【漫画】夏目アラタの結婚 最新話・47話【感想・ネタバレ・考察】真珠と環の母子関係の謎を解くため、アラタは母、綾子に協力を求める

夏目アラタの結婚 6巻表紙

控訴審3日目。母、環のことについて言及された途端、真珠は不安定になり、自身が環の娘であることを強調する一方で、本物の”品川真珠”ではないかのような言動をする。さらに、傍聴席にいる卓斗に『お前の父親を殺したのはボクだ』と言い放ち、『もう2年経ったから死刑でいい』と死刑を望むような破滅的な態度を取り始めた。そして、自身と目が合っても無表情のままの真珠にアラタもまた深く絶望した。

だが、突然真珠がアラタの名前を叫びながら傍聴席にいるアラタの元に飛び込んで来た。アラタも真珠の名を叫び返し、飛び込んできた真珠を抱きとめる。何度となく面会を重ねていたアラタと真珠だったが、触れ合ったのはこれが初めてであった…。

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Contents

以下、あらすじとネタバレ

初めて触れ合ったアラタと真珠だったが、すぐに刑務官達に引き離され、控訴審三日目は閉廷となってしまう

まるで死刑を望むかのような言動を取り始めて真珠。アラタと目が合ってもすぐに顔を背けたが、その直後アラタの名を叫びながら傍聴席に飛び込んだ。傍聴席の最前列にいたアラタも真珠の名を叫び返しながら真珠と受け止めた。今まで直接触れ合うことがなかったアラタと真珠。真珠はアラタに頬に触れと『本当にいるんだ』と言って涙を流しながら安堵した様な笑みを浮かべた。

しかし、二人の触れ合いは一瞬で終わった。すぐに刑務官達が真珠を捕らえ傍聴席から引きずり出し、裁判長が『閉廷!』と叫んだためだ。真珠はそのまま法廷の外に連れ出され、裁判長はこの後次回の日程について話し合うため桜井検事と弁護人の宮前に裁判官室まで来るように告げる。

アラタはそのまま立ち尽くし、ただ一瞬だけ真珠の頬に触れた自身の両手を眺め続けるのであった…。

その後、裁判所を出たアラタ、藤田、そして卓斗。

『もう2度と来るんじゃねえぞ』と再び卓斗を叱るアラタ。しかし、案の定卓斗は反発した。『確かにヤバそうな女なのは分かったけど、僕に何か伝えたがってたし、面会に行けば父さんの首の在処を教えてくれるかもしれない』『みんな理由をつけて僕を遠ざけようとするけど、大人の屁理屈に僕は騙されない』…そう滔々と語る卓斗をアラタは『卓斗』と遮り、こう続けた。

「俺のオンナに手ェ出すなら、殺すぞ?」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 8/27

殺気だったアラタの表情に口を噤む卓斗。さらにアラタは卓斗の襟首を掴むと『オトコ(俺)がいるのを分かってて真珠の元に来るなら、覚悟しとけよ』と脅しつける。アラタの剣幕に卓斗は怖気づき、アラタが『行け』と襟首を離すと逃げる様にその場から立ち去るのであった。そのやり取りを見守っていた藤田もアラタの怒気に圧倒されながらも『理屈で諭すよりも、こういう方が効くんでしょうね』と感心するのであった。

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真珠の頬の感触が忘れられないアラタは真珠…藤田にパフォーマンスに過ぎなかった可能性を指摘されても、真珠を信じることを決意する

卓斗がいなくなるとアラタは再び自身の手の平を見つめ、呟くように言った。

「柔らかい頬だったよ…丸い頭の重みが、伝わって来てさ…」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 9/27

アラタの手の平にはまだ真珠の頬の感触が残っていた。涙を流しながら必死にアラタを見つめてきた真珠の…。

「飛びこんできてくれたんだ。―この俺のところにさ…!!」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 10/27

それを聞いた藤田は驚き、『ヤバいですよ!』とアラタを咎める。真珠がさっき取った行動も、しょせんアラタ心を掴むためのパフォーマンスに過ぎないかもしれない…そう藤田は忠告する。

だが、アラタは藤田に『分かってる』と答える。そして、分かった上でこう思うのであった。

―でも、少しだけ信じるぜ。この感触が―残っているあいだは。

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 9-10/27

謎が多い真珠とその母、環の関係。その謎を解くべくアラタが協力を求めた意外な相手は…

その晩、アラタは焼肉店で不機嫌そうに煙草を吸いながらある人物を待っていた。そして、その相手がやってくると『おせえよ』と吐き捨てる言った。

「いきなり呼び出されてもね!こっちだって忙しいんだよ!」
「このバカ息子が……!」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 13-14/27

そう怒ったように答えたのは、ショートヘアに長い前髪をサイドに流し、眼鏡を掛けた細身の美女だった。高そうなワンピースに身を包んだ女性にアラタは尋ねた。

「……老けた?かーちゃん。」

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彼女こそがアラタの母、綾子であった。

綾子はそのアラタの言葉を無視し、『てめ、ふざけんじゃねーぞ!』と拳骨でアラタの額を殴り付けた。いつの間にか勝手に結婚し、その相手がよりによって連続殺人鬼の”品川ピエロ”で、さらにそのことが週刊誌に載ってしまったことに激怒しているのだ。『母ちゃんに迷惑をかけんじゃねえ!』…そう言いながらも綾子はアラタから一本タバコをもらうと席に着くのであった。

一服して少し落ち着いた綾子にアラタは『自分だって子供の頃に散々迷惑を掛けられたんだから、今少しくらい迷惑をかけてもお互い様だろ』と言う。元々派手で遊ぶことが好きだった綾子は、アラタの父親の死後、何度も再婚離婚を繰り返し、アラタが荒れるきっかけを作ったのだ。

だが、綾子は開き直ったように言う。

「ありゃ全部お前のためだろ?ああ?」

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金銭的に余裕のない母子家庭でアラタの将来に負担を掛けたくなかった。もし、母一人子一人の状態で自分が将来老いてしまったらアラタ一人で介護することになってしまう。そうならないようにするため、再婚離婚を繰り返した…そう綾子は語る。そして、ようやく4人目の再婚相手として金持ちの男性を捕まえ、さらにその男性との間に息子を設け、アラタに歳の離れた弟を作ったというのだ。

全く悪びれる様子のない母にアラタが『はいはい、別にもうどうでもいいけど』と呆れてしまう。だが、そんなアラタに綾子は笑って言う。

「―安心しな!あんたの親父が一番イイ男だったよ!」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 17/27

アラタの父親を”楽しい男”と評す綾子。調子のいい事ばかりずっと喋っているが、ちゃんと男らしいところもあったアラタの父。綾子は遠い目をして彼との日々を思い出す。アラタの父は綾子に『守ってやるさ。旦那だからさ』と言ってくれていた。しかし、結局アラタの父は早くに死んでしまい、その約束は口だけで終わってしまったのだ。

アラタの父のことを思い出ししんみりしてしまった綾子だったが、気を取り直す様に『で?お前の嫁が自爆したって?』と本題に入る。

アラタは真珠が裁判で死刑で良いと言い出してしまい、弁護人の宮前も頭を抱えてしまている…つまり窮地に陥っていることを説明する。そして、面倒くさそうに『死刑でいいじゃん』と言う綾子にこう語る

「そうはいかねえ 真珠はまだ何か隠してる…!!」
「裁判をひっくり返すような……秘密をさ」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 19/27

アラタはそう確信していた。

『じゃあなんで黙ったままなのさ?』と率直な疑問を述べる綾子にアラタは『真珠は死にたがっている』と説明する。

辛い人生を送って来た真珠は解放されるべく『誰かに楽な形で殺してほしい』という誘惑に強く惹かれている。虐待されていた子の中にはそういう子もいる…児童相談所職員としての経験からそう語るアラタ。そんな息子の顔を見つめていた綾子もまた『しんどいことを商売にしてるな』と神妙な面持ちになる。アラタが本気で自分に相談し、頼ってきていることを理解したのだ。

するとアラタはこう宣言する。

「真珠が戦うつもりがないなら、俺が戦うさ。」
「亭主だからよ!」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 21-22/27

そう言って笑って見せたアラタに綾子は目を見張る。今のアラタはかつて綾子に『守ってやるさ、綾子。旦那だからな』と言ったアラタの父によく似ていたのだった…。

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綾子に環のプロファイリングをしてもらうアラタ。環の行動が理解できずに困惑するアラタに綾子は意外な指摘をする

焼肉を食べながらアラタはこれまでの裁判のあらましを綾子に説明した。謎の多い半生を送っている真珠だが、『母、環が一体何をしたのか』がカギになるとアラタは考えている。そのため、”母親”としての立場からの意見が欲しくて藁をもつかむ気持ちで綾子に協力を求めたのだ。

早速アラタはスマホに保存した環の画像を綾子に見せる。裁判でも使われた三島正吾と一緒に写っている高校生の環。愛らしい環を見た綾子は『モテるタイプ、引く手あまたで男が取り合ってケンカする』という率直な印象を語りこう続けた。

「―でも、何がおきても自分だけは悪者になりたくない……ってタイプだな。」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 23/27

そこでアラタは児童相談所職員としての経験を語る。児童虐待の最悪はもちろん子供が殺されてしまうことだが、中には単に死なせてしまうよりも胸糞が悪い虐待もある。例えば、わざと沢山食べさせておいて排泄を我慢させる、正座など同じ姿勢を強制し続ける、小さい子を眠らせない、うるさいから音のしない食べ物しかあげない…など。

それを聞いた綾子はかつて自身もお腹を空かせていたアラタに面倒くさがってお金だけ渡していた時期があることを思い出す。自分も決して良い親ではなかったという自覚がある綾子は『あんまり聞きたくないね』と目を瞑ってしまう。

だが、そんな色々な虐待を見聞きして来たアラタにも環の行動は今一つ理解できないのだ。環は真珠を学校にあまり行かせず食事はツナライスばかりと酷いものだが、暴力は振るってなかったのだ。

すると、綾子はスマホの環の画像を見ながらこう言う。

「悪者になりたくないから、いい母親を装おうと思うんだ。」
「どんな母親もそうだけど、このタイプの女は特に…ね。」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 25/27

綾子のその意見をアラタは『そんな様子はなかったみたいだぜ』と否定する。環は真珠の歯も放置するなど、傍からみて酷い母親だったと説明する。

だが、それを聞いた綾子は意外なことを言うのだった。

「…逆にさ、いい母親だろ思われたかったからこそ―」
「歯を放置して、学校にもやらずツナ缶ライスで肥え太らせたってのは―ない?」

夏目アラタの結婚47 乃木坂太郎 26/27
夏目アラタの結婚 6巻表紙

以下、感想と考察

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アラタの心境を変えた真珠との触れ合い

前回、リアルなアラタを目の当たりにしたことで真珠の心境に変化があったのではないかと考察したけど、真珠と直に触れ合って心境が変わったのはアラタも同じだったのだろう。

アラタからしても今まで真珠は面会室でアクリル板越しに会うだけの存在。手紙のやり取りをしたり、彼女と結婚したことで実生活に支障が出つつあっても、どこか現実味の無い存在だったのかもしれない。

でも、飛び込んできた真珠を抱きとめ、その温かい頬に触れた。藤田や桜井検事が語るような冷血な怪物ではなく、温みのある一人の女性として認識できた。もちろん、冷血な部分も弱さと温みを持つ部分、どちらも真珠の一面なのだろうけど、この出来事をきっかけにアラタは真珠のことを”守るべき女房”として見る様になったのだ。

卓斗に傍聴に来ないようにいう理由も開廷前は『卓斗のため。子供が真珠に関わるな』だったのが、『俺の女に手を出すな』に変わったのがとてもいいし、説得力がある。アラタは自身が真珠を愛していること、男として卓斗に嫉妬していたことをちゃんと認めたのだ。

…そう考えると、この控訴審三日目は本当に濃かったな。アラタの心境が一気に変わった1日だと言える。

やっと登場したアラタの実母、綾子

そして、ここに来てやっとアラタの実母、綾子が初登場した。今まで回想でぼんやりと描かれたり、アラタや所長からなんとなく人柄を語られることはあったけど、正直どんな人なのかよくわからなかった。

回想にあるようなウェーブ掛かった長髪にギャルっぽい恰好の人をイメージしていたので、ショートカットに眼鏡にワンピースといった知的で洗練された貴婦人風の出で立ちで登場したことに驚き。でも、口を開くとアラタ以上に柄が悪いというギャップ。まあ、大手金融機関の役付き男性と再婚したということだし、そういった男性を捕まえるため、あるいは捕まえたことで変わったのだろうな。…再婚先の家庭では上品な女性を演じているのだろうか。

それにしても、アラタに似ている綾子。がっつり男顔のアラタに似ているのに美人っていうのが本当に凄いよな(画力が)。再婚離婚を繰り返したことについてアラタのためだったと堂々と言い切るところがいっそ潔いけど、同時に内心ではアラタに寂しい思いをさせたことに罪悪感を抱いているのがちょっと切ない。

綾子の環についての洞察について…やはり歯の放置とツナ缶ライスは真珠が本物の真珠であるように偽装するためか

そして、アラタが綾子に会った理由は、”母親”の立場から真珠の母、環の行動原理を読み解いてもらうためであった。

同じ男にモテる美人でありながら全然タイプが違う綾子と環。でも、綾子はアラタ同様洞察力に優れ、アラタが思いもよらなかったことを言い出す。

それは『環が良い母親を装うために、あえて真珠の歯の治療を放置し、肥え太らせた』というものだった。残念ながら47話はここで終わってしまうのだが、綾子がそう語った根拠は一体何なのだろうか…。

ところで、私は以前から真珠の正体は『環が真珠の後に産んだもう一人の娘。つまり本物の真珠の妹にあたり、無戸籍児』と推測している。そして、『本物の真珠は既に夭折しており、環はもう一人の娘を真珠であるように偽装するために歯の治療を放置し、体を大きくするためにツナ缶ライスで肥え太らせた』と考えている。

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綾子が語った”いい母親ぶる”というのは、もしかしたら、『虫歯だらけで太ったどうしようもない娘を世話している』というある種の代理ミュンハウゼン症候群的な意味だったのかもしれないが、私には『本当は既にこの世にいない品川真珠をちゃんと養育している様に見せるため』という風に私は捉えてしまう。

果たして、次回綾子は何を語るのか…。

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