【漫画】母親に捨てられて残された子どもの話【感想・ネタバレ】苦悩は伝わるも、結末と内容の薄さに疑問が…

母親に捨てられて残された子どもの話

育児・家庭の“問題”ものや“毒親”ものをよく読む。何故そういう話に惹かれるのかと考えると人の育った環境とそれゆえにどういう人間になるのか…ということに興味があるのだと思う。純粋に下世話なだけかもしれないが。

そんなわけで今回は『母親に捨てられて残された子どもの話』についての感想記事を書きたい。“捨てられた”という題名にインパクトを感じたため、Kindleで購入した。

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Contents

以下、あらすじとネタバレ

プロローグ~父と祖母との三人暮らしだった日々を思い出す大学生のゆき

大学生のゆきは塾でアルバイトを始めたばかり。そんな中、ゆきは一人の女子生徒を気にかけていた。その女子生徒は帰りが遅いにも関わらず誰も迎えに来ないのだ。女子生徒がシングルファザー家庭で父親は帰りが遅かったり出張していることが多い…そう塾のスタッフから聞いたゆきは自身の幼少期を思い出す。

実はゆきの家もシングルファザー家庭で、物心がついたときには父と祖母の三人暮らしだったのだ。父は仕事で忙しくゆきはほとんど会話をしたことがなく、祖母は家事やゆきの世話をしてくれるもののいつもピリピリしており、ゆきは二人に対して『どうして私にはお母さんがいないのか』ということを聞くことができなかった。

幼稚園の頃、迎えに来る祖母はいつもにこやかであったが、祖母がゆきと手を繋いでくれたことは一度も無かったのであった…。

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1話~中学校の三者面談…父、貴利は来ると約束してくれていたが…

ゆきが物心ついた頃から父、貴利(たかとし)はいつも仕事で忙しく、朝はゆきより早く起きて出勤し、夜はゆきが寝てから帰ってくる。休みの日もずっと部屋にこもっており、話しかけると『今忙しい、ごめんな』と目を合わせることもしなかった。そんな父の突き放したような態度にゆきは何も言う事が出来ず、この生活はゆきが中学三年生になっても変わることはなかった。父は入学式、卒業式、授業参観といったイベントにも一度も来たことがなかった。

そんな中、学校から“三者面談”のお知らせが配布される。普段はそういった知らせは祖母に渡していたゆきだったが、流石に進路に関わる話だったため、ゆきはプリントを父の部屋の中にドアからそっと入れた。父の部屋に勝手に入ると祖母が怒るためだ。

『父は忙しくて来られないだろう』…そう思ってはいたものの、ゆきは少しだけ期待をするのであった。

その後、友人の家に遊びに行ったゆきは友人が母親に口答えしても怒られない様子を見て驚く。ゆきの家では父や祖母に口答えなんてしたら、祖母が激怒するのだ。仲が良さそうな友人とその母を羨ましく思いながら帰宅するゆき。友人の家は今晩鍋にするというが、ゆきは家族と鍋を囲んだことが無いのだ。

帰宅すると祖母は早速『何時だと思ってる!』と帰宅時間について叱りつける。そして、ゆきがおずおずと『まだ四時半』と答えると、『口答えするんじゃない』と激昂する。このように祖母は些細なミスでもゆきのことを怒鳴りつけるのだ。

そんな中、早く帰宅してきた父が三者面談のプリントを持って二人の元にやって来る。祖母はゆきが三者面談の知らせを自分ではなく父、貴利に渡したことを怒るが、父は意外にもゆきにこう言うのであった。

「俺が行くよ」
「将来のことだもんなあ」

母親に捨てられた女の子の話 菊屋きく子 19/136

父の言葉に『本当!?』と大喜びするゆき。ワクワクしながら三者面談を楽しみにするのであった。

三者面談当日、教室で自分の番を待つゆき。自分の番になり、三者面談の部屋にドキドキしながら入るが、そこに来たのは祖母であった。『いつもお世話になっております』とにこやかに挨拶する祖母に対して、落胆し泣くのを堪えるゆき。『お父さん仕事が入っちゃったのかな…』等と思いながら『期待するとその分傷付く』ということを学んだのであった…。

2話~先生から“救いの言葉”を掛けられるも、自身の気持ちを口に出来ないゆき

早速三者面談は始まるが、ゆきは父が来なかったショックで集中することが出来ず、そんなゆきを祖母は『この子は家でもモゴモゴしていて、しっかりしていない』『母親がいないせいで至らない点が多くて情けなく恥ずかしい』と貶す。

それを聞いたゆきは『自身は母親がいないせいでちゃんとしておらず、だから父親から関心を持たれないのか』と落ち込んでいく。

すると、担任の男性教師は『確かに家庭環境が性格に与える影響は大きく、ゆきさんは他人を優先して自分のことを後回しにする傾向は大きいが、よく周囲を見ていて気を遣える優しい子です』と褒める。そして、進路について『ゆきは父親と違って出来が悪いが、女子校に入れたい』等と勝手に話し続ける祖母を制止して『ゆきさんはどうしたいの?』と尋ねるのであった。

「もっと自分の意見を言っていいんだよ」
「ゆっくり考えて大丈夫」
「おばあさま ご家庭でももっとゆきさんの話を聞いてあげてください」

母親に捨てられた女の子の話 菊屋きく子 26/136

微笑みながら担任の男性教師はゆきと祖母にそう言うのであった。

三者面談の部屋から出た祖母は『何もわかってないくせに』と担任教師に文句を言い、ゆきは思わず『すごくいい先生だよ』と言ってしまう。すると、祖母は『なるほど、男の先生だもんね』と嫌そうな顔をする。ゆきにはまだ祖母が何を言いたいのか分からなかった。ゆきはただ、担任教師に自身を肯定してもらったことを嬉しく思っていた。

その晩、ゆきの部屋に父が訪ねて来る。笑いながら『今日はごめん、仕事になっちゃって』と言う父にゆきは本音を…『楽しみにしていたからお父さんに来て欲しかった』と言ってやりたかった。しかし、結局ゆきは父の機嫌を損ねないように『おばあちゃんが来てくれたから大丈夫だった』と笑って言う事しかできなかった。

そして、父が立ち去った後ゆきは一人泣き出してしまう。担任は『自分の意見を言ってもいい』と言ってくれたが、ゆきは『誰も私の話なんて聞いてくれない』と感じるのであった…。

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3話~初潮を迎えたゆき…しかしそんなゆきに祖母は嫌悪感を示して

前日から腹痛に悩まされていたゆき。そして、その原因は初潮であった。実はゆきは家庭環境のストレスのためか中学三年生になっていたにも関わらず生理が来ていなかったのだ。

突然生理になってしまったゆきは保健室に駆け込み、ショーツとナプキンを借りた。保健室の養護教諭は『おめでとう』と言ってくれたが、『おうちの人にも話してね』とも言い、ゆきは戸惑う。そのまま汚れた下着を入れた袋を持って帰宅したゆきだったが、祖母と出くわすと思わず袋を隠してしまう。その挙動を見逃さなかった祖母は『何を隠したんだ』と袋をゆきから奪うと中身を見て『なにこれ!?』と叫ぶ。

「生理が来たなんてああいやだ!」

母親に捨てられた女の子の話 菊屋きく子 34/136

そう言って袋を投げ捨てる祖母。ゆきはその後、一人でドラッグストアに行きナプキンを買いに行く。祖母の汚いものを見る様な目つきを思い出し傷付くゆき。そして、自身が母親になれる身体になったことについて考えると自然と『私の母親は私を妊娠した時どう思ったのだろうか』『もしお母さんがいたら初潮が来たことをお祝いしてくれたのか』等と考えてしまう。ゆきは赤飯のおにぎりを買い、一人公園で食べるのであった。帰宅すると祖母の作った夕飯はいつも通り父の好物が並んでいるのであった…。

4話~祖母の誤解による叱責から、ゆきは突然母親の”真実”を知ることになる

ゆきは中学三年生になっても小遣いを与えられておらず、必要なものがある都度祖母にお金をもらっており、それも購入後祖母にレシートを見せなくてはいけなかった。レシートがない駄菓子などは持ち帰ったゴミをチェックする等、祖母の監視は厳しく、生理後ゆきの胸が大きくなりブラジャーが必要になると『色気づいて』と吐き捨ててリボンのないスポーツブラを与えた。元々厳しかった祖母だが、生理後さらに厳しくなっていったのであった。

そんなある日、ゆきは同級生の一人からコンドームを押し付けられる。姉からもらったというその同級生はふざけて渡してきたものの、ゆきは『こんなものを持っていたら祖母に怒られる』と動揺する。しかし、その辺りに捨てることも出来なかったゆきは帰宅するとコンドームを自分の部屋の机の奥に隠すのであった。

しかし、ゆきがお風呂から上がって部屋に戻ると、ゆきはいきなり祖母からビンタされる。祖母はゆきの様子がいつもと違う事に気付いてゆきがお風呂に入っている間に部屋を物色してコンドームを見つけ出したのだ。

『友達からもらったもの』とゆきは慌てて弁解するも激昂した祖母は『使うつもりだったのか、それとも使ったのか!?』『ブラを買って色気づいたのもそのせいか』と一方的にゆきを詰り話を聞こうとしない。そして、『お前には男好きの血が入っている』と叫ぶのだ。

「あんたを捨てて男と逃げた母親と一緒だよ!」
「いくら憎くてもうちの血が半分入ってるから可哀想だと思って引き取ってやったのに…!」

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その祖母の言葉に愕然とするゆき。今まで祖母や父に母のことを尋ねたことが無かったため、漠然と『病死や交通事故死』等と想像していたので、浮気や不倫とは思わなかった…というより思わないようにしていたのだ。何より愛情に飢えた中で顔も名前も知らない母親の存在が拠り所になっていたのだ。そのため、突然突きつけられた『母親は自分を捨てて男と逃げた』という真実にただただショックを受けるのであった…。

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5話~自分が”捨て子”だったという話を聞いたゆきは『ここからいなくなりたい』と思い始める

『母親は男を作って出て行った』…突然そう聞かされたゆきはショックを受ける。そんなゆきに祖母は、母親は当初2歳だったゆきを連れて出て行ったものの一ヶ月後にゆきを置きに帰ってきたこと、そしてその時のゆきは全身痣だらけで連れて行った病院で『男から虐待を受けた可能性がある』と言われたと語る。その当時のゆきは男性を怖がり、父親である貴利と二人きりになると怯え、拒絶したという。

『半分は貴利の血が入っているし、母親の男から虐待されて殺されてしまったら可哀想だと思って面倒を見続けたのに…』と怒りに身体を震わせる祖母は『中学生で性行為なんて汚らわしい!』と叫びながらゆきを殴り続けるのであった。

動揺したゆきは祖母の誤解を解くことも出来ず、その後は一人部屋で寝込んでしまった。しかし、あまりのショックで寝付くことも出来ず、リビングで水を飲もうとする。すると、そこで父と出くわしてしまう。

祖母から話を聞いていた父は『顔真っ赤だな』とゆきの腫れた頬を見て笑う。『娘がここまで殴られたのに何故笑っていられるのだろう』とショックを受けたゆきは『コンドームは友人に押し付けられたもの』と弁解しようとするが、父は

「まあ 殴られるようなことをしたんだから当然だろ」
「どうでもいいけどさ あまり俺たちに迷惑かけるなよ」

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そう言うとさっさと自室に入ってしまった。

残されたゆきは『自分の存在は迷惑なんだ』と感じ、立ち尽くす。いつも閉まっている父の部屋のドアは、娘を拒絶する父の心の壁そのものだと気付くゆき。幼少期自身が父を拒絶したという話を聞いたが、そんな記憶はないため、ただただ父の無関心が辛かった。何よりも『どうでもいい』という言葉が自分の存在そのものに投げかけられたものに感じられたのだ。

自身に無関心な父。そして、幼いゆき一度は連れて出て行ったものの、男を取り、その男に暴力を振るわれても助けず挙句この家に置き去りにしていなくなったという母。『自分はお父さんにもお母さんにも見捨てられた”いらない子”』…そう思ったゆきは『ここからいなくなりたい』と強く感じるのであった。

6話~衝動的に”死”を願うゆきだったが、”現実”を見つめ始める

『自分は母から捨てられ、父にも関心を払われない”いらない子”』…そう思ったゆきは『ここからいなくなりたい』と考え、この家から出て行く方法を考える。しかし、ゆきはまだ中学三年生。元々小遣いをもらっていないゆきは自由に使えるお金もなく、出て行ったとしても働く場所もなく、騙されて犯罪に巻き込まれる未来しか見えない。

そこまで考えたゆきは『だったら死んでしまっても構わない、どうせ誰も悲しまない』と自殺について考え始める。そして、机の上にあったカッターを手首に当てる。

ここでもし自分が死んだらどうなるかを想像してみるゆき。父や祖母が『自分達のせいで…』と涙を流し後悔する様子を思い浮かべた。

しかし、ゆきはすぐに『あの二人が後悔なんてするはずがない』と気付く。どうせ父と祖母は悲しみもせずに『後処理が面倒くさい』と思うだけで、『せいせいした』と言いかねない。

改めて『何故自分が死のうと思ったのか』を考えるゆき。母に捨てられ、父に愛されず、祖母からはいじめられる、そんな”可哀想な私”だから…そう思いを巡らせたゆきは『自分が少しでも愛されているということを確認したい』という理由で死を選ぼうとしている事に気がつく。

その時、突然祖母がゆきの部屋のドアを開ける。ゆきがカッターを手首に当てていることに気付いた祖母は『私達への当てつけに死のうっていうのか!引き取らなきゃよかった!』と怒鳴りながらカッターを取り上げる。

すると、ゆきは『だったら捨てて、施設に入れれば良かったじゃない!』と言い返す、普段大人しいゆきが反抗したことに祖母は驚き、『施設に入れるなんてみっともない、貴利の血が半分入っているから…』と言うが、ゆきは『うるさい!それでも憎いし汚いんでしょ!』と泣きながら叫び、言う。

「私だってこんな血いらないよ!!!」

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その剣幕に呆然とする祖母をゆきは『出て行って!』と無理矢理部屋から追い出す。

ゆきは『どうあがいても現実は変わらないけど、自分を可哀想と思うのはやめて現実を見よう』と決意するのであった…。

7話~生きる意思を取り戻したゆきは今後のことや母と連絡を取る事を考える

生きる意思を取り戻したゆきは家から出ることを考え、インターネットカフェで児童養護施設について調べる。しかし、児童養護施設に入れるのは病気や貧困、虐待等で保護者の養育が困難な場合。ゆきは自分の状況では入るのが難しいと考えた。

そして、『母親が男に虐待された自分を捨てた』という話について、『母は助けるために父の元に自分を置いて行ったのではないか』と考え始める。『母が男を作って逃げた』という話もあくまで父・祖母目線の一方的な話である可能性もあるのだ。

そう考えたゆきは祖母がいない隙に祖母の連絡帳や父の部屋に何か母と連絡を取るための手掛かりが無いか探す。しかし、ゆきは母親の名前も知らないため父の連絡帳を見てもよく分からない。

そんな中、父の手帳の中に名前の無い電話番号だけ書かれた箇所を発見する。『もしかして…』と思ったゆきは緊張しながらその番号に電話してみる。すると、『はい』と女性が電話に出た。ドキッとするゆきだったが、そこは居酒屋だった。脱力しながらゆきは『すみません、間違えました』と言って切る。

お母さんじゃなかった…その場にへたり込んでしまったゆきはガッカリしたようなほっとしたような妙な気持ちになる。しかし、このことがキッカケで少しだけ前に進める気がするのであった…。

8話~突然再婚することを告げてきた父とゆきは決別する意思を固める

祖母に言い返したり、こっそり父の部屋に入って母の手がかりを探すようになる等変わって来たゆき。そんなゆきに対して祖母はよそよそしく、避ける様な態度を取るようになった。

そんなある日、父が突然ゆきに『話がある』と言い出す。もしかして自殺しようとしたことを祖母から聞いたのか、それとも部屋に入っている事がバレたのか…緊張するゆきだったが、父の話はもっととんでもないものだった。

「お前に紹介したい人がいるんだ」(中略)
「その人と結婚したいと思ってる」

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なんと父は会社の5歳下の部下の女性と再婚するというのだ。想像もしていなかった事を言われたゆきはただ呆然とする。父は『男手一つで娘を育てているといったら彼女に感動された』とニヤニヤ笑いながら上機嫌で語る。ゆきは『私の事全部おばあちゃんに丸投げにしてきたのに何言ってるの?』と目の前の父が何を言っているのかが理解できずに絶句してしまう。

更にその女性は既に妊娠しているというのだ。凍り付くゆきに気付く様子もなく父は『次は男の子がいいな』と笑う。

そんな父を見たゆきは『今まで父が自分のことを見てくれていないと思っていたけど、自分も父を見てこなかったんだ』と気付く。父は話が通じない、別の世界に生きる”宇宙人”だとハッキリ思ったのだ。

父は再婚するにあたって新しい家に引っ越そうと考えていると言う。『ゆきも高校生になるしいいタイミングだ』と笑顔で提案する父にゆきは『私はこの家を出て行く』と告げた。そして、『家族が増えるのに、母親が出来るのに嬉しくないのか?』と驚く父に涙を流しながらも笑顔を作ってこう言うのであった。

「ここに私の居場所はないから」
「お父さんは自分だけ幸せならそれでいいんだもんね」

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以前なら父に嫌われることを怖れて、何を言われても受け入れてきたゆきだったが、現実を見つめようと決めた今、この家庭に居場所がないことを認め、正直な気持ちを父に言う事が出来たのであった…。

9話~父に突然老人ホームに放り込まれた祖母の手を初めて握ったゆき

祖母は出来の良い息子である父を誇りに思っており、父の世話に生きがいを感じている人であった。しかし、父が再婚を考えており、相手が既に妊娠5か月だと聞かされると『なんで…』と愕然とする。

そして、そんな祖母に父は笑顔で介護付き老人ホームのパンフレットを渡す。

絶句する祖母に父は『母さんも年だし…』とさも祖母の事を思いやっているような口ぶりだが、ゆきは父が再婚相手に男手一つでゆきを育ててきたと言っている手前、祖母の存在が邪魔になり捨てようとしていることが分かった。

祖母は孫のゆきのことを嫌いながらも日常の世話を全て担って来た。それはなによりも息子である貴利のためだったのだ。にも関わらず、邪魔だと感じた途端あっさりとそんな祖母を捨てた父。ゆきはそんな父のことを『父としても息子としても最低』と感じる。自身を散々イジメてきた祖母が嫌いであったが、父に捨てられたことを悟って肩を震わせる祖母の後ろ姿を見て可哀想に思うのであった。

祖母は父に提案に従い老人ホーム行きを受け入れる。父は祖母に提案する前から入所の手続きをしていたようで、すぐに祖母は老人ホームに行くことになった。

入所の日、荷物を運ぶのを手伝ったゆき。祖母はすっかり悄然としておりゆきにきつく当たっていた面影を失っていた。父が入居の挨拶のために席を離れると、ふらりと立ち上がった祖母がバランスを崩して倒れそうになった。とっさにゆきが支えるが、祖母が思いのほか小さく弱弱しい身体をしていることに気付き、『こんなに小さかったっけ?』と驚く。

そんなゆきを祖母は忌々し気に睨み、『本当に母親に似ている、憎々しい』『あんたの母親のせいで人生が狂わされた』と吐き捨てる。しかし、どこか笑いながらこう言うのだ。

「あんたにキツく当たって来たあたしが言うことじゃないけどさ」
「最初はかわいがろうと思ったんだ 自分の孫として」

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しかし、ゆきを見るとどうしてもゆきの母親の顔が浮かんでしまい、愛することが出来なかったという。少し前にゆきから『こんな血いらない』と言われたことで色々と考えたという祖母。『血が繋がっている家族なのに愛せないこともあるのだ』…そう思ったのだ。

最後の最後に本心を明かした祖母。祖母はゆきに『もう顔を見なくて済んでせいせいする』と最後の最後まで意地の悪いことを言う。ゆきもそんな祖母に対して泣きながら『私だって』と言い返す。すると、祖母は『もうここに来るんじゃない』言うのであった。

「この先あんたがどうしようと連絡なんかしなくていい」
「自由に生きな」

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それがゆきが祖母と会った”最後”となった。この時、ゆきは生まれて初めて祖母の手を握った。それは小さくて頼りなく、しわだらけで冷たい手であった…。

10話~やってきた父の再婚相手…ゆきは寮のある高校に進学することを決意する

祖母が老人ホームに入居した2週間後に父は再婚相手の女性、まりを家に連れて来た。まりは穏やかな女性でゆきにもにこやかに接する。

そんなまりを見たゆきは『父が男手一つで自分を育ててきたというのは嘘』と真実を暴露したらどうなるだろうかと考える。『もしかしたらまりさんは怒って結婚をやめるかもしれない』…そう想像するゆきだったが、まりが既に妊娠している事を思い出し、お腹の子を不幸にしてしまうかもしれないと考え、黙っておくことを選んだ。

そして、自身を祖母に任せて好き勝手生きてきた父、自身を憎みキツイ態度を取り続けてきた祖母について、『妻に浮気をされ、娘を育てるプレッシャーを抱えなくてはならなかったのだろう』『息子に孫の世話を押し付けられて大変だったのだろう』と見方を変えて受け入れようと思い始める。

みんなが誰かを傷つけて誰かに傷つけられてる

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そう考えることにしたゆき。自身を捨てた母にもきっと何か事情があったのだろうと思うのだ。そして、これから生まれる弟か妹が幸せになることを願うのであった。

そして、ゆきは友人に高校は寮生活をすることに決めたことを明かす。高校には自宅からでも十分に通える距離であったが、『自分の居場所はここにはない』とハッキリ悟ったゆきは自立を目指すことにしたのだ。

それを聞いた友人は驚きながらも『自分も親から離れたい』と明かす。友人とその母親は非常に仲良く見えるが、実は友人は母親が心配性のあまり過干渉な性格で、そのせいで父親が帰って来なくなってしまったというのだ。友人の家庭を羨ましく思っていたゆきは『どんな幸せそうに見える家庭でも壁の中はどうなっているかは分からないものだ』と知る。そして、以前担任教師の言葉で自身が救われた様に、自身と似たような境遇で苦しんでいる人がいたら『もっと自分の意見を言ってもいいんだよ』と伝えてあげたいと思うのであった…。

11話~父の回想…ある日突然妻に出て行かれた父、貴利は…

ゆきの父、貴利は高校時代から付き合っているゆきと25歳で結婚。その1年後にゆきが生まれ、順風満帆な人生を送るかと思われた。妻と娘のために仕事を頑張り出世し、沢山稼ごうと思っていた貴利。残業と出張のため、中々娘のゆきと過ごす時間を取れなかった。

そのためか、娘のゆきは貴利になかなか懐かなかった。妻のさきは『パパの顔をあまり見ることがないから覚えられない』と言い、そのどこか非難するような言い方に貴利は『二人のために頑張っているのに…』と苛立ち、ますます仕事に対して熱中する様になった。

しかし、そうすればそうするほど妻のさきは不満を抱き、『全然家にいないじゃない』と貴利に言って来た。『パパがいないとゆきだって寂しい』とさきは言うが、ゆきは一向に貴利に懐かない。イヤイヤ期だとさきは言うが貴利はゆきに『いや』と言われるたびに腹が立ってしまうのだ。そして、貴利はさきに対して『家が汚いからゆっくりできない』と言い放つ。そんな貴利にさきは『家のことを手伝って欲しい』と言うが、貴利は『仕事で疲れてるのに家事もやれというのか、誰のおかげで生活が出来ていると思ってるんだ』と怒るのであった。

それから数日後、夜貴利が仕事から帰宅すると家の中にさきとゆきの姿は無く、ただ『探さないでください』という書置きだけが残されていた。それは貴利が結婚して3年目、娘のゆきが2歳の時の事であった。

そして、さらに1か月後…貴利が帰宅すると家の前でケガをしたゆきがドアの前で一人でじっと座り込んでいた。ゆきは顔や手に痣が出来ており、慌てて母(ゆきの祖母)が病院に連れて行くと『男に虐待された可能性が高い』と診断される。『俺が必死に働いている間にさきは浮気をしていたのか』と怒る貴利。そして、ゆきが父親である自分が近づくと怯えて泣き出すことにもショックを受ける。ゆきは男に虐待されたせいで男性を怖がるから仕方がない…貴利は『ゆきが自分を見て泣くのは昔からの事だ』と自身に言い聞かせ、『せめてゆきを不自由なく生活させてやろう』と決めた。それが娘を捨てたさきに対するせめてもの報いだったのだ。

それ以降貴利はゆきの世話を母(ゆきの祖母)に任せて前以上に仕事に熱中していく。ゆきが寂しそうにしているのは分かっていたが『俺だって必死にやっている』と思っていたのだ。しかし、貴利もそんな毎日に疲れを感じていたのであった。

ある時別の支社からやってきたまりに仕事を教えることになった貴利。次第にまりと親しくなり、三か月後には交際を始めた。貴利がバツイチで娘がいることを打ち明けてもまりは受け入れてくれた。そして、二人は子供を授かった。

まりは『多感な時期のゆきちゃんが許してくれるかな』と心配していたが、貴利は『ゆきは母親と、そして弟か妹ができて喜ぶに違いない』と思っていた。同時に今までゆきの世話を頑張ってきた母親(ゆきの祖母)についても『そろそろ休ませてやろう』と老人ホームの申し込みをするのであった。

明るい未来が待っている…そう信じて疑わなかった貴利。しかし、現実はゆきに『お父さんは自分の幸せしか考えていない』と言われてしまった。家を出て行くというゆきにショックを受けた貴利。『こんなにみんなの事を考えているのに、何故さきもゆきも俺から離れていくんだ?ただみんなで幸せになりたかっただけなのに』と落胆するのであった。

12話~祖母の回想…ゆきを愛そうとしても愛せなかった祖母

息子である貴利が何より大事だった祖母。貴利が高校の同級生のさきと結婚した時は寂しさを感じながらも幸せになってほしいと願った。祖母から見たさきは控えめで大人しい女の子であった。

それから一年後、貴利とさきの間にゆきが生まれた。初めての孫に祖母は『かわいい』と大喜びした。息子夫婦と孫と幸せな生活が待っていると思っていたのだ。

しかし、ある日貴利は傷だらけになったゆきを突然連れてやってきた。驚く祖母に貴利は『実はさきがゆきを連れて家出をしていて、突然ゆきだけ傷だらけになって戻って来た』と言う。『母さんには言えなかった、どうしていいか分からない』と泣き出す貴利を残し、祖母はゆきを連れて急いで病院に向かった。

病院の診察の結果、ゆきは顔と背中と足に打撲を負っており、男性に対して異様に怯えることから『男から殴る蹴るの暴力を受けた可能性がある』と意思から告げられる。それを聞いて愕然とする祖母だったが、すぐにさきに対して『男と浮気をして息子と孫を不幸にした、ゆるせない』と強い怒りを覚えた。

その後、虐待の事実とさきの親権放棄でゆきの親権は息子である貴利が持つことに決まった。仕事で忙しい貴利に代わり、自身がゆきをしっかり育てようと決めた祖母。

しかし、ゆきが成長してどんどんさきに似ていくにつれてゆきに対して”煩わしい”、”憎い”という感情が膨れ上がっていく。どうしても『さきがバカなことさえしなければ』と思ってしまうのだ。

せめて周囲にこんな気持ちが悟られない様に、みじめにならない様に外ではにこやかにしていよう…そう徹底した祖母だったがゆきと手を繋ぐことは出来なかったのだ。ゆきと手を繋いだのは老人ホームで別れた時くらいだった…。

そんなことを老人ホームで一人回想する祖母。貴利に老人ホームに追い込まれ落ち込んでいた自分の手を取ったのだゆきであることを皮肉に思うのであった。

ゆきに大して冷たく当たったことを後悔はしていない祖母。未だにさきのことは許せず、ゆきを可愛いとは思えないのだ。しかし、ゆき自身は何も悪くないことも分かっているし、今となっては息子である貴利の方が育て方を間違ったのではないかと思う日々なのだ。

せめてあの手を握り返してくれる人が現れたらいいと思う

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この先二度と会う事がないであろうゆきに対して祖母はただそう思うのであった…。

エピローグ

その後、ユキは寮のある高校に進学し、そこを卒業すると大学に進学し塾講師のアルバイトを始めた。当初は大学進学にあたって奨学金を利用しようとしたが父がお金を出してくれたのだ。まだ小さい弟もいるのに大学の学費を払ってくれた父に『お金に不自由させないのも愛情だ』と大人になって気付くのであった。

ある日、塾講師のバイトを終えたゆきはコンビニで一人の女子生徒を見掛ける。彼女は例のシングルファザー家庭の少女だった。

『家に帰りたくなくてコンビニで時間を潰しているのではないか』と心配したゆきは思わず少女に『お迎えがないなら途中まで先生と帰ろうか?』声を掛ける。

昔の自分を思い出したゆきは『人に頼っても甘えてもいいし、今の状況にしがみつかず逃げても大丈夫』と伝えてあげたかったのだ。

すると、少女の父親がやってくる。少女は父親とコンビニで待ち合わせていたのだ。少女と父親はとても仲が良さそうでゆきは『私とは違う』とホッとする。だが、少女はゆきに『気にかけてくれてありがとうございました』と嬉しそうに言うのであった。

少女の言葉に暖かい気持ちになったゆきは自分もまた一歩前に進もうと思うのであった。

~終わり~

以下、感想と考察

やや批判的な感想が多いです。

値段に見合わない内容の薄さ

いきなりお金の話をするのはどうかと思うが、読み終わった直後に最初に思ってしまったのが、『値段と内容が釣り合わないな…』ということだった。

というのもこの作品はページ数が136ページであるのに対してkindleで990円、紙だと1100円だ。まあ、この手のコミックエッセイは200ページ500円前後の雑誌連載漫画の単行本と比べて割高なのが一般的なのだが、それにしても高く感じてしまう。それは、単にページ数だけの問題ではなく、内容それ自体も正直物足りないからだ。具体的な理由は3つ。

理由①中学生時代の話でほぼ終わってしまう

まず、エピローグが終わるといきなり話が中学時代から始まり、ほぼ中学時代~大学生までの短い期間しか描かれていない(それも内容の大半が中学三年生の時のもの)。例えば幼少期だったらその時期特有の寂しさだったり悲しさがあったのではないかと思うのだが、具体的なエピソードは『幼い頃から手を繋いでもらえなかった』位しかないため、このゆきが幼稚園~小学校時代にどんな暮らしぶりだったのかがやや想像しにくい(恐らく、中学生時代と大差なく、父と祖母から冷淡な扱いを受けていたのだろうが)。もしかしたら、母の交際相手から受けた虐待のせいで幼少期の記憶がおぼろげなのかもしれないが、タイトルと表紙(寂しそうにしている幼稚園の制服を着た女の子が一番大きく描かれている)を見た読者は『親に捨てられた”幼い”女の子の暮らしぶり』が描かれると期待して読むと思う。

また、家を離れた後の寮暮らしの高校生活や大学生活もサラッと流されてしまうので、そこに寂しさがあったのか、それとも友人等に恵まれて幸せに過ごせたのかも良く分からない。

理由②体験談に終始してしまい、作者独自の考察や主張、メッセージが特にない

他作品(それもややジャンルが異なるもの)と比較するものではないのだろうが、例えば『母がしんどい』や『ゆがみちゃん』の様な『何故親はこういった行動を取ったのか』『子どもはそれに対してどう行動を起こせば良いのか』といった考察、意見があまり無く、ただ作者の体験談?に終始してしまったからだ(ちなみに“?”をつけたのには理由がある)。

まあ、『家族に対して諦めを持つのも大事』『家に居場所がないなら寮のある高校を選んで出ていけば良い』というのもメッセージと言えばメッセージなのだろうが、“母親に捨てられた”とか“シングルファザー(祖母)に育てられた”と強調するなら、もう少し母親に捨てられたことへの苦悩を描いたり、他の家庭の例を調べるなりして、シングル家庭(シングルファザーやその祖母に育てられる家庭)が陥りやすい問題やその原因等について、作品として世に出すなら当事者として考察してほしかった。

理由③そもそも、これはどこまでが体験談でどこからがフィクションなのか…唐突な祖母目線・父目線の話に疑問が

そして、個人的にこれが一番引っかかってしまうところなのだが…。
私は当初この話をノンフィクションの体験談だと捉えながら読み進めていたのだが、ラスト間際で祖母目線の話と父目線の話が入ってきた事で、「体験談…?」となってしまったのだ。

果たしてこのエピソードは実際に祖母と父に聞いた話なのか、それとも勝手に想像して描いているのか…恐らく後者だろう。作者(主人公)は間違っても父と祖母とそんな深いところまで突っ込んだ話を出来る間柄や環境にないし、仮に対面なり手紙なりで父と祖母の本心を尋ねたのならばそここそ描くべきエピソードだろう。

そういう訳なので、きっとこの2つのエピソードは作者が祖母と父の言動や断片的な情報から彼らの気持ちを想像して描いているのだろうが、だとしたらちゃんと『恐らくこんな気持ちだったのだろう』とか『きっと彼らはこう思っていたんじゃないか』みたいに、あくまで作者(主人公)の推測に過ぎないことがちゃんと分かるように描くべきだろう。そういった前置きが無いため急激に“フィクション”っぽさが出てきてしまうのだ。

大体、祖母の回はまだ納得がいくのだが、父親メイン回では本当に父はそんな風に思っているのか…。作者(主人公)は『父は父なりに母と娘を思いやって自身の役目を果たそうとした。ただ、想像力が足りなかっただけ』という風に描いていたけど、父親は何か本当にゆきのことも祖母のこともどうでもよく思っていてかつ自身の思い通りに動かそうとしていただけにしか思えない。

あとがきの内容からしてもこの作品は作者である菊屋きく子氏がある程度自身の体験を元に描いた作品なのだと思われるのだが、何とも言えない中途半端さを感じてしまうのだ…。

中途半端さは”リアル”なのか…結局よく分からないで終わってしまった”母親”のエピソード

そして、中途半端なのはタイトルにもある”母親”の存在だ。

結局、作中でゆきは母親に会う事も話す事もなかったため、ただ祖母から聞いた『ある日突然消えて、男性から殴る蹴るの虐待を受けた形跡のあるゆきを突然家の前に置き去りにした』という話を信じるしかない。

しかし、これはあくまで祖母(+父親)目線の話でしかなく、ましてや彼らは普段からゆきを疎んでいるので、本当にこの話を信じていいかも分からない(まあ、そんなことは主人公であるゆき自身が一番よく分かっているのだろうけど)。

そんな感じなので、はっきりいって物語としては全然スッキリしないでモヤモヤが残る終わり方をしている。しかし、もしこれが実話、本当に体験談なのだとしたら「まあ、現実はそんなものだよね…」という”リアル”さであるとも言えるだろう。(逆にもしこの作品が純然なフィクションなのだとしたら、なんのために描いたのか…?と言いたくなる中途半端さである)

ゆきは母方の親族との付き合いは断絶しているだろうし、話を聞ける相手は祖母、父しかいない。そして、その祖母と父だってまともに話を出来る間柄ではないのだ。更に、祖母は老人ホームに行ったきり、ゆきと会う事は無くなり、父は再婚相手とその子どもに夢中でますます母の事なんて尋ねることはできない。

そういった意味ではうすら寒いが、とてもリアリティのある結末だと感じる。

本作の父親とお金を出すことも一種の愛情だという考え方について

本作は何かというとゆきに冷淡で厳しく接し、過干渉…というよりも監視してくる祖母もまあ、嫌なキャラクターなのだが、それ以上に『迷惑を掛けるな』と言って一切娘であるゆきに関わろうとしない父親が元凶の様に感じられて仕方がない。なので、まだ『突然孫の育児を背負わされ苦労し、挙げ句その孫は息子を捨てた女にそっくりで愛せなかった』という祖母の言い分は理解出来るし、そのため父が再婚を決めるや否や捨てるように老人ホームに放り込まれたのも「ざまあww」みたいに嘲笑うことは出来なかった。イヤイヤで酷い態度だったがそれでもゆきの世話をしてきた祖母よりも、お金を稼ぐ他全く関わろうとしなかった父親の方がよっぽど問題ありだと思う。

でも、『金を稼いで養ってやっていれば十分だろう』と思っている親って結構いるんだろうな。偏見かもしれないが特に男性の中に一定数そういう人がいる気がする…。女性に比べると対話が得意ではない人の割合が高いからなのだろうけど、『自身の親としての役目=お金を稼いで養う事』としか捉えていなくて、子供とコミュニケーションを取るという事を疎かにしていたり、そもそも必要だと思っていない人。『機能不全家族(夏目ユキ)』の父親もこういうタイプだったっぽいし。

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まあ、でも現実的に考えると、確かにラストでゆきが言う様に『”お金に不自由させない”というのも愛情の一つ』ではあるのだろう。子どもの頃や若い頃はこういう”子どもに金は与えるけど関心は払わない”系の話やキャラクターを見ると「金があっても愛情がなきゃ意味ねえよ!」とか思っていたけど、歳を取ると金を稼ぐことの大変さ、家族を養う事の重圧が理解できるようになるので、「確かに子どもにお金を出すことも一種の愛情だよな…」と思えるようになる。

だって現実には”愛”だけでなく“金”も子供に出そうとしない親なんていくらでもいるからな…。

でも、世話も会話もほとんどせず、ただ金だけ稼いで渡すって、それじゃあ『面倒で迷惑な存在』みたいに子供のことを負債のようにしか捉えなくなってしまうのではないか…と思ってしまうのだ。

まとめ~複雑な家庭で育った苦悩や『家庭以外の居場所を見つければよい』というメッセージは伝わってくるが、少々物足りない内容

以上、否定的な感想ばかりを述べてしまったが、『この先どうなるのだろう』と続きが気になる様な書き方がされているので、スイスイと読み続けることが出来るし、『冷淡な上に暴言暴力過干渉な祖母と無関心な父親との暮らしは窮屈で愛情に飢えて育ったんだな…』と内容も分かりやすい。似たような境遇で育った人なら『ああ、分かる…』と共感できるかもしれない。自殺を思いとどまるところで『私が私を可哀想と思うのはやめて現実を見よう』と考えるシーンは良かった。最終的に主人公が『私の居場所はここではない』と家庭に居場所を求めるのを諦め、外に向って行くのも似たような境遇で苦しむ人へのエールと言えるだろう。

しかし、どうしてもエピソードの少なさや、体験談に終始してしまっている内容の薄さが気になってしまった。

いわゆる”毒親”ものや家庭もののコミックエッセイを読んだり集めたりするのが趣味の人には薦めることが出来る。

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