幼少期の母からの虐待、無関心な父、統合失調症を発症した弟、ブラック企業での上司や先輩からのイジメ…これらのつらい経験から抑うつ状態になり苦しむユキだったが、高校時代の同級生である菅原から交際を申し込まれ、彼の転勤先で新生活を送る中、少しずつ元気を取り戻していく。しかし、幼少期からの辛い経験がフラッシュバックし、ユキを苦しめ続けるのであった…。
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→【漫画】機能不全家族７(夏目ユキ)【感想・ネタバレ・考察】恋人に救われ会社を辞めるユキだったが、辛い幼少期の記憶に悩まされ…
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Contents
以下、あらすじとネタバレ
新天地での就職と菅原との婚約～順調な生活を送るユキの元に、母から連絡が来る
ユキは新天地で一日６時間勤務の簡単な事務仕事をすることにした。毎日決まった、無理のない仕事量と、優しい仕事場の人達。『またいじめられるかも』と身構えていたユキだったが働くことへのトラウマは無事解消されていくのであった。
そして、夜には涙を流し寝付けないユキに菅原は『気持ちを分かってあげられなくてごめん』と言い、見守ってくれるのであった。そんな菅原や温かい職場のおかげで１年経つ頃にはユキの心身は回復し、薬なしでも眠れるようになっていった。
ある日、ユキは菅原に『母さんに紹介したい』と言われる。ユキは菅原を大切に思い、恩を感じているものの、恋愛感情を持っているのかと問われると自身が無かった。しかし、菅原の実母に会いに行くことにした。
うつ病だと聞かされていた菅原の母は明るくおしゃべりでユキを温かく迎える。菅原の母の姿はユキの理想としていた”ふつうのお母さん”で別れ際抱き合う菅原とその母の姿を見て、感動する。そして、ユキは働けない母の為に仕送りをする等、家族を大事にする菅原に対して『この人と家庭を築きたい』と思う様になり、婚約するのであった。
だが、そんな風に新たな一歩を踏み出そうとしたユキの携帯に、母からの電話が掛かってくるのであった。
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祖父の見舞いを機に母と再会したユキ～しかし、母の態度に『虐待したことを忘れてるのでは』とユキは思う
ユキと母が最後にあってから１０年ほど経っていた。それまでは連絡を全て無視していたのだが（接近禁止となっていた）、嫌な予感がしたユキは電話に出る。すると、母はユキに『おじいちゃん（母方祖父）が危篤状態だ』と告げる。祖父の事は好きであったユキは『母と会うことになる』と迷いながらも、祖父の入院先の病院に行くことに決めた。
ユキが祖父の病室に行くとそこには老いた母がいた。祖父は危篤とは言われたものの、意思疎通をすることはでき、ユキがやって来たことを喜ぶ。
ユキは祖父を見舞った後、母に『明日はトモちゃん（妹）とヒロくん（弟）も来る』と伝え、喜んだ母に釘を刺す様に言う。
「トモちゃんもヒロくんもお母さんには会いたくないって言ってるから、申し訳ないけど、そのときだけ席外してもらえる？」
機能不全家族８ 夏目ユキ 10/27
そのユキの言葉に、一瞬落ち込んだ様子を見せた母。だが、すぐに『お母さんは昔モテてよくナンパされた』等と言う、関係ない話を始める。困惑したユキは『お母さんは元々おかしいから』と思いつつも、『もしかして虐待したことを忘れてるのかな』と疑問を持つのであった。
翌日、弟のヒロと共に祖父を見舞った妹のトモから電話をもらったユキ。トモから『お母さんに会ってしまった』と聞いたユキは驚く。母は昨日の行人の約束を無視して、トモとヒロに接触しようとしてきたのだ。トモはなんとか統合失調症を患い精神的に不安定なヒロと母を会わせないようにしたものの、母はトモに馴れ馴れしくしてきたうえに『旅行に行こう』と誘って来たのだという。トモからそれを聞いたユキはショックを受ける。
何言ってんの？あの母親
機能不全家族８ 夏目ユキ 13/27
自分のした虐待（行い）を反省してたら、一緒に旅行行こうだなんて言葉
出てこないはずなのに
怒ったユキはすぐに母にメールで約束を破ってトモに接触したことについて、怒りをぶつけるのであった。
ユキからのメールに逆切れする母～ユキは母と電話で対決する
『トモがあなたに会いたくないと伝えたはず、トモが優しいから許されてると思ったの？』という怒りのメッセージを母に送ったユキ。すると母からはすぐに謝罪のメッセージが届くが、その後電話を掛けて来て『トモが怒っているならトモが直接言ってくればいい』『そんなに私に会いたくないなら病院に来なきゃいい』と逆切れする。
そして『私達はあんたじゃなくておじいちゃんに会いに行ったんだよ』と答えるユキに母は『おじいちゃんが転院しても伝えない』と言い、『ユキちゃんの言葉遣い、汚い』と指摘し、こう嘆く。
「あっ…お母さんがいないからそんなふうに育っちゃったのね…かわいそうに」
機能不全家族８ 夏目ユキ 17/27
その言葉を聞いて怒りのあまり硬直するユキ。かつて暴力を振るってきた時口汚く罵ってきた母に『虐待してきた時のお前仕込みだよ』と言いたくなったが、何とか堪える。そして、『トモは東京に行ったせいで冷たくなってしまった』等と文句を言い続ける母に、ユキはついに問う。
「もしかしてあんた…私たちになにしたか覚えてないの！？」
機能不全家族８ 夏目ユキ 19/27
少しでも虐待を反省していたら、そんな言動を取らないはず…そう思ったユキは勇気を出して、以前から抱き続けていた疑問をぶつけた。
すると、母は『覚えてない』と言う。それを聞いて怒りで全身が震えながらもユキはもう一度、『虐待したことを覚えていないのか』と尋ねる。すると、母は小さい声で『覚えているよ』と答えるのであった。
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母が語った虐待の理由～母の幼稚さを目の当たりにしたユキは、母に愛想を尽かす
一瞬でも『覚えてなかった』と嘘を吐いた母に激怒するユキ。自分達三兄弟がずっと苦しみ続けている事を告げ、特に妹と弟が母のことを”母親”だと思ってるからこそ、会いたくないと思って苦しんでいるのだと伝えた。
すると、母は『なんで虐待をしていたのかを話す』と言い出した。
お見合い結婚だった父と母。K大を出てそのまま医師になった父とその家族に対し、母方祖母は母が地元の農業大学出であるにも関わらず『うちの娘（ユキの母）はS女子大（お嬢様学校）を出ている』と嘘を吐く。
『学歴が大事なんだ…』そうショックを受け母。母は父の実家が代々医者の家系であることから子ども達も医者にしなくてはならないとプレッシャーを感じるようになったという。
「なかなか教育が上手くいかなくって、それで頭がおかしくなっちゃったの…」
機能不全家族８ 夏目ユキ 23/27
淡々とそう語る母。しかし、それを聞いたユキは納得できなかった。何故なら、父も父方祖父母もユキ達三兄弟に医者になることを望む素振りは一切なく、良くも悪くも学業成績にもそれほど関心を示していなかったのだ。
結局母の語る話は母が勝手に感じていたプレッシャーに過ぎず、『子ども達の出来が悪かったから虐待しても仕方がなかった』という言い訳でしかなかった。ユキははっきりと母にこう告げる。
「…それでも私たちはあんたを許さない」
機能不全家族８ 夏目ユキ 24-25/27
「私たちにしたこと、一生忘れないで」
「あんただけが幸せになるなんて絶対許さないから。私たちと同じように一生苦しんで生きてよ」
そう叫んで電話を切ったユキ。本当はまだどこか、母が自分達を愛していると信じていたユキ。しかし、母のあまりに幼稚な言い訳に、親になってもおかしくない年齢になったユキは、愛想を尽かしたのだ。そして、そのことでユキは母の呪縛から解き放たれたのであった…。
以下、感想と考察
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携帯での電話帳の登録名を”母”ではなく”出ちゃダメ”に設定しているユキ
作中、二コマだけしか出ておらず、その後特に言及していないけど、ユキは携帯で母の携帯電話を”出ちゃダメ”に登録している。
これは『母がしんどい』で知られる田房永子氏の『しんどい母から逃げる』という作品でも紹介されているけど、毒親との連絡を断つために登録名をこのようにしておくことに一定の効果があるそうだ。参考までに。
納得できない、母から語られる虐待の理由
今回、母の口から虐待に走った理由が明かされるわけだが、その理由・言い分には「？？？」となってしまう。
言いたいことは分からなくもない。地方農大卒であるにも関わらず、母（ユキ達の祖母）の嘘から、父達医者一家に対してお嬢様学校卒を演じなければならなかったこと、そしてユキ達３人の子供も医者にしなくてはならないとプレッシャーを感じてしまったということ…それらしい動機に聞こえなくもない。
だが実際は父や祖父母の誰もユキ達を医者にすることは望んでおらず、母が勝手にプレッシャーに感じていたにすぎない。被害者面して『…だから虐待しました』なんて言われてもユキだけでなく読者も納得は出来ない。
もちろん、納得できる理由があれば虐待をしていいわけではない。笑いながら『不良になれ』と言って子ども達をぶん殴っていいわけではない。だが、被害を受けた側からすれば折り合いをつけるためにも『どうして自分はこんな目に合ったのか知りたい』と思うのは当然の欲求である。
だが結局、虐待に納得できる理由がなく、母がただ幼稚なだけど気付いたユキは、それはそれで母に”愛想を尽かす”という形で吹っ切ることができたので、それはそれで良かったのかもしれない…。
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