【漫画】血の轍7巻【感想・ネタバレ・考察】記憶を失っているしげる~しかし、静子は病み静一に対しても冷淡な態度を取り続け…そして突然しげるの記憶が戻り…!?

血の轍 7巻表紙

『お前なんかいらない』…一度はそう言って母、静子を拒絶し恋人である吹石を選んだ静一だった。吹石の家で一晩過ごした静一であったが、吹石が”女”として迫ってきた瞬間、静一の脳裏には走馬灯のように静子の姿が大量に蘇り、静子の元へ帰ってしまう。

静一が帰ってくると静子は『全部お話しする』と言いながら、山で崖からしげるを突き落としたことを否定し『静ちゃんがママがしげちゃんを突き落としたと思い込んでるだけ』と主張した。そんな母、静子の態度に静一は怒りと絶望を感じるが、逆に吹石の家で精通を迎えたことがバレ、怒り狂う静子の剣幕に屈し、静一は再び静子に支配されることを選ぶ。

ところが、その頃、病院で寝たきりになっていたしげるが目を覚ます。病院に見舞いに行くとしげるは静子を見て何か思い出そうとする表情を浮かべて『ちょうちょ』と言うのであった。

前巻の記事はこちら
【漫画】血の轍5巻【感想・ネタバレ・考察】垣間見えた静子の過去。遠くに逃げたい吹石…静一が選んだのは…

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Contents

あらすじ・ネタバレ

第51話 親族~意識を取り戻したしげる…しかし、しげるは静一と静子の事を忘れてしまっていた

静子を見て『ちょうちょ』と言葉を発したしげる。目を覚ましてから初めての言葉だった様で、伯母と伯父は『しゃべれた!』と喜ぶ。

そんな中、静一は母、静子の表情を盗み見る。蝶々…それはしげるが崖から静子に突き落とされる時に見えていたものだ。しかし、そんな不穏な言葉をしげるが発したにも関わらず静子は他の大人達と同じく、しげるの回復を心から喜んでいる様な表情を浮かべており、さらに身を乗り出して言うのだ。

「わかる?静子おばさんよ。」
「しげちゃん。わかる?」

血の轍7巻 押見修造 9/224

そして静一にも名乗るように促し、静一も『静一だよ、しげちゃん』と声を掛けた。しかし、

「だれ…?」

血の轍7巻 押見修造 12/224

しげるのその言葉に凍り付く一同。伯母が慌てて『静ちゃんだよ』と説明するが、しげるはベッドに横たわったまま訝し気に首を振る。すると、静子が必死の形相で再びしげるに言う。

「しげちゃん。思い出して。」
「ほら。過保護の静子おばさんよ。」

血の轍7巻 押見修造 15/224

そう迫る静子を静一の父、一郎が『しげちゃんはまだ目を覚ましたばかりなんだぞ』と制止した。すると静子は呆然とした表情で『ごめんなさい』と謝る。しげるは疲れてしまったのかそのまま寝てしまい、伯母は皆に病室から出る様に促した。

病院の談話室で向かい合う、伯母、伯父、静一、静子、一郎。一郎は『意識が戻って本当に良かった』と言い、伯父は『母さん(伯母)が賢明に看護したからだ』と語る。伯母は静かに笑いながら『しげるが頑張った、強い子だ』と答えた。

そんな中、突然静子が『ずっとお見舞いに来れなくてごめんなさい』と伯母と伯父に対して謝りだした。伯母はそんな静子の腕に触れ、『静子さんのことを悪くは思ってないから思いつめないで』と優しく言う。

すると、

「しげちゃん…きっとまた…元通り元気になって…私のこと…静ちゃんのこと…思い出してくれますよね。」
「私…待ってますから。それまでずっと…」
「私にできることがあれば言ってください。何でもしますから。」

血の轍7巻 押見修造 24-25/224

どこか清々しい笑みを浮かべながらそう言った静子。そんな静子にに伯母は訝しむ様な顔で『ありがとう』と答えるのであった。

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第52話 うどん~『全部壊れればいい』…しげるの記憶が戻り、真実が明るみになることを望むかのような言動を取る静子

帰り際、静一に伯母は『静ちゃんもありがとう、また来てね』と笑顔で言い、静一は『はい』と答えた。しかし、そんな静一を静子は秘かに睨む。

その後、父一郎の運転する車で家に向かう一家。一郎が『お昼に外で何か食べていこう』と提案し、途中にあったうどん屋に寄ることになった。しかし、静子は酷く不機嫌で、注文の際も『なんでもいい、そんなに食べられない』という。静一もそんな母の顔色を窺って言葉少なになる。そしてうどんを食べる中、唐突に静子がわざとらしく大きなため息を吐いた。

すると、険悪な空気に耐えられなくなった父、一郎は『オレが何かしたかい?怒ってるん?』と静子に尋ねる。意識不明だったしげるが目を覚まし、何か悪いことが起きた訳では無い…一郎は静子の不機嫌の理由が分からず戸惑っていた。

静子はその質問に『あなたは何もしていない』と微笑みながら不機嫌の理由を語った。それはしげるが静子と静一を見て『誰?』と言ったことだという。

『しげるは私達の存在を何にも覚えていなかった』…笑いながらもどこか苛立たし気に言う静子。一郎はそれに対して『意識は取り戻したんだから良かっただろう、それにだんだん思い出していくよ』と答えた。だが、それに対して静子は大きな声で言うのだ。

「本当に?本当に思い出すん?適当なこと言わないでよ!」
「適当に…ヘラヘラして…何にもわかってないくせに…」

血の轍7巻 押見修造 42-43/224

『ヘラヘラしている』…そう言われた一郎は『ヘラヘラなんてしてない、ママ(静子)はしげるの事を心配して気に病んでいたから、しげるが回復してくれて嬉しかったんじゃないのか?』と悲しそうに、困惑した様に尋ねる。だが、そんな一郎を静子は鼻で笑う。

そして、次に発した静子の言葉に、黙って様子を伺っていた静一は目を見開くのであった。

「…しげ……ちゃんが……思い出してくれないんだったら…」
「…わたし…わた……し………」
「私……どうやったら出ていけるん?」

血の轍7巻 押見修造 45-46/224

『やっと出ていけると思ったのに』…そう静かに微笑む静子に驚く静一と一郎。特に一郎は『何でしげちゃんが記憶を取り戻したら静子が出ていくという話になるのか?』と静子の意図が読めず更に困惑する。だが、静子は店の窓から空を仰いでこう呟くだけであった。

「わかんない…」
「ぜんぶ…こわれてほしい…」

血の轍7巻 押見修造 49/224

妻が何を言っているのか分からない一郎は頭を抱える。

そして、事情を知る静一はまるで全てが露見して追放されることを望むかのような母、静子の言動に驚き、その心中を推しはかるため静子を見つめ続けるのであった。

第53話 やくそくⅠ~体調を崩し寝込んだ静子…しかし、静子は学校に行く静一に吹石に近づかない様に念を押す

静一は夢を見た。それは例の死んでしまった白い猫の夢。『ママ、どうしてネコはしんでしまってるの?』そう静一がつぶやくと、場面はあの茶臼山の崖の上に代わる。そこでは無数の蝶が舞う中、しげるが横たわるベッドとそこに腰掛ける静子。その背後には二つの光景が浮かび上がる。一つは静子が語る、『崖から足を滑らせたしげるを静子が慌てて掴み上げようとしたものの間に合わなかった』という光景。もう一つは静一が確かにこの目で見た『静子がしげるを崖から突き落とした』光景。

ママ…どっち?どっちが…ほんとなの…?
ママは…本当は…どうしたいの?

血の轍7巻 押見修造 55/224

夢の中でそう静子に尋ねる静一。すると静子は黙ったまま静一を指さす。静一の指差した先は静一の裸の汚れた陰部であった。驚き恥じながら『見ないで』と隠す静一。そんな静一に静子は悲壮な表情で言う。

「静ちゃん ママはね…」
「本当はね……」

血の轍7巻 押見修造 57/224

そこで夢は終わり静一は目を覚ました。自室を出て居間に行くと、そこに母、静子の姿は無く父、一郎が一人で朝食を取っていた。静一に自分が朝食を準備すると言い、学校の支度が出来ているか尋ねる一郎。『ママ(静子)はちょっと具合が悪くて寝ている』…そう、雑然とした居間で力無く笑う。

それを聞いた静一は学校に行く前に静子の部屋に行き、『大丈夫?』と声を掛けた。静一が扉を開けると静子は布団の中で横たわっており、言葉すら発さない。

しかし、静一が立ち去ろうとすると突然静子は布団に入ったままこう尋ねるのであった。

「静ちゃん。ママとしたやくそく。覚えてる?」

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それは吹石の元から戻ってきた直後にした『吹石には近づかない』という約束。思い出した静一は『はい』と答え力なく学校に向かうのであった。

静一が登校すると吹石は既に席についていた。そして静一が来たことに気がつくと一瞬静一の方を見て、そして顔を逸らした。そんな吹石の態度に寂しさを覚えた静一。

しかし、静一の机の中に『長部へ』と書かれた吹石からの手紙が入っていることに気付き、驚くのであった。

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第54話 やくそくⅡ~吹石に『飽きたからもう会わない』と告げる静一。

吹石からの手紙の内容はまず『私のせいで迷惑をかけてしまってごめん』『靴とジャージを貸してくれてありがとう』といったことから始まった。あの家出の件で吹石は父親から相当叱られたようであったが、『私はこれからも長部と一緒にいたい』という気持ちが綴られていた。

そして

靴とジャージを返したいから放課後、裏門のところで待ってるね。

血の轍7巻 押見修造 76/224

そう、静一のことを呼び出そうとする吹石。しかし、母静子と『もう吹石には近づかない』と約束した静一は動揺する。給食でも配膳係の吹石と目が合っても逸らしてしまう。そして、放課後も一度は吹石の呼び出しを無視して帰宅しようともする。

しかし、静一は途中まで帰ったものの、結局引き返し裏門に向かった。すると静一を待ちわびていた吹石は満面の笑みで静一を迎え、『手紙読んでくれた?』と尋ねる。

口ごもる静一。吹石はそんな静一に靴とジャージを返し、あの後大丈夫だったかと静一の身を案じる。だが、静一はただこう言うのであった。

「約束…したんだ。もう吹石には近付かないって。」

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表情を曇らせて『誰との約束?』と尋ねる吹石。静一が俯きながら『おかあさんと』と答え立ち去ろうとすると、呼び止めて言う。

「そんな…どうでもいいがん。おかあさんとの約束なんて。」
「長部の気持ちは?長部はどうしたいん?」

血の轍7巻 押見修造 90-91/224

だが、静一は振り返り笑いながらこう答えるのであった。

「僕が、いやなんだ。」
「もう…好きじゃないから。吹石のこと。」
「もう飽きた。」

血の轍7巻 押見修造 92-95/224

そして、呆然と立ち尽くす吹石を残して立ち去った静一は一人空虚な笑みを浮かべながら『やくそく、まもった』と呟くのであった…。

第55話 ママの鼓動~約束通り吹石に別れを告げたにも関わらず、母静子に冷たくされた静一は動揺する

吹石に冷たい別れの言葉を投げつけて帰宅した静一。しかし、居間に母、静子の姿は無い。静一が『ママ?』と探して回ると、静子はまだ自室で横になっていた。

しどけない姿で仰向けになって眠る静子。そんな母の美しさに静一は目を奪われてしまう。静一は恐る恐る静子に近づき、約束通り吹石と決別したことを告げる。しかし、静子は目を覚まさない。

そして静一はドギマギしながらそっと、静子の胸に耳を当て恍惚とした表情を浮かべる。

静子の鼓動を聞きながら、遠い幼い日を思い出す静一。
赤子だった静一に添い寝しながら母、静子は『せいちゃんは本当にいいこ、ママの宝物、大好き』と歌って寝かしつけてくれていたのだ。

その情景を思い浮かべ、幸福感に包まれる静一。だが、

「静ちゃん。」
「何してるん。どいて。」

血の轍7巻 押見修造 115-116/224

いつの間にか起きていた静子に言われ、静一は慌てて起き上がり、吃りながら『約束通り、吹石に別れを告げた、それも『最初から嫌だった』と言った』と伝えた。

しかし、静子はそれに答えず、冷たくこう吐き捨てる。

「近づくなって言ったんべに。」

血の轍7巻 押見修造 118-119/224

『眠いからあっちに行って』…そう言って背を向ける静子。静一は『ごめんなさい』と謝って部屋を後にしたものの、今までになく冷たく素っ気ない母、静子の態度に動揺するのであった…。

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第56話 その後~リハビリを手伝うため、しげるの家に向かう静一と静子…しかし途中のバスで、静子は静一に冷淡な態度を取る

12月。静子は無気力なままで家事も疎かになり、家の中は荒れ果てていた。そして、静一も力無く日々を過ごしており、中学校ではかつて友人であった小倉達からイジメに近いいじりを受けても弱々しく笑ってやり過ごすことしかできない。吹石はその現場に出くわしても寂しそうに目を伏せるばかりで助けてはくれない。静一もまた、寂しさと悲しさを感じながらも小倉達に対しても、吹石に対しても何も出来ないのであった。

ある日、静一が帰宅すると、居間でだらしなく座椅子にもたれた静子が虚空を眺めたまま皮肉げに笑いながら言った。

「お義姉さんから、電話あったんさ。」
「しげちゃんち行くよ。また。」

血の轍7巻 押見修造 137/224

しげるが退院して以降、しげるのリハビリとして話し相手になるために静子と静一は度々伯母の家に招かれる様になったのだ。

バスで伯母の家に向かう中、静子は『どうして私達がわざわざ行かなくちゃいけないんだろう』『私達のことをリハビリの道具としか思っていない』…そう、ため息混じりに不満をハッキリと口にした。

静一はそんな静子の顔色を注意深く伺いながら『そうだね、やだね』と同意してみせる。そして、窓の外を眺める静子の手に触れようとしてやめ、『僕に何か出来ることはない?』と尋ねた。しかし、静子は振り向いてこういうのであった。

「できること?静ちゃんに何ができるん?」
「パパみたいな顔して。」

血の轍7巻 押見修造 144/224

心底バカにしたように静一を見下ろす静子。そのまま再び窓の外に目をやり、ショックを受けた静一は俯いて『パパみたいじゃない…』と呟くことしか出来ないのであった。

第57話 訪問~未だ記憶が戻らずぼんやりしている様子のしげる

静一と静子が伯母の家に到着した頃にはもう辺りは真っ暗になっていた。『悪いわね、よく来てくれたわね』と笑顔で迎える伯母に、静子は作り笑いをして『とんでもないです』と答え、静一もまた愛想笑いを浮かべる。

家に上がると広いリビングでしげるがソファでぼんやりとしており、静子が挨拶をしても、『わからない』と答えるばかりであった。

そんなしげるに静子は慈愛に満ちた微笑みを浮かべ『私達のことを早く思い出してね』と言う。

しげるは記憶を失っている他、左手に麻痺が残っているのものの、病院でのリハビリの効果で良くなってきており、このままリハビリを続ければちゃんと動くようになるかもしれないと言われたと伯母は微笑む。

それに対して静子は『わー、良かった』と喜んで見せた。すると、伯母は静一にも笑顔を向け、言う。

「だから…静ちゃん大丈夫だよ。安心してね。」
「まだボーっとしてるけど、静ちゃんのことわかってるから。」
「ぜったい…また前みたいに、たくさん遊ぼうね。」

血の轍7巻 押見修造 157-158/224

静一はその伯母の言葉に対して、静子の顔色を確認しながら、曖昧に微笑んで『あ、うん』と答えた。

その後、伯母と静子は夕飯を作る為に台所に行ってしまい、静一は伯母から『少しだけしげるを見ててくれる?お話がリハビリになるみたいだから、何でもいいから話してやって』と言われ、しげると二人きりになってしまう。

しかし、何を話していいか分からず戸惑う静一。すると、しげるが突然『ここはどこ?』と言い出し、『かあさん』と伯母を探そうとして立ち上がって歩き出した。

そして、しげるはバランスを崩し転びそうになるのであった。

第58話 静子さん~転びそうになったしげるを静一が抱きとめると、しげるは『おばちゃん?』と記憶が戻った様な言葉を呟き…

伯母の家のリビングでしげると二人きりになっていた静一。しかし、しげるは突然伯母を探そうと立ち上がって歩き始め、バランスを崩して転びそうになる。

そんなしげるを静一が慌てて駆け寄って後ろから抱き止めた。『あぶないよ』と声を掛けた静一。しかし、意図せず、茶臼山で崖から落ちそうになったしげるを静子が抱きとめた時と同じような姿勢になっていることに気付きギョッとした、その時。

「おばちゃん…?」

血の轍7巻 押見修造 175/224

静一と静子の事を忘れていたはずのしげるがそう呟いた。

思わず静一はしげるを抱えていた腕を離してしまい、しげるはそのまま床に体を打ち付けてしまった。

呆然と立ち尽くす静一。すると、しげるが泣き声を上げ始め、それを聞いた伯母が血相を変えて台所から駆け付けてきた。

『何があったの!?』と叫ぶ伯母とその様子を呆然と見る静子。静一は淡々と薄く笑いながら『しげちゃんがかってに自分で転んだ』と答え、伯母はそんな静一の様子に驚き怯えた様な表情を浮かべる。

その時であった。突然、伯母の腕に抱かれていたしげるが震えながら静子を指さし、呻き出したのだ。

しげるの指先…静子の方を見上げた伯母は無表情で目を見開いており、静子もまた驚愕するのであった。

第59話 核心~『静子がしげるを突き落としたのではないか?』…そう疑問を突き付けた伯母に静一と静子は…

転んだショックで突然記憶が蘇ったのか、伯母の腕の中でしげるは驚愕した表情を浮かべて静子を指さした。そのまま呻くしげるに伯母が『何が言いたいん?』と慌てて尋ねる。すると、

「おば…ちゃんが…おばちゃんが」
「僕を…」

血の轍7巻 押見修造 197/224

そう告げるとしげるは怯えた様に『いやだ』『落とさないで』と叫び、そのまま顔を覆って呻くのであった。

すると、伯母は俯いたまま、『こんなことは考えたくないし、言いたくない』『だから、そんな事はないって、私のことを叱って欲しい』と前置きし、顔を上げ悲壮な表情で静子にこう尋ねるのであった。

「茶臼山の崖の上で、本当は何があったん?」
「静子さんがしげるを落したなんてこと、ないやいね?」

血の轍7巻 押見修造 202-203/224

その伯母の問いに、静子は硬直し、そして何かを叫び出しそうに口を開きかけたその時

静一はしげるを抱えた伯母の肩を強く突き飛ばし、鬼のような形相で怒鳴った。

「だまれ!!ママをバカにするな!!」
「ママに…ママにつらい思いさせやがって!!」

血の轍7巻 押見修造 209/224

そして、そのまま『ママがどんな思いでおばちゃん達に付き合っていたか』『毎週毎週遊びに来てずっと嫌だった!!』『過保護とずっとバカにしてきて!』と叫び続けた。

「しげちゃんは自分で落ちたんだ!!自業自得だ!!ふざけんな!!」
「だいっきらいだ!!おまえらなんか!!」

血の轍7巻 押見修造 211/224

呆然とへたり込んだまま静一を見つめる伯母。そこまで言い切って息を切らす静一。すると、黙っていた静子が静一を後ろから抱きしめ、口を開いた。

「お義姉さん…あんまりです…」
「哀しいです…私……」

血の轍7巻 押見修造 213-214/224

そう言って、涙を流して顔を歪めて悲しんで見せる静子。その静子の様子に静一も涙を流し、伯母も慌てて『静子さん』と言って立ち上がり駆け寄りその手を取ろうとした。

しかし、静子は伯母の手を振り払い、涙を流したまま静一に言う。

「帰ります。行くよ静ちゃん。」

血の轍7巻 押見修造 218/224

そして、静一の手を取り、部屋から出ていく。去り際、静一が振り返ると、伯母は凄まじい疑惑の眼差しを静子と静一に向けているのであった…。

以下、感想と考察

実は真実が露見して破滅することを望んでいる?…不可解な行動を繰り返す静子

前巻の最後で意識を取り戻したしげるは静子に突き落とされる時に見えていた『ちょうちょ』と口走った。しかし、実際この時には完全に記憶を取り戻すことは無かった。…まあ、記憶喪失になることは予想できていたけど、せいぜい直前の記憶を失う程度で、まさか静一と静子のことを丸々忘れるとは思わなかったな。
しかし、それ以上に意外だったのは静子の態度。しげるの記憶が戻らないことに安堵する、あるいはしげるが本当の記憶を取り戻さないか不安がり、真実が露見しない様に偽装(しげるに足を滑らせて落ちちゃったのよ…と言い聞かせるとか)するものかと思ったら違った。

静子はしげるを突き落としたことがバレて裁かれ、一郎たちから離縁されることを望んでいるような言動を取ったのだ。しげるが回復してかつ静子と静一の事を忘れていることが発覚してから病んでしまったのはそれが叶わなかったからなのか。少なくともしげるに対して罪悪感を抱いている様には見えないので、保身に走る気持ちと真実が明らかになる気持ちの間でせめぎ合いになって苦しんでいる…と言ったところなのだろうか。

もし仮にしげるを突き落としたのが突発的なものだったとはいえ、夫一郎の実家への報復であったとしたら…静子は『本当は自分がしげるを突き落とした』という事実をどうしたいのだろう。その事実を隠したまま今まで通りに生活をして、腹の中で嘲笑うのか。それとも、事実が露見した際に『ざまあみろ、お前らが嫌いだったんだ』みたいなことを言ってやりたかったのか。

今回のしげるの記憶喪失について落胆している様子を見ると、後者だったんじゃないのかなあ…という気がしなくはない。でも、しげるが記憶喪失だったからといっても、自分で『私がやりました』と言えば済むだけ。しかし、それはしなかった。真相は明らかになってほしいけど、自ら告発する気力や勇気は無いということだろうか。もしかしたら静子自身、自分がどうしたいのかよく分かっていないのかもしれない。何にせよ心のバランスを崩してしまった静子は今までと違って賢母の仮面を被るのをやめて、少なくとも静一の前でははっきりと伯母としげるへの不満をこぼすようになった。これは大きな変化だろう。

そんな中、予期せぬタイミングでしげるの記憶が戻りかけ、これまた予期せぬタイミングで伯母から『本当は静子さんがしげるを突き落としたんじゃないか』と問い詰められた時の静子の表情…。驚愕した様にも見え、何か叫び出しそうだった。

結果的に静子を庇おうとした静一が激昂し、静子もそれに乗っかるような形で犯行を否定しその場を立ち去った訳だけど…。
もし、あの時静一が何もしなかったら静子はどうしていたのだろう。犯行を否定していたのだろうか?それとも…。

静子の時折浮かべる醜い表情の意味は?

ちなみに、静子が静一に乗っかる形で『あんまりです』と泣いて犯行を否定した時の表情…静一の精通に対して見せた表情と同じ。左目をすぼめて顔を歪める…この表情は何なんだろう。第55話の扉絵でも静一がこれと近い表情を浮かべている。

強いストレスを感じている時に出てくる表情なのだろか?

急に静一に対して冷淡になった静子…すると静一は以前とは対照的に必死に静子に取り入ろうとする

散々、母静子の支配に怯え恐れてきた静一だったが、それを受け入れてしまった直後、急に静子から突き放されると必死になって自ら追いすがっていく。まさに『逃げられると追いかけたくなる』だろう。 今回の静子の態度は静一を翻弄するためというより、ただ本気で病んでいるだけの様に見えるけど、『調教するのが上手いっすね』と言いたくなる。

静子の愛情を浴びたいがために静一は静子が弱って監視が緩まっているにも関わらず吹石に別れを告げ、伯母に対しても静子の気持ちを代弁するかのような罵声を浴びせる。それは静一の本音も混ざっているのだろうけど、もう感情の持っていき場がなくって全面的に静子に依存、同一化しようとしているようにしか思えない。

そして、55話の静一の表情、目線からしても、静子から精通を咎められたことが関係してか、静子のことを性的に見ている様な感じがしてきてちょっと怖い。

静一の吃音についての考察

そして静一の”吃音”のタイミングの出し方が本当に上手い…というか適切。前巻の感想記事でも静一の吃音について考察した。

静一の吃音は彼が『精神的に葛藤しているとき、強いストレスを感じる時』に現れる。なので、

  • 静子がしげるを突き落としたり、吹石からのラブレターを破いた直後の吃音
    →何故静子がそのような行為をしたか追及したい、真実を明かしたい欲求と静子を庇いたい気持ちの板挟みの葛藤。吹石からのラブレターを破かせられ、母、静子の支配によるストレス
  • 吹石と相思相愛になり、交際を始めると吃音が無くなる
    →葛藤はあるものの、吹石の支えもあって『自分は間違っておらず、静子の方が異常だ』と思う様になり、反抗する気力があったため
  • 吹石と別れ、完全に静子に従属するようになっても吃音が復活しない
    →静子に対する反抗心を完全に失い全て静子に従うようになったため、葛藤が何もなくなったから

そして、今回は思ったように静子から愛情を受けられなかったり冷淡な態度で突き放されたりすると、やはり強いストレスや不安を感じるため、時折吃音が出るのだ。

肉まんあんまん問題もそうだけど、こういった細部の描写が本当に上手いと感心するのだ。
肉まんあんまん問題についての考察はこちら
【漫画】血の轍5巻【感想・ネタバレ・考察】垣間見えた静子の過去。遠くに逃げたい吹石…静一が選んだのは…

今回の表紙は中学校の入学式とその頃の静一と静子

今回の表紙は中学校の入学式とその時の静一と静子。

うーん、私自身が女で男兄弟いないし、子どもも娘しかいないからそう感じるだけなのかもしれないけど、中学生になってまで母親と息子がこの距離感…キスしそうなくらいまで顔を近づけるのはちょっとおかしいと思ってしまうのだ。

静子を代弁して今までの不満を伯母にぶつけた静一…果たして8巻の展開は?

意識不明だったしげるは目を覚ましたものの、静一と静子のことが分からなくなっていた。しかし、そのことを静子は喜ぶどころかまるで全てが露見し追放されることを望んでいたかのような発言をし、そのまま寝込み、静一に対しても冷淡な態度を取るようになり、静一はただただ戸惑う。

そんな中、突然しげるが記憶を取り戻しかけ、伯母が『静子がしげるを突き落としたのでは』という疑惑を持ち始めた。静一は静子を庇うかのように伯母を罵倒し、今までの不満をぶつける。

…伯母としげる達との関係は今までのようには行かず、当然、父である一郎との関係にも大きく影響していくであろう。

果たして、この後の静一と静子の運命は…。

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