【漫画】育児しんどいマンガ~もうママって呼ばないで【ネタバレ・感想・考察】~産後うつ・育児ノイローゼをシンプルに描く

育児しんどいマンガ 表紙

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最近になってやっと、『産後うつ』『育児ノイローゼ』が社会的な問題として扱われる様になってきた。新聞、テレビ、ネットニュースでも定期的にそういったものについての特集が定期的に組まれている。

それに伴い、いわゆる育児エッセイ漫画も今までの様な『ドタバタ、かわいい、抱腹絶倒』というほんわか、ギャグ路線のモノよりも『産後のストレス、育児の苦悩』といった、育児の闇の部分に着目したものが増えてきた気がする。

この記事で紹介する、爽田スルメ氏の『育児しんどいマンガ~もうママって呼ばないで~』もその一つだ。自身の体験を元に描かれたストーリーは非常にシンプルで分かりやすく、育児ノイローゼに陥り精神が蝕まれていく様子が描かれている。

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Contents

以下、各話あらすじ、ネタバレ

1話 赤ちゃん~第一子を妊娠・出産して幸せな主人公夫婦…しかし、生後半年頃から主人公は徐々に疲労していく…

第一子出産中の主人公は幸せ一杯な毎日を送っていた。夫も赤ちゃんを楽しみにしており、身重の主人公の身体を気遣ってくれる。

主人公の育った家庭は夫婦仲が冷え切っており、父はほとんど家にいなかったため、母子家庭のような状態であった。しかし、母は『娘の幸せが私の幸せ』と語り、主人公はそんな母の愛情を一身に受けて育ってきた。そのため、母親の様な”優しいママ”になることを夢見ていた主人公。

やっと母のような「お母さん」に私もなれるんだ

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そう心から信じて疑わない主人公にはテレビで報道される児童虐待のニュースは他人事にしか思えなかった。

そして主人公は無事に愛らしい男の子を出産する。授乳時には愛おしさを感じ、おむつ替えの都度、息子の可愛さにメロメロになる。夫と共にする沐浴は愉しかった。そしてあっという間に時は過ぎ、生後半年になった。

この頃から頻繁に泣き出すようになった息子。泣き出す息子をあやして、泣き止み眠るとベビーベッドに戻す。しかし、またすぐに泣き出す。その繰り返しで主人公もほとんど睡眠を取れない日々が続く。そのことに気付いた夫は慌てて主人公に『いいから寝てな』と告げ、息子の世話を代わってくれた。夫が抱くと瞬く間に眠りに落ちた息子。その様子を見た主人公は安堵するのではなく『だめだなあ、私』と落ち込んでしまうのであった。

今日こそがんばらなきゃ!…そう思い日々、育児・家事に力を入れる主人公。気を抜けない日々に疲弊するものの、立てるようになる等どんどん成長していく息子の姿に感動を覚えもする。夕飯作りに手が回らなくても夫は笑顔で文句を言うことはなく、『たまにはカップラーメンでも食べようよ』と提案する。
しかし、カップ麺を用意して共に食べようとしたその時、息子が突然泣き出してしまう。俺が…といって立ち上がろうとする夫を『大丈夫』と制しておんぶしに行く。息子を泣き止ませ戻ってくるとカップ麺は冷めていた。洗濯機の横にしゃがみこみながら主人公は思うのであった。

疲れちゃったなぁ

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2話 お出かけ~子連れ外出の大変さに驚く主人公、友人の言葉にモヤモヤを覚え、自身の存在意義について悩む

『たまには息抜きに外出しておいでよ』と夫から言われた主人公。動き回る様になった息子を見て、子連れで外出なんてムリ…と思うも、夫から励まされ、友人とランチに行くことを決意する。あれやこれやと準備をするうち荷物は登山者並みに一杯になってしまった。

しかし、いざベビーカーで出発すると改札の通り口はギリギリで、当然エスカレーターは使えない。エレベーターを探し出すも、なんと点検中で利用不可。仕方なく、息子が乗ったベビーカーを両腕で抱えながら階段を上る主人公。それだけでもうくたびれてしまう。

そして、何とか電車に乗った瞬間、今度は息子が泣き出してしまう。何をしても泣き止まない息子。周囲の目が気になって仕方がない主人公は『すみません、すみません』と誰に向けているかも分からない謝罪を繰り返し、慌てるのだった。窓の外を見せると息子はようやく泣き止み、主人公は『電車に乗るだけでこんなに大変だなんて…』と冷や汗を流し続けるのだった。

そうしてやっと、友人と合流できた主人公。友人は息子のことをかわいいと言ってくれ、主人公も笑顔になる。そして、友人から育児のことを聞かれたので、育児の大変さを語った。しかし、友人は主人公の話を聞いて、こう言うのであった。

「でもいいよね~、専業主婦なんて勝ち組じゃん!」

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友人のその言葉にちょっと驚いた主人公。そうかな?と返すも、友人は自分も寿退社して幸せになりたいと語る。その後、友人とは何事も無かったかのように語り、解散するが、主人公の中には何とも言えないモヤモヤが残る。

自分も確かに昔は専業主婦になって楽になりたいと思いながら働いていた。そして、泣き止まない赤ちゃんを見ては『迷惑』『静かにしてほしい』と感じていたことを思い出す。そして、そういったことを考えながら歩く帰り道、ある疑念が主人公の胸の内に湧いてきてしまう。

いまの私って社会に必要な人間なのかな?

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落ち込み、放心した状態で主人公は電車に乗り込んだ。すると息子がまたも泣き出すも、すぐに機嫌よく歓声を上げはじめる。近くに立っていた若い男性客のスマートフォンのアクセサリーに反応したのだ。嫌な顔をせず、笑顔で息子をあやしてくれた男性の存在に非常に救われた気分になる主人公。
『自分も笑顔で育児をできるように頑張ろう』『もっと強くなろう』と決意するのであった。

3話 イヤイヤ期~悩む主人公は健診での保健師の言葉に更に追い詰められてしまう

一歳半近くになった息子はある時から突然『イヤ』という言葉を連発するようになる。おむつ替え、食事、遊び…何をしても『イヤ』としか言わず反抗する息子に主人公は振り回される。
ある日、自ら靴を持ってきて散歩に行きたいをねだってきた息子。久しぶりに機嫌が良い息子の様子に喜んだ主人公は要望に応え公園に連れて行くも、公園に着いた途端息子は機嫌を損ね『イヤ』と言って帰ろうとする。

イヤイヤイヤイヤ いったいなんなの?

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悩む主人公はネットで調べて初めて『イヤイヤ期』について知る。1~2歳になると突然何でも嫌がるようになる現象…そのことについて夜、息子をあやしながら夫に相談する。しかし、夫は主人公の話を聞こうとはするものの、途中で寝落ちしてしまう。夫は職場で新企画のリーダーに任命されたばかりで、疲労がたまっていたのだ。

私だって…あのまま仕事を続けていれば

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話を聞いてくれる時間が減ったことに対して不満を抱くとともに、出産を機に離職した主人公は順調に出世をしていく夫の姿に嫉妬もしてしまう。そして、そんな自分に主人公は『そんなこと考えても仕方がない』『育児が仕事!』と言い聞かせるのであった。

そして、一歳児健診の日がやってきた。大荷物を抱えて保健センターに息子を連れてきた主人公。号泣し、『イヤ』と拒否し、逃亡しようとする息子に苦労しながらも健診を受けさせる。そして保健師から『育児で何か困っていることはあるか?』と尋ねられた主人公は日々の苦労について語る。しかし、保健師からはこう言われてしまうのだった。

「わかりますよ~。”みんな”大変なのよね~

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その言葉にそれ以上不満が言えなくなってしまう主人公。保健師はそんな彼女に更に『もっとこどもに共感するように』『お母さんの声掛けでこどもは変わる』『ダメと言ってはいけない』『もっと感情を抑えるように』『母親なんだから』と沢山のダメ出しをするのであった。

保健師の言葉通り実践しようとする主人公。しかし、それでも言うことを聞かない息子に対し、突如苛立ちが噴き上がってきてしまう。

ママだってイヤイヤ言いたい、夜は眠りたい、オシャレだってしたいよ。家事なんて大キライ!仕事も本当は続けたかった。
何もかもあんたのため全部ガマンしてんじゃん

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凄まじい形相で息子を睨む主人公。すると息子は怯えたような表情を浮かべ『ママ?』と呟いた。その様子に我に返る主人公は慌てて謝りながら息子を抱きしめた。

どうしよう、私…子供を愛していないかもしれない

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そう思い涙を流す主人公。母親としての自分の在り方に自信を無くしてしまったのであった。

4話 パパ~妻の変化に気付き、どうにかしようとする夫だが空回りしてしまう。そしてついに大喧嘩に発展する

溜息ばかりつくようになった主人公の変化に夫は気付いていた。以前はあんなに幸せそうだったのに、最近はずっとイライラしている妻。元気付けよう、労わろうとして、昔よく行っていたイタリアンレストランに行こうと提案するも『子連れで行けるわけないじゃん!』と怒ったように言われてしまい困惑するのであった。

育児で疲れている…そう原因は大体分かってはいた。そのため、少しでも妻の負担を減らそうと定時で職場から帰ろうとする夫。しかし、上司は『家族を安心させるためにも早く成果を上げて出世しろ』と言い、なかなか帰らせてはくれないのだ。

新しい企画のリーダーは責任を伴い、人に頭を下げることもある。そして役職ゆえに仕事もどんどん押し付けられていく。

あ、俺ちょっとやばいかもしれない

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仕事で自身も相当ストレスをため込んでいることに気付き始めた夫。しかし、育児で追い詰められている妻に『自分も辛い』なんて話はとてもじゃないけれども出来なかった。

『明日は早く帰る』そう主人公に約束した夫。『いつも手伝えなくてごめん』と謝る夫に、主人公もやつれた顔で笑顔を浮かべながら『私こそ。いつもお仕事ありがとう』と告げるのであった。

しかし、翌日定時で仕事を切り上げた夫は、『紹介したい人がいる』という上司の誘いを断ることができず飲みに連れて行かれてしまう。
結果、帰宅は深夜過ぎてしまい、夫は主人公に平謝りする。しかし、主人公は背を向けたまま『最初からパパに期待してない』と辛辣な発言をする。そして『そんな言い方をするなよ!』と言い返した夫の声で、寝てた息子が起きてしまい、主人公の怒りが爆発してしまう。

「いいわよね、あなたは自由そうで」「気軽に飲みにも行けて!」「私なんて一秒も外に出られないんですけど」

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そして夫もストレスと疲れからつい言ってしまう。

「俺だってがんばって働いてる」「これ以上どうすりゃいいんだよ」「キミが欲しがって子供を産んだんじゃないか!」

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言い争いの後、『しばらく実家に帰る』…そう言った主人公を夫はもう止めることは出来なかった。互いに自分と相手の発言に傷付いていた。

家族のために一生懸命がんばってるのになぁ

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そう思いながら。

5話 帰省~実家の母の元へ身を寄せた主人公に二人目妊娠が発覚する

夫と大喧嘩して実家に戻った主人公。『どうしてこうなったんだろう』という思いでいっぱいだ。子育てがこんなに苦しいものだと思ってはいなかったし、虐待なんて他人事、母性は自然と沸き上がるもの…そう信じて疑わなかった。しかし、現実は息子を前にしてイライラし続ける自分がそこにいる。愛おしかったはずの息子はもはや爆弾にしか見えなかった。『私はダメな母親だからか』と涙を流して反省したかと思えば、息子の泣き声が聞こえるだけで怒りが湧いてきた理もする。

そんな主人公は『何があったか知らないがゆっくり休むように』そういって優しく接してくれる母の存在に救われる。母に息子の面倒を任せる等して距離を置くと息子も可愛く思え、夫とも電話で少し冷静に話せるようになる。

母の『このままここで暮らしちゃえば?』という言葉にそれはそれで良いかも知れないとも思えるのであった。

しかし、一方で主人公は実家に戻ってからは原因不明の体調不良に悩まされるようになる。そしてそんな主人公に母は言うのであった。

「あなた…まさか二人目なんじゃない?」

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その言葉を聞いた主人公はただただ唖然とするのであった。

6話 母と娘~自身と母親の関係の歪さに気付き、息子に対しての自分の感情にも気付く主人公

主人公は物心ついたときから母の泣いている姿をよく目にしていた。なんでもない、心配かけてごめん…そう言って泣いている母に抱きしめてもらえると、頼られた気がして嬉しかった幼い主人公。そんな彼女に母は言うのであった。

「ありがとう。あなたはお母さんを一人ぼっちにしないわよね?」

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思春期になって男の子から告白された主人公。そのことを母に告げると母は『お母さんもうれしい!』と自分のことの様に喜んだ。母に家に連れてくるように言われた主人公は相手を自宅に招き、母も笑顔で彼をもてなした。しかし、彼が帰ると一転して『あなたにはちょっと似合わない』『まだ1対1の付き合いは早い』と交際を反対しだした。そして『応援してくれていたのに何故?』と食い下がる主人公に『あなたのためを思って言っているの!』『大人の言う通りにしなさい!』と怒ったかと思えば、

「あなたのために言ってるのに…なぜ分かってくれないの?」

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そう涙を流しながら弱弱しく訴えるのであった。そして、そんな母の懇願を無下にできなかった主人公は彼に別れを告げたのであった。落ち込む主人公。すると今度はそんな彼女を母が『落ち込まないで』『もっとステキな人が現れるから』と励ますのであった。『ずっとお母さんがついてるから』と。

母から特別な愛情を受けてきたと思い続けてきた主人公。しかし、それは本当に愛情だったのか?

いつの間にか眠っていた主人公。息子に起こされ、ママ、ママと言い続ける息子の顔を見つめているうちに気が付くのであった。

そうか、そうだったのだ。私は子供を支配したいんだ。自分がそうされてきたように。

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『お前だけ自由なんて許さない』…そう愛おしいはずの我が子に思っているということに。

7話 二人目~夫とは和解するもついに限界に達してしまった主人公は息子を突き飛ばしてしまい…

テレビでは虐待事件についての報道がされていた。ニュースを聞いた母はこわいと叫び『どう育ったらこんな恐ろしい母親になるのか、愛情を持って育てられたらこんな人間に育たない』と言うが、母の自分への愛情に疑問を持ち、自身の息子への愛情も疑い始めている主人公には虐待事件がもはや他人事には思えず、愛情って何だろうねと呟くことしかできない。

そんな中、実家に夫がやってくる。

「仕事の代わりはいるけど、パパの代わりはいないっしょ」

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夫は忙しい中平日に休みを取って主人公と息子を迎えにやって来たのだ。驚きながらも夫の笑顔を見て安心した主人公は家に戻ることを決意する。家に向かう車中、夫は『これからはお互いに溜め込まないでいろいろと話し合おう』という。主人公は同意し、早速『二人目を妊娠したかも』と告げ、夫を驚かせた。

そしてすぐに産婦人科に向かった一家。やはり二人目を妊娠しており、夫は大喜びする。主人公も戸惑いながらもやはり喜ぶのであった。

しかし、それから少し経つと酷いつわりが主人公を襲う。つわりは一人目の時よりも酷く、起きていることもままならないが、息子の世話もあるため休むこともできない。そして息子は当然そんな主人公に容赦なくまとわりつき、騒ぎ続ける。ママ、まあまあ、ママぁー…そう叫び続ける息子。

「もう!うるさい!あっち行けー!」

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主人公は思わず叫びながら息子を突き飛ばしてしまったのであった。それは意図してやったことではなく、主人公は驚いた顔で見上げる息子を見て、自身も固まってしまう。そして、思ったのであった。

終わった…

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そして泣き叫びながら息子を抱きしめ、こう考える。

もう限界だ。母親の資格ない。この子を育てられない。お腹の子も産めない。ボーダーライン、超えてしまった。

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そして会社で仕事を終え、帰り支度をしている夫のスマホにメッセージが届く。買い物の頼みだろうかとメッセージを開いた夫が目にしたのは『ごめんなさい。もう私には無理です。息子をよろしくお願いします。』という文面だった。

8話 デトックス~子育ての苦しみ・不安を正直に吐き出した主人公は病院で診察を受ける

主人公からのメッセージを見た夫はタクシーで急いで帰宅した。蒼ざめながらドアを開くと、玄関に荷物を脇に座り込む主人公と、泣きながら主人公にしがみつく息子の姿があった。出て行こうと思ったけど息子が離してくれなくて…そう涙を流しながら力なく言う主人公に、夫は言った。

「何があったの?」「話してくれないと、わからないよ…!」

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夫の言葉に考え込む主人公。自分の本心を言えばきっと軽蔑されてしまう…ずっとそう思って来た。白けた顔で『サイテーな母親だなお前』そう言う夫の顔が脳裏に浮かんでいたのだ。しかし、泣きながら『いっちゃやだ、ママ』という息子を見て、『自分と子供、どちらを守るべきか』を考え、意を決して夫に本心を語ることに決めた。

私、この子のこと猛烈に憎いときがあるんだ

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正直に気持ちを語る主人公。夫は黙って聞き続ける。『仕事をやめたことを何かに負けたように感じていて後悔していること』『父親不在の家庭で育ったこともあってか、夫にあやされる赤ちゃんの息子を見て羨ましいと思ってしまっていたこと』『母親から支配されていたことに気付いてしまったこと』『そして、いつも自分ばかり我慢していると思っていること』…そして、
『それらの不満が全て息子に向かっていること』『母親を辞めたいと考えていること』それをはっきりと夫に告げたのであった。

話を聞き終えた夫は冷静に主人公に尋ねた。

「で?これからどうしたい?」「どうやったら君のしんどさが解消されるか…」

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軽蔑されたり、離婚を切り出されることを覚悟していた主人公は夫の態度とその言葉に驚いた。そして夫は更に言う。

「どちらかと言うと病気?なんじゃないかと」

思ってもみなかった夫の指摘にびっくりする主人公。しかし、治せるなら治したいと考え、精神科で診てもらうことに決めた。

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そして診察当日。自分がおかしいと認めるのはやはり勇気がいり、診察室へ向かうことに恐怖を覚える主人公。しかし、夫と息子のために勇気を振り絞る。
診察室で主人公は担当医に正直に今の自身の状況を説明した。『これ位のことで』と怒られたらどうしようと考えていた主人公に医師は穏やかに『心の問題も風邪と同じで早いうちに対処した方が良い』と告げ、苛立ちを抑える効果のある漢方薬を処方する。そして、育児関係に詳しいソーシャルワーカーを紹介してくれた。実際に子供に危害を加えるよう悪化した場合は、衝動を抑えるもっと強い薬を処方することも出来るという。

『いろんな方法があるからね』…その医師の言葉に心がとても軽くなるのを感じた主人公。帰り道レストランの横を通り、自分が久々に食べ物を見て美味しそうだと感じたことに気付くのであった。

9話 私らしいってなんだろう~理想に囚われずに自分らしくやって行こうと考える主人公

『いいお母さん』になろうとして必死だった主人公。やっと誰かに頼ってもいいということに気付くことができた。
そして精神科の医師から『イライラを10段階評価し、7を超えたら漢方を飲む…等ルールを作るように』と言われた主人公。息子に対して腹を立てることは相変わらず沢山あるものの、自身の苛立ちを数値化すると『怒鳴るほどのことでもないか』と冷静になれることが増えてくるのであった。

そして、主人公はネットで『ガルガル期』という言葉を知った。子どもを守るために、何に対しても攻撃的で怒りっぽくなる現象…それが自分にあてはまっているのではないかと考え、夫にも話す。『母親の愛情はもっとおおらかで優しいものであるべき』と落ち込む主人公に夫は言う。

「我が子を死なせない!ってすごい愛情だよね」
「君は我が子を守ろうとしているわけで、理想も大切かもだけど…君らしいお母さんになればいいんじゃないの

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夫の暖かい言葉に励まされ、素直に感謝する主人公。それ以降、『私らしいお母さんってどんなお母さんだろう』と思いながらも、気を張らずに日々を過ごせるようになる。息子の相手で大変な時は素直に夫に夕飯を作れず買ってきて欲しい等頼むことができるようになった。
一方で母親とのやりとりは極力最低限にするようになり、母からは『育ててやったのに冷たい娘』と思われるようになっていた。

主人公はまだ、『自分らしく』というものがどういうものかは分からないものの、皆が笑っていられて、そして自分も一緒に笑っていられればそれでよいと考えられるようになっていた。

エピローグ~自分の気持ちに正直に…2人目出産後、再び働き始める主人公

朝、ごはんの支度に着替えとバタバタと慌ただしい主人公一家。主人公も出かける準備をして第2子の娘をおんぶし、夫、息子と共に4人で家を出る。

『仕事に復帰したい』…二人目出産直後、主人公は自分の望みを正直に夫に告げた。何年かして落ち着いたらではなく、産後体調が整い次第すぐに働きたいと言った。

「子供はもちろん大切」「そして、私には仕事も大切なの

「”理想の子育て”なんかにとらわれないで、私らしく生きたい。だから決めたの」

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そう笑顔で言い切った主人公に、夫もまた笑顔で答えた。

「うん。わかった。応援するよ」
「みんなで力を合わせられたら、どーにでもできるでしょ」

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そして、今日もまた、皆で手を繋ぎながら主人公一家は歩いていくのであった。

~終わり~

以下、感想と考察

シンプルだが育児ノイローゼまでの経緯は分かりやすくまとめてある

内容は相当シンプルで、読みごたえがあるとは言えない。個人サイトを読んで補完できる部分も多い(例えば、赤ちゃんのときの息子をうらやましいと感じた理由とか。個人サイトの方を読まないと『主人公自身が父親不在の家庭で育ち、寂しい思いをしてきたため、夫が息子を愛おしそうに抱き上げる姿を見て嫉妬した』という経緯が分からない。当記事ではそういったところを補完してあらすじを書いている)。
しかし、分かりやすく育児ノイローゼの状態について描けている。なので、忙しいけど、簡単に『育児ノイローゼになる母親の心理を知りたい』という人には向いている。パートナーが出産を控えている男性等には向いているかもしれない。

でも子供産んで最初のお出かけって確かに登山並みに荷物用意しちゃうよね…とかは共感できる。

『いいお母さん像』といった自分と世間の呪縛から解き放たれるために~自分にも他者にも寛容である必要性

『良いお母さんになりたい』『良いお母さんと認められたい』という欲は正直誰にでもあると思う。誰しも理想は持つものだし、世間から評価されたい承認欲求を持っているものだから。でも現実はそう簡単にはいかない。そして、そんな現実と憧れ・プライド等どう折り合いをつけていくかが大事なのだとも思う。

憧れやプライドを持つことはモチベーションを上げることにつながる一方で、時に自分自身を縛り付けて苦しめてしまう。だから正直な気持ち・感情・弱音を吐いて自由になることは大切なのだ。完璧な母親なんて存在しないし。

そして自身の憧れ・プライドと同じくらい厄介なのが世間が押し付ける理想像。子育てにおいては『おおらかに幸せに愛情たっぷりに子育てに邁進するお母さん像』を押し付け、何かあると『みんな苦労している』と言って個々人の苦しみを矮小化する(この作中では保健師)。しかし、こんな世間の理想通りの姿を演じる必要はない。こんなもの呪いみたいなものである。
『良いお母さん』?そんなの演じたって誰得?みんな苦労している?だからなんだ!『みんな』なんて知らねーよ。今、私が辛いんじゃー!!位に思っておけばいいのだと思う。

そして、普段から理想像にとらわれ、そうではないものに対して不寛容であると結局自分の首を絞めることになるのだ。コラムにもあるが、主人公自身が以前から『ベビーカーを電車で使う親』『子供を泣き止ませられない親』を『迷惑』だと感じていたからこそ、自身がその立場になったとき、ブーメランのように『私は邪魔な存在なのだ』と必要以上に落ち込んでしまうのだ。そういったことについては後から、自身の立場が変わってから気付くことが多いものだが、日頃から他人の事情をくんで寛容でありたいと思う。それが呪いを掛けたりかけられたりしない良い方法だから。

『夫が良い人』で安心できるマンガ

この手の作品にしては珍しく夫がまとも…というか、かなり優しく良心的 (各話合間にあるコラムを読むと、現実より美化とのことだが…) 間違っても『主婦で1日家にいるんだから家事と育児はしっかりこなせよ』『専業主婦は良いよなー、楽で』なんてことは言わない。『夫が敵』みたいな作品を見過ぎて毒されていたので眩しく感じる。まあ、一点文句を言うとしたら、外出を勧めるならお前子供が見ろよ…とは思った。

とにかく、ちゃんと妻を心配し、一人の人間として対等に気遣っている。『子供を憎く感じてしまう』という妻の言葉にも動じることなく、冷静に聞き入れて対処法を考える。
『離婚してもいいですか~翔子の場合』の淳一や『ふよぬけ』のつとむとは違うのだ。

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しかし、ここまで夫がポジティブで優しくても、すれ違ってしまうこともあるし、その優しさに主人公はときに追い詰められてもしまう。対処法としては、夫が語る様に気持ちを溜め込まず伝え合うことが大切なのだろう。
人間関係、夫婦関係はやはり難しい。 だが、何はともあれ、この夫の優しさで読者は不快な気分に陥らずに済んでいるのである。

母親についてのエピソードに疑問と不満

一つ大きく疑問と不満を持ってしまうのが6話の『母と娘』である。

いきなりここで『実は母親は娘の人生を支配しようとする、いわゆる毒親だった』というエピソードが入ってくるのだが、これがとってつけたような印象なのだ。
…正直、必要なくね?このエピソードを入れるなら入れるでもっと掘り下げて欲しかった。

確かに、『自分が母親に支配されてきたから、自身もそうしようとしている』という流れ自体は納得できる。しかし、大した伏線もなしに(一応冒頭でも母が『娘の幸せが私の幸せ』と言っているシーンがあるが、それだけ)、それもこの一話だけで語られても、正直戸惑う。
そういったものを抜きにしても『親(特に母親)が子どもを自身と同一視して感覚を共有したがる、支配したがる』というのは珍しくもない話なので、この母のエピソードを入れなくてもちゃんと話を繋げられたのではないかと思うのだ。まあ、この作品は作者の体験をもとに描かれているわけで、作者的には欠かせない重大な要素なのかもしれないが、だとしたら尚更もっと練ってから描いて欲しい。そうじゃないとウケを狙って滑ったようにしか見えないから。

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まとめ~内容は薄いが分かりやすい。パートナーが出産を控えている男性には良いかも

内容は相当シンプルで、決して読みごたえがあるとは言えない。しかし、分かりやすく育児ノイローゼの状態について描かれているので、『忙しいけど、簡単に育児ノイローゼになる母親の心理を知りたい』という人やパートナーが出産を控えている男性等にはお勧めできる。
Amazonのkindleで¥486、またKindle Unlimitedの対象で登録すれば0円で読めるのでお得である。

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