真珠の指示を受けて真珠の母、環の故郷にある裏山に向かったアラタは、そこでトランクごと埋められた乳児の遺体を発見する。その遺体こそ本当の“品川真珠”であり、今の真珠は夭折した”品川真珠”の代わりとして品川環に産み育てられた妹であった。現在21歳とされている真珠は無戸籍児で本当の生年月日は不明。事件当時、そして現在も未成年である可能性が高くその事こそが控訴審における真珠の本当の切り札だったのだ。
衝撃的な真実を前にアラタは打ちひしがれると同時に真珠を哀れな少女としか思えなくなり、以前の様に対等な一人の女性として見れなくなってしまう。そして、その事を見抜いた真珠は絶望し、せめてアラタに殺してほしいと望みだす。だが、アラタは宮前に相談する中で、『真珠の中にはまだ生きる希望が残っており、そんな風にしぶとく生きようとする真珠のことが好きだ』と気付くのであった…。
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真珠の正体についての個人的な推測・考察記事
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Contents
あらすじとネタバレ
桃山と所長にも全てを打ち明けたアラタ。さらにアラタは桃山に自身が真珠に惹かれていることについて『俺は真珠に惚れているのか』と相談する
「パールが、実は未成年とはね…!!」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 4/27
「所長めっちゃ驚いてたね!」
カレー屋でナンを頬彫りながらそう言う桃山。アラタは結局、大高所長と桃山に全てを打ち明け、児童相談所として真珠の力になりたいと申し入れたのだ。
だが、アラタはナンを口にしながら『おっさん、うちで真珠の面倒を見るのにグチグチ言いやがって』と不満を漏らす。
大高所長は『18歳、19歳の場合でも本人の希望があれば児童相談所の支援を受けられる場合がある』と受け入れたものの、『既に結婚しているから女性支援の管轄になる可能性がある、それにしても訳あり結婚だ』と頭を悩ませ、とりあえず真珠が未成年だと確定するまではアラタが担当するようにと言ったのだ。
アラタはナンをお代わりする桃山に明日再度石川県七尾市に向かうことを告げ、『話は変わるんだけど』と突然こんなことを言い出す。
「俺と桃ちゃんって…やっぱ「ナシ」?」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 6/27
突然の言葉に桃山は呆気に取られるものの、すぐに『絶対なし、ありえない!!』と全力で拒否する。そんな桃山にアラタはここ3年間は”キレイな体”であって、桃山が想っているような女にだらしない男ではないとアピールするが、『そういうことを言って好青年のつもりなのが嫌』『根本的に価値観が合わない』『あんたと付き合うくらいなら離島にいった彼氏のところまでクロールで行く』とまで言われてしまう。
長い事桃山のことを『好みのタイプ』だと公言していたアラタは桃山のあまりの言い様にショックを受けるが『マジで脈なしなら相談しようかな』と今度はこう尋ねた。
「桃ちゃんからの印象でいいんだけど、」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 7-8/27
「俺、やっぱ真珠に惚れてるように、見える?」
アラタの言葉にまたしても驚く桃山。しかし、今度は嬉しそうに笑って、『そんな風に聞くってことは惚れちゃったのね』『見える、見えるとも』と言う。
だが、アラタは困惑しながら『真珠の内部に煮えたぎったような怒りや目的に対する執着とか、すごい強いエネルギーの様なものに惹かれている自信はあるけれど…』『それは顔や声がカワイイと感じるような”やりたい”という気持ちではない』と、真珠に対して性的な欲求で惹かれているわけではないことを明かした。
すると桃山は『それはルッキズムを離れて純粋に人として惹かれているということ』と肯定する様に言い出す。桃山が自身を見る眼差しが、つい最近真珠への好意を口にした時に宮前が向けてきた嬉しそうに輝く瞳と同じことに気付いたアラタは『宮前みたいな目でこっちを見ないで!』と顔を逸らすが、桃山はアラタを指さして堂々とこう言い切るのであった。
「ズバリそれは「愛だよ」、キミ!」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 11/27
思わず、『ええ…』と言って顔を逸らしてしまうアラタ。桃山は『それは恋とか肉欲を飛び越えたところにある”純愛”!!』と続け、やはり宮前からも同じようなことを言われていたアラタは『だから、宮前と同じことを言うな!』と叫ぶ。
それを聞いた桃山は『宮前さんは顔だけでなくて心もあたしのタイプなのかも』とはしゃいで見せるが、うんざりした顔のアラタに『真面目な話、あんた最近はパール(真珠)の話しかしていないよ?』と諭すように言う。
アラタを必死にさせ、悩ませ、焦らせ、熱くさせるのはこの世にたった一人、真珠だけだと。
「―そう、「運命の人」」
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「いくら待っても、やってくるとは限らない人だよ…」
真面目な表情で桃山の言葉を受け止めたアラタ。しかし、こう返すのであった。
「運命…とかじゃないっスよ。」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 14/27
「俺…児相じゃないスか…?」
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児童相談所職員という立場から”子供”である真珠を女性として愛することが出来ないというアラタ。すると、そんなアラタに桃山は『無理やり気持ちを抑え込もうとしているのではないか』と指摘し…
そして、アラタは例え話を始める。
例えば、もしアラタが教師で、プライベートで街で面白い女の子(真珠)と出会い、少しの間交流し、「いいな」と心を惹かれることがあったとして。しかし、実は彼女はアラタの学校の生徒で、後日学内で制服姿の彼女と出くわしてしてしまったら…。
「ね?お終い。」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 15/27
哀しい笑いを浮かべてそう言うアラタ。
それを聞いた桃山は『立場があるのは分かるけど、真珠はずっと未成年というわけではない』と反論した。だが、アラタは『真珠は俺にとって永久に保護児童に変わってしまった』と言う。当初は真珠に対して『死刑になれ』『この怪物め』と思っていたアラタ。しかし、例外はあるものの少年法は原則的に罪を一等下げるものであり、今では『絶対に真珠を死刑にさせない』『”子供”は殺させない』と思うようにになってしまったと。
だが、そんなアラタに桃山はこう言う。
「ムリやり、気持ちをおさえ込もうとしてんじゃないの?」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 17/27
桃山の言葉に一瞬沈黙したアラタ。しかし、『”子供”じゃなくてもう一度”怪物”と思えって言うの?』と困ったように笑う。すると、桃山は意を決したように言うのだ。
「児相でなくなれば、ただの男と女でしょ?」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 18/27
ハッとするアラタに桃山は寂しそうに笑いながら続けるのであった。
「ずっといてほしかったけど。」
「いいんだよ、辞めても。」
「幸せになるためなら、いいんだよ。」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 20/27
新幹線で児童相談所を辞める事について考えるアラタ。しかし、『自分はまだ一人も子供を救えていない』と思い苦悩する。
翌日。本物の品川真珠の遺体の髪の毛を入手するべく再び真珠の母、環の故郷である石川県七尾市に向かうため新幹線に乗り込んだアラタ。ぼんやりと車窓の外の景色を眺めながら、昨日桃山が提示した”児童相談所を辞める”という選択肢について考えていた。
それも悪くないと疲れた笑みを浮かべたアラタ。熱心に仕事に取り組む一方、その分しんどさも感じていたアラタは元々辞めたいと思ってはおり、ずっと『一人でいいから誰かを確実に救えたら辞めよう』とずっと考えていたのだ。
だが、次の瞬間アラタの脳裏に今まで見て来た虐待で傷ついた子供達の姿が蘇り、自分に問うのだ。
……一人でも、救えたのか―俺は?
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 22-23/27
それどころか、たくさん見逃してきたんじゃねえのか?
―今もどこかで虐待されてる誰かを!!
それは何も真珠だけではない。今もどこかで虐待されている誰かを見逃している…そう思い出したアラタは苦悩の表情を浮かべて俯いてしまうのであった…。
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宮前から真珠が一旦家裁送致になる可能性が高いと聞いたアラタは『今すぐ真珠の気持ちへの答えを出す必要はない』とホッとするも、初めての面会時に真珠が『拘置所から出るね』と堂々と言い切った様子を思い出し…
その時、アラタのスマートフォンに弁護士の宮前からメッセージが届いた。
アラタから真珠の正体を聞かされた宮前は起訴後に未成年と判明した裁判例を探していたが、それが見つかったというのだ。未成年である可能性があれば本来は家裁に送らねばならず、いきなり地方裁判所で起訴はできなかったようで、恐らく真珠の一審の死刑判決はなかったものとなり、一旦家裁送致になるのではないかと言う宮前。しかし、『光が見えて来た』と喜ぶ一方、『重大な事件なので検察の判断次第では成人扱いで再起訴される可能性が高い』とも言う。
宮前のメッセージを読み終えたアラタは考えた。次が家裁になるにしろ、一般の法廷になるにしろ、どちらにしろ真珠が外に出てこれるのは何年も先になるはずだ。
だから、アラタに殺してほしいという真珠の気持ちに対して今すぐ答えを出す必要はない…そう思うと少し安心するアラタ。
出てくるのは、何年も先―
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 25/27
だが次の瞬間、アラタは花嫁姿の真珠がアクリル板を突き破ってやって来る様子を思い浮かべた。それは、初めて真珠と面会したとき、アラタが幻視したものだった。
「出るね。」
夏目アラタの結婚56 乃木坂太郎 26/27
そう言って笑った真珠の口元はどこかピエロの様で、アラタは再び戦慄するのであった…。
以下、感想と考察
扉絵はいつものウェディングドレス姿の真珠がアクリル板にヒビを入れている様子。やっぱり可愛いな真珠。
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ラスト1ページのイラストについて
アクリル板を突き破ろうとするウェディングドレス姿の真珠の幻覚。これ、2話目とほぼ同じ構図なのだけど、今回は花嫁真珠の口元に焦点が当たって、花嫁姿なのに口元の化粧がピエロのそれになっていることが分かった。よくよく2話のイラストを見返すと、こちらも口角の上まで口紅が塗られてピエロ風になっている!細かい、気付かなかった…!!
児童相談所職員を辞めればアラタは真珠のことを再び一人の女性として見ることができるのか
一度は”哀れな子羊”としてしか真珠を見れないと、真珠を一人の女性として見れなくなったことについて苦悩していたアラタ。
でも、前回の宮前との対話や、今回の桃山との対話の中で何だかんだと真珠のことを愛していることを自覚しつつある。本物の品川真珠の遺体を見た直後は色々と打ちひしがれて”愛”とか言ってる場合じゃなかったというのはあるのだろうけど、結局はただ、『児童相談所職員として、哀れな境遇にある子供と恋愛や結婚をしてはいけない』という建前に苦しんでいるというだけなのだろう。アラタが『教師と生徒』の例を出したことがそれをよく物語っているのではないか。
そんな中、桃山が言った『児相でなくなれば、ただの男と女でしょ』というのはごもっともな指摘だろう。元々、30代のアラタ(具体的な年齢は明言されていないけど30半ば位か?)と作中序盤で戸籍上は21歳だった真珠は既に結構歳が離れているし、個人的に今さら真珠の年齢が2歳ほど下だったからなんだというのだと思ってしまう…。どのみち数年経てばすぐに成人するわけだし。
まあ、そこがアラタの児童相談所職員としてのある種のこだわりなのだろうけど。一度”守るべき子供”というフィルターを通して見てしまうと、以降もそうとしてしか見れないというのもあるのかもしれない。アラタが出した『教師と生徒』の例で言うならば、元生徒が卒業した後に交際したり結婚する教師がいる一方で、生徒だった相手のことは卒業後何年たっても恋愛対象としては見れないという人もいるだろうし。
だから『児相の魂が入っている』と豪語するアラタが単純に児相を辞めたらそれだけで真珠のことを一人の女性として見れるようになるかというとどうなのだろうかとも思わなくはない。
以前の感想に書いたように、真珠が自らの力で堂々と無罪判決を勝ち取る”怪物”ぶりをアラタに見せつければ、再びアラタから以前のような”人生の好敵手”として見てもらえるのではないだろうか。
あるいは、アラタが強制的に児童相談所を辞めさせられる展開が来るのではないだろうか
しかし、とても不安なのはこの先(次の話くらいで)、アラタが逮捕・起訴されて児童相談所を辞めざるをえなくなるのではないかと言うこと。
前回の考察記事でも書いたが、元々アラタは桜井検事に『真珠の指示で証拠を隠滅したり捏造したら起訴する』『公務員なのだから自分の立場を大事にするように』と警告されている。桜井検事はとっくに『真珠がアラタを使って無罪に繋がる真実を世間に露呈させようとしている』というのを分かっており、アラタの行動を警戒しているのだ。
だから、もうすでにアラタが一度石川県七尾市に行ったことが把握されていて、今回また七尾市に向かう途中で検察に尾行、あるいは待ち伏せされていて、墓を暴いたところで逮捕されてもおかしくないのだ。
…というか、そういう展開しか予想できない…。(基本ネガティブな方向にしか想像できないからというのもあるが)
だから、アラタが大高所長に迷惑をかけることを考えて自ら退職する…という可能性もあるのではないか。あるいは、アラタは『まだ一人も救えていないから!』と抗うのだろうか。
アラタだったらどっちを選んでもおかしくないな。
とりあえず、次回の話が楽しみでもあるけど、怖い…。
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