【漫画】血の轍4巻【感想・ネタバレ・考察】吹石の愛が静一を救う!?正面衝突をする毒母、静子と吹石!!そして静一が選んだのは…

血の轍4巻表紙

Warning: Undefined array key 4 in /home/yage/nekokurage.com/public_html/wp-content/themes/first/functions.php on line 501

Warning: Undefined array key 6 in /home/yage/nekokurage.com/public_html/wp-content/themes/first/functions.php on line 506

前巻で息子である静一への支配を強めた母、静子。主人公、静一は身動きが取れなくなる一方、内心で静子への疑念を深めていった。長い夏休みが終わり、二人の関係はどうなっていくのか…。押見修造の『血の轍』4巻の感想・ネタバレを書いていきたい。

『血の轍』3巻の感想はこちら
『血の轍』1巻の感想はこちら

最新刊の記事はこちら
【漫画】血の轍10巻・最新刊【感想・ネタバレ・考察】静子と決別することを誓った静一は再び吹石と交際し、未来へ向かって歩み出そうとするが…。

スポンサーリンク

Contents

登場人物紹介

長部静一(おさべせいいち)
本作の主人公。中学2年生。母、静子に似た穏やかで整った顔立ちをした少年。静子の愛情を一身に受けて育ち、学校では友人にも恵まれ、平穏で幸せな日々を送っていた。
夏休みの登山中、静子が従兄弟のしげるを崖から突き落とす現場に居合わせ、彼女からしげるが一人で崖から落ちたと偽証するように強いられる。それ以降、母の不可解な言動に振り回され、次第に自身の言動を支配されていく。
秘かに思いを寄せていた吹石由衣子から受け取ったラブレターも、静子から強制され、破り捨ててしまう。
二学期の始業式の日、事件について静子に問い質すも、逆に首を絞められ威圧されてしまう。
一連のストレスから吃音になっている。

長部静子(おさべせいこ)
静一の母親。若々しく美しい容姿をしている。一人息子の静一に愛情を注ぐ。心配性でスキンシップが多いが、その様子を夫、一郎の親族から『過保護』と笑われている。夫の親族に対しては不満を言うこと無く笑顔で丁寧に接していたが、内心不満を溜め込んでいた。
夏休みの登山中、突然、甥っ子のしげるを崖から突き落とし、周りには彼がふざけて崖から足を滑らせたと嘘を吐き、静一にも偽証することを強いる。
その後、息子に対する支配欲、独占欲を露わにし、静一の行動をコントロールする様になり、静一にラブレターを渡した吹石に敵意を向け、静一にラブレターを破くように強制した。
二学期の始業式の日、事件について静一に問い質され、彼の首を絞めて威圧した。

長部一郎(おさべいちろう)
静一の父親。眼鏡をかけている。穏やかで優しい性格をしている。
しかし、自分の家に入り浸る姉と甥、しげるについて『仲が良い』で済ませ、夏休みの登山では、自身の親族と共に静子と静一を『過保護』と笑う等といった無神経な面を見せる。
事件後、妻である静子が今までの親戚付き合い等について不満を爆発させた際も、理解することが出来なかった。

伯母
静一の父の姉。息子のしげると共に、静一の家に入り浸る。明るく陽気な性格で常に笑顔を絶やさない。夏休みに親族皆で登山することを提案する。
登山中しげるが自身で足を滑らせ崖から落ちたという静子の証言を信じている。
しげるの意識が戻らないという厳しい状況の中でも明るい態度を取り続け、現場にいた静子と静一を一切責めず、むしろ二人を心配するといった、強さと優しさを見せる。

しげる
静一と同年代の従兄弟。母親である伯母と共に静一の家に入り浸る。明るく陽気だが、やや言動が幼い。静子と静一に対して『過保護』と言う。
夏休みの登山中、静子に崖から突き落とされ、一命を取り留めるも脳に大きなダメージを受けており、未だ意識は戻っていない。

吹石由衣子(ふきいしゆいこ)
静一と同じクラスに所属する、ショートカットの美少女。静一が密かに想いを寄せる相手で彼女自身も静一に対して好意的な態度を取る。
夏休みに静一の家を訪ねてきて、彼にラブレターを渡してきた。
二学期の始業式に静一から交際を断られるも、彼の異変を察知し、その原因が静子にあることを見抜いている。

小倉、その他友人達
静一と同じ中学校の友人達。小倉は眼鏡をかけたひょうきんな少年。
普段から静一を構い、いじり、遊びに誘うも、従兄弟の来訪を理由に、遊びを断ることが多くなった静一と次第に距離が出来ていく。
夏休み中、静一は静子に連れていかれたショッピングモールで彼らを見かけるも、顔を伏せてやり過ごしてしまう。

伯父
伯母の夫。しげるの父親。やや肥満体形。夏休み静一達と共に登山する。

祖父母
静一の父方の祖父母。明るく笑顔が多い。夏休み静一達と共に登山する。

あらすじ・ネタバレ

前巻までのあらすじ…90年代半ば。中学2年生の長部静一(おさべせいいち)は若々しく美しい母、静子(せいこ)の愛情を一身に受けて平穏で幸せな日々を送っていたが、家に伯母と従兄弟のしげるが入り浸る様になる。
夏休みになり、親族皆で登山に行くが、静子と静一は伯母達から『過保護』と笑われ、静一は動揺する。
その後、静一はしげると二人で崖まで探検に行く。すると、そこにやって来た静子が突然しげるを突き落とす。しげるはかろうじて一命を取り留めたものの、脳に大きなダメージを受け、意識が戻らなくなってしまう。
静子は親族や警察に対して『しげるがふざけて崖から落ちた』と嘘をつき、静一にも偽証するよう強いる。

事件後、静子は静一への独占欲を隠さなくなり、彼の言動を次第に支配していく。抗うことが出来ない静一は、秘かに想いを寄せていた同級生の少女吹石から受け取ったラブレターも静子から強制され破り捨ててしまう。
夏休み中、静子に支配され続けた静一は一連のストレスから吃音を発症し、上手く喋ることが出来なくなる。

二学期の始業式の日、帰宅後、静一は父と母が言い争っているのを目撃する。今までの不満を吐露し、静一を産んだことを後悔するような静子の発言に強いショックを受ける。
しげるのお見舞いに行った後、意を決して母に抗い「何故しげるを突き落としたのか」等疑問をぶつけた静一。しかし、静子はそんな息子の首を絞め、威圧するのであった…。

小倉や友人達にからかわれ、学校でキレてしまう静一

夢でうなされる静一。彼は、母、静子から首を絞められる夢を見ているのだ。こどものくせに…そう言いながら冷たい目で静一の首を絞める静子。
自室のベッドで目覚めると、静子が立っていた。
朝はん、肉まんね…そう微笑み、静子は去っていった。静一は冷や汗が止まらない。
静一が静子から首を絞められた晩から既に一月が経っていた。季節はすっかり秋になっている。そして、静一は全く喋ることが出来なくなってしまっていた。

授業中、教師に音読する様に促されても、ノートに『すみません  まだのどがいたくてしゃべれません』と書いて見せてやり過ごす。落ち込んだ様子で、皆を避ける静一。何かにつけてあの晩の母の姿が思い浮かぶのだ。

しかし、突然、教室の掃除中に友人の一人である小倉に脅かされて悲鳴をあげる静一。その様子を見て笑う友人達。

喋れんじゃねーか、長部が最近喋らないからつまらない、なんか言えよー…そう、無邪気に絡んでくる友人達。その様子を廊下から心配そうに見つめる吹石。しかし、黙ったままの静一に、思い出したように小倉が言った。

「そういえばさー、夏休みおまえ長崎屋にさー、母親と2人でいたんべ」

夏休み、ショッピングモールで友人達を見掛けた静一は咄嗟に顔を伏せた。しかし、実は小倉は気付いていたのだ。

「中二にもなって母親と2人で!」
「だっせんなー!」

次の瞬間、静一は目の前にあった教卓を蹴り飛ばし、大きな穴を開けてしまうのであった。

帰宅したくない静一。そんな彼の前に現れたのは…

その後、職員室に呼ばれ、教師達に取り囲まれる静一。彼らは成績の良い優等生の静一が起こした事件に困惑するも、彼を厳しく叱責し問い質す。
しかし、静一はやはり喋ることが出来ず、泣き出してしまう。
教師達はこの件について家に連絡するという。

落ち込みながら一人下校する静一。学校から家に連絡…そう考えると、また自然と静子の顔が思い浮かぶ。
帰りたくない彼は途中にあるベンチに腰かけ、夕日を見つめる。

「長部…となり、すわっていい?」

振り返るとそこには吹石がいた。

吹石に告白する静一

黙ったままの静一の隣に腰かけ、吹石は一人で語り始める。
自分もよくこのベンチにやって来ること。父親とよく喧嘩して、家に居たくなくなるとここに逃げてくること。
そして、以前父親と大喧嘩した際に、壁を蹴って大穴を開けてしまったことを。だから…

「いっしょだいね」

そう優しく静一に笑いかけた吹石。慌てて、そんなこと一緒でも嬉しくないか…とうつむいたその時だった。

「うれしい。」

唐突に静一が口を開いた。

「吹石の、手紙…」
「本当は、うれしかった」

涙を浮かべながら、はっきりと静一は言うのであった。
頬を赤らめながら、本当に…?と漏らした吹石は静一に尋ねた。
それって…どういう意味?と。

一瞬、静一は背後から泣いている母、静子が抱きしめてきたかのような錯覚に陥る。涙を流す静子、変わり果てたしげる、父や伯母…様々な人々の顔が思い浮かんだ。
しかし、彼は吹石をしっかり見つめ、吃りながらもはっきりと言った。

「僕っ…とっ…つっ…つっ…つっ…つきあっ…て…」

その言葉を聞いて、真っ赤にした顔に、両手をあて、吹石は答えた。

「うんっ。」

二人は交際することになったのだ。

隠す静一、鋭く探る静子

その後、途中まで吹石と共に帰る静一。別れ際、吹石は明日から一緒に帰ろうと提案し、静一はもちろん了承する。そして、吹石と別れたあとも、照れ笑いが止まらない。しかし、その時。

「静ちゃん。」後ろから肩に両手を掛けてくる静子。学校から連絡を受けた彼女は、静一が帰宅するのを待っていたのだが、中々彼が帰ってこないので心配していたのだという。

「何してたん?」「どこに行ってたん?」

真顔で静一の顔を覗き込む静子。静一は思わず目を背ける。そんな静一に、静子は微笑みながら教卓を蹴るなんて下らないことをしても何にもならない…と説教するのだが、突然、

「あれ?何かいい匂いするんね」「何の匂い?」

と再び真顔になって問い質す。吹石の香りが移っていたのだ。
さあ…としらを切る静一。静子はそんな彼を追及するのをやめ、手を引いて家まで連れ帰るのであった。 

家では父、一郎も待ち構えており、学校での出来事を問い質す。何かあったのか?そう父に尋ねられるも静一はうつむき、首を振るばかり。心配そうにする父親に吃りながら、足が当たってしまっただけだと言い訳する。話を終わりにし、静一に夕食をとらせるよう静子に指示する父。夕飯のおかずは焼魚であったが、静子は静一のために、骨を抜き、細かく身をほぐしてやるのであった。

学校で孤立する静一だが、吹石の存在に励まされ、声が出るようになる

翌朝、静一が登校すると、小倉達が昨日のことを揶揄してくる。何も言えず、孤立する静一。

そして、英語の授業でまたしても音読を教師に指示される。静一が立ち上がると、教師は「あ…そうか声出ないんだったいな。飛ばすか?」と尋ねる。ふと見ると、そんな静一を小倉達が囁き合いながら笑っている。一方で、吹石もまた、さりげなく勇気付ける様に視線を送っていた。
彼女に励まされた静一は勇気を出して、英文の音読を始める。最初こそつかえたものの、流暢にはっきりと音読する静一。その様子に教師もクラスメイトも驚く。吹石はそれを嬉しそうに見つめていた。

放課後、吹石と待ち合わせ共に帰る静一。喋れるようになったん?という吹石の問いに彼は答えた。

ずっと喉が締め付けられている感じがして苦しくて言葉が詰まってしまっていた。でも…

「吹石の顔を見てたら…言えた。息が…できた。」
「ありがとう」

二人は見つめ合い、微笑みあった。

その後二人は例のベンチで陽が落ちるまで語らい続ける。どの季節が一番好きか等、他愛のない会話で笑い合う二人。あっという間に時間が経ち、辺りは暗くなってしまい二人はベンチから立ち去る。お母さん怒る?と吹石に尋ねられた静一は、あー…と返事を濁す。

そんな彼の様子を見た、吹石は言った。『以心伝心』という言葉を知っているかと。長部とはそういう風になりたいと。
長部のどんなことも分かってあげたいし、自分のことも分かってほしい。全部、どんなことでも…。

彼女の強い意志を感じ取った静一は、うん…と返事をするのであった。

しかし、帰宅すると再び声が出なくなる静一…静子への態度にも変化が

帰宅した静一が家のドアを開けると、玄関で母、静子が立ったまま待ち構えていた。微笑む静子を見た瞬間、静一はまた、喉を締め付けられた様な感覚になり、声が出なくなってしまう。時刻は午後七時半。遅い帰宅を咎める静子。

そして、またいい匂いがする…そう言って静一に触れようとした刹那。
必死の形相で、彼女の手を振り払う静一。唖然とする静子。静一自身もまた、自らの行動に驚いていた。静子はそんな静一に訴えるように言った。
ママはね…心配なの。中学生がこんなに遅くまで…何かあったらどうするん?と

「…どこ、行ってたん?」

静一は吃りながらも、家に帰りたくないから、学校で一人で過ごしていた…と嘘をつく。「ずっと?ひとりで?」という静子の問いに頷く静一。明らかに疑っている様子の静子。しかし、次の瞬間にはその感情を飲み込んだように穏やかな笑みを浮かべ、明日から早く帰ってくるように言い、静一に夕食をとるように促す。

深夜、自室のベッドで横になっていた静一は眠れずにいた。吹石の『長部のどんなつらいことでも分かってあげたい』という言葉について、考えていたのだ。その時、ドアが開いた。静一は咄嗟に寝たふりをする。
暗闇の中、泣きながら静一の頭を撫でる静子。ごめんね…静ちゃん。こんなママで…ごめんね…と繰り返し呟き、彼女は立ち去った。静一は困惑するのであった。

異様に機嫌を取る静子、しかし静一は吹石を優先する

翌朝、静一が目覚め、居間に行くと、朝食にサンドイッチを出してきた静子。早起きして、作ったという。サンドイッチを食べる静一に今日は、早く帰ってきてねと言い、家を出る際も、晩御飯にカレーを作ると言い、再び、早く帰ってくるのよ。ね。…と念押しする

しかし、静一は静子の言い付けを破り、放課後、例のベンチで吹石と過ごす。静子の事を気にしつつも、少し元気が無い様子の吹石に何かあったのかと尋ねる。そんな静一に吹石は、父母が離婚しており、母親がいないこと、父親が怒りやすくいつも喧嘩ばかりであることを打ち明ける。そろそろ帰らなければならない時間だが、共に帰りたくない二人。
唐突に、吹石は静一に頭を撫でてほしいとお願いする。戸惑いながらも吹石の頭を撫でる静一。吹石は甘えるように静一に寄りかかる。互いの温もりに二人が幸せを感じあったそのとき。

「見たわよ!」

遠くから声が響いてきたのだった。

静一と吹石の逢瀬を目撃した静子…逃げる二人

声のした方向を見る静一。夕闇の中、遠くに自転車にまたがった静子のシルエットが見えた。自転車を投げ捨てるようにして、静子は迫ってくる。
静一は慌てて、吹石の手を取り、逃げ出した。
必死に走り、草むらに隠れ込んだ二人。そんな二人を半狂乱になって探し回る静子。

静ちゃん!どこにいるん!?ねえ!!見たわよ!吹石さんといたんでしょ!?くっついて何してたん!?…ママに嘘ついたんね!裏切ったんね!!

そう叫びながら静子は草むらの中を分け入ってくる。恐怖に震えながら隠れ続ける静一、そんな彼に追い打ちをかけるように静子は言う。

「一緒に、吹石さんの手紙破ったのに!!」

最も吹石に知られたくなかったこと、やましいことを叫ばれ、呼吸が苦しくなる静一。
静子は更に泣き叫び続ける。

何たぶらかされてるん!?女の子に!どうして静ちゃんそんなんなっちゃったん…!?ママ、ずっと静一を…静一だけのために一生懸命…
首しめちゃったのが…そんなにやだったん!?
静ちゃん戻ってきて、ママ謝るから、せいちゃんせいちゃんせいちゃんせいちゃん…

「聞いちゃダメ。」

吹石はそう言って、静子の言葉に呼吸が出来なくなる静一の耳を両手で塞いだ。
強い瞳で静一を見つめる吹石。驚いたように見つめ返す静一。
しかし、その瞬間、二人は静子に見つかってしまうのであった…。

静子VS吹石、そのとき静一は… 

せいちゃん…二人を見つけた静子は涙を流し、悲しそうに静一を呼んだ。…が次の瞬間、
離れなさい!と二人に向かって叫んだ。しかし、

「私の手紙破いたって、どういうことですか。どうしてそんなことしたんですか。」
「静一くんに、何したんですか!?」

静一の耳をふさいだまま、怯むことなく冷静に静子に問い質す吹石。

何がわかるん。あなたみたいな子に。
そう言って、睨みつける吹石に近づく静子。静一から手を放すように迫っていくが、
突然静一が立ち上がり、吹石と静子の間に立ち、吹石を庇う様に両手を広げた。
そして驚愕する静子に叫ぶのだった。

「あっちいけ!!マっ…おまえなんか!!おまえなんかいらない!!」

静一の反抗に静子は呆然としながら、右手の中指を噛みながら呟く。

いらない…、いらない子…私…いああ…い…お…

不気味な母の様子に固まってしまう静一。そんな彼の前で静子はいきなり、爪を強く噛み割り、血を流す。
そして、泣きながら例の不思議な微笑みを浮かべ、黙って去っていくのであった。

立ち尽くす静一。しかし、そんな彼に吹石が言うのであった。

「こわい。」「こわい、あのお母さん」
「私と逃げよう。お母さんから。」

スポンサーリンク

以下、感想と考察

4巻では吹石との愛の力で静一が救われていく一方で、嫉妬に狂った母、静子が恐ろしく悍ましい面を沢山見せてくれる。終盤なんて、もはやホラーである。
今回も色々と思うところ、考えるところが多いので、感想・考察を綴っていきたい。

可愛いだけではなく、健気で、強く、賢い、吹石

いやあ、吹石が可愛いし、健気なのだ、本当に。 静一に告白されるシーンなんて特に。ちょっと愛とか恋人関係に理想を持ちすぎてて青いなぁとは思うけど、それも含めて、若さに溢れていて本当に魅力的。
静子も若々しく美しく描かれているけど、細かいところちゃんと年相応に描かれていて対照的だ。目元に影やシワがあるし、二の腕が柔らかくたわんでいて、背中にもちゃんと肉が付いている感じがリアルでちょっと残酷にすら感じられる。

それにしても吹石、強い。静子がラブレターを破いたことを言ったとき、静一だけでなく読んでいるこっちまで『やめてくれ!』と叫びたくなった。そんなことを知ったら吹石はどうなってしまうのか…と心配したのだけど、全く問題なかった。むしろ大人の静子相手に、一歩も引かずに問い質す。中学2年生でこれってものすごいと思う。でも、大人びてて賢く、大人に対して怯まない子って現実にも一定数いる。
静一が吹石に惹かれるのは分かるとして、吹石は静一の何が良いのだろう?顔が良いところ?成績が良いところ?まあ、好きになるのに理由はいらないか。

束縛を強めようとする母、静子。しかし、静一の心は離れていく。

夏休みが終わり、二学期が始まってもなお、当然のように静一への支配・束縛を強めようとする静子だが、それはことごとく失敗する。

静一の行動を把握しようとする静子。

吹石の移り香を静一から嗅ぎとる様子は本当にホラー。別に二人はそんなに引っ付いてた訳じゃないんだから、香りなんて微々たるものだろう。何故分かる。犬かよ。
というか中学2年生の息子が学校が終わってすぐに家に帰ってこないからと言って、何か悪いのか。確かにちょっと遅かったかもしれないが、基本的に夕飯までに帰ってくればいいじゃない。今までだって友人とじゃれあいながらゆっくり帰ってきたりしてただろうし。もう伯母やしげるが遊びに来るわけでもないのに。(そういえば、静一が部活動をしている描写は一切ない。地方の公立中学校って部活強制のイメージあるけど、どうなんだろう?)
一連の事件や、静一が学校でトラブルを起こしたことに乗じて、ジワジワ束縛を強めていくのが本当に怖い。静一と吹石の逢瀬を見つけた時も、ママチャリで夕闇の町を鬼の形相で走り回っていたのかと想像すると恐怖しかない。

一方で、甘やかし懐柔しようとする。

そして、吹石に告白した後の静一の変化を敏感に察知し、今まで以上に甘やかし、取り入ろうとする様が不気味である。接し方が幼子に対するそれになってきている。
夕飯に焼き魚を、幼児に対してしてあげる様に骨を取り除き、身をほぐしてやる静子。静一は中学2年生だ。もうこれは本当に分かりやすい、『優しい虐待』で、静一を何もできない人間にしようとしているのが、はっきり分かる。
そして、朝はサンドイッチを作ってみたり(今まで朝ごはんはいつも肉まん、たまにおにぎり…等、静子はあまり料理が好きではないような描写がされている)、カレーを作ってみたり、優しくすることでどうにか静一の心を繋ぎ止めようとしてくる。
しかし、流石に戦略としてお粗末過ぎた。中二だよ。食べ物なんかで釣られる訳がない。吹石との愛情によって自尊心を取り戻した静一に、これらの手口は一切効かない。そもそも、もう静子のことが生理的に無理になってきているような描写があるし。

静一の周囲の大人が頼りなさ過ぎてビックリ

そして、静一の周りの大人達に色々と突っ込みたい。
静一が突然キレて教卓を蹴飛ばしてしまい、教師陣が取り囲んで彼を問い質すのだが、教師の一人がやたらと教卓に穴を開けたことにこだわる。『八つ当たりするにしても教卓が1番ダメ』だとか『教卓を壊すというのは先生を侮辱することだ』『学校を侮辱するということだ』…そう言って激怒する。
…え、何言ってるのこの人?教卓ってそんなに大事?怒るところ、そこかい。頭固いというか古いというか。
体育以外の成績オール5の優等生だった静一がこんな風に暴れたのだから、もっと友人関係とか家族関係に何かあったんじゃないかと心配するのが普通じゃないだろうか?
90年代半ばの地方(多分群馬)の公立中学校ってそんなものなのか? 

そして、それ以上に息子の吃音を放置し続ける両親、本当に何なんだ?
息子が喋れなくなってむしろ喜んでいるような節がある静子は、もう、どうしようもないにしても、父、一郎、お前はどうなんだと言いたくなる。
教卓を壊したと学校から連絡があった際、
「何か…あったのか?何でも言いな。」と心配そうに尋ねてきたが…

何があったもなにも、どう見たってしげるの件で病んでいるわけだし、現在進行形で吃音発症しているのを放置してるくせに何言ってんだ!?
というか親よ、せめて学校に事情くらい説明しろよ。

しつこいが90年代半ば、地方多分群馬) 。現在と違って、色々と知識や情報がなく、外聞を気にすることがあったとしても、突然吃音を発症して喋ることが出来なくなった息子を、どこにも診せず相談せず、放置するのは如何なものかと思うのだが…。
静一の親にしろ、教師にしろ、静一への対応が酷すぎてビックリしてしまう。でも、どこか妙にリアルなんだよな…、このどうしようもない感じ。
今のところ、伯母が静一に対して一番まともな対応をしている。

肉まん・あんまん問題3

1巻の記事3巻の記事でも、私はずっとこの『肉まん・あんまん問題』に注目してきた。この二人のやりとりが関係の変化をよく表しているからだ。

冒頭すぐ、悪夢から目を覚ました静一に静子が言う。

「朝はん、肉まんね。」

あああああーつ!!ついにあんまんか肉まんかすら、聞いてくれなくなったよ、静子。
肉まんね。って一択かい。静一にはもう選択肢すら無いんかい。もはや、静子が何をするにしても、静一の意思を一切尊重する気が無いことの表れだろう。
もう、このあんまん肉まん問題、本当に二人の関係を良く表し過ぎていて怖い…。
この『肉まん・あんまん問題』これから先、どう変わっていくのか、今後も注目していきたい。

巻末のアルバムが示すもの

ところで、この『血の轍』は、単行本の最後に静一のアルバム写真が描かれている(毎巻の表紙も写真の一枚という体である)。静一の生誕から始まり、写真の時は少しずつ進み、静一も成長していく。
一見、ただの微笑ましいアルバムだが、ここに家族の歪な関係が垣間見えるのである。

このアルバム、基本的に静一のワンショットか、静一と静子のツーショットばかりなのである。父親である一郎が写っている写真が非常に少ない。

もちろん、当時は、携帯電話で簡単に写真が撮れる時代ではなく、カメラを使って写真を取るのは父親の役割…という風潮もあった。
しかし、それにしても一郎の写真は少ない。これはまるで静子の心の中の様だ。

そして、4巻では、一郎の親族達との旅行の風景も収められている。
しかし、海を背景に撮った集合写真では、静子、静一母子と他の皆との間に微妙に距離がある。そして、旅館の風景でも、やはり二人は皆と離れているのだ…。

ああ、やっぱり昔から静子と一郎の親族の間に隔たりがあったのだなと再確認。小学校入学まで進んだアルバム。5巻ではどんな写真があるのか。楽しみなようで少し怖い。

まとめ

苦しみ続ける静一に優しく寄り添う吹石。そんな彼女に静一は正直な気持ちを告白し、二人は晴れて恋人同士になった。彼女のおかげで静一は失っていた言葉を取り戻すことが出来た。
そして、支配、束縛を強めてくる静子に対して、はっきりと反抗の意思を示した静一。そんな静一に吹石は「私と逃げよう、お母さんから。」という。
しかし、逃げると言ったって二人は中学2年生。まだまだ無力である。
彼女と仲が悪くキレやすいという父親がどういった人物でどう関わってくるのかも全然分からない。何にせよ、そんなに上手くいくとは思えない。

『血の轍』5巻は2019年2月末頃刊行予定である。非常に先が気になる!!

次の巻の記事はこちら
【漫画】血の轍5巻【感想・ネタバレ・考察】垣間見えた静子の過去。遠くに逃げたい吹石…静一が選んだのは…

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください