのお世辞にカッとなった子供の卓弥は子供のさくらに殴りかかり虐めてしまうのだ…。

親から十分なプレゼント(愛情)を受け取っておきながら、兄と比較して不満を漏らすさくら。そんなさくらを見ていると、親の気まぐれでもらったに過ぎないカード一枚で喜んでいた自分がみじめで恥ずかしくなってしまったのだ。

離婚の際に自身の両親とさくらの両親と話し合った卓弥…双方の親の差が歴然とする中、さくらの父は卓弥に厳しくも暖かい言葉を掛けた

卓弥は思い返す。親からの愛情の差は、さくらとの離婚のときに明らかになった。

しばらく家出していたさくらが戻って来た時、卓弥は怒りに任せて殴り付け蹴りつけ大怪我をさせた。そして、そうなることを予め予想していたさくらは自身が暴力を振るわれる様子を隠し撮りしていた。DVの証拠を握られてしまった卓弥はさくらが望むままに離婚に応じざるを得なくなったのだ。

それは、自身の親と共にさくらの両親達に謝罪し離婚について話し合った時の事だった。人気のない喫茶店で行われた話し合いにはさくらは参加せず、その代わりにさくらの兄、琉がやって来た。

「さくらと卓弥くんは相性が悪かったのね…」
「そんな2人が無理して一緒にいるのは不幸だわ」

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愛する娘が傷付けられた怒りを抑えながら、さくらの母は離婚を回避しようとする卓弥とその両親にそう言った。誰かが犠牲にならなければ続けられない関係なんてむなしいものだと。

震えながら『私達のせいですみませんでした』と謝る卓弥の母。しかし、卓弥の父は一緒に謝るどころか『お前が卓弥の教育に失敗したんだ』と妻を詰り始めた。すると、卓弥の母は『夫(卓弥の父)と離婚することでけじめをつける』と言い出し、父は『何を言い出すんだ!大げさな』と怒る。娘、妹のために話し合おうとするさくらの家族とは対照的に卓弥の両親は自身の保身や世間体のことしか考えていなかったのだ。

さくらの兄、琉はそんな卓弥の両親に冷めた目を向け、卓弥にはさくらへの接近禁止令が出ていること、今後卓弥がさくらに近づいた場合、刑事告訴も辞さないことを告げる。卓弥の父はそう言われて初めて事の重大さを理解し黙るのであった。

話し合いが終わると、さくらの父は去り際に卓弥にこう言った。

「卓弥くん 今の自分を変えるのは大変かもしれないけど」
「がんばって君も幸せになるんだよ」
「他人を幸せにするのはその後だよ」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

一人席に残された卓弥は、さくらの父の厳しくも暖かい言葉に手で顔を覆い項垂れるのであった…。

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自分達は似ている…そうお互いに感じた卓弥と堀口は抱き合いながら『変わりたい』『誰かを幸せにしたい』と強く願う

掃除を済ませ、寝室のベッドメイクもした堀口。しかし、まだ時間が2時間も余っていた。『どうします?』と尋ねる堀口に卓弥は『やりたいようにしてもいいよ』と答えた。

すると、堀口は束ねていた髪を解いて言う。

「そうですねー5万円ももらって掃除だけして帰るのも気が引けるし…」
「そもそも私 セフレマッチングサービスでここに来てるわけですし
…」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

堀口は残りの時間、卓弥とベッドを共にすることを選ぶのであった…。

服を脱ぐ堀口に卓弥は彼女が話した身の上話がどこまで本当なのか尋ねる。『全部本当です』『嘘を吐くと疲れるから』と笑う堀口。しかし、夫が浮気して逃げたのは自分に落ち度があると言う。

「私も相当自己中な人間でしたから…」
「別れた夫に何度も復縁を迫るメールを送り付けて」
「なのにその内容は自分に都合の良い話ばかりで」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

メールの内容は最初は言い訳と反省だが、次第に『あなたも悪い』『あなたが私を怒らせた、だからこれでおあいこだ、やり直そう』という元夫を責めて復縁を迫る内容になってしまっていたという。最早自身の鬱憤を晴らすことが目的でメールを読んだ相手がどう思うかなんて想像もしていなかったのだ。

ベッドの中で互いの体を撫で合いながらそんな話をする堀口に卓弥も『俺も元妻にそんなメールを何度も送った』と言う。堀口は『ますます嫌われちゃったかもしれませんね』と言って卓弥の顔を撫でる。

私たちは似ている

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

先程卓弥がそうしていたように、堀口も空想してみる。もしも子供の頃に自分と卓弥が出会っていたら…と

堀口もまた卓弥同様、親からカード一枚しかもらえない子供だったのだ。

『カード一枚しか買ってもらえなかったの?』と幼い堀口が尋ねると幼い卓弥は憮然としながら『そっちこそ』と返すが、せっかくだから一緒に遊ぼうとする。しかし、結局カードが2枚だけあってもどうしたら良いか分からず、そもそも遊び方も知らないのだ。『うーん、どうしたら』と困る二人だが、互いに苦笑しているうちに不思議と惨めな気持ちはなくなっていくのであった。

…自分たちの様な人間は、大事な人を傷つけて失うという失敗を重ねてやっと自分が変わらなくてはならないと気付くのだろう…そう堀口は卓弥と触れ合い抱き合いながら考えていた。

同時に堀口は卓弥がこんなに心を開いて正直に胸の内を語るのは自分が”心を焦がすような相手”ではないからだろうと冷めた気持ちで考えてもいた。そして、それは堀口自身にも言えることだった。

しかし、堀口はこう強く想っていた。

私たちが欲しいのは
自分が誰かを幸せにしたという実感…

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

『どうしてほしい?』と尋ねる卓弥に堀口は『挿れてほしい』と答えた。

大事な人を傷つけ失い、変わらなければいけないと理解し始めていた堀口と卓弥。互いに強く心を焦がし合うわけではなかったが不思議と惹かれ始めていたのであった…。

堀口とカズと共に”金魚のとよだ”にやって来た卓弥…卓弥の姿を見たさくらは凍り付くが、卓弥は…

それからしばらく経ったある日のこと。”金魚のとよだ”でさくらと豊田はある2匹の金魚を見つめていた。その金魚はずっと真っ黒だったのに最近になって少しずつ赤と白に色が変わり始めていたのだ。

驚いているさくらに豊田は水温やエサ、そして光の量など様々な理由で金魚の色変わりが起こることは珍しくないと語る。

そもそも金魚は生まれた時はみんな黒く、成長するにつれて本来の色が出てくるのだ。

「この2匹の黒金魚は他の子より成長がゆっくりで」
「今 色変わりの時を迎えたのかもしれないね」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

そう優しく言う豊田。

その時だった。一人の少年が『こんにちは』と言いながら店に入って来た。その少年は堀口の息子、カズであった。

さくらは豊田に『この子が黒い金魚は家族の不幸を吸い取ってくれるって教えてくれたんです』と笑顔で言う。豊田が『物知りだね』と褒めるとカズは母親に金魚を飼うことを納得させるために色々と調べたと語り笑う。

しかし、すぐに顔を曇らせてこの店で買ったばかりの黒出目金が死んでしまったと言う。さくらが慰める様に『不幸を吸い取ってくれたのかな』と言うと『飼い方が間違ってたんだと思う』と言ってペットボトルに入った水を差し出す。黒出目金を飼っていた金魚鉢の水で、水質を調べてほしいと言うのだ。『調べよう』と快く応じる豊田。

その様子をさくらは微笑ましく思い眺めていたが、ふと店の外を見て固まる。

店の外には卓弥が、見知らぬ女性と一緒に立っていたのだ。

店の外で堀口と共にカズを待つ卓弥。卓弥は堀口に一緒に店に入らなくていいのか?と尋ねる。あの後、堀口はカズに水槽を買うことを許し、今日は水槽を買わせるために”金魚のとよだ”にやって来たのだ。そして、その買い物に卓弥も付き合ったのだ。

『とんでもなく大きい水槽を選んでくるかもよ?』という卓弥に堀口は『いいんです』と答える。きっと自分も店に入ったらカズに口うるさく余計なことを言ってしまうからと。

そして、反対に堀口が卓弥に『店に入らなくていいんですか?』と尋ねた。だが、卓弥は『うん』と答え、近くの公園で待つことにするといってその場を立ち去るのであった。

女性と穏やかな様子で何やら話している卓弥の様子を、店内で固まったまま見ていたさくら。奥の方でカズと話していた豊田はさくらの異変に気付き、そして店の外に卓弥がいるのを見て慌ててさくらに駆け寄った。そして、さくらの肩を抱き店の奥に行くように言う。

しかし、さくらはこう答えた。

「大丈夫…」
「もう大丈夫です」

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そう言って豊田の肩に体を預けたさくらは心の底から安心したような表情を浮かべているのであった。

その後、無事に”金魚のとよだ”で水槽を選び買ったカズ。帰り道、その大きな水槽を持ってやる卓弥。

「黒い金魚が死ぬときは飼い主の身代わりになってくれた時なんですって」

金魚妻 黒澤R 金魚妻④

以前、カズに教えてもらった話を卓弥にする堀口。それを聞いた卓弥は笑って言う。

「へえ…じゃあ…」
「身代わりになんてさせないように気を付けなきゃな」

元気に『うん!』と答えるカズ。卓弥、堀口、カズは仲良く並んで歩いていくのであった…。

金魚妻4巻 表紙

以下、感想と考察

卓弥の反省と更生…DV男が立ち直るまでを描いた4話目

今回はまさかのさくらの前夫の卓弥がメインの回だった。

大体の作品において、DV夫やモラハラ男については“制裁”の対象にされることが多くて、特にレディコミとかは分かりやすく『DV野郎には(物理的あるいは社会的)死を!』みたいな展開が多い。…まあ、色んな方向から非難しやすい対象だから、制裁されたり不幸な目に遭わせると読者もスッキリできるからね。

しかし、この金魚妻はそんな分かりやすい展開にしなかった。ちゃんと卓弥を反省させ更生させたのだ。それも1話の間で。これに驚くとともに感心した。

卓弥がさくらにしてきたことは当然許させることではないのだけど、卓弥がさくらにモラハラをする経緯、動機についてはかなり納得させられた。根本にあるのは、嫉妬…それも『親からの愛』『恵まれた幼少期』というどうしようもなくて、かつ人格形成に大きく関わってくるもの。さくら自身は前回の3話でも描かれた様に幼少期について不満を持っていたようだけど、恵まれて愛されて育った感じがにじみでていて、卓弥の不倫やモラハラで傷ついている時でさえ、それほど自己肯定感が下がっている様子はなかった。(こういった雰囲気を出せているキャラデザや設定が本当に秀逸だと思う)

だから、中盤で出て来る卓弥の妄想…もし子供の頃の卓弥とさくらが出会っていたらという妄想はかなり的を射ていて、実際に出会っていたとしても羨望と嫉妬から虐めまくってただろう。

とはいえ、さくら自身も分かっているように、卓弥はさくらのことを愛していなかったわけではない。攻撃し、傷つけるためにプロポーズをして結婚したわけではない。むしろ、自分に無いものを持ったさくらだったからこそ当初は惹かれていたのだと思う。さくらに対してモラハラをし、最後は暴力も振るった卓弥だが彼は異常者だったわけでもない。今まで影で隠されていた彼の素顔が今回の4話で初めてハッキリ描かれたわけだが、拍子抜けするくらい普通の青年だった。

何が悪かったかと言うと、結局さくらの母が言うように”相性”…そこに様々なすれ違い等が加わってこのような結果になってしまったのだろう。次の『改装妻』にも通じる話だけど、憧れが嫉妬と憎しみに変わってしまうというのは珍しくない話なのだ。

堀口との出会いが卓弥を変える…二人はこの先上手く行くのか?

そして、離婚後して1年近く経つのに未練がましくさくらにメールを送り続けていた卓弥。そこにあるのはもはや愛情ではなくただの執着で、自分の非を認められないが故の行動だった。

そんな卓弥を変えることになったのがシングルマザーの堀口との出会いだ。

堀口も鬱屈とした思いを胸に溜めながら日々を過ごしており、作中明言はされていないが卓弥同様に恵まれない幼少期を送ったと思われる。シングルマザーでなくても、また男でも女でも気持ちに余裕がなくてこんな風に子供に冷たく当たってしまう人は少なくないからとてもリアルに感じる。黒澤R氏は自身が子持ちなせいか、子育てで追い詰められている描写を時々エグイ位リアルに描いてくるな…。

そんな堀口と出会い心の内を吐露したことで、卓弥は自身がさくらに抱いていた苛立ちの正体を理解し、反省することになる。それは堀口も同じで、息子カズへの接し方を見直すことになった。互いに似ていると感じた二人は抱き合う。

(とはいえ、元々堀口はセフレマッチングサービスで卓弥の家に来たという。ということは、卓弥と関係を持ったのは今回が初めてではないのだろう。最初は単にセフレとして知り合って、そのうち家事代行を請け負うことでお金を受け取ることになった…という流れなのかな?二人が知り合ったサイトの性質が今一つよく分からないからなんとも言えないけど。)

抱き合いながら堀口は卓弥と自身の関係について『互いに心の内を素直に吐き出すのは相手に恋しているわけではなからだ』と冷めた目線で見ているが、その後一緒に買い物をするなど、単なるセフレの関係から家族ぐるみの関係まで進展している。同じ悩みやトラウマ持ちがくっつくのは、若い子同士だと共倒れするだけなのではないかと心配になるけど、二人ともいい大人なので大丈夫なのではないかと思う。相性が良い卓弥と堀口。互いに鬱屈した気持ちや不満がぶり返すこともあるかと思うが、うまく支え合っていけるのではないか。

ラスト、卓弥はさくらに気付いていたのか否か…店に入らなかった卓弥の心情を考える

ラスト、堀口とカズと共に1年ぶりに”金魚のとよだ”にやって来た卓弥。さくらは卓弥に気付いたが、店に入らなかった卓弥がさくらに気付いたどうかは明確に分かる描き方はされていない。店に入らなかったのは単に以前、八つ当たりでボロクソの口コミを書いてしまった負い目からである可能性もある。

でも、個人的にはやはり卓弥は店内にるさくらに気付いたうえであえて声を掛けなかったのだと思う。表がガラス張りの”金魚のとよだ”でお腹の大きなさくらはどうしたって目立つだろうし。堀口から店に入らないか尋ねられた際にわずかに沈黙しているのが答えだろう。一度店の前から離れて近くの公園で待つと言ったのは動揺を鎮めるためだろうし。

妊娠したさくらを目にし、全てを察しながらも激昂せずにそれを受け入れ、外からしばらくカズを見守っていたのだろう。すごい変化である。そして、さくらもその変化を理解したからこそ、『もう大丈夫』と豊田に言い切ることが出来たのだ。

きっと謝罪の言葉を吐き出せば、卓弥自身の罪悪感を軽減することは出来ただろう。だけど、店に入るという行動をするだけで、身重のさくらに強いストレスを与えるということをちゃんと理解し想像して、そういった行動を取らなかった卓弥。卓弥はちゃんと変わることが出来たのだ。セリフ外でこういったキャラの心情を表現できるのは本当にすごいと思う。

そして、1話目で大きな水槽を買って来たさくらに怒り罵倒して家から追い出した卓弥がこの4話ラストでカズヤが水槽を買うところを見守るという流れが本当に秀逸で。最後の『身代わりになんてさせないように気を付ける=自分達が幸せになろう』というセリフが優しい。このまま卓弥と堀口母子には幸せになってほしいと心から願うよ。

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