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草紙(物語)を愛してやまず、日がな妄想に耽る、平安腐女子の姫、夢子。そしてそんな彼女を結婚させるためにやって来た舎人小犬丸。色んな物語を妄想したり、謎の露出狂に遭遇したり、日々あさはかな(馬鹿な)ことを繰り広げていた夢子だったが、皆から『結婚』『仕事(宮仕え)』等の進路決定を迫られる。一度は『このままでいたい』と引きこもる彼女であったが、平民の草紙屋で友人(腐女子仲間)のくれ葉から『宮中で流行っている最新の草紙を横流ししてほしい』と言われ、宮仕えを決意。そして夢子を結婚させるということを諦めない小犬丸もまた『宮中でいい出会いがあるかもしれない』と宮仕えする夢子について行くのであった。
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Contents
以下、各話ネタバレ、感想・考察
第12話 女郎花(をみなえし)~時の権力者、藤原道長は夢子、瑠璃、右近の平安腐女子達と対面して…!?
左京、高松殿に住まう時の権力者、左大臣、藤原道長。鍛え上げた堂々とした体躯に自信にあふれる表情を浮かべ、気ままに枇杷殿(びわどの…天皇達が住まう内裏)に赴き、新しく入った女官達の質を見定めに行く。
道長が来たと知り、色めき立つ女官達。女官教育係の山科によると新人の教育を兼ねて万葉集の勉強会をするという。道長は早速その様子を覗き見ることにする。
一方、研修の教室の奥では夢子と、宮仕えを通して出来た友人、瑠璃(小柄で幼い)と右近(関西弁でがっしりした体格)が万葉集の大伴家持と大伴池主の和歌のやりとりについて妄想を繰り広げていた。夢子は宮仕えを始めて心の底から良かったと思っていた。同じ趣味を持つ、瑠璃と右近という友人を得ることが出来たのだ。
妄想で盛り上がる三人を見て、『あの三人はうつけなのか』と山科に尋ねる道長。しかし山科は『三人とも家柄は良く、教養はある』『そして夢子は馬内侍(実子)の異母妹』と聞いた道長は実子と関係を持っていることもあり、三人に興味を持つ。
妄想で盛り上がる三人の談議に身分を明かすことなく加わる道長。道長は三人娘を観察して『男に縁がないあまりに、妄想にふける様になったのだ』と結論付ける。そして、自分の魅力で三人の『女』を目覚めさせようとして、『自分を見てどう感じるか』を言わせてみる。
しかし、三人からは『自信家であるようで心が折れやすい』『常に自分を鼓舞している』『筋トレして自己陶酔するタイプ』等、言い当てられたくない本質を次々と言い当てられていき呆然とする道長。そして、藤原道長の身分を理解している小犬丸はその様子を見て、ただただ事態の恐ろしさに真っ青になるのであった。
宮仕え編、スタート。時の権力者、藤原道長だったり、これまた強烈な平安腐女子の瑠璃と右近といった新キャラが登場。波乱の予感である。
しかし、万葉集の奈良時代…男性同士が恋人の様に和歌を詠み合ったのは、道長が言うように『それが風雅とされ流行っていただけ』なのか、それとも本当に恋しあっていたのか…真相は誰にも分からないのである。
第13話 稲葉(いなば)~今度は女装して夢子達に接近した道長、結果…
夢子、瑠璃、右近の腐女子三人娘に自身の本質を見抜かれた衝撃を引きずっている時の権力者、左大臣、藤原道長。再び夢子達のいる、枇杷殿に行くことを決心する。
女官達の新人研修の現場では、研修生達が待遇に対して不満を口にしており、教官の山科も内心彼女達に対して苛立ちを持っていた。そんな中、腐女子三人組達は本日教材として使われる『古事記』を心底楽しみにしているのだ。
『皆で読み解いて妄想するのは楽しいこと』そう言って瑠璃は横にいた女性に同意を求める。しかし、それは女装して研修に潜り込んでいた道長であった。瑠璃に名を尋ねられた道長はとっさに飼い猫の名前である『いなば』を名乗る。
かくして、授業が始まり、古事記の『倭建(ヤマトタケル)、熊曾(くまそ)を伐つ』の下りが読み上げられる。兄を平然と手にかける倭建に『支離滅裂キャラ』『しかし育つ気しかしない』と各々妄想を爆発させる三人組、そしてそんな彼女等を観察する、道長こといなば。またもや瑠璃に意見を求められたため、慌てて顔を隠すのであったが、瑠璃はそんな道長に『深窓の令嬢だったんだ』『お花の様な気品がある』と言う。そして、道長はそんな瑠璃の言葉に奇妙な胸の高鳴りを感じるのであった。
そして、物語は倭建が女装して美少女に扮し、クマソタケル兄弟を殺害する下りに入る。『我が国初の女装男子』と盛り上がる三人娘の傍ら、道長は女装というものの話題性の高さに驚くと同時に不思議な欲求が抑えきれなくなるのを感じ、慌ててその場を撤退するのであった。
部屋から飛び出した道長は『女装した自分を見て欲しい』という顕示欲を持った自分に驚きと恐ろしさを感じていた。しかし、そこに教材の草子を配給したくれ葉がやってきて、女装した道長に言うのであった。『女装のハウツー本、献上致します。左大臣様』いなばの正体を女装した道長だと見抜いていたくれ葉。かくして、道長は女装に目覚めることとなったのであった。
歴史的人物、藤原道長が女装に目覚めるという衝撃展開。
しかし、古事記のこの下りは中々衝撃的。私自身、幼稚園の時、何故か祖母に倭建命の本(どう見ても幼稚園児向きではないもの)を与えられて、よく意味が分からないながらも、この女装からのくまそ兄弟殺害の挿し絵(とてもリアル)を見てかなりビビった記憶がある…。
第14話 合魂(ごうこん)~小犬丸の考えた奇策
夢子が内裏で宮仕えの研修を受ける中、一人夢子の屋敷に戻り掃除にいそしむ小犬丸のもとに、藤原道信の三男で、夢子に漠然とした好意を抱いている顕信がやってくる。小犬丸は顕信に『結婚に対して母性渇望(マザコン)的な条件をやめない限り夢子はなびくことはない』と冷たく言い放ち、顕信との成婚は諦めて、次の作戦を考えていると告げる。
その晩、瑠璃と右近を招いて久しぶりに自宅に戻った夢子。しかし、小犬丸はその日が『初亥の日』で『亥の子餅』を食べる習慣があることにこじつけて、男性客を三人招いていた。そう、瑠璃や右近を巻き込んで、小犬丸は合コン的なものを企画したのであった。
①オタク寄り草食系ボンボンの藤原某②がり勉オクテの医者の家系の丹波某③盛り上げ要員ウェーイ系の源某…という三人を取りそろえた小犬丸。身分が高すぎると妻の責務が重くなるため、あえて『中級』にしたという。そして、本命は②のがり勉オクテで、女性をよく分かっていない所が狙い目でコントロールしやすいと考えたのだ。
意図が分からず乗り気でない三人組にそれらしいことを言って、御簾越しに男性達と対面させ合コンをスタートさせる小犬丸。小犬丸は御簾を少しだけ上げ、亥の子餅を食べる女性陣の手元だけを男性に見せ、彼らの妄想力を掻き立てる。
そして、夢子が『亥の子餅』にまつわる『源氏物語』の話を始め、それに①の草食系ボンボンが夢子が言わんとしたことを先に語る。話が合うのではと期待した小犬丸。しかし、その期待に反して夢子達は『さいまぐった(話を遮ってその先を言われた)』と一気に不機嫌になり、①番草食系ボンボンに『一句読み』を強要するなど、先行きが怪しくなっていく。焦る小犬丸。
その時、②番のオクテ医者が『脈診(脈を測って健康を診ること)』を申し出始め、まさかのボディタッチ作戦に小犬丸は驚きつつも『夢子達が女として目覚めるきっかけになるかもしれない』と喜ぶのであった。
しかし、②の医者がもちいた方法は『糸脈(いとみゃく)』といった、糸を使って直接肌に触れないで脈を測る方法であった。『あり得ない位健康』という診断を下された三人組は大満足して、その場はお開きに。小犬丸は②番オクテ医者の空気の読めなさに怒るのであった。
『竹取物語』に着想を得た御魂合わせ(みたまあわせ)…略して合魂(ごうこん)というのは、さすがに作者の創作です。勘違いする人は少ないだろうけど。しかし、平安時代の貴族の恋愛は最初は御簾越し、恋文越し等、顔が分からないところから始まるというのが、現代との大きな違い。見た目を重視しなかったというよりは、相手の様子を想像する過程を楽しんだのだろうけど、源氏物語の末摘花(すえつむはな)みたいなことがあるので、やっぱりギャンブルだよなー…なんて思ってしまうのである。
第15話 蹴鞠(けまり)~意外と激しい平安スポーツ、蹴鞠。そして意外な一面を見せたくれ葉
宮中、枇杷殿で翌日の鞠回(蹴鞠の試合)を楽しみにする女官達。くれ葉はそんな彼女たちにガイドブックとして草紙を売ろうとするが『平民の行商が卑しい』と一蹴されてしまう。
一方、その夜、夢子達はくれ葉のガイドブックを手にして鞠回にまつわる話(中大兄皇子と中臣鎌足の出会いが蹴鞠であること)で盛り上がる。
そこに顕信が弟の能信を連れてやってくる。スポーツとしての蹴鞠について語る顕信は、明日の鞠回にやってくる鞠足団(まりあしだん…蹴鞠のチーム)に自分達も挑むことを告げる。しかし、そんな顕信と能信にくれ葉は『明日やってくる新結成の鞠足団はたちが悪いという噂がある』と忠告するのであった。
やってきた鞠足団、蹴鞠男(けまりお)は乙女ゲーのキャラクターの様なイケメン5人で構成されており、女性達の喝采を浴びる。しかし、挑戦してきた顕信に対して、『左大臣の息子だが妾腹』という嫉妬と侮りから、蹴鞠男の5人は悪意を持って卑怯な手を繰り返し、暴行を重ねる。
以前の試合で乱闘騒ぎを起こしてしまったため、試合への参加資格を失っており、見ている事しか出来ない、顕信の弟、能信は蹴鞠男達の横暴に怒り、『殴り殺す』と出て行こうとするが、それを諫めたくれ葉は『鞠のことは鞠で解決するしかない』と言い、自ら蹴鞠男に挑戦していくのであった。
平民でかつ女性でありながら蹴鞠男達に挑むくれ葉に、夢子達を始めとする観客の貴族たちはどよめく。そして、蹴鞠男達もくれ葉を見下し『面白い、ヤリがいがある』『平民なら殺してしまっても良い』と全力で潰しにかかる。
しかし、予想以上に高いくれ葉の蹴鞠のスキルに圧倒され、蹴聖レベルの必殺技『越頭飛翔蹴』を放たれた蹴鞠男達は、くれ葉に完敗してしまうのであった。
『蹴鞠は自分の商売の原点』…そう語るくれ葉。身分の低い彼女は蹴鞠を通して貴族たちと交流を図り、客を増やしていっていたのだ。『強く美しい草紙屋』『眩しく凛々しい』と今までの態度を一変させ、男女問わずくれ葉に賞賛の眼差しを向ける貴族の観客たち。
一方、皆から注目を集め始めたくれ葉の様子に『くれ葉は自分だけのものなのに』と嫉妬をむき出しにして泣いてしまう夢子。くれ葉はそんな夢子に『身分違いの百合もの』の草紙を売りつけ、その商魂の逞しさに瑠璃と右近は感嘆するのであった。
蹴鞠のルールについて分かりやすく説明されているうえ、乙女ゲーへの風刺があったり、くれ葉が格好良かったり、嫉妬する夢子が見れたりと色々と楽しい回である。
第16話 追儺(ついな)~大晦日の夜、切ない鬼の片思いに一肌脱ぐ夢子達
大晦日、夜のとばりが降りる頃、藤原道長は自ら追儺(ついな…鬼を払う儀式)に参加する舎人(とねり…召使)達に声を掛けて回り、周囲から尊敬のまなざしを集めていた。今年、追儺で方相氏(ほうそうし…鬼を払う異形の神)の役をするのは、弥太郎という大男であった。
その頃、仕事を終えて早速草紙を読みふけろうとしていた、夢子、瑠璃、右近、そしてそんな彼女たちを叱りつけていた小犬丸。しかし、几帳の陰から不気味な泣き声が聞こえることに気付く。几帳の陰にはマッチョで露出の激しい鬼が、何故か涙を流しながら潜んでいたのである。
共感力が異常に高い、右近が鬼の話を聞き取り、皆に事情を説明する。鬼は都に住みつく悪鬼だが、以前自身を鬼と気付かず気さくに優しい声掛けをしてきた弥太郎に惚れてしまった。そして、弥太郎が方相氏の役に選ばれたことを知った鬼は、今日の追儺の儀式で弥太郎が自身を祓えば出世できると考えているという。弥太郎への想いと、祓われることへの恐怖と迷いから涙を流しているという鬼。
鬼の話を聞いた夢子達は当然、ときめく。『鬼なんかに告白されて誰が嬉しいものか』という小犬丸を黙らせ、鬼が弥太郎に気持ちを伝えられるよう、一肌脱ぐことを決めるのであった。
一方、その頃、道長は追儺の儀式が始まるまでの間…と夢子の異母姉、馬内侍の実子の元へお忍びでやってきていた。日々の天下人としての責務の重圧、ストレスを解き放つため、実子にめちゃくちゃに乱して欲しいと懇願する道長。早速、実子の前で衣服を脱ぐのであった。
鬼を連れて追儺が始まるまでの時間をつぶしていた弥太郎の元にやってきた夢子達。鬼を真正面で見ても『追儺に鬼の役なんてあったっけ?』という弥太郎の天然ぶりに呆れる。しかし、弥太郎はすぐに鬼が以前声を掛けた相手であるということを思い出し、相手が本物の鬼だと分かっても怯えず受け入れる度量の広さを見せた。後は大丈夫…そう判断した夢子達はその場を立ち去るのであった。
そして実子の元で責められていた道長。しかし、実子の元に別の男が訪ねてくる。『自分は天下人だから誰にも文句を言わせない』とふんぞり返る道長だが、『彼氏に捨てられたくないから出ていけ』と実子に裸の状態で外へ追い出されてしまうのであった。
鬼と語り合っていた弥太郎は出世のために自身を祓えと言う鬼に対して、『方相氏をするより鬼と話す経験の方がすごい』と答え、一緒に飲もうと誘う。そして、方相氏の役を誰かに頼まなくてはと考えるが、そこに全裸で走る道長がやってきて…。
追儺の儀式、顕信と能信の兄弟は方相氏の後ろを歩きながら、父、道長の姿が見えないことに訝りながらも、『鬼なんているわけない』と語り合う。
一方、夢子達3人は夜空を見上げながら弥太郎と鬼のことを考える。彼らが今後どうなるかは分からないが、『恋をしたらあんなに健気で一生懸命になるのか』と少し眩しく感じるのであった。
現代の節分の行事も追儺の派生形の一つ。それにしても道長の扱い…。
第17話 物怨じ(ものゑじ)~嫉妬から嫌がらせ、イジメを受けた夢子、瑠璃、右近は…
何かと夢子の元を尋ねる顕信・能信兄弟。しかし、その様子に夢子達と研修を受けている若い女官達は憎しみの眼差しを向けるのであった。
ある朝、お勤めに出かけようと部屋を出た夢子達、しかし、廊下に出ると『箱に入れる大きいもの(つまり大便)』が落ちているのを発見する。『イジメだ』と指摘したのは能信。源氏物語の序盤、光源氏の母、桐壺の更衣が受けたようなイジメ・嫌がらせを夢子達が受けているのだと言うのだ。『夢子達と自分達兄弟が出来ていると誤解され、嫉妬を受けたのだろう』と心外そうに言う能信。そして今度は小犬丸が廊下に夢子達を誹謗中傷する紙がバラまいてあるのを発見する。
どの様にしてイジメ、嫌がらせを止めるか話し合う、夢子達と顕信・能信兄弟。ふと、小犬丸は『そういえば、顕信はともかく、何故能信も夢子達の所へよってくるのだろう』と疑問を持つのであった。
まず、瑠璃の発案で、教育係である山科の元へ相談しに行くことにした夢子達。しかし、山科は穏やかで優しい態度で三人の話を聞くも、内心『面倒ごとを持ち込まれた』と考え、終始論点をずらし、的外れな説教をするだけで全く力にならなかった。
そして、顕信のアドバイスで『笑顔や挨拶を徹底して、善人光線を放ちいじめっ子の悪意を萎えさせよう』という作戦を実行してみる夢子、瑠璃、右近。しかし、三人に悪意を向けるものは三人が思っていた以上に多く、挨拶や笑顔は無視され、『ふてぶてしい』『懲りていない』等の悪口が囁かれる。
気が強い夢子と右近とは違い、冷たい視線に泣き出しそうになってしまう瑠璃。すると、そんな瑠璃にたまたま潜入していたいなば(女装した道長)が今までと同じ笑顔を向け、瑠璃はそのことに非常に救われるのであった。
しかし、夢子達への嫌がらせは激化していく。ある日、夢子達が部屋に戻るとなんと何よりも大切な草紙が破り捨てられていたのだ。涙を流す夢子。しかし、泣きながら同時にこうも言うのであった。
「うむ、やっとわかったぞ。」「桐壺の更衣や落窪の君。物語の中でいじめられた人々がどんなにつらかったか」
あさはかな夢みし2巻 瀧波ユカリ 101/163
「 これでまろはもっと深く物語を愛せる 」
しかし、犯人はあっさり見つかる。くれ葉が夢子達の草紙を盗もうともした犯人達を捕まえたのだ。
『研修がきついうえ、女官はコネが無いと短期で切られるという噂があって不満だった』『夢子達は顕信、能信といった道長の子息と親しく、安泰そうでうらやましかった』そう述べ泣く嫌がらせの犯人の女達。処罰感情は特にないという夢子は『草紙に代わってお仕置きなり』と言ってあることを思いつくのだ。
その頃、瑠璃はいなばを探し出し、彼女に語り掛ける。『やっぱりいなば殿はキレイな子だ』という瑠璃の言葉にいなば(女装した道長)はただただ照れるのであった。
一方、いじめの犯人達は、夢子に命じられて、破ってダメにした草紙を筆写させられていた。『草紙の筆写だけで許すなんて』と夢子の甘さに不満げな能信。しかし、彼女たちが筆写させられている草紙の中身は実はBL的なものであり、彼女達もまた、そっちの方向に目覚めさせられつつあったのだ…。そして、小犬丸は能信が夢子達の元に通うのはくれ葉目当てであることに気付くのであった。
今回の夢子のセリフが割と好き。自身の経験を通して、文学の見え方が変わって来るって結構あると思う。
そしてナイス、いなば。こういう時に普段と変わらない態度で接してくれる人がいるとかなり救われる。そして、女子校出身なのでよく知っている。BLの感染力の高さはシャレにならない。
第18話 暗部屋(くらべや)~一条天皇の妻、尊子に使えることとなった夢子達
夢子達の新人研修も終わりが近づいてきた。多くの女官達が、一条天皇の寵愛を受ける中宮、彰子に使えることを夢見ていた(ちなみにかの有名な紫式部も彰子に使える女房)。しかし、もはや内心の下品さを隠さなくなっていた教育係の山科は彰子に使えるのは夢のまた夢であると、若い女官達の夢を粉砕するのであった。
そして、夢子、瑠璃、右近は彰子と同じ一条天皇の妻でありながら、さほど寵愛も権力もない女御、藤原尊子付の女房に任命される。結婚する気もないが、さほど真面目に働く気力もない三人。『聡明な妃、定子と才気の女房、清少納言』『稀代の色男、光源氏と有能な家来、惟光』のような『主従関係萌え』の良さを語るものの、妄想と現実は違うと全くやる気を見せない三人に呆れながらも、小犬丸は『帝の妃に付く女房になれば、男たちの目に留まることも増え、出会いが広がる』と計算するのであった。
藤原尊子…一条天皇の5人の妃のうちの一人でありながら、一番存在感が無く、誰とも競わず暗い部屋で12年間、来ない帝を待ち続けていることから『暗部屋の女御』という通り名がつけられていた。部屋の暗さに悪態をつきながら尊子の部屋を尋ねた夢子達。
そんな彼女たちを蝋燭片手で出迎えた尊子は、年配の女房、ばあやのみを従えて『女房なんていらない』『私は誰も必要としていない』『ばあやをのぞいて』といきなり言い放つ。
いきなり『主従関係の絆の強さ』を見せつけられた夢子達は驚嘆しながらも早速帰ろうとする。しかし、『素直になれない強がりのツンデレ』の片鱗を見せつけた尊子の態度に、共感力の高い右近が早速引き付けられ、尊子に忠誠を誓う。
瑠璃は『高い給与、しっかりした福利厚生』『定期的な休暇』を保障するなら女房になると尊子に言う。尊子はそれに対し、『給料面は努力するが休暇の条件は飲めない』と答えたため、『ありえない』と文句を言う瑠璃。しかし、『休暇を取られるともう、戻ってこないのではないかと不安になる』『やって来ない夫を待ちながら、そなた達のことまで待ちたくない』と寂しさを吐露した尊子の態度に瑠璃もまた胸を撃ち抜かれてしまうのであった。
尊子に萌えて惚れ抜いてしまった右近と瑠璃を見て、『あれはもう結婚できる人間の目ではない』と戦慄する小犬丸。尊子を『強がって素直になれない自分』を演出するのが上手い『かまってちゃん』であると夢子に説明し、ともに逃げようとするが、今度は素直に『そなたにもいてほしい』と告げた尊子に夢子は心打たれてしまい、主従の沼に飛び込んでしまうのであった。
これまた、強烈な新キャラ登場。真正の『素直になれない強がりのツンデレ』なお妃様である尊子。なお、平安時代の女性名は読みがはっきりしていないため、尊子の場合、「そんし」等音読みするのが一般的であるが、本作では作者である瀧波ユカリが「かわいいから」という理由で「たかこ」としている。
第19話 雨夜の品定め(あまよのしなさだめ)~男達に興味を持たれる夢子達と妃、尊子のこじらせた男女観・恋愛観
一条天皇の女御、藤原尊子に使えることとなった夢子、瑠璃、右近の三人は早速、暗部屋と呼ばれていた尊子の部屋の目張りを撤去し、光を入れる。見違える尊子の部屋であったが、貴族の男たちが興味本位で覗いてくるようになる。男達を棒で突き、撃退しながら事情を説明するばあや。尊子は一条天皇の寵愛が薄いがため、『渇いた人妻』とみなした男達によるちょっかいが絶えなかったのだ。そして、それを避けるため、今まで部屋を暗くして引きこもっていたのだ。
事情を理解した夢子、瑠璃、右近は『やはり元通り暗い部屋で過ごすのが一番』と落ち込む尊子に『自分達がお守り申し上げます』と宣言。BL妄想を具現化する等の方法で、不逞の輩を追い払っていくのであった。しかし、そんな夢子達の姿は『けなげ』と評価され、徐々に貴族の男性達の間で『元・暗部屋の三女房』として噂される様になっていくのであった。
夢子達三人を目当てに男達が寄ってくるようになった元・暗部屋。暗闇暮らしが長く続いたため、非常に耳が良くなっていた尊子は男達の噂話に耳を立てる。『小さいのは可愛らしく、中くらいのは髪が美しく、背高は頼りがいがある』等の男達の下品な会話に呆れ、夢子達の身持ちの固さを信用している尊子だったが、『お高い皇妃より若い女房』『誘い続ければ絶対抱ける』『所詮女だからいずれは向こうから尻尾を振ってくる』といった男達の言葉に動揺してしまう。
忠誠心を試すような行動を取り始めた尊子の様子を訝る夢子達。『何か不安なことがあるのでは』と夢子は言い当てるが、タイミング悪く瑠璃が受け取った恋文を取り落してしまう。恋文を見て、瑠璃を叱りつけようとした尊子。しかし、つい余裕ぶってしまい、『恋文位で慌ててしまうなんて瑠璃って意外と純情ぞ』等と謎の『上からスイッチ』が入ってしまう。異様な空気になる元・暗部屋。丁度雨が降ってきたため、夢子は『源氏物語の雨夜の品定め(光源氏が若かりし頃、友人達と理想の女性について話し合う下り。その後の光源氏の行動に大きな影響を与える)』の様だと思う。
『お前たちが男で失敗しないためにも、大人の女として男について自分が教えてやろう』と語り始める尊子。そして、
『男というものは処女が好きだ』
『そして自分は夫である帝にすら処女を守り通している』
と誇らしげに言った尊子に『あんたが帝からお声が掛からない理由はそれだよ』と傍らで聞いていた小犬丸は戦慄する。
しかし、瑠璃、夢子は尊子のその言動から尊子が何を不安がっているのかを瞬時に理解し、『瑠璃は尊子様が大好きです』『まろどもはその手の失敗はなかりけり』と赤面する尊子に告げ安心させるのであった。
だが、右近の『この中で男を知っているのは自分だけなのか』という発言に再び暗部屋は騒然、朝まで女子会になるのであった。
色々とこじらせている妃、尊子。そして右近の衝撃発言。
第20話 隠形(おんぎょう)~注目を浴びたいがために、やらかしてしまういなばだったが…
相変わらず女装に嵌っていた藤原道長こと「いなば」。しかし、美しさに自信を持つ一方で、女房達の詰所に潜入しても誰もちやほやしてくれないことに不満を持つ。『それが女の世界』『自分の属するグループ以外の女子にそもそも関心が向かないもの』そう、いなばに教えたのはくれ葉だ。とりあえず三人娘のいる暗部屋で女子に混ざる練習をする様にアドバイスをしたくれ葉はいなばの後ろ姿を見て『まるで”隠形の男”の様だ』と考えるのであった。
今昔物語の『隠形の男』…鬼達に遭遇してしまい、唾を吐きかけられたことで姿が見えなくなってしまった男の話で盛り上がる暗部屋。いなばも瑠璃たちから感想を求められるも、『もっと女子っぽいトークをしたい』『いなば殿可愛い…みたいな会話に持ち込みたい』と苛立ち、一旦暗部屋を後にし、女房達の詰所に戻って来てしまう。『普段、藤原道長としてはしたい時にしたい会話を自由にできていたのに何故?』と疑問に思ういなばに『それは身分だ』と答えるくれ葉。為政者として権力を持つ道長には皆が話を合わせてくれるが、身分を失っている今はそうではない…そう説明をうけたいなばは衝撃を受け、『どうすればいいのか』を考えながら再び夢子達の元へ向かう。
元・暗部屋にいなばが戻ると、尊子が気を利かせて香を焚きしめた。香の種類を荷葉だと嗅ぎ当てたことを褒められたいなば。しかし、更に注目を浴びたいがために、『自分はもっと高価な伽羅を普段から使っている』と尊子に対していきなりマウンティングをかましてしまう。そのまま、皆が『すごい』と言ってくれることを期待するいなば。しかし、尊子は『眠くなったから休む』と言って奥に引っ込んでしまい、右近は『尊子に恥をかかせたな』といなばに対して激怒する。そしていなばは不良の様に睨みを利かせる右近を悪者にし、夢子と瑠璃を味方にしたいがために、『自分は悪気ないのに、右近さんがイジメる』と泣いてみせるのであった。
結果、部屋から追い出されたのはいなばであった。見てもらえず、声もかけてもらえない…というより深刻な”隠形”状態になってしまったいなばは『何を間違えたのか』『どうしたらいいのか』と悩みながら、手元にあった『隠形の男』の草紙を読み進める。しかし『流されるだけの主人公』『姫君のピンチなどの王道展開』『からの中二病が喜びそうな字面の呪文登場』『特に役に立っていない主人公』『そして急展開、雑に要素を詰め込むだけ詰め込んでハッピーエンド』を迎えた物語はなんのヒントもいなばに与えなかった。脱力するいなばだったが、そこに尊子がやってきて声を掛ける。
『女官らしくない無礼を働き、皆に呆れられ、右近に叱られた挙句、泣き騒ぎ総スカンを食らった』…そう尊子に経緯をまとめられ、針のムシロの気分になるいなば。しかし、尊子の態度は穏やかで優しかった。そして尊子は『自分程の身分になると何かあっても叱ってくれる人がいない。過ちを犯しても皆黙って去るだけだろう』『間違っても叱って突き放してくれる仲間がいるお前がうらやましい』…そういなばに言うのであった。
いなばは尊子の言葉から、『自分はちゃんと見てもらえていたのだ』と気付くのであった。ただし直後、尊子から『マウンティングが下手過ぎて、まるで女の初心者みたいだ』と指摘され、ドキリとするのであった。
女装を解き、元の姿に戻った道長はくれ葉に『低身分の醍醐味を堪能した』としみじみと語るのであった。しかし、くれ葉から『三人娘はかけがえのない仲間なのですね』と言われると『一緒にされたくない』と即答する等、ジレンマを抱えているのであった。
ちょっといい話。しかし、マウンティングって難しいのでやるべきではない。
まとめ~強烈な新キャラが続々登場し、勢いを増していった2巻
夢子に負けず劣らず強烈な平安腐女子、瑠璃と右近。そして一見立派な人格者だが、M気質で女装に目覚めることになる、藤原道長。ツンデレを拗らせすぎてしまった、皇妃尊子…強烈なキャラが次々登場し、勢いを増した2巻であった。
次巻3巻が最終巻となる『あさはかな夢みし』。追って最終巻の記事も書いていきたい。
次巻、最終巻はこちら