【漫画】架刑のアリス10巻【感想・ネタバレ・考察】近づく最終決戦、明らかになる秘密…月兎がまさかの…?

架刑のアリス 10巻表紙

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前巻では次女、厘流(ミセル)と決戦した星(ステラ)。恋人のイオを人質に取られたミセルを死闘の末、倒した様に見えたステラ。しかし、ステラとミセルの二人は一芝居打っており、母、織雅(オルガ)を騙して、久遠寺の敷地からの脱出を謀っていたのだ。上手いこと事を運び、脱出しようとしたステラとミセルとイオ。しかし直前で織雅に気付かれてしまい、イオは銃弾を受けてしまう。そしてステラは織雅に立ち向かい、ミセルとイオをどうにかして逃がすのであった。

前巻の記事はこちら→【漫画】架刑のアリス9巻【感想・ネタバレ・考察】次女厘流(ミセル)と再戦~脱出を試みるステラだったが…!?

関連記事はこちら→【総評】架刑のアリス【全11巻】

次の巻、最終巻の記事はこちら→【漫画】架刑のアリス11巻・最終巻【感想・ネタバレ・考察】あっさりしたラスト~ステラが選んだのは月兎か是乃か?

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Contents

以下、ネタバレ

第37話 ミセルとイオを逃がしたステラ。脱出計画に手を貸していた父、サザレ。一方でステラは末っ子メルムの素性に疑問を持つ

ステラはミセルと銃弾を受けたイオを無理矢理水脈に落とし、脱出に向かわせて、自身はその場に留まる。『ミセルとイオが外に出ればそれが希望になる』…そう考えて。

しきたりに背くなんてバカな事…そう吐き捨てた母、織雅は『二人を逃がしても無駄』とイオが何発も被弾した事、水脈の中を逃げようにも酸素ボンベの空気がわずかな事を告げ、『仮に生きて地上に出たとしても、地の果てまで探し出して必ず殺す』と宣言する。

その言葉を聞いたステラは、母、織雅を傷付けようとすると死んでしまう体であると分かっているにも関わらず、目視しないで銃口を向ける。しかし、織雅を撃とうとした瞬間、何者かに構えた銃を狙撃され飛ばされ、気絶するだけで済んだ。

ステラの銃を撃ったのは誰か探らせる織雅。しかし、沢山の黒兎が配備されていたため、特定は困難であった。そして、負傷した黒兎の回収を命じた織雅は、『ガスマスクをしていた黒兎が一人いなくなっている』ということに気付くのであった。

一方、別室で黒兎たちに指示を出していた九重は、その場にいたガスマスクをした黒兎の正体がステラの父で織雅の夫である、 細零(サザレ)であることに気付く。サザレはステラたちの脱出計画に協力したのだ。

『織雅がサザレの裏切りに勘づいている』とガスマスクを脱いだサザレに忠告する九重。しかし、サザレはそんな九重に対して、『なんだ、それだけか』と意味深な笑みを浮かべ、『本日の御用はあるか』と尋ねに来た小間使いの少年、ラファエルに対して『これから特別な用を頼むことはないから鍵は閉めておく』と告げ、立ち去る。ラファエルはそんなサザレを黙って見つめるのであった。

ステラは気絶しただけで無事であった。織雅は部屋に来た九重にステラを反省室に運ぶよう、指示した。そしてその後部屋にやって来たラファエルはオルガにこう、報告するのであった。

「旦那様がもう僕を抱かないと言ってます」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 25/181

戻ってきた九重が見たのは、ラファエルの頬を打つ織雅の姿であった。ラファエルが何か粗相をしたのかと問う九重に、織雅は『ラファエルは役目を果たしているだけだ』と答える。『ラファエルとメイドのマジェンダの二人は他の使用人や黒兎たちとは違う久遠寺の血で作られた人形(ひとがた)』『主人を決して裏切らない』そう語る織雅。ラファエルを部屋から下げ、『サザレが自分を抱けないこと』『そんな可哀想な夫に”友達”としてラファエルをあてがっていたこと』『それでもラファエルの顔を見ると憎らしくてたまらなくなること』を九重に説明し、笑う。そして、九重を睨みつけ、

「殴る気力さえ削がれるわ、おまえの無表情(ポーカーフェイス)」
「死ねばいいのに、死ねないのよね」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 31/181

と吐き捨て、九重に『メルムの「眠りネズミ(ヤマネ)」を起こしに行く』と告げ、立ち上がるのであった。

一方、反省室で寝かせられていたステラは『目視しなくても母織雅を攻撃するのは不可』ということに頭を悩ませていた。他に何か方法はないのかと考え、次に対戦することになる末っ子のメルムに思いを馳せる。そして、現在5歳のメルムがいつの間にこの屋敷にやってきていたのか疑問を持つ。5年前、最初の選別の時に、メルムはいなかったことに気付いたのだ。

そんなステラの元に月兎(ユキト)が駆けつける。月兎は『織雅が怒っており、捜査班を外部に出してミセル達を始末しようとしていること』『明日、すぐにステラとメルムを戦わせようとしていること』を告げる。愕然とするステラは月兎に反省室からの脱出の手助けをしてほしいと懇願する。ステラの願いに答え、見張りをイスで殴り気絶させ反省室の扉を開ける月兎。そんな月兎にステラは感謝の言葉と共に、未だに是乃(偽物)への気持ちを断ち切れないことを謝る。月兎は複雑な表情を浮かべるも『自分はステラのストーカーだから、ステラの意思に関係なくステラを助ける』と言い、ステラに自身の人形(藁人形)を託し、意識を取り戻した見張りを押さえ、ステラを逃がすのであった。

一方、その頃、父、サザレは末っ子メルムの屋敷の中で、眠っているメルムに拳銃を突き付ける。メルム…ラテン語でそれは『災い』を意味する言葉だと呟きながら。しかし、目を覚ましたメルムは不思議そうに問うのであった。

「…なんで?この間からお父さんのカッコしてるの?是乃兄ちゃん」

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第38話 父、サザレに扮していた長男、是乃(ゼノ)

メルムの言葉に硬直する父、サザレ。メルムは無邪気に『かくれんぼをしよう』と笑い、寝室から去っていく。反省室から脱出した後、潜んでその様子を伺っていたステラもまた、メルムの発した言葉に動揺する。そして少し前に父、サザレと言葉を交わした時に、サザレが自分のことをいつもの「俺」ではなく「私」と言っていたことに気付くのであった。

是乃の能力は殺したものの生体情報をトレースし、相手に成り代わることができるというもの。メルムの言うことが本当なら、父サザレはもう死んでいるということになるのではないか…そう考え、更に困惑するステラ。しかし、そうこうしているうちにサザレ(是乃)はかくれんぼでメルムを見つけてしまい、銃口を向ける。どうしよう…とステラが迷っていると、メルムとサザレ(是乃)の元に母、織雅が黒兎達を引き連れて踏み込んできた。

織雅の前で擬態を解き、姿を現した是乃。『いつから入れ替わっていたのか』と問う織雅に対して『大事な夫が別人になっていても気付かないなんて、本当に愛していたのか』と挑発する。そして入れ替わったのは久遠寺支社からご神体を奪って回っていた時で、事前に警備員に変装しており、計画通りに煙幕が発生した時に父、サザレを殺し、姿を奪ったのだと語る。サザレの死体は聖女様、レイジナの聖使が持ち帰ったと言う。
レイジナの名を聞き、怒りを露わにする織雅。『レイジナが計画した事なのか』と問い詰めるオルガに対して是乃は『本当のことを教える』と言って近づき、耳元で『笑うと目じりの皺がヤバいぜ?』と言いながら、織雅に対して攻撃を仕掛けたのであった。

しかし、オルガの反撃が素早いものであったことに加え、是乃もまた他の兄弟達と同じく、母、織雅を傷付けようとした瞬間強烈な頭痛に苛まれて、崩れ落ちてしまう。是乃に止めを刺そうとするオルガ。その瞬間、ステラが飛び出し、織雅に抱き着いて制止した。

『この男はお前を騙していたのよ』という織雅に対して、『分かっている』と答えるステラ。施設で共に過ぎしていた是乃は月兎であること。今目の前にいる是乃は最初の茶会で、本物の是乃(月兎)を瀕死に追いやり、姿を奪った存在であること。しかし、

この人を許せるわけじゃない。でも私はもう気付いてしまった。
私には私の、この人とすごした想いがあったから
「そうよ…たとえ依存関係であっても」「それでもこの人は…本物のもう一人の「是乃兄(ゼノにい)なの!!」」

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『たとえ彼の本心が違ったとしても…』そう考え、是乃を庇うステラ。

すると、そんなステラに是乃は微笑み、突然、抱き寄せ『目を瞑れ』と耳元で囁く。そして閃光弾を織雅たちに放ち、その場を逃走するのであった。

「母さん、あんたは好きな男2人を手に入れたつもりだろうけど、どっちも選べないのならどっちもあんたの物にはならないよ」
「永遠にね」

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そう言い残して。『黙れ』と激昂する織雅。しかし、周到な準備をしていた是乃は屋敷の外までステラを連れて逃げるのであった。
残された織雅はレイジナへの呪詛の言葉をつぶやき、『メルムの所へ向かう事』『ステラの反省室からの脱走を手引きした月兎を捕らえること』『ステラを連れ戻すこと。是乃は殺しても構わない』と黒兎達に命じるのであった。

久遠寺の広大な敷地の中の、森林地帯、洞窟の様なところに潜む是乃とステラ。このような場所があるとは知らなかったステラに是乃は昔争った一族の者の隠れ家だったのかもしれないと答える。是乃は父、サザレから兄弟たちの屋敷の間取りや逃走経路等を教わっていたという。以前と変わらぬ調子でそんなことを語る是乃のことをやはり憎むことが出来ず、涙を流すステラ。
そして、是乃から『父、サザレを殺しておらず、姿や声をトレースしただけ』『父、サザレは生きて鷲宮教団の元にいる』と告げられ、驚く。今頃かつて殺し合った兄弟同士(ヨハネとサザレ)語り合っているのだろう…そう語る是乃にステラは『何故、危険を冒してまでメルムを殺しに久遠寺家に戻ってきたのか』と尋ねる。

『聖女様(レイジナ)がメルムだけは殺しておかないと最悪の未来が待っており、アリス(ステラ)も殺されると予言した』と答える是乃。そして、衝撃的なことを言うのであった。

「俺達の出会った始まりのお茶会の日、目立たないドレスだったが腹がふくらんでいたのを覚えていないか?」
「メルムは織雅母さんの「借り腹」から産まれたこどもらしいからな」

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第39話 語られる織雅の実子の存在。そして是乃と別れ織雅の元へ戻るステラ。更に織雅の口から衝撃的な言葉が…

『メルムは養子として集められた他の兄弟達と異なり、母、織雅の借り腹から産まれたこども』『5年前の始まりのお茶会の時に織雅は妊娠しており、メルムはその直後生まれた』…そういう是乃の言葉に驚くステラ。お茶の効果もあってか、最初の茶会の前後の記憶が元々曖昧なステラに対して、是乃ははっきりさせに行こうとステラを連れて、久遠寺内の医療施設『ホワイト・ヴィラ』に潜入した。

『ホワイト・ヴィラ』の院長である中年女性はスタッフを昏倒させ侵入してきた是乃を見ても特に驚いた様子も見せない。そしてその言動から、院長が以前から織雅を裏切って情報や技術を鷲宮教団に流していたことを理解したステラは驚く。『何故そのようなことを?』『お金なら母、織雅に頼めばいくらでも…』というステラに、院長は『久遠寺家には一生かけても調べつくせない生命の神秘があり、あらゆる症例のデータが欲しい』『自身のやっている研究には織雅の望みと反するものもある』『天敵や戦争失くして科学や医術の発展は成しえない』と答える(ついでに鷲宮教団のドクターが甥っ子であることも)。そのため織雅には内密に鷲宮教団ともつながり情報や技術を流し合っていたのだ。

『メルムは一体どういった存在なのか』そう院長に質問する是乃。それに対し院長は『織雅がもう一度政府に知られずに子どもを産みたいと言った。そして研究をしたかった自分達に協力してくれただけ』と答える。すると、ステラが『もう一度とはどういうこと?』と院長の話を遮る。

「政府はね久遠寺が屍喰鬼(バンダースナッチ)の純血の子孫を残さないって密約で存在を許してるんだ。そして十数年前のことだ。奥様はそれを破って子どもを産んだ
そのせいで織雅奥さんは現当主たる資格を失い、当主決めのお茶会が開かれたのさ

架刑のアリス10巻 由貴香織里 104-105/181

煙草を吸いながら淡々と答える院長。その実子の行方を是乃が尋ねる。自分達兄妹の中にいるのかと。それに対して『血が濃すぎて受精卵が耐えられず死亡した』と返答した院長は更に続けている。

「何しろその子は…両性具有だったんだ」
「寄せ集めの兄妹でもお互いの体くらい見たことあるだろ?同性なら。その中に男でも女でもある奴がいたかい?そういうことだよ」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 108-109/181

俄かに信じがたい話の連続に少し考え込むステラ。全裸とまではいかないが下着姿や水着の兄姉弟達を見ているがそんな風体の者はいなかった(若干、海(マレ)は怪しいと思うものの)。そして、院長はメルムの能力について『神に等しい能力だ』という。しかし、そこに警備の者たちがなだれ込み、逃走を余儀なくされた是乃とステラはそれ以上のことを院長から聞き出すことは出来なかった。

『ホワイト・ヴィラ』から脱出し、久遠寺の森林地帯へ逃げ込んだ是乃とステラ。そこで、是乃はステラに『一緒に鷲宮教団に逃げよう』と言い、ステラの肩をつかむ。そして

「こんな地獄で不毛な戦いを続ける意味はない」
「今度こそおまえと一緒に生きるために戻ってきた。約束だったろう」
「何もかも捨てて俺と外の世界へ行こう。俺を許してくれるなら」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 114-116/181

そう言って是乃はステラを抱きしめるのであった。しかし、次の瞬間、辺りに織雅の声が響き渡る。拡声器で是乃とステラに森から出てくるように迫る織雅。『5分以内に出てこないと月兎を殺す』そう言って脅すのであった。月兎は既にボロボロの状態で目隠しされ、拘束されているのだ。

織雅の言葉に、動揺するステラ。しかし是乃はステラを抱きしめたまま、『あいつはお前の何なんだ』と問う。『分からない』と答えるステラ。気が合うとは決して言えない、変わり者の月兎。しかし、『奥深くで繋がっている』『失ってはならない、誰よりも自分を分かってくれる存在』そう月兎について語ったステラは是乃の手を振り払う。
『俺の手を振り払うほど大事な奴なのか』と言った是乃に『どっちも大事で大切だ』『でも今は月兎の命を助けないと』と答えて是乃から離れるステラ。是乃に一人で逃げるように告げ、『また会いましょう、そのときはきっと…』と言って、織雅達の前へ出ていくのであった。

戻ってきたステラを歓迎する織雅。早速メルムと戦ってもらうとステラに告げ、月兎の安否については、今は生きているが、今後のステラの行動次第だと遠回しに脅しをかける。
幼いメルムの姿を思い浮かべ、躊躇うステラ。しかし、月兎のことを考えれば。『戦う』と答えるほかなかった。そして、これが本当の本当に最後の戦いであると強く意識するのであった。

その後、自室に戻った織雅。無表情で傍らに佇む九重を見やって、彼の『孫』である月兎について言及する。月兎を『妹の孫』ということで通している九重。しかし、織雅はそれが嘘であるということを知っている。

九重は過去を思い返す。九重は一家心中の生き残りであった。そんな彼を引き取ったのは華族であった織雅の父だ。そして、父から酷い扱いを受けている九重を見て、可憐な少女だった織雅は笑いながら父にねだったのだ。『壊すのならば私にください』『丈夫な荷物持ちが欲しかったの』と。

『月兎が本物の是乃であったこと。今の是乃が偽物であること』等についてはとうに調べがついているという織雅。
『何故そうまでしてあの子を助けたのか、言ってあげましょうか?』そう言って九重のネクタイを掴み、引き寄せる。

「あの子…本当は男でも女でもない体だったりしない?」
「あの子、私と貴方の子どもなんでしょう?」
「ねえ、九重」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 128-129/181

その頃、ボロボロの状態で捕らえられ、目隠しをされた月兎はステラの姿を思い浮かべながらその名前をつぶやくのだった。

一方でステラはアリスの装束に着替え終えると目隠しされて六道に誘われメルムとの決戦の場へ連れていかれる。薄暗いそこは、死んだ兄姉達の墓場であった。刻まれた兄姉の名前を見て思わず口元を押さえるステラ。そして、その先にはぬいぐるみに囲まれて微笑む幼い弟、メルムの姿があった。

第40話 メルムとの戦い

墓場の奥にある小さな塔のようなところに腰かけるメルムは『僕のお人形達と遊んで』とステラに微笑みかける。傍らにあるぬいぐるみ達は皆、ラファエルに作ってもらったと言う。ステラは墓場の壁の上にラファエルが控えていることに気づく。彼が父と母に仕えていることは知っていたが、名前までは知らなかったステラ。メルムの傍らにある精巧な三女、紅亜(クレア)の人形、そして三男、太陽(ソル)が抱いていた、やはり精巧な四男、海(マレ)の人形を創ったのもラファエルであったと聞き、驚く。海(マレ)の人形に以前襲われたことがあったステラはラファエルに『あなたが海(マレ)の人形を動かしていたのか?』と尋ねる。しかし、『自分には丈夫な人形やぬいぐるみを創ることしかできない』と答えたラファエル。微笑みながらこう言うのであった。

「人形に命を吹き込むような奇跡は…」「選ばれたお方にしかできません」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 139-140/181

突然歌い出すメルム。変わった曲調の歌に戸惑うステラ。するとぬいぐるみ達が急に動き始め、ステラへ襲いかかってきたのであった。驚くステラにメルムは笑いながら『クレアが怒っている。同じように死んで遊んでくれたらステラを許すと言っている』『だからみんなで殺してあげる』と告げ、ぬいぐるみ達にこう命じる。

「ステラちゃんと、あそんであげて。こわしちゃっていいからさ」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 142/181

そしてメルム自身は塔の上の透明なドームの様な場所に閉じ籠るのであった。

襲い掛かるぬいぐるみ達。アリスと化したステラはぬいぐるみの攻撃を避けながらドームに弾丸を撃ち込むが、びくともしない。『あの中に入ったメルムには傷一つつけられない』と淡々と告げるラファエルに、アリスは『お前なメルムの味方なのか』と尋ねる。ラファエルは『自身は久遠寺家の下僕。メルムの人形師ではあるが、戦いの邪魔はしない』と答えるのであった。

素早い動作で無数に襲いかかってくるぬいぐるみ達。アリスはバラバラにするまでだと重火器で撃破しようとするが、ぬいぐるみ達は傷付けてもすぐに体は元通りになり、さらに子どもの様な声音で『痛い』『酷い』と言い、泣き、怒るのだ。

ぬいぐるみ達の中に魂の様なものがあることを理解するアリス。以前襲い掛かってきた海(マレ)の人形にも意志があったことを思い出す。『メルムの能力は人形達に命を与えること』だと理解する。

そんなアリスに追い討ちを掛けるようにラファエルは『ぬいぐるみ達は何度でも再生する』と告げる。ぬいぐるみ達は久遠寺永年の研究成果である擬似生命体であるラファエルの身体の組織(無限増殖できる周皮細胞の毛細血管)を移植されており、ラファエルの体から血が流れ続ける限り再生を繰り返すという。ラファエルと織雅専属のメイド、マジェンタは人間ではないのだ。

アリスはジャバウォッキーを召喚しようとするが、それも叶わない。神聖なる墓場には結界が張ってあると説明するラファエル。ドームの中で無邪気に『はやくしんで、僕のお人形の仲間になって』と笑うメルム。さらにぬいぐるみ達の言動から、彼らの魂の正体が最初の茶会で命を落としたこども達のものだと知り、アリスは愕然とするのだった。

その頃、自室で戦いの様子を見ていた織雅は九重に先ほどの、『月兎は自分と九重の子どもなのではないか』という問いを再び投げかける。真顔で『私には覚えがない』と答える九重。

十数年前、九重に薬を盛り、昏睡させた状態で事に及んだ織雅はそれで子をなしたのだ。

メルムの正体を語る織雅。戦魂(ラルヴァ)を宿している他の兄姉と違い、メルムは昔、地下闘技場で勝ち抜いた肉体を凍結されていたものを織雅の胎内に宿した存在…つまり戦魂そのものなのだ。『織雅の子宮なら産み出せる』そう語った院長の実験に協力してあげたという織雅。生まれたメルムは非常に狂暴だったため、本来の人格は眠らせ続けて育てて来たと語る。『母親になりたかった』そう言って。

屍喰鬼(バンダースナッチ)は実子を作ってはならないという規約の元、九重との間に出来た子は政府によって持ち去られてしまった。

久遠寺家、屍喰鬼達を守るのが当主としての織雅の役目だ。そして、そんな自分を『化石の女王』と皮肉げに呼ぶ織雅。

「私の欲しいものだけは決してくれないでしょう?」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 157/181

そう遠い目をしながら九重に対して囁く織雅。遠い昔、久遠寺家に来るより前のこと。九重を連れ花見をした織雅。しかし、九重は見張りをするといって、傘に入ろうともせず立ったまま織雅に背を向け続ける。花もせっかく作った菓子も、そして織雅のことも見ようとしなかった九重。

生まれながらにして総てを持っている…そう言われ続けていた織雅。華族に生まれ、美貌、才気…そういったもの総て。しかし、織雅は顔を歪めて『くだらない』と吐き捨てるのであった。

一方、墓場で戦うアリスは巨大なぬいぐるみに握られてしまい、身動きが取れなくなってしまう。それを無邪気に喜ぶメルムに、アリスは『戦いの意味を、死の意味を理解しているのか?』と問いただす。楽しそうに『ステラちゃんがみんなを殺した。だから僕もステラちゃんを殺してもいい』と答え、お茶会で死んだ子ども達の魂を弄ぶことを何とも思わない様子のメルム。武器の入ったケースに手を伸ばすも届かないアリスは月兎から託された藁人形を取り出す。

藁人形を通して、離れた場所で拘束された月兎に訴えかけるアリス。『本当にステラのことを思っているなら、ジャバウォッキーと通じているなら少しでも力を貸せ』と。結界が張られているから無駄だと笑うメルム。しかし、アリスの声を聞いた月兎は朦朧とした意識を覚醒させ、能力を解き放つのであった。

月兎の能力が発動し、墓場の空間に亀裂が生じた。しかし、それはほんの僅かで、ジャバウォッキーは顔すら出せないとメルムは大笑いする。しかし、アリスは『上出来だ』とほくそ笑む。アリスは片手ギリギリ入る空間の穴から剣を取り出し、自身を掴むぬいぐるみを切りつけると、壁際で戦いの行方を見守っていたラファエルに剣を投擲した。

剣はラファエルの胸に刺さり、崩れ落ちるラファエル。『ごめんね…』そう呟くステラ。しかし、ラファエルは淡々と『お気になさらず。確かに僕の心臓が止まれば、ぬいぐるみ達の再生は止まるので…』と言って絶命するのであった。

ドームから出てきて、再び歌を歌い始めるメルム。そして、そんなメルムの元へ近づくアリス。『みんな楽しい僕のおもちゃだったのに』と憤るメルムの頬をアリスは張った。そして、『他人の命をおもちゃにしたこと』を叱るのであった。

アリスの言葉に泣き出し、抱きつくメルム。『ごめんなさい、ステラちゃん』『本気であのこたちにステラちゃんを殺させる気はなかったよ』

「だってさ、シド兄ちゃんが言うんだもの」「よみがえらせたらさ、「ステラはオレが殺す」って」

架刑のアリス10巻 由貴香織里 174/181

その時、死んだはずの次男、志度(シド)が背後からアリスの髪を掴み、ナイフを首もとに突きつけたのであった。

以下、感想と考察

織雅の過去について

今回、一気に織雅の秘密が明らかになった。1巻冒頭、最初のお茶会の回想シーンでちゃんと織雅、お腹出てます。ちゃんと伏線があるので安心。 『なんでこいつマタニティドレスみたいな格好してるん?妊婦なん?』と初見時に思ったのを覚えてる。 海、太陽過去設定矛盾問題の後だからこういうしっかりした伏線の回収があると本当に安心できる。そして九重を拾ってあげる袴姿の少女織雅が可愛いな。同情心や優しさではなく、本気でオモチャとして欲しがっていることが伝わってくる。そして、この頃から同時に妾腹の弟サザレをイジメ抜いていたとか、真正のサディストなのがヤバイですね。それにしても、九重との花見のシーンが哀しい。ここで九重が織雅のことを見つめていれば、未来は違ったのか。しかし、あんまり年増ネタでいじったりしたり、キイキイ騒がせてあげないで欲しいな。一応ラスボスなのに、何だか小物感出てきちゃうし。

いきなり出てきて速攻で退場したラファエル君について

ラファエル君…可愛らしいショタキャラで、召し使いで久遠寺家で作られた人形で、サザレの夜の愛人、人形師でもある…これまた女オタク、腐女子がガッツリ食い付くキャラをパッと産み出せる由貴香織里先生。そして、そんなキャラを速攻で退場させる潔さも由貴香織里先生らしいと言える。長女荊(イバラ)が父、サザレの寝室で見た人物(6巻時点では影だけ登場)はラファエルだったのね。しかし、ずっと織雅とサザレに使えていると認識はしていたものの、ステラは名前すら知らなかったという…。BL枠な上に織雅には当たられるは、メルムにはこきつかわれるわ…、そして一応中立の立場なのに、ぬいぐるみの再生を止めるために、アリスに剣を胸に刺され、死亡…そんな感じでとりあえず皆からぞんざいな扱いを受け続けたラファエル君。…冥福を祈ろう。

迷走する月兎の設定~織雅の実子で両性具有?

…えーっと、月兎君の設定を整理したい。

・ステラのストーカー
・九重の孫
・霊媒体質で自作の藁人形に自分を憑依させたり、武将っぽい霊に憑依されてバッタバッタ日本刀で敵をなぎ倒したり
・霊媒体質なのは瀕死になったことで5年間も療養施設暮らしをしていたから。
→本当は月兎こそがステラが慕っていた是乃本人だった!でも霊媒体質ゆえに、精神が不安定の多重人格者(虐待?)で、是乃はその内の人格の一つに過ぎなかった。事故に遭った飛行機で一緒だったのも、その後施設で共に過ごした是乃は今の月兎。逆に飛行機事故の時にともにいた、月兎みたいな白い髪の少年は灰(ラウム)。
→最初の茶会で瀕死になった本物の是乃(今の月兎)。しかし、そこで姿を偽の是乃(灰(ラウム))に奪われていたのだ!その後5年間の療養施設暮らしで髪の毛が白くなったんだよ!
→織雅と九重の間に出来た実子でかつ、両性具有!?(New!!)

うーん…。なんというか、設定の過積載っぷりが『天使禁猟区』の吉良朔夜先輩並みになってきた様な気がしないでもない。
ちなみに『天使禁猟区』を知らない人のために、吉良朔夜という登場人物の設定とその遍歴を説明しておく。

主人公(男)の頼れる先輩(ちょいワルイケメン)→その正体は、主人公が覚醒(女天使化)した時の剣、七枝刀であった!(何で天使が日本の刀持ってるんだとかツッコんだらいけない)→主人公の前世(遊女)と恋仲だったこともある→しかし、更にその正体は魔王サタン=ルシファーであった→しかし、その正体は大天使ルシフェルであった(まあ、この辺りはキリスト教的にそうなっているからね)!!

『な…何を言っているのかわからねーと思うが(以下略)』・・・だけど、読んだことのある人なら分かると思う・・・。昔のことなのでうろ覚えかつ、若干意地の悪い書き方になっているかもしれない。しかし、由貴香織里先生は他の漫画家達が出来ない程の設定の重ね煮を平然とやってのけるッ(そこにシビれるっ、あこがれるゥと言えるのが真のファンなのだろう)。別に、海(マレ)・太陽(ソル)問題の時の様にあからさまな矛盾があるわけではない。むしろ、確かに月兎君、露出はしていないし、8巻で温水プールに皆が入ったとき、頑なに服を脱がないでプールにはいらなかったのだ。ただ、更にどんでん返しのどんでん返しな設定が出てくる可能性が高いので油断できないのだ。

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まとめ~次がとうとう最終巻…結末はどうなる?

しかし、何にしても次巻が最終巻である。ここまでで登場人物も増えており、それぞれの背景が色々と膨らんでいる。対メルム戦もかれから佳境に入るし、その先には母親である織母が立ちはだかるはず。鷲宮教団もどう動くか分からないし、ステラは是乃と月兎のだちらを選ぶか決めてない…。

…あれ、これ残り1巻で全部解決するのかな?そして、由貴香織里先生なので、最後にとんでもない何かをぶちこんでくる可能性がある。『ゴッドチャイルド』で黒幕がオーガスタだった時の『(゚д゚)』具合は忘れないぞ。月兎の設定の着地点…じゃなくて、物語がどの様な結末を迎えるのか、注目していきたい。

最終巻の記事はこちら→【漫画】架刑のアリス11巻・最終巻【感想・ネタバレ・考察】あっさりしたラスト~ステラが選んだのは月兎か是乃か?

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