【漫画】あさはかな夢みし~登場人物・キャラクター紹介【Wikipediaの代わりに】

あさはかな夢みし 表紙

瀧波ユカリ氏の漫画、『あさはかな夢みし』の登場人物・キャラクターについてまとめてみました。ウィキペディアに記事が無いので…。

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Contents

夢子(ゆめこ)

本作の主人公。平安京に住まう、それなりに身分の高い姫。19歳。『まろは~なりける』『いみじうゆゆし』など、古語を用いたしゃべり方をする。
顔は普通で髪も美しいので平安時代の基準的にはそこそこの容姿。しかし、19歳と平安時代の基準的には既に成人を果たしているはずだが、化粧や鉄漿(お歯黒)は施しておらず、常時すっぴん。

持てる財を全て草紙(物語・本)につぎ込んでいるため、荒れ果てた屋敷に舎人も従者もいない状態で過ごしていた。草紙を読んでは妄想を繰り返しており、妄想雲と呼ばれる雲の様なモヤを出し、その脳内映像を具現化して他者に見せる特殊な能力を持つ。そして、その妄想は若干斜め上な解釈やイメージ(何故か光源氏がマッチョで全裸、若紫がドS)が入っているため、見た者を動揺させることも少なくない。なお、ノーマル、BL、百合等、どんなジャンルでもいけるようだ。また、現実の人物を物語の登場人物に当てはめて考えたり、妄想の材料にすることも好む。小犬丸が来て以降は、頻繁に彼を妄想に使って遊んでいる。

小犬丸の働きかけもむなしく、結婚する気は一切なく、『父親万丈にねだればお小遣いをもらえるのでこのままの生活を続ければいい』と本気で考えていた。1巻ラストで周囲から『結婚』『宮仕え』等進路について口出しされ御帳台にこもり、『出家する(当時出家は社会的な死を意味した)』と周囲に脅しをかけるも、くれ葉の言葉で『宮中で流行っている最新の草紙』目当てに宮仕えをすることを決心する。
2巻以降、宮仕えの研修中に同じ趣味の瑠璃と右近と出会い、意気投合。常に三人で行動を共にし、腐女子っぷりに拍車をかけ、周囲からは三人娘と呼ばれる。 研修終了後は瑠璃、右近とともに『暗部屋の女御』藤原尊子付の女房となる。

物語に対する教養が乏しい小犬丸に対しては時折小バカにした態度を取るものの、基本的に他人に対して非常に寛容。露出狂であった顕信に対しても怯えたり、嫌悪する様子なく、むしろ『魅せ方』を伝授したため、顕信から漠然とした好意を向けられることとなった。
常に薄ら笑いを浮かべており、草子や妄想のネタ以外の物事に対して滅多に動揺しないものの、決して感情に乏しい訳では無く、宮仕え中に嫌がらせで草紙を破り捨てられたり、尊子と別れる際は涙を流し悲しんでいる。
また、くれ葉に対しては強い独占欲を持っており、くれ葉が蹴鞠男達との勝負に勝ち貴族達から喝采と注目を浴びた際は『くれ葉はまろだけのくれ葉でありぬるぞ』と泣き出し、能信がくれ葉の家に行った際は嫉妬から生き霊を出した。

現実の恋愛にまるで興味がないような素振りを見せているが、1巻で顕信に『恋がしたくないのか?』『男性に好かれたくないのか?』と尋ねられた際には、物語上の男性達と現実の男性達の双方を愛おしく感じていると答えた上で、
「まろはそういう「乞い」ではなく…ただ心のままに好きなものをいみじう愛でていかんとす。」と答えている。
この言葉が夢子の生き方を物語っている。

母の物の怪にスイッチを押されると短時間だが従順でかつ無気力な子供の様になってしまうが、すぐに戻る等、母の物の怪の毒親っぷりにはあまり毒されておらず、上手く流している。宮中では馬内侍という名で働く実子の異母妹であることから『小馬(こま)』という女房名を与えられるが、この設定が活きることはなかった。また、三人娘の中で唯一、いなばの正体が藤原道長であるという超ド級のスキャンダルレベルの真実を知るも、『妄想を超える逸材』として尊び秘密を守っている。

一条天皇が崩御し、仕えていた尊子が宮中を去った後は小犬丸と実子の働きかけもあり、瑠璃、右近の三人で宮中の蔵書の管理、資料の編纂に携わった。
そして『生涯書物とかかわり続けた』『終生3人一緒にいた』『複数の幼子も同居していた』という幾つかの逸話だけを残し、歴史の中に消えて行った。

千年後の世界、そこには夢子によく似た、美しい髪をしたセーラー服姿の、平安文学を愛でる文学少女『ユメちゃん』の姿があった。

小犬丸(こいぬまる)

舎人(とねり、召使の意味)として夢子の元に派遣された青年。その正体は婚活系舎人…夢子の父、から夢子を結婚させるべく派遣された。
当初は見た目が悪くない夢子を見て楽勝と踏んでいたが、妄想遊びにふける夢子を見て、『この姫に足りていないの、たぶん縁とかじゃないよ!?』と苦悩する。しかし、諦めることなくあの手この手で夢子に男性や結婚に興味を持たせようと奮闘し続ける。
夢子の成婚に大苦戦するものの、今まで沢山の婚活を誓約させてきており、また女性の化粧にも詳しい等、婚活系舎人としての腕は確か。草紙の知識は乏しいものの、家事全般こなすなど基本的に何事も器用で優秀。しかし時折、貴族に対してルサンチマンダダ洩れの悪態をつく。

2巻以降は夢子のみならず、まとめて右近や瑠璃も結婚させようと奔走する。
しかし、闇雲に結婚を成立させようとしているわけではなく、右近の意に沿わない橘永愷の求婚に対しては、百夜通い(ももよがよい)を提案することで、結婚の手引きをするように見せ掛け、その実、円満な形で失恋させるように事を運ぶなど、女性の意思をしっかり思いやる様子も見せる(ただし、無償ではなく、代金はちゃんと請求している)。

童形(どうぎょう)という元服前の未成年の格好をしているが、これは世間に対してターゲットの女性とデキていると勘違いされない様にするためであり、実は20歳。ルックスは良く、それゆえ夢子達からの妄想の材料にされたり、また女装させられた際には顕信から『可愛い』と評された。また、説法会で夢子の姉、実子から誘惑され肉体関係を持ち、彼女との関係は夢子が宮仕えするようになってからも続いている。

ラスト、尊子が実家に帰り行き場を失っていた夢子、瑠璃、右近の三人が宮中の蔵書の管理、資料の編纂の業務に付けるよう、裏で実子に働きかけた。しかし、夢子達を結婚させることを諦めた訳では無く、『勤務先が変わった今こそ勝負時』と今まで以上のやる気を見せた。
その後、その優秀さから『朝廷の舎人』としても出世を続けていたが、1018年頃から名簿から名が消えており消息不明になったことがモノローグで語られる。

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くれ葉(くれは)

くれ葉書房という草紙屋を営み、定期的に夢子の元に草紙を売りに来る庶民の女性。19歳。整った顔立ちをしており、動きやすく、また自衛になるといった理由で水干(すいかん、庶民の男性の普段着)を着用している男装女子。小犬丸に『サブキャラ偏差値が高い』と言わしめた。ちなみに服の下にはさらしをまいており、実は巨乳であることを匂わせる発言をしている。
基本的に無表情で冷静、クールな態度を崩さないが、平安腐女子としてのレベルは夢子に負けず劣らず、その妄想のカオスさは凄まじい。

1巻ラストで皆があれこれと『夢子のため』と夢子の将来に口出しする中、『夢子のためなど思っていない』と前置きしたうえで、『宮中にある最新の草紙を横流ししてほしい』と夢子に言い、夢子が宮仕えを決意するきっかけを作る。
2巻で夢子が宮仕えして以降、教材用の草紙を配給するなどして宮中にも姿を現すようになる。

当初は身分の低い庶民であることから宮中の貴族達から蔑みの眼差しを向けられていたものの、鞠会で鞠足団、蹴鞠男を高い蹴鞠の技術で圧倒することで、観客であった貴族たちの注目と喝采を奪い、顧客を広げた。
商魂たくましく、小犬丸が実子と関係を持ったことをいち早く知る等情報通で、いなばの正体が道長であることを一瞬で見抜く等洞察力も高い。一方で病気の親族の世話を抱え込む等して苦労もしており、達観している。

能信が自身に好意を向けていることはなんとなく察しているが、想いを伝えようとした能信に対しては先手を打つように『もの珍しいと感じているだけだ』と言い『自分が金持ちで働いていなくても同じように関心を持つか』と問い、『自分は自分のことが好きだが、好きでこの自分になった訳では無い』と語って受け流した。
終盤では『政界で昇りつめる』と決意した能信に対して知を得る手助けをすると宣言した。

千年後の世界では、くれ葉によく似たポニーテールでセーラー服姿の少女『図書委員』が出てくる。

藤原顕信(ふじわらのあきのぶ)、露出狂の君

説法会に向かおうとした夢子と小犬丸の前に陰部をギリギリ隠した状態で現れた露出狂。『自身の裸体を見せつけることで女にとっての”初めての男”になりたい』と語る変態。実際は貴族社会の競争の辛さやコンプレックスをこじらせて露出に走っていた。しかし、そんな自分を恐れず、むしろ『魅せ方』を教授してきた夢子の度量の広さに感激し、それ以降夢子に対して漠然とした好意を抱くようになる。

その正体は時の権力者、藤原道長の三男、藤原顕信(ふじわらのあきのぶ)、18歳であったことが第8話三日夜で明らかになる。いわゆる妾腹であるものの、ルックスも悪くないことから小犬丸からは当初、夢子の結婚相手の有力候補とみなされたが、夢子に結婚生活の条件として『子どもを沢山産み、毎日自分の衣装の準備をし、他に妻を娶っても優しく受け入れること』という自分の母親と同じことを求めたため、実質的にフラれる。また、小犬丸からも『その母性渇望(マザコン)的な条件を撤回しない限り夢子との結婚はない』と見限られる。
しかし、それ以降も夢子達の周りをうろつき、何かとちょっかいを出し続けたため、夢子達が他の女官達の嫉妬と不興を買い嫌がらせを受ける原因を作る。

一条天皇の崩御後、新たに即位した三条天皇から『蔵人頭(くろうどのとう…天皇の秘書の様なもの)』に就くことを勧められたが、これを父親である道長が『まだ力不足』と断ったことをきっかけに引きこもってしまう。父親に自分なりの頑張りが認められなかったショックより、それに対して『じゃあもっと頑張ろうと思えない自分』に悩み苦しむ。2か月間引きこもったことで太ってしまい、その姿を父、道長に見られることを恐れて家から逃走。その後動けなくなっていたところを僧侶である行円に助けられる。行円の寺で彼が仏門に入った経緯を聞き涙を流したところ、行円から『おぬしの優しさはおぬしの宝』『生きることに苦しくなったら仏門を叩け』と言われ、心を打たれる。そして、その場で烏帽子を取り、出家を決意。行円の弟子となった。
実在の人物である。

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実子(みのりこ)、馬内侍(うまのないし)

夢子の腹違いの姉。万丈の娘。華やかで色気のある美女。説法会で出会って間もない男性を自身の牛車に連れ込み即座に肉体関係を持ち、更にその直後に小犬丸を誘惑し、やはり肉体関係を持つなど夢子とは正反対の超肉食系女子。普段は宮中で女房として働いており、女房名は馬内侍(うまのないし)。
夢子より年上ということの他、年齢不詳であるが、第11話天岩戸で『円融天皇の代から女房として働いている』という発言をしており、そのことから実は40歳過ぎているということが推測できるが、実子の年齢を知ったものは『非業の死を遂げる』と言われている。

夢子の進路について、結婚だけではなく、宮仕えをして自立し、自由に生きる道もあることを提示するも、『自由には責任が伴う』と働くことの厳しさを告げた。

時の権力者である左大臣、藤原道長とも関係を持っているが、大晦日の夜部屋を尋ねてきた道長を、他の男性がやってくると裸で追い出すなど、優位に立っている様子がうかがわれる。
ラスト小犬丸の働きかけを受け、尊子が実家に帰り行き場を失っていた夢子、瑠璃、右近の三人に宮中の蔵書の管理、資料の編纂の仕事を与えた。その後、『およそありえない年齢になっても複数の貴族と浮き名を流した』という逸話を残し、歴史の中に消えて行った。
モデルは実際にいた恋多き女性歌人、馬内侍。

瑠璃(るり)

宮仕えで夢子に出来た趣味友達。つまり平安腐女子。常に夢子と右近の三人で行動を共にする。小柄で童顔といった可愛らしい容姿をしており子どもに間違われることもしばしば。夢子同様それなりに家柄の良い姫。見た目の通り、性格的にやや幼いところがあり、少し短気で泣き虫。一方で素直に思ったことを口にし、いなば(女装した道長)を『お花のように気品がある』と褒め、道長が女装に目覚めるきっかけを作る。その後も何かといなばに声を掛けており、三人組の中で最もいなばと親しくなるが、ラストいなばに『内裏と土御門殿と高松殿(ともに道長の拠点)』を行き来する立場であると告げられ、藤原道長を連想するも、いなばの正体が藤原道長であることには気付けなかった。

ミーハーな面があり、休暇の際には夢子と右近を『嵐山六苦へす(あらしやまろっくへす)』に誘い、何かと通ぶっていたが、いざ到着すると、満足に音楽にノルことすら出来ない、知ったかぶりの『へす』初心者であることが露呈した。

尊子が宮中を去った後は、夢子、右近とともに宮中の蔵書の管理、資料の編纂に携わり、いくつかの逸話だけを残し、歴史の中に消えて行った。

千年後の世界では、瑠璃によく似た小柄でツインテールのセーラー服姿の少女が出てくる。

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右近(うこん)

宮仕えで夢子に出来た趣味友達。つまり平安腐女子。常に夢子と瑠璃の三人で行動を共にする。大柄でがっしりした体格をしており、コテコテの関西弁を話す大阪出身のそれなりに家柄の良い姫。周りから『背高(せだか)』と呼ばれることもあるが、そのルックス等は『頼りがいがありそう』と男性から好評。
『共感力』がひと際高く、追儺の際には遭遇した鬼とコミュニケーションを取ることも出来た。またその共感力の高さゆえに、三人組の中で真っ先に尊子になびき、その後も最も高い忠誠心を見せた。尊子お手製の下手糞な何か獣くさい菓子も進んで食べる程である。そのため、いなばが尊子に『下手糞なマウンティング』をかました際には激怒した。

三人組の中で唯一男性経験があり、何かとそのことを自慢げに語っていたが、相手であった橘永愷(たちばなのながやす)が宮中にやってくると、尊子に忠誠を誓っていることを理由に求婚を拒否。その後、百夜通い(ももよがよい)を通して改めて永愷を振るが、多少は彼を想う気持ちがあったような様子を見せた。

尊子が宮中を去った後は、夢子、瑠璃とともに宮中の蔵書の管理、資料の編纂に携わり、いくつかの逸話だけを残し、歴史の中に消えて行った。

千年後の世界では、右近によく似た関西弁を使う大柄でお下げ髪、セーラー服姿の少女が出てくる。

藤原道長(ふじわらのみちなが)・いなば

時の権力者、左大臣。一条天皇の中宮である彰子、顕信、能信の父親でもある。鍛え抜かれた体躯を誇り、自信に満ちた男性であるが、『自信家であるようで心が折れやすい』『常に自分を鼓舞している』『筋トレして自己陶酔するタイプ』等、自身の本質を言い当てた夢子、瑠璃、右近の平安腐女子三人娘に対して興味を持つ。そして、女装をして『いなば』と名乗り、三人組を観察しようとした際、意図せずして女装の歓びに目覚め、そのまま女装の道に突き進んでいく。また、夢子の異母姉の実子と肉体関係を持っており、定期的に『日々の重圧やストレスから解き放たれるため』実子に責めてもらうなど、マゾヒストの一面も持っている。
女装を始めた当初は、『自分を見て欲しい』という顕示欲を上手く制御できず、尊子に対して『下手糞なマウンティング』をかましてしまうなどの失態を犯すも、三人組や尊子との交流を通して、女性『いなば』として大きく成長していく。三人組の中では何かと声を掛けてくる瑠璃と最も仲が良い。

3巻ラストでは一条天皇の崩御、三男顕信の突然の出家という苦境の中、悲しみや苦しみを『化粧、美容の研究』にあて昇華することで、周囲が驚くほどに美しく変貌。一条天皇の崩御後、心を閉ざし、引きこもって老け込んでしまった尊子に対して『弱くても生きねばならぬ』という気持ちを込めて、研究し尽くした化粧法と美容スキルを伝授。尊子に美しさと生きていく力を取り戻させた。

そして、尊子が去った後のことを不安がる瑠璃に対して、自身が『内裏と土御門殿と高松殿(ともに道長の拠点)』を行き来する立場で、どこに行っても三人娘たちを見守り必ず会いに行くと告げ、安心させた。

誰もが知る通り、実在の有名な歴史人物。

藤原能信(ふじわらのよしのぶ)

時の権力者、左大臣、藤原道長の四男であり顕信の弟。16歳。普段は何事にも冷めた様な言動をし不機嫌で気だるげな表情をしているものの、怒りっぽく、すぐに手が出るタイプで、第15話蹴鞠で初登場した時には直前の試合で殴り合いをしたことから、蹴鞠大会出場停止になっていた。
出世欲や競争心に欠き、頼りにならない兄、顕信に対しては呆れた様な態度を見せているものの、内心は大事に思っている。

リアリストで勘が良く、夢子達が嫌がらせを受けた際には真っ先に『いじめだ』と気付き指摘。几帳越しにいなば(女装した父、道長)と対面した際はその香から、いなばが父、道長と深いつながりがある人物…父の愛人だと推理した(惜しい)。

くれ葉に好意を抱いており、彼女の家を訪ねた際はその貧しさ等にカルチャーショックを受けつつ、想いを打ち明けようとするが、先手を打ったくれ葉から 『もの珍しいと感じているだけだ』と言われてしまい、『自分が金持ちで働かなくても魅力を感じるか』と問われ、『自分は自分のことが好きだが、好きでこの自分になった訳では無い』と語るくれ葉に何も言えなくなってしまう。 しかし、くれ葉に対する好意を失ったわけではなく、『子ども扱いしないで欲しい』と告げた。

終盤、顕信が出家をすると『兄貴はバカだ』と憤ると同時に、くれ葉に対して『昇りつめる』と宣言。翌年には顕信が付けなかった『蔵人頭』へ昇進し、歴史を動かす人間となった。
実在の人物である。

藤原尊子(ふじわらのたかこ)・暗部屋の女御(くらべやのにょうご)

時の天皇、一条天皇の5人いる妃のうちの一人、位は女御(にょうご…妃としての位は上から3番目)。27歳。5人いる妃の中でも、一条天皇からの寵愛は薄く、他の妃達と競うことなく、暗くて狭い部屋に引きこもっていたため、暗部屋の女御(くらべやのにょうご)という通り名がついていた。

研修を終えた夢子、瑠璃、右近の3人が部屋付の女房として派遣されるも、当初は自身に昔から付き従うばあや以外の女房はいらないと言い、『私は誰も必要としない』と宣言する。しかし、実は秘かに手作りの下手糞な何か獣くさい菓子を用意していた等の真正の『素直になれない強がりのツンデレ』っぷりを見せつけたため、右近、瑠璃、夢子の順で彼女の魅力に陥落していった。部屋を暗くし引きこもっていたのは一条天皇の寵愛が薄い尊子を『渇いた人妻』とみなしてちょっかいを出してくる男が多かったため。また、長い暗部屋暮らしのおかげで非常に耳が良くなっており、遠くの音を拾うのが得意。つまり極度の地獄耳。

美しいが、非情に寂しがりで疑り深く、何かあると、女房達に手作りの下手糞な何か獣くさい菓子を食べさせて忠誠心を試そうとする悪癖がある。一方で、日々妄想に耽ってばかりの夢子達を受け入れ、『下手糞なマウンティング』をかましてきたいなば(女装した道長)を許し、優しく諭すといった寛大さも併せ持っている。

男女観、恋愛観が非常に偏っており、『男は処女が好き』『自分は夫である帝にすら処女を守り通している』と偉そうに語り、小犬丸を凍り付かせた。
上記の様な性格、価値観から夫である一条天皇に対しても『ツンデレ』の『ツン』の部分しか見せてこなかったが、夢子達と接するうちに性格が丸くなったこともあり、最後に一条天皇に召された際は、素直に話をすることができ、抱かれることはなかったものの手を繋いで一緒に眠れたことに大変満足していた。
しかし、直後に一条天皇が崩御してしまい『夫の死で悲しみに浸れるほど夫と愛し合えていなかった』ということに苦しみ、心を閉ざし引きこもり老け込んでしまう。

一条天皇崩御から一年後、変わらず引きこもっていたところ、美を追求したいなばの美容・化粧法によってかつての美しさと生きる力を取り戻す。
その後、宮中を去ることになったが、夢子、瑠璃、右近の三人に対して『支えあってきた仲間として誇りに思っている』『もう自分なんて…と自らをいじめることはしない』と言って実家に帰っていった。
そしてその三年後、公卿と再婚し、更にその八年後に39歳でこの世を去ったことがモノローグにて語られる。実在の人物である。
なお、平安時代の女性名は読みがはっきりしていないため、尊子の場合、「そんし」等音読みするのが一般的であるが、本作では作者である瀧波ユカリが「かわいいから」という理由で「たかこ」としている。

ばあや

藤原尊子に使える年配の女房。尊子には長年仕えており、その強い主従関係と絆は『見せつけられた』と瑠璃や右近が赤面する程。
普段はオロオロとした気弱な態度を見せているが、尊子にちょっかいを出そうとする男達に対しては素早い身のこなしで棒で突いたり、尊子が一条天皇に召されることが決まった際には夢子達に檄を飛ばして支度をさせる等、スイッチが入ると豹変する。また、意外と口が悪く余計なことまで喋るため、その度に怒った尊子に『今夜は逆さ吊りだ』『水責めだ』等と言われている(本当にされているかは不明)。一条天皇に時折『召されて(寝所に誘われて)』も指一本触れられず帰ってくる尊子に苛立つ一方で、『姫様に触れていいのはこのばあやだけ』と語るなど、尊子への愛情は強いがちょっとこじれている。

一条天皇崩御から一年後、実家に戻る尊子と共に宮中を去った。

万丈(ばんじょう)・藤原盛高

夢子と実子の父親。既に出家しているため僧侶の装束を身にまとっている。
表向きは妻(夢子の母)の成仏を願って出家をしたことになっているが、『倒錯的(ふぇてぃっしゅ)』を求める、自他ともに認める変態的な人間で、粥杖神事の際は小犬丸に粥杖で自身の腰を殴る様に強要し、別宅では『仏に踏まれる邪鬼の気持ちを楽しむ装置』を制作するなど、信心深いとは言えない、罰当たりなことを平気でやってのける。夢子と別居しているのも性的鍛錬を極める…趣味を追求するためである。

夢子には甘く、草紙を買うための金銭(つまりお小遣い)を渡す一方で夢子が人並みに恋愛・結婚することを望み、『舎人協会婚活事業部』に依頼を出した。
なお、それっぽい名前ではあるが実在の人物ではない。

夢子の母(物の怪)

夢子の生母。7年前に亡くなっている故人だが成仏できず物の物の怪化しており、定期的に夢子の元に現れる。

いわゆる毒親・毒母で夢子に『いつまでも清純な子供でいること』『自分の言うことを聞くこと』を求め、『夢子は無能で結婚も外で働くこともできない』と言い続けている。
夢子の頭のスイッチを押して、夢子を従順で無気力な子供の様にすることができるが、夢子が慣れ切ってしまっているため、その効果は非常に短い。
夢子が恋文を書いたり、結婚したり、宮仕えをしようとしたりすると邪魔する。本人はそれを『愛』と言っている。

綿美部長 (わたみぶちょう)

舎人協会の婚活事業部の部長。ブラックな協会のブラックな、小犬丸の上司。それなりに整った顔立ちをしている。成婚件数が0だと部下に『僕はクズ舎人です』『結婚こそが女の幸せ』等と100回叫ばせるなどの、まさにブラックな指導をする。
今まで複数案件をビシバシこなしていた小犬丸が成婚に持ち込めない夢子に興味を持ち、小犬丸に対し『夢子、瑠璃、右近の三人をなびかせてみせる』と豪語し『自分が三人を堕とせたら罰として裸で脇息(ひじおき)になれ』というペナルティを持ち出し、『ノリだか本当だか分からない』と小犬丸を怯えさせた。

しかし、自身は見合い婚をしており、実際に女性を口説いた経験はゼロ。そのため、少女漫画でありがちな『俺様・どSキャラ』路線で三人に向けてアピールを繰り返し、心底ドン引きされた。そして、その後夢子に今昔物語集の『佐太が衣』を引き合いに出され、『現実と物語の違い』を諭され、自身の勘違い男っぷりに気付くと同時に、その後妄想に耽り始めた夢子達を結婚させることの難しさを認識した。
しかし、『脇息プレイ』の話を聞いた夢子達が口々に綿美に『好きです』と言い始めると、『ノリでやってしまうか』と小犬丸に言い、『やはりノリではなくそっちのケがある』と小犬丸に怯えられた。

山科(やましな)

宮中で女官達の教育係を担う女性。常に困った様な笑顔を浮かべ、一見優しそうな人物だが、その内心には若い女性への苛立ちと見下し、出世や結婚も逃している事への焦りや後悔が渦巻いており、夢子達三人が嫌がらせを受けた際に相談した時も、『面倒ごとを持ち込まれた』と考え、終始論点をずらし、的外れな説教をするだけで全く力にならなかった。
なお、物語が進むに連れてそういった本性が隠し通せなくなっていき、平然と若い女官達を煽ったり馬鹿にする言動を取る様になった。『そういった雑なところが出世が進まない原因だ』と夢子は分析している。

蹴鞠男(けまりお)

鞠会にやってきた結成したばかりの鞠足団(まりあしだん…蹴鞠のチーム)。
王道王子様キャラの鞠丸(まりまる)、俺様肉食系男子の鞠比古(まりひこ)、ショタキャラ(ペットの蛇を侍らせている)の鞠矢(まりや)、双子の鞠光(まりみつ)・鞠影(まりかげ)…といったまるで乙女ゲーの様なイケメンメンバー5人で構成されており、顕信からは『ゆるふわ』と評される。

しかし、華やかな外観に反して、左大臣の息子ながら妾腹である顕信に目を付けて卑怯な手を使い、暴行する等陰湿で暴力的なプレーを繰り返す。
そして、その後、挑戦してきたくれ葉に対しても『平民なら殺してしまっても良い』と悪意を持って潰しにかかるが、くれ葉の圧倒的な蹴鞠のスキルの元に完敗。貴族たちからの注目と喝采を全てくれ葉に奪われてしまった。

弥太郎(やたろう)・方相氏役の舎人(ほうそうしやくのとねり)

大晦日の夜、鬼を払う追儺(ついな)の儀式で、鬼を祓う異形の神、方相氏(ほうそうし)の役に選ばれていた舎人。
背が高くがっしりとした体形。
以前、夜に酒に酔ったところで自身を驚かそうとした鬼と遭遇。しかしほろ酔い気分だったことと、闇夜であったことから相手が鬼と気付くことなく気さくに優しく声を掛け、鬼から惚れられることとなった。

追儺の夜に自身に会いに来た鬼を見て、『鬼の役なんてあったっけ?』と言う等夢子達を驚かせる天然っぷりだが、相手が鬼だと分かっても怯えることなく受け入れる度量の広さを見せる。
そして自身を出世させるために鬼が祓われに来たと知ると『方相氏をやるより鬼と話す経験の方が貴重』『一緒に飲もう』と言い、実子に裸で外に追い出されていた道長に方相氏の役と衣装を譲り、鬼と共に夜の都に繰り出していった。 

鬼、鬼ぃさん

今日に住みつく悪鬼。大柄でマッチョ、露出の高い格好をしている。普段は夜中に平安人を驚かすなど他愛の無いイタズラを繰り返している。
大晦日の夜、几帳の裏で泣いていたところを夢子達に発見される。
以前、鬼である自分に気さくに優しい声掛けをしてきた舎人の弥太郎に惚れており、彼が追儺の儀式で、鬼を払う方相氏の役目に選ばれたと知り、弥太郎を出世させるべく自ら祓われようとしていた。

夢子達から『弥太郎に気持ちを伝えるべき』と後押しされて、彼女たちの協力の元、弥太郎と対面。その後、方相氏の役を降りた弥太郎に『一緒に飲もう』と誘われ、彼と共に夜の都に繰り出していった。空を飛べる。

橘永愷(たちばなのながやす)

右近の初体験の相手。右近より3歳上の学生。自身の初体験の相手である右近のことが忘れられず、宮仕えをしている彼女の元にやってきて求婚する。しかし、右近からは『尊子に仕えるため、男性と付き合う気はない』と拒否され、落胆、『命を絶つ』と脅した。そこに、小犬丸から『100日間連続で女性の元を尋ねれば、関係を持てる』という百夜通い(ももよがよい)を提案され、喜んで百夜通いを始める。

しかし、百夜通いの真の意味は『100日の猶予を持たせて、女性側にその気がないことを男に理解させ、執着心を鎮める』というものであり、小犬丸の策通り、百夜通いを通して、右近が自身に気持ちを持っていないことを理解し、失恋を認め去って行った。
なお、橘永愷は実在の僧侶で歌人、『能因』の出家前の名前である。

一条天皇(いちじょうてんのう)

尊子の夫で時の天皇。藤原道長の娘、彰子や尊子など5人の妃を持つ。穏やかで優しい、紳士的な男性。
3巻終盤で尊子を”召した(寝所に招いた)”が、その時には既に病に侵されており、そのことを尊子に告げることはなかった。夢子達三人娘を女房に迎えて明るく素直になった尊子を見て安心する。

尊子を十分に愛することが出来なかったと後悔しており、『せめて自身が逝った後、他の誰かと幸せになれるように清いままにしておく』と考え、手を繋いで一緒に眠るに留まり、尊子を抱くことはしなかった。その後間もなくこの世を去った。
実在の人物。

行円(ぎょうえん)

家から逃げ出し動けなくなっていた顕信を助けた僧侶。行願寺の住職。
元は狩人だったが、射止めた女鹿の死体から小鹿が生まれた様子を見て発心し仏門に入った。その時の気持ちを忘れぬため、その女鹿の革で作った袈裟を身に着けている。
その話を聞いて涙を流した顕信の『優しさ』を認め、それが『宝』であると諭し、『優しさを殺して生きることに苦しくなったらいつでも仏門を叩け』と声を掛けた。そして、その場で烏帽子を取り出家を決意した顕信に驚くも、彼の意志を受け止め弟子とした。
実在の人物。

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